ダンゲロスSS上海
破夜『感電/ドーナツホール』
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dangerousss_shanghai
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1日目 午前10時00分
『上海外郭大放水路事務局の者です。依頼の受諾、感謝いたします』
『改めて、今回の依頼の概要を説明させていただきます』
『今回あなた方に調査していただくのは、我々が管理する「上海外郭大放水路」、その全域となります』
『ご存じとは思いますが、上海外郭大放水路は上海一帯での水害を軽減するために建築された総延長30kmに及ぶ巨大地下施設です。ここに万が一のことがあれば、上海の治水機能は壊滅的な打撃を受けるでしょう』
『この上海外郭大放水路に時限爆弾を仕掛けたという脅迫がありました』
『もちろん、すぐに作業員を調査に向かわせたのですが――送り込んだ全員が連絡を絶ち、今も帰還していません』
『爆弾かどうかはともかく、上海外郭大放水路に「何か」が潜んでいるのは確かなようです』
『あなた方には、上海外郭大放水路に異常事態を引き起こしている「何か」を排除していただきたい。実際に爆弾があるようならそれの無力化もお願いします』
『上海にバカ騒ぎが起きている中、頼れるのはあなた達――「清海」の皆さんぐらいです。よろしくお願いしますよ』
『改めて、今回の依頼の概要を説明させていただきます』
『今回あなた方に調査していただくのは、我々が管理する「上海外郭大放水路」、その全域となります』
『ご存じとは思いますが、上海外郭大放水路は上海一帯での水害を軽減するために建築された総延長30kmに及ぶ巨大地下施設です。ここに万が一のことがあれば、上海の治水機能は壊滅的な打撃を受けるでしょう』
『この上海外郭大放水路に時限爆弾を仕掛けたという脅迫がありました』
『もちろん、すぐに作業員を調査に向かわせたのですが――送り込んだ全員が連絡を絶ち、今も帰還していません』
『爆弾かどうかはともかく、上海外郭大放水路に「何か」が潜んでいるのは確かなようです』
『あなた方には、上海外郭大放水路に異常事態を引き起こしている「何か」を排除していただきたい。実際に爆弾があるようならそれの無力化もお願いします』
『上海にバカ騒ぎが起きている中、頼れるのはあなた達――「清海」の皆さんぐらいです。よろしくお願いしますよ』
1日目 午前11時09分
二人の青年が、薄暗い地下空間を歩いている。
背格好はどちらも同じぐらいだが、その身にまとった気配は全く違った。
先行する黒いホルターネックを着た青年の気配は硬質で、やや緊張感が感じられる。
そして、後方からついていくもう一人の青年はと言うと、
背格好はどちらも同じぐらいだが、その身にまとった気配は全く違った。
先行する黒いホルターネックを着た青年の気配は硬質で、やや緊張感が感じられる。
そして、後方からついていくもう一人の青年はと言うと、
「うわぁ~~~~」
緊張感のかけらもない様子だった。辺りを見渡し目を輝かせながら、間の抜けた歓声を上げている。
「すげ~っ! さすが上海、地下にこんな神殿みたいなところがあるなんて知らなかった!」
「……あのな、シグリ。観光に来たんじゃないんだぞ」
「あ、ごめん海圻 。すげ~眺めだったからつい」
「……あのな、シグリ。観光に来たんじゃないんだぞ」
「あ、ごめん
後方の青年、シグリと呼ばれた彼の回答に、海圻は小さくため息を吐いた。
確かにこの場所、上海外郭大放水路の調圧水槽の中の光景は、事前知識がなければ感嘆するのも無理はないスケールだ。
何しろ、100メートル四方を優に超える巨大な空間に、20メートルほどの高さの柱が幾つも林立し天井を支えているのである。シグリが「神殿みたい」と言ったのはなるほど、的確な例えだろう。実際、メディアでは「上海地下神殿」などと称されることもあるそうだ。
