ダンゲロスSS上海
Persona Alice』
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dangerousss_shanghai
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3日目 午前10時00分
「足りないねぇ、全然足りないよぉ」
「……そうかよ。まぁ、ダメ元ではあったし、いいさ」
「……そうかよ。まぁ、ダメ元ではあったし、いいさ」
暗がりの中、二人の人物の話し声が響いている。
一つは老婆のようなしわがれた声。
もう一つは、やや低音で強い意志を感じさせる、若い女性の声。
一つは老婆のようなしわがれた声。
もう一つは、やや低音で強い意志を感じさせる、若い女性の声。
「ダイヤだよぉ。清王朝のダイヤ完品、割引もセールもないよぉ」
「分かってるさ。ちゃんと払ってやる。……払ったら、叶うんだな?」
「天平 の取引に二言はないよぉ。代価と願い、釣り合う なら叶う よぉ」
「分かった。ああ、ちなみにだが」
「分かってるさ。ちゃんと払ってやる。……払ったら、叶うんだな?」
「
「分かった。ああ、ちなみにだが」
しばしの沈黙の後、女性の声が続ける。
「コイツ とはどの程度の願いなら釣り合う?」
「そうだねぇ……」
「そうだねぇ……」
老婆の声はしばし逡巡するように黙った後、ある答えを告げる。
それを聞いた女性の声は、即答した。
それを聞いた女性の声は、即答した。
「十分だ、老天平 。支払おう 」
「へぇい。毎度ありぃ」
「へぇい。毎度ありぃ」
満足げに笑う老婆の声。
ぎぃぎぃと床板がきしむ音は、女性の声の主が去る音か。
ぎぃぎぃと床板がきしむ音は、女性の声の主が去る音か。
扉が開き、少しだけ外界の光が差し込む。
差し込んだ光が、簀巻きにされた一人の人間のような物体が床に転がっているのを照らした。
扉は、すぐに閉じた。
差し込んだ光が、簀巻きにされた一人の人間のような物体が床に転がっているのを照らした。
扉は、すぐに閉じた。
3日目 午後1時30分
神をも恐れぬ上海の奴らも、神頼みをすることはある。
俺ことカズマもその一人だった。いや、筆頭と言ってもいいかもしれない。
だからこそ、このボロい礼拝堂で神父の真似事なんかもやっているのだ。
俺ことカズマもその一人だった。いや、筆頭と言ってもいいかもしれない。
だからこそ、このボロい礼拝堂で神父の真似事なんかもやっているのだ。
――打算がなかったと言えば噓になる。上海で余所者が街に溶け込むための手管の一つとして、現地の小さな信仰に紛れ込むのは呆れるほど有効であったのは事実だ。
とはいえ、紛れるだけなら他に手は幾らでもあった訳で。4年前、この礼拝堂に住んでいた老神父がぽっくり逝った時に後継者を買って出て受け入れられる程度に、俺がこの礼拝堂に入り浸っていたのは確かで。
つまるところ、打算と信仰、どちらが言い訳かと言えば打算の方なのだろう。
とはいえ、紛れるだけなら他に手は幾らでもあった訳で。4年前、この礼拝堂に住んでいた老神父がぽっくり逝った時に後継者を買って出て受け入れられる程度に、俺がこの礼拝堂に入り浸っていたのは確かで。
つまるところ、打算と信仰、どちらが言い訳かと言えば打算の方なのだろう。
余談だが、俺の司祭平服 は死ぬほど似合わない。
カムパネルラ とジョバンニ には爆笑され続けて久しい。畜生がよ。
さて、長い前置きはさておき。この日、俺は数日ぶりに礼拝堂の掃除をしていた。
めったに誰も訪れないとはいえ、完全に放置しては神父(もどき)の沽券にかかわる。箒や雑巾を使って念入りに、積もった埃を落としていく。
テーブルに椅子、説教台に聖母 像、狭いわりには物品が妙に多い礼拝堂内を念入りに掃除し終え、一休みしていたその時だった。
