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ダンゲロスSS上海
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ダンゲロスSS上海

プロローグー万魔の都市、かく咲き誇り

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dangerousss_shanghai

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「ここが上海…!初めての海外だーっ!」

 見慣れた景色と似ていながらも全く違う、異国情緒に溢れた街並み。
 そしてこの上海創設百周年を祝う祭り目前の準備で、活気付いた人々。観光に来るにはうってつけの時期だった。

「いやあ幸運に恵まれたなあ、まさか偶然こんなおっきいお祭りに旅行計画が被るなんて!榛名もくればよかったのになあ」

 全てが新鮮味に溢れた光景に胸を躍らせながら、おれ…金剛シグリは観光ブック片手に魔都上海の街並みを歩む。
 ここは上海、各国から魔人が集まる都市。おれは魔人じゃないけど、決して排他的な印象はない。

「お祭りってことは屋台とかも出るのかな?楽しみ――うわっ!」

 突然横を通り過ぎた人物が、疾風の如く走り去る。お祭りの事前準備もあるし、あわただしいのも詮無いことだ。

「あれ、手に何か…」

 ふと違和感を感じて左手に目をやる。そこには――何やら透明な結晶が握らされていた。


 ***


 ところ・亜空孔『調停者の拠点(タイムルーラーベース)

 不意に計器がけたたましい音を上げた。第一級アラート、極大な時空の乱れ…いつぞやの『何か』の引き起こした時間干渉と同規模のものだ。
 そしてこの乱れの傾向は、人類存続というマスターの願いを妨げるものを示している。

時の調停者(タイムルーラー)Zr、スタンバイ完了。いつでも出られる」

 オブザーバーたる俺の出番だ。修正すべき個所を探し出し報告する、そのために時間への侵入を行う。

「オッケー…あれ、干渉不可…?こんなこと始めてだ」
「この前の『何か』の反応もある…けど、俺たちでは干渉できないようフィルターがかけられているな」
「それだけじゃねえぜ。異常地点から、オイラと同質の反応がある」

 俺の後ろから隊長、ダイ・アーモンドが告げる。ダイと同質の反応ということは、そこにジュエル星人がいる…いや、それどころの騒ぎではない。

「同一存在であることを計器は示しているな。ダイ隊長、有り得るか」
「おかしい、としか言えねえ。それに『何か』が盛大にイベントを巻き起こすにはまだまだ時間的猶予もあるハズだし何よりオイラと同じ反応が2つある」

 微弱なダイと巨大なダイ。その二つが、魔都上海と呼ばれる場所に存在している。

「この時代のオイラはココにはいないはずだ。多分これは…『何か』の仕業じゃねえ」

 俺たちが干渉できない範囲はドーム状になっており、上海を包んでいる。
 そしてその上海を覆うように、何やら巨大な影が蠢いていた。それは肉眼ではとらえられない、小さな揺らぎだ。

「『何か』はその力を使って上海を外界から隔離している。その中の様子はオイラ達でも少ししかわからねえ。
 ケドやつは曲がりなりにも願いを叶える存在だ。今更嘘をつくとは思えねえ…
 つまり、奴にとって…ここは隔離する必要がある場所であったっつうことだ」
「第一級のアラートである以上ここは人類存続を脅かす時間干渉が行われたということになる。『何か』にとってでかい大会を開催するために人類存続は必要不可欠なパーツだ。
 …この中で起こっていることこそ、人類存続を脅かす事象なんじゃないか」

 だが俺たちは介入できない。どうにかしてその中の事を中の人間に解決してもらわなければいけない。

「…干渉手段が見つかるまでは、眺めることしかできないか」




 ―清王朝のダイヤモンド。それはこの上海において絶大な力を誇るチャイナマフィアが抱える至宝だ。
 そんな御大層なものが盗まれちまったらしい。

『魔幇からの依頼…私たちは解決屋とは違って彼らから頼られていないかと思ってたからびっくりしたわ』
「俺もびっくりしたよ。まあ、清海(ウチ)クラスの手でも借りたいくらいにはでかい問題だもんな」
『私の力では貴方の近くにダイヤモンドがあるかないかくらいしか分からないわ。
 探索はお願いするわね』

 かといってあてもなく探すのも難しい。故に今は街を歩く…その前の腹ごしらえだ。
 探知であれば俺の能力が適任だ。そのため、今回『清海』からダイヤ捜索の人員として選ばれた。
 勿論、ダイヤを探す目的は他にもある。