なので、正真正銘の観光客であるシグリの反応としては間違っているわけではない。
ないのだが。
確かにこの場所、上海外郭大放水路の調圧水槽の中の光景は、事前知識がなければ感嘆するのも無理はないスケールだ。
何しろ、100メートル四方を優に超える巨大な空間に、20メートルほどの高さの柱が幾つも林立し天井を支えているのである。シグリが「神殿みたい」と言ったのはなるほど、的確な例えだろう。実際、メディアでは「上海地下神殿」などと称されることもあるそうだ。
なので、正真正銘の観光客であるシグリの反応としては間違っているわけではない。
ないのだが。
「ここに爆弾が仕掛けられてるって話はしたよな」
「うん。それに、作業員の人たちが帰ってきてない、んだったね」
「ああ。ただ爆弾があるだけならそうはならない……作業員を捕まえるか、あるいは殺してるやつがいる」
「……うん」
「だからそいつの排除に清海 が駆り出された訳だ。一般人のシグリを巻き込む形になったのは済まないが」
「海圻はおれから離れるわけにはいかないから、でしょ。大丈夫、分かってる」
「分かってるならいいが……さて」
「うん。それに、作業員の人たちが帰ってきてない、んだったね」
「ああ。ただ爆弾があるだけならそうはならない……作業員を捕まえるか、あるいは殺してるやつがいる」
「……うん」
「だからそいつの排除に
「海圻はおれから離れるわけにはいかないから、でしょ。大丈夫、分かってる」
「分かってるならいいが……さて」
海圻はもう一度小さく息を吐くと、通信機をオンにした。
「こちら海圻。大放水路東端、調圧水槽に到着した。聞こえるか」
『良く聞こえてるわ、海圻。聞こえる場所も今の所相違なし』
『良く聞こえてるわ、海圻。聞こえる場所も今の所相違なし』
通信機からは清夏オペレーター・華甲 のよく通る声が聞こえる。
「上々の滑り出しだ」
『まったくね。西側から向かった協力者もまだ問題なさそうよ』
「それはいい。爆弾の方は変化があるか」
『変化なしよ……残念ながら。大きな音はブリーフィング時点と変わらず三つ、爆発も解体もまだ全然ね』
「東側、西側、中央付近、だったな。東側から俺たちまでの距離は?」
『ほとんど離れてないわ。多分、その調圧水槽の中のどこかに設置されてるはず』
「分かった。水槽内に俺たちと爆弾以外の音は」
『……聞こえないわね。でも、十分注意して』
「ああ」
『まったくね。西側から向かった協力者もまだ問題なさそうよ』
「それはいい。爆弾の方は変化があるか」
『変化なしよ……残念ながら。大きな音はブリーフィング時点と変わらず三つ、爆発も解体もまだ全然ね』
「東側、西側、中央付近、だったな。東側から俺たちまでの距離は?」
『ほとんど離れてないわ。多分、その調圧水槽の中のどこかに設置されてるはず』
「分かった。水槽内に俺たちと爆弾以外の音は」
『……聞こえないわね。でも、十分注意して』
「ああ」
海圻は短く答え、一瞬で呼吸を整えた。
『四霊随身』。気を巡らせ周囲を探る彼の能力であれば、調圧水槽全体から爆弾を探し当てるなど造作もない。
彼の知覚に水槽内の様子が克明に認識され――
『四霊随身』。気を巡らせ周囲を探る彼の能力であれば、調圧水槽全体から爆弾を探し当てるなど造作もない。
彼の知覚に水槽内の様子が克明に認識され――
「海圻!!」
「ッ!?」
「ッ!?」
背後でナイフを振りかぶる少年を認識したのは、シグリが警告の声を発したのとほぼ同時だった。魔人能力発動の隙を狙われた? 逡巡する暇もない。
振り下ろされるナイフを咄嗟に手で弾く。気の練りが浅い。右手の甲にざくりと切り傷が刻まれる――それでも、まともに斬られるより数百倍はマシだ。
振り下ろされるナイフを咄嗟に手で弾く。気の練りが浅い。右手の甲にざくりと切り傷が刻まれる――それでも、まともに斬られるより数百倍はマシだ。