めったに誰も訪れないとはいえ、完全に放置しては神父(もどき)の沽券にかかわる。箒や雑巾を使って念入りに、積もった埃を落としていく。
テーブルに椅子、説教台に
ノックの音がした。
俺は泥のように沈んでいた意識を無理やり他所行きに調整 し、音がした方――礼拝堂の唯一の入り口であるドアに視線を向ける。
俺は泥のように沈んでいた意識を無理やり他所行きに
「どうぞ、開いていますよ」
「し、失礼するアル……」
「し、失礼するアル……」
キィィと耳障りな音を立ててドアが開く。
そこにいたのは、俺にとって死ぬほど見慣れた顔だった。
そこにいたのは、俺にとって死ぬほど見慣れた顔だった。
「なんだ、ジョバンニじゃねえか。どうし」
た、と続けそうになったところで違和感が警鐘を鳴らす。
ジョバンニ がここに来ることはめったにない。
仮にあったとしても、殊勝にノックなんてするはずがない。
何より、こんな自信無さげなアル喋り で話す女では絶対に、ない。
仮にあったとしても、殊勝にノックなんてするはずがない。
何より、こんな自信無さげな
「……誰だ、あんた」
「ふふ、『誰』アルか。神父さんには私がそう見えるアルね」
「どういう……いや、それはいい。何の用です?」
「ええと……」
「ふふ、『誰』アルか。神父さんには私がそう見えるアルね」
「どういう……いや、それはいい。何の用です?」
「ええと……」
ジョバンニに見える誰かは、少し言いにくそうに口ごもった後、こう切り出した。
「懺悔室を、お貸しいただけるアルか?」
4日目 午後0時00分
「うぇ~、なんでこんな所に呼び出すのさぁ~」
貧民街の片隅に建っている廃屋のごとき礼拝堂の前で、藍色の髪の少女、双喜は呻いた。
上海市街の各地区を欲望の密度に基づいて順番をつけていった場合、この礼拝堂近辺は最低ランクにあたるだろう。
なぜかと言えば答えは単純、そもそも人がいないのだ。人のないところに欲望は立たぬ。不法居住者すら近寄らないこの礼拝堂周辺は、上海の空白地帯と言っても過言ではないかもしれない。
上海市街の各地区を欲望の密度に基づいて順番をつけていった場合、この礼拝堂近辺は最低ランクにあたるだろう。
なぜかと言えば答えは単純、そもそも人がいないのだ。人のないところに欲望は立たぬ。不法居住者すら近寄らないこの礼拝堂周辺は、上海の空白地帯と言っても過言ではないかもしれない。
「業突く張りの皆さーん……元気ですかー、生きた宝箱の双喜ちゃんですよー……」
笛吹けど欲望踊らず。欲望をエネルギーとする双喜にとって、居づらいことこの上ない。おまけに、ここに来た目的である待ち人はと言えば。
「いないし! どういうことなのかなもう!!」
キレていいと思う。キレてた。
「待ち合わせ時間ピッタリに来たのに!! なんなのかなもう!! もーやだ私上海市街 帰る!!」
「ごめ~ん、待った~?」
「だいぶね!! ……って、おや?」
「ごめ~ん、待った~?」
「だいぶね!! ……って、おや?」
突然の声にきょろきょろと辺りを見渡す双喜。すぐに、視線が一点に注がれる。
「やっほ~、どうもどうも。カムパネルラだよ。きみが双喜ちゃん?」
「あ、うん。双喜です、けど……あれ~?」
「あ、うん。双喜です、けど……あれ~?」
カムパネルラをじろじろと眺める双喜。やがて、きょとんと首を傾げる。
「カムパネルラくん、ほんとにそこにいる ?」
「――え」
「――え」
カムパネルラの表情がこわばった。
「どういうこと? ぼくは見ての通りここにいるけど」
「いやー、変なこと言ってごめんだけど、なんか他の人と欲望の感じがちゃうんだよね……何だろ、空っぽなのとも違うし……」
「…………」
「いやー、変なこと言ってごめんだけど、なんか他の人と欲望の感じがちゃうんだよね……何だろ、空っぽなのとも違うし……」
「…………」
しばしの沈黙。先に口を開いたのはカムパネルラだった。
「そ、そんなことより双喜ちゃん、呼び出した件だけど」