『それ以上に…この街の未来が見えないっていうのが怖いわね』

 『清海』に所属している未来予測の能力者が、この上海の未来を見た。だが、その光景は何かに覆われたように見えなかったらしい。
 それがこの街が無くなることを示すのか、それとも別の事なのかは分からないが…その中心にあるのは、現在進行形で盗まれている清王朝のダイヤモンドであったそうだ。

『この街で何か企んでる輩がいるかもしれないから、細心の注意を払ってね』
「了解、何か見つかったら連絡させてもらう。一旦切るぞ。
 …御馳走様、釣りはいらないよ」
「あいよ~兄ちゃん気前がいいねえ」

 腹ごなしはすんだ。ダイヤ探しに取り掛かるとしよう。
 魔人能力『四霊随身』。気を迸らせ、周囲の探査を行う。俺は一度だけ、清王朝のダイヤモンドとやらを見たことがある。
 もっとも、あれはセレモニー的な形で見せられた贋作かもしれない。だが、アレの纏う異質な気は俺の身体が覚えている。盗まれたものも贋作であれば万々歳なんだがな。

「――掌握」

 あの時感じた気と同質のものが、俺の目前数メートル先にある。人込みをかき分けながら、その対象のもとへ気取られぬように近づいて――

「?」
「?!」

 肩を叩こうとしたところで、ダイヤモンドの気を放っている人物が俺へ振り返った。
 そいつは、如何にも観光客ですと言いたげなガイドブックを片手に街を散策する日本人だった。

「えっと…何かご用でしょうか…?」

 完璧に気配は殺した。気も纏っていなかった。ほぼ空気と一体化していたクラスの俺に気付いたこいつは一体――
 そんな思考は一瞬で切り捨て、もう一度気による探査を行う。こいつの持ち物の中に、ダイヤモンドらしきものはない…だが、この日本人自体が、微小ではあるがダイヤモンドの気を放っている。

「ああいや…君、何か誰かから受け取ったりしてないかい?ちょっと大事なものが盗まれてしまってね、今皆で捜索に当たっているんだ」

 嘘をつけばそいつの気は変化する。俺より気配を隠すのが上手い能力者であれば、黙くらかせるだろう。その時は振り出しに戻ることになるが。

「あ!なんか透明な結晶もらった気がします!えっと…あれ?」

 初手ビンゴだ。
 ゴソゴソとポケットやカバンの中をせわしなく探しだす。だが見当たらないらしく大げさに首をかしげていた。

「おかしいな、入れてたはずなんだけど…」
「そうか、引き留めてしまってすまなかった。それでは――」
「あ!ねえ君、ここのお勧めとか知ってる?おれ、この街に来たばっかりでお祭り騒ぎだし人に聞く勇気があんまり起きなくて…」

 えへへと恥ずかし気に頭をかいている。少なくともこんな野郎に聞くだけの勇気はあるのにな。

「君、同年代っぽいし話しかけてくれたからチャンスだーって思っちゃって。あ、気分悪くさせたらゴメンね…!昔から距離感おかしいってたまに言われるから…」
「構わないが…」
「おれ、シグリっていうんだ!君は?」

 すっと差し伸べられる手。そう簡単に個人情報を知らん奴にべらべらしゃべるんじゃない…という気持ちは一旦飲み込んだ。
 シグリが名乗ったのだし、こちらも名乗るのは礼儀だろう。

「海圻だ。よろしく、シグリ。あんまり見ず知らずの人間に名前を明かさないほうがいいぞ」
「そ、そうだね…でも、海圻はいい人だから大丈夫!」

 シグリの言葉は何処までも裏表がない。こういう街には慣れてないんだろうな…
 俺とシグリの周囲には、何やら殺気だった奴らがいる。自分がそれを一身に受けているとも気付かないとは、いい暮らしをしてきたのだろう。そんな奴を、この騒動に巻き込みたくはない。
 シグリは、俺たちが守るべき一般市民そのものだ。