「うわ、今のガードしちゃう? すごいや。おじさんタツジンなんだね」
声は海圻の正面 から聞こえた。背後の気配はいつの間にか消えている。海圻は無言で、眼前の少年を見やった。
嫌味なぐらい美しい少年だ。
年の頃は十代前半頃。ブロンドの髪が邪魔にならない程度に伸ばされ、白磁のような肌と相まって西洋の絵画を思い起こさせる。目は青空に似た碧眼で、好奇心からかキラキラと輝いて見えた。服装は半そでの真白なシャツに紺の短パン。上海ではおよそ目にしないレベルの丁寧なつくりの品だ。いい所の坊ちゃんでもなければ着ることは叶うまい。
そして、顔の造作と服装の印象から感じる善良さを、刃渡り30センチはあろうかというナイフが台無しにしていた。照明を反射し鈍い色に光るそれが、恐らく海圻を先ほど襲った得物なのだろう。
年の頃は十代前半頃。ブロンドの髪が邪魔にならない程度に伸ばされ、白磁のような肌と相まって西洋の絵画を思い起こさせる。目は青空に似た碧眼で、好奇心からかキラキラと輝いて見えた。服装は半そでの真白なシャツに紺の短パン。上海ではおよそ目にしないレベルの丁寧なつくりの品だ。いい所の坊ちゃんでもなければ着ることは叶うまい。
そして、顔の造作と服装の印象から感じる善良さを、刃渡り30センチはあろうかというナイフが台無しにしていた。照明を反射し鈍い色に光るそれが、恐らく海圻を先ほど襲った得物なのだろう。
「ナイフ使いの白人の少年……『カムパネルラ』か」
「わ。ぼくのこと知ってるの? ありがとうおじさん!」
「おじさんってほど齢を重ねたつもりはないがな。解決屋の坊ちゃんが何の用だ」
「わ。ぼくのこと知ってるの? ありがとうおじさん!」
「おじさんってほど齢を重ねたつもりはないがな。解決屋の坊ちゃんが何の用だ」
はぁ、と息を吐く海圻。手の甲が少し痛む――海圻の魔人能力に自己治癒能力は含まれない。一度怪我を負えば、回復の程度は常人とほぼ同じである。
「お仕事だよ。ここに来る人を見張って、邪魔そうなら殺すの」
「そうかい、そりゃ剣呑だ。俺たちも邪魔かい?」
「うん!」
「元気にお返事大変結構。……シグリ」
「え。あ、っとと、何?」
「そうかい、そりゃ剣呑だ。俺たちも邪魔かい?」
「うん!」
「元気にお返事大変結構。……シグリ」
「え。あ、っとと、何?」
カムパネルラと海圻の会話の最中、突然話を振られたシグリが慌てて答える。
「カムパネルラが俺の後ろを取った時、あいつはいつから居た ?」
「……おれが声を出したのとほとんど同時、だと思う。まばたきをしたらそこにいた、って感じ」
「なるほど。……転移する魔人能力か? 厄介だな」
「ないしょで~す♪」
「直接教えてもらえるとは思ってないさ」
「……おれが声を出したのとほとんど同時、だと思う。まばたきをしたらそこにいた、って感じ」
「なるほど。……転移する魔人能力か? 厄介だな」
「ないしょで~す♪」
「直接教えてもらえるとは思ってないさ」
海圻が息を吸い、吐く。
どん、とコンクリートの床を踏みしめ、全身に気を巡らせる
どん、とコンクリートの床を踏みしめ、全身に気を巡らせる
「身体に直接聞く。……シグリ、悪いがしばらく隠れてろ」
「海圻、で、でも」
「お前にまで気を使ってられないかもしれん、ってことだ」
「……分かった。気をつけて」
「海圻、で、でも」
「お前にまで気を使ってられないかもしれん、ってことだ」
「……分かった。気をつけて」
シグリが頷く。海圻が眼前を睨む。
カムパネルラがにぃ、と笑う。
カムパネルラがにぃ、と笑う。
「行くぞ」
「いらっしゃい♪」
「いらっしゃい♪」
1日目 午前11時51分
(海圻&金剛シグリVSカムパネルラ)
(最後は海圻の一撃がカムパネルラに直撃、カムパネルラが消える)
(爆弾が解除される事を示唆して〆)
(最後は海圻の一撃がカムパネルラに直撃、カムパネルラが消える)