「あ、ごめん。何だっけ、護衛?だっけ?正直私に頼むことじゃないと思うんだけど」
「それはまあ、そうかも。でも、双喜ちゃん強い欲望を持ってる人が好きなんでしょ?」
「うん、それはそう」
「じゃあ、今ぼく達を狙ってる人とはきっと戦いたいと思うんだよね」
「狙ってる人~? えー、どんな人かな。並大抵の欲望持ちさんじゃ満足しないぜ」
「デスアクメマン」
「……你說什麼 ?」
「あ、ごめん。何だっけ、護衛?だっけ?正直私に頼むことじゃないと思うんだけど」
「それはまあ、そうかも。でも、双喜ちゃん強い欲望を持ってる人が好きなんでしょ?」
「うん、それはそう」
「じゃあ、今ぼく達を狙ってる人とはきっと戦いたいと思うんだよね」
「狙ってる人~? えー、どんな人かな。並大抵の欲望持ちさんじゃ満足しないぜ」
「デスアクメマン」
「……
謎の文字列に真顔になった双喜に、カムパネルラは躊躇なく続けた。
「だから、デスアクメマン。なんか、すっごい強くて、すっごいエッチなんだって」
「マジで言ってる?」
「マジマジ。清海ってところがぼくたちを追ってるんだけど、そこから依頼を受けたらしいんだ」
「そっか~」
「そだよ~」
「帰る!!!」
「何で!?!?」
「何でもなにもないよ!! なんで受けると思ってる訳!?!?」
「いや、強い欲望って言うからストライクかなって……」
「完膚なきまでに大外れですけど!? 私そういう感じの欲望はちょっと、こう、口に合わないというか!!」
「食わず嫌い~?」
「ちょっと煽るみたいなのやめろ!!」
「マジで言ってる?」
「マジマジ。清海ってところがぼくたちを追ってるんだけど、そこから依頼を受けたらしいんだ」
「そっか~」
「そだよ~」
「帰る!!!」
「何で!?!?」
「何でもなにもないよ!! なんで受けると思ってる訳!?!?」
「いや、強い欲望って言うからストライクかなって……」
「完膚なきまでに大外れですけど!? 私そういう感じの欲望はちょっと、こう、口に合わないというか!!」
「食わず嫌い~?」
「ちょっと煽るみたいなのやめろ!!」
ぎゃあぎゃあと大変やかましい。
放っておくと無限に続きそうなこの会話はしかし、唐突に打ち切られることになる。
放っておくと無限に続きそうなこの会話はしかし、唐突に打ち切られることになる。
「……あ」
「あ~」
「あ~」
二人同時にピタリと動きを止め、ある一点に視線を向ける。
彼らが見つめる空中には、黒い何かがいた。
どこからかこちらに目がけて飛んで、いや、跳んできているそれは何か。
鳥か?
飛行機か?
彼らが見つめる空中には、黒い何かがいた。
どこからかこちらに目がけて飛んで、いや、跳んできているそれは何か。
鳥か?
飛行機か?
「デスアクメマンってさぁ、黒い?」
「黒いね~」
「黒いね~」
デスアクメマンでした。
二人が飛びのいた直後、何かが地面に着弾、土ぼこりが周囲を満たす。
そして視界が開けると、丸々としたクレーターの中央に仁王立ちする人影が一つ。
全身を包む漆黒のスーツ、額に刻印された『死』一文字。
まごうことなくデスアクメマンであった。
二人が飛びのいた直後、何かが地面に着弾、土ぼこりが周囲を満たす。
そして視界が開けると、丸々としたクレーターの中央に仁王立ちする人影が一つ。
全身を包む漆黒のスーツ、額に刻印された『死』一文字。
まごうことなくデスアクメマンであった。
4日目 午後0時23分
(デスアクメマンVSカムパネルラ&双喜)
(デスアクメマンの魔人能力は接触した対象に対して作用するため、双喜の白兵戦に対してカウンター的に作用する。初撃に合わせられ双喜は苦悶)
(その隙にカムパネルラがナイフで攻撃するものの、単純な身体能力も高いデスアクメマンには太刀打ちできない。その場をスナイパーライフルのスコープで監視していたジョバンニが狙撃し、ようやく有効打を与える)