(爆弾が解除される事を示唆して〆)
1日目 午後00時22分
「っ……」
「カムパネルラさん、やられてしまいましたの?」
「カムパネルラさん、やられてしまいましたの?」
白いドレスの女が、表情を歪めた黒いドレスの女に話しかける。
「そうらしい。流石は『四霊随身』と言ったところか。見事なものだよ」
「あらあら。……まあ、いいでしょう。本命はもう少し先です」
「……そうだな」
「あらあら。……まあ、いいでしょう。本命はもう少し先です」
「……そうだな」
二人のドレスの女が話す部屋には、無数のモニターが並んでいる。
その部屋に、二人以外の命はなかった。
猛烈な、血の匂いがした。
その部屋に、二人以外の命はなかった。
猛烈な、血の匂いがした。
1日目 午前10時20分
(清海→トラブルバスター槌歌のブリーフィング)
1日目 午前11時50分
(槌唄塔也と浅村育美が上海外郭大放水路に西の端から侵入し、女陰黄泉と交戦中(浅村育美は槌唄塔也が抱えている))
(なんやかんやあって女陰黄泉がダウン、脱落。槌唄塔也が爆弾を解除することを示唆して〆)
(なんやかんやあって女陰黄泉がダウン、脱落。槌唄塔也が爆弾を解除することを示唆して〆)
1日目 午後00時31分
(中央に仕掛けられた時限爆弾の付近。雷雅忠が爆弾を護衛している)
(蘇絲織から通信。女陰黄泉とカムパネルラが倒され、二組がそれぞれ向かっている旨を伝える)
(二人の会話でいい感じにいちゃつかせる)
(通信が切れ雷雅忠の独白を少し入れたところで突然の爆発音)
(思わずそちらを見た雷雅忠が『金縛り』にあう)
(混乱したまま雷雅忠の意識が途切れ、〆)
(蘇絲織から通信。女陰黄泉とカムパネルラが倒され、二組がそれぞれ向かっている旨を伝える)
(二人の会話でいい感じにいちゃつかせる)
(通信が切れ雷雅忠の独白を少し入れたところで突然の爆発音)
(思わずそちらを見た雷雅忠が『金縛り』にあう)
(混乱したまま雷雅忠の意識が途切れ、〆)
0日目 午後03時30分
『上海の空気はどうだい、万事屋さん』
悪くないよ。お前の声が聞こえなければな、世界二位の探偵さん。
『はは、それは重畳。ところで人探しの手掛かりは掴めたかな』
ある程度は。ピンク髪の女の子なんて目立つ風体、徹底して隠してるんでもなければ目撃してるやつはそりゃいるさ。
『ふむ。続きを』
尋ね人、浅村育美ちゃんは上海を拠点にしてた人身売買グループにさらわれてこっちに来てたらしい。ところが、肝心の人身売買グループは別のトラブルシューターに潰されて、その被害者は概ね家族の所に戻ってる。
『おや。それだと探すまでもなく彼女は帰ってる、ってことかな』
概ねって言ったろ。どうもトラブルシューターがかち込む前に自力で逃げてたみたいだな。だからトラブルシューター経由で帰った子のリストには彼女は載ってない。アタシが今追えたのはそこまでだ。
『なるほど。……正解だ、私の推理とも一致する』
アタシが足で稼いだ情報が推理とトントンなの、認めたくねえ~。
『諦めたまえ。何しろ世界二位だからね。では、追加の推理を披露しよう』
あるのかよ追加。
『あるのさ。まず、浅村育美嬢はそのトラブルシューター、もといトラブルバスター槌歌に保護されている。彼らが仕事の拾い残しを放置するとは考えにくいからね』
まあ、それはそうだ。
『だが、何らかの理由により彼女を手元から離せない のだろう。恐らくそれは件のダイヤに関連する事項のはずだ』
なるほど。確かにそいつは剣呑だ。じゃあ、そのトラブルシューターさんに頼んでその子を渡してもらえばいいのか?
『頼んで渡してくれるなら、ね。恐らく難しいだろう。彼らなりに保護する正当性は持っているはずだ』
はぁん、確かに。……じゃあ、探偵さん。ちょっと未来を推理してくれ。
そのトラブルシューターさんと尋ね人の子、明日はどこに行く?
そのトラブルシューターさんと尋ね人の子、明日はどこに行く?
『……それを聞いてどうする気かな、我が親友 』
決まってるだろ。
最高のタイミングで横合いから思いっきり殴りつける。
最高のタイミングで横合いから思いっきり殴りつける。
『正気かい? いや、答えなくていい。君はいつも通りか』
分かってんじゃねえか、探偵さん。
『はぁ、分かった。……上海外郭大放水路。名前ぐらいは、知っているかな?』
1日目 午後00時50分
(中央部で白髪黒羽、海圻、金剛シグリ、槌唄塔也(+浅村育美)による乱戦)
(途中で雷雅忠が蘇生、カムパネルラが再登場してさらに乱戦)
(いい感じになれ)
(最後は時限爆弾が爆発して〆。爆発落ちなんてサイテー!)
(途中で雷雅忠が蘇生、カムパネルラが再登場してさらに乱戦)
(いい感じになれ)
(最後は時限爆弾が爆発して〆。爆発落ちなんてサイテー!)
1日目 午後02時00分
「な……」
白いドレスの女、蘇絲織 は、眼前に並ぶいくつものモニターに映った映像を見ながらワナワナと震えていた。
もっとも、それが正確に映像と言えるかは怪しい。ほとんどのモニターに映る映像は土煙に覆われ、その内情をうかがい知ることはできなかったのだから。
上海外郭大放水路・中央操作室のモニター群は、今やほぼ機能を停止していると言ってよかった。
もっとも、それが正確に映像と言えるかは怪しい。ほとんどのモニターに映る映像は土煙に覆われ、その内情をうかがい知ることはできなかったのだから。
上海外郭大放水路・中央操作室のモニター群は、今やほぼ機能を停止していると言ってよかった。
「どういうことですの!? あの爆弾が爆発するはずはない のに!」
「一杯食わされた……いや」
「一杯食わされた……いや」
背後からの声にはっと振り向く蘇絲織。その胸元に銃口が突き付けられる。
「一杯食わせた、が正確か。黒幕 気取りごくろうさま、スージー」
「ジョバンニ、貴女……!!」
「ジョバンニ、貴女……!!」
ジョバンニと呼ばれた黒いドレスの女は、ニコリともせず続ける。
「爆弾の仕入れを俺たちに任せたのが失敗だったな。本物と見まごうばかりの偽物時限爆弾、メイドもお前も触れ込みをまんまと信じてくれた」
「……!!」
「本物を見抜く目もないのにな。結果、こうやっていい感じ になる」
「女陰黄泉は……」
「ああ、あいつな。どっから拾ってきたんだか知らないが、恐ろしい奴だったよ。だから念入りに本物だって言い聞かせておいた」
「…………」
「瓦礫の下ならメイドが蘇ってもすぐにはどうにもならない。後はお前を殺して一件落着、だ」
「……!!」
「本物を見抜く目もないのにな。結果、こうやって
「女陰黄泉は……」
「ああ、あいつな。どっから拾ってきたんだか知らないが、恐ろしい奴だったよ。だから念入りに本物だって言い聞かせておいた」
「…………」
「瓦礫の下ならメイドが蘇ってもすぐにはどうにもならない。後はお前を殺して一件落着、だ」
ギリ、と音が鳴りそうな強さで歯を噛みしめる蘇絲織。
「……貴女は」
「ん?」
「貴女方はこれで、何を得ますの?」
「あぁ、危ない」
「……?」
「忘れる所だった。カムパネルラ、火事場泥棒は済ませたか? ……あぁ、それでいい。娘の方は? 槌唄と一緒か。じゃあ男だけ持っていけ 」
「は?」
「ああ。じゃ、また後で。……とまあ、こういう訳だ」
「貴女、まさか」
「ん?」
「貴女方はこれで、何を得ますの?」
「あぁ、危ない」
「……?」
「忘れる所だった。カムパネルラ、火事場泥棒は済ませたか? ……あぁ、それでいい。娘の方は? 槌唄と一緒か。じゃあ男だけ
「は?」
「ああ。じゃ、また後で。……とまあ、こういう訳だ」
「貴女、まさか」
蘇絲織は、信じられない物を見るような眼でジョバンニを見た。
「火事場泥棒をする火事場を作るために私達に甘言を撒いた んですの」
「あぁ」