(しかしデスアクメマンは止まらず、カムパネルラを掴む。即座に姿を消すカムパネルラだが、快感を伝達されることは止まらず、精通。しばし放心状態となり戦闘不能。ジョバンニにも多少伝わるが距離があるため回復はできた)
(狙撃の弾道からジョバンニのおおよその位置を掴んだデスアクメマンが跳躍。一気に距離を詰める。狙撃が数発当たるがデスアクメマンは止まらない)
(ジョバンニの狙撃ポイントに着地し、すぐさまジョバンニを狙うデスアクメマンに対して何者かが大声を上げる)
(それは服を脱いだ全裸の双喜であった。デスアクメマンは己の欲望を刺激されターゲット変更。双喜にとびかかった瞬間、デスアクメマンの頭上を誰かの影がかすめる)
(ジョバンニの真上に実体化されたカムパネルラであった。そのまま落下の勢いに任せ大ぶりのナイフで一閃、デスアクメマンの首を刈る)
(デスアクメマンの魔人能力は接触した対象に対して作用するため、双喜の白兵戦に対してカウンター的に作用する。初撃に合わせられ双喜は苦悶)
(その隙にカムパネルラがナイフで攻撃するものの、単純な身体能力も高いデスアクメマンには太刀打ちできない。その場をスナイパーライフルのスコープで監視していたジョバンニが狙撃し、ようやく有効打を与える)
(しかしデスアクメマンは止まらず、カムパネルラを掴む。即座に姿を消すカムパネルラだが、快感を伝達されることは止まらず、精通。しばし放心状態となり戦闘不能。ジョバンニにも多少伝わるが距離があるため回復はできた)
(狙撃の弾道からジョバンニのおおよその位置を掴んだデスアクメマンが跳躍。一気に距離を詰める。狙撃が数発当たるがデスアクメマンは止まらない)
(ジョバンニの狙撃ポイントに着地し、すぐさまジョバンニを狙うデスアクメマンに対して何者かが大声を上げる)
(それは服を脱いだ全裸の双喜であった。デスアクメマンは己の欲望を刺激されターゲット変更。双喜にとびかかった瞬間、デスアクメマンの頭上を誰かの影がかすめる)
(ジョバンニの真上に実体化されたカムパネルラであった。そのまま落下の勢いに任せ大ぶりのナイフで一閃、デスアクメマンの首を刈る)
4日目 午後1時02分
(郭 亀岩とタオマオも加わりさらに熾烈なバトルが発生する予定でした)
(見たかった人は作者に石を投げよう!)
(礼拝堂は炎上した)
(見たかった人は作者に石を投げよう!)
(礼拝堂は炎上した)
6日目 午後1時30分
ノックの音はしなかった。
カムパネルラがそこにいた。
カムパネルラがそこにいた。
「どうした、クソガキ。懺悔室ならもうねえぞ」
「いらないよ。懺悔じゃないからね」
「じゃ、なんだ」
「そうだなぁ……今風に言うなら、読者への挑戦状ってやつ」
「お前、それだいぶ前の流行りだぞ。全然今風じゃねえ」
「へへっ。まぁ、別に今風じゃなくてもいいんだよ」
「いらないよ。懺悔じゃないからね」
「じゃ、なんだ」
「そうだなぁ……今風に言うなら、読者への挑戦状ってやつ」
「お前、それだいぶ前の流行りだぞ。全然今風じゃねえ」
「へへっ。まぁ、別に今風じゃなくてもいいんだよ」
カムパネルラは笑みを浮かべて、続けた。
「挑戦状なのは違いないから。ね、読者気取りのカズマ」
「…………」
「…………」
黙った俺を見て、呼称を受け入れたと思ったか。カムパネルラはさらに続ける。
「ぼく達、正確にはジョバンニは、ある一つの願いを叶えようとしてる」
「お前は違うのか?」
「ぼくはお手伝い。ところでカズマ、願いの内容、ジョバンニから聞いたことある?」
「ざっくりとはな。『過去のある『あやまち』の瞬間に戻り、もう一度やり直す』だったか」
「うん、正解――いや、部分正解」
「部分……?」
「そう。なんだい『ある『あやまち』』って。いくらでも言い訳が効くようになってるじゃないか」
「それは……」
「お前は違うのか?」
「ぼくはお手伝い。ところでカズマ、願いの内容、ジョバンニから聞いたことある?」