「そんなことの、ために?」
「お前だって似たようなものじゃないか。何が違う?」
「わ、私は……私に相応しい宝を手に入れる、道程として」
「宝、か」
「あぁ」
「そんなことの、ために?」
「お前だって似たようなものじゃないか。何が違う?」
「わ、私は……私に相応しい宝を手に入れる、道程として」
「宝、か」
一拍置いて、ジョバンニが言う。
「じゃあ、同じだな」
「貴女っ……!」
「貴女っ……!」
銃声。
蘇絲織が吹き飛ばされるように倒れる。
蘇絲織が吹き飛ばされるように倒れる。
「悪い、手元が狂っちまった。そのままだと苦しんで死ぬな」
「っ……かはっ、あ……」
「お詫びと言っちゃなんだが、一言だけ恨み言を聞いてやる」
「………………」
「っ……かはっ、あ……」
「お詫びと言っちゃなんだが、一言だけ恨み言を聞いてやる」
「………………」
少しだけ間をおいて、蘇絲織が吐きだすように言う。
「雅忠と、二人で。地獄で、お待ちしておりますわ」
「……そうか」
「……そうか」
ジョバンニが、少しだけ表情を変えた。眉を吊り上げたその顔は、驚いているようにも見えた。
すぐにその表情は消え、答える。
すぐにその表情は消え、答える。
「悪いな。お前らのいる地獄 に行く予定はない」
「……え?」
「……え?」
幾つもの銃声。
やがて、静寂。
やがて、静寂。
2日目 午後00時00分
しゅー、と、気の抜ける音が暗がりに響く。
俺の手の中のスプレー缶が塗料噴出 をしている証となるその音が、何に邪魔されることもなく路地裏の暗闇に満ちていく。
俺の手の中のスプレー缶が
今日はカムパネルラの奴はいない。あいつ曰く、「すっごく仕事したしきゅーけー」だそうだが、それだけではないことを俺は知っている。
上海外郭大放水路でのテロのニュースは、ニュースの多いこの街でもそれなりに大きな枠を使って報じられた。真ん中辺りの設備が崩落し、復旧に莫大な費用と時間が云々。犯人の一味はその場で射殺されたが実行犯の一部が未だに逃走しどうこう。
それだけではないことを、俺は知っている。
日本から来た解決屋の一種、白髪黒羽はトラブルバスター槌歌に強引に居候を決め込んだ。なんでも、彼女の探していた少女を槌歌が保護しているらしい。そのまま一緒に帰ればよさそうだが、何か事情があるのだろうか。
蘇絲織と雷雅忠、奇矯な女と妙なメイドのコンビは死んだ。蘇絲織は大放水路の中央操作室で、雷雅忠は同じく放水路の崩れた瓦礫の中から、それぞれ死体で見つかった。噂では、大放水路に爆弾を仕掛けたのはこいつらだという。
清海はカムパネルラの奴を追っている。あいつらが守るべき対象をカムパネルラが奪ったのだともっぱらの噂だ。首領のガングートはひどくキレているらしく、カムパネルラに賞金がかかるのも時間の問題だろう。
良く分からん自称キョンシーの女は、今日もその辺で目撃されている。
祭りが始まって丸一日しか経っていない。
だというのに、この街は恐ろしい勢いで物語を紡いでいく。
だというのに、この街は恐ろしい勢いで物語を紡いでいく。
「……はぁ」
溜息一つ。スプレーの噴出を止め、数歩離れて俺の作品を見る。
いつもと変わらぬ出来栄えだった。
いつもと変わらない……クソ作品だった。
いつもと変わらぬ出来栄えだった。
いつもと変わらない……クソ作品だった。
物語は数多紡がれているというのに、俺自身はまだ、一歩も進めないままだ。
恐らく、そう遠くないうちに、あのクソ女――ジョバンニは、己の願いを叶えるのだろう。
その時、俺はどうするか。
恐らく、そう遠くないうちに、あのクソ女――ジョバンニは、己の願いを叶えるのだろう。
その時、俺はどうするか。
「……俺は、どうしたいんだ?」
空しい自問に、返事はなかった。
(破夜『感電/ドーナツホール』了)
(次の夜へ)
(次の夜へ)