「ざっくりとはな。『過去のある『あやまち』の瞬間に戻り、もう一度やり直す』だったか」
「うん、正解――いや、部分正解」
「部分……?」
「そう。なんだい『ある『あやまち』』って。いくらでも言い訳が効くようになってるじゃないか」
「それは……」
確かにそうだ。具体的にどんな『あやまち』なのか、あのクソ女は一切口を割っていない。
俺はてっきり、カムパネルラがその成長を止めた10年前の出来事をやりなおすのだと思っていた。そして、カムパネルラと共にもう一度生き直すのだと。
あるいは、もっと前なのだろうか。例えば15年前、あいつとカムパネルラが出会った時の出来事をやりなおし……どうなるかは分からないが、お互いうまく生きることにする、だとか。
俺はてっきり、カムパネルラがその成長を止めた10年前の出来事をやりなおすのだと思っていた。そして、カムパネルラと共にもう一度生き直すのだと。
あるいは、もっと前なのだろうか。例えば15年前、あいつとカムパネルラが出会った時の出来事をやりなおし……どうなるかは分からないが、お互いうまく生きることにする、だとか。
「あは」
それを聞いて、カムパネルラは嬉しそうに笑った。
「カズマは優しいね。でも、どっちも不正解」
「……正解は、なんだ」
「……正解は、なんだ」
嫌な予感がする。
ろくでもない答えが返ってきて、反吐が出そうになる予感がする。
聞いたら、きっと後悔する。
ろくでもない答えが返ってきて、反吐が出そうになる予感がする。
聞いたら、きっと後悔する。
「ジョバンニの『あやまち』はね、カズマ」
だが、俺が止めろと言う前に、カムパネルラはそれを口にした。
「『ぼくを生み出した事』、つまり『魔人能力でもう一人のカムパネルラを生み出した事』」
「さらに言うなら、『魔人能力を使って自分だけ生き残ったこと』、なんだ」
「さらに言うなら、『魔人能力を使って自分だけ生き残ったこと』、なんだ」
…………。
は?
は?
「それをやり直す――つまり、ジョバンニの台詞はこうだ。『カムパネルラ、僕たち――』」
「『一緒に行こうねえ』、だと?」
「うん」
「10年前に犬死にしたカムパネルラに付き合って、10年前の地獄に落ちる、のか?」
「正解っ」
「ふざけるのも大概にしろ!!」
「『一緒に行こうねえ』、だと?」
「うん」
「10年前に犬死にしたカムパネルラに付き合って、10年前の地獄に落ちる、のか?」
「正解っ」
「ふざけるのも大概にしろ!!」
声を荒げた俺に、カムパネルラは少し悲しそうな顔をした。
「やっぱりカズマは優しいなあ。でも、ふざけてない。ジョバンニは大真面目にこの願いをかなえようとしてる」
「真面目なら何やってもいいと思ってるのか!?」
「ジョバンニは、そうだね」
「バっ……」
「だからね、カズマ。これは『挑戦状』なのさ」
「真面目なら何やってもいいと思ってるのか!?」
「ジョバンニは、そうだね」
「バっ……」
「だからね、カズマ。これは『挑戦状』なのさ」
カムパネルラは、いつものような明るいお調子者の顔に戻って、こう言った。
「この願いを叶えたくないなら、止めてみなよ。読者みたいに知った風な顔で論評してないで、ぼくたちと同じ土俵に立って、止めてみたらいい」
「――!!」
「たぶん、これが最後のチャンスだからね。――確かに、伝えたよ」
「待、待て――おい! 待てよ!!」
「――!!」
「たぶん、これが最後のチャンスだからね。――確かに、伝えたよ」
「待、待て――おい! 待てよ!!」
待たなかった。カムパネルラは、銀河鉄道の夜本編のように、跡形もなくどこかへ消えた。
「ふざ……ふざけるな!!ふざけるなよ!!おい!!!」
俺の声はどこにも届かない。
いや――本当に、そうか?
いや――本当に、そうか?
(窮夜『サンタマリア/Persona Alice』了)
(夜は、深まる)
(夜は、深まる)