「シグリ、ちょっと移動する。しっかりつかまれ」
「うん…掴まるって――」

 言い終えるより先に俺はシグリを抱え、一息で建物の屋上まで跳びあがった。

「うわぁっ!海圻、魔人だったの?!」
「まあな。ひとまず黙ってないと舌をかむぞ」
『海圻、聞こえる?』
華甲(ファージャ)さん、ダイヤモンドと思わしき人物を保護した。
 感じる気は微かだから欠片程度かもしれないが、手掛かりにはなるはずだ」
『ダイヤモンドと思わしきね…清王朝のダイヤモンドはかなり古い代物だから、変な力を有していてもおかしくはないわ。
丁度貴方の近くからダイヤモンドと同じ音が聞こえるから、もしかしたらと思ったんだけど』

 魔幇からしたらシグリが欠片とは言えダイヤモンドであるならば、シグリごと引き渡してもらったほうが手っ取り早い。
 だが、それではシグリがダイヤモンドを盗んだ犯人のような扱いを受けてしまうだろう。一般人をマフィアと関わらせるのは望ましくない。

「保護した奴とダイヤモンド、どうにかして引きはがす方法がないか探りたい。
 魔幇もダイヤモンドそのものを探知することはできないからこそ俺たちに探索依頼を出したはずだ」
『…魔幇を欺くことになるわよ。私たちの組織だってただじゃすまなくなる』
「無関係の人間が魔人たちの騒動から庇護することは俺たちの最優先事項のはずだろ。
 ――権威に屈するくらいなら最初から奴らの傘下にいる」
『でも――あ、リーダーに変わるわね。
 海圻。お前のそばにいる少年は決してダイヤモンドを盗んだ犯人ではないんだな?』

 通信機越しに聞こえる声が華甲ではない者へ変わる。
 『清海』のリーダー、ガングート。それこそが、この無線の相手だ。

「俺は何年もこの街で盗人を見てきたつもりだ…けどこいつはそいつらとは違う。
 俺の気で探った結果をどうとらえるかは、ガングートに任せるよ」

 重たい沈黙が流れる。そんなことは露知らず、俺の腕の中にいるシグリは上海の街並みに目を輝かせているようだった。

『…お前の判断であれば、信ずるに値するな。
 フ――こうもでかい叛逆は久方ぶりか!お前の言う通りだ、無関係の人々を守れずして我々が設立された意味はない!』
「ありがとう、ガングート」
『私たちはダイヤモンドの剥離方法を探ろう。その間、拠点への帰還は控えてくれ。
 同時並行でダイヤモンドの本体も探してくれ。私たちも力は尽くす』
「了解。答えは決まったところで…」

 方針が決まったならやることは一つ。何建かビルを飛び越え屋上に降り立った。

「そろそろご退場願わないとな。付け狙われ続けるのも不愉快だ」
「なんだ、気付いてたんなら最初っから仕掛けてたんだけどなあ」

 俺の目の前に出現した暗幕が取り払われ、中から細身の男が姿を現した。明らかに何もない空間から舞台で使われそうな暗幕が出てきた…魔人能力か。

「だからここまで引っ張ってきたんだ。一般市民まで巻き込むわけにもいかないからな」
「一般市民って…こんなところにいる時点で一般人なんているわけないじゃん。
 君が守ろうとしてるそいつだって、もうただの人間じゃない」
「元ただの人間だ」
「今は違うんでしょ?まあいいや、これ以上話すのもダルイしね。僕らからの要件は一つ、そこの日本人を引き渡してほしいワケ」

 やはりシグリが狙いか。ダイヤモンドと一体になっていると考えられる彼に一体どのような価値があるのか、俺には分からない。
 魔幇にとっては重要な宝だ。だが、こいつらは魔幇に属する奴らではないだろう。もし魔幇なのであれば、こんな回りくどい手は使わない。

「断る」
「そ。じゃあ死んでね」

 蛇が這うように、一瞬で距離を詰めてくる。対応しきれない速度じゃない、振るわれる拳の重さも予想できる。
 俺の胸目掛けて放たれた拳を回避し、返す刀で脇腹へ掌底を叩き込む。ただそれだけで襲撃者の身体はいとも簡単に吹き飛んだ。気を込めた一撃の破壊力は、いかに魔人と言えど無傷では済まない。
 だが倒れることなく立っている。耐久力は想定以上か。

「流石『四霊随身』なんて御大層な名前を付けられるわけだ。
 その体も見せかけじゃないみたいだし」

 怠いと言いながらも口が廻る。それでも俺がやるべきことは一つ。
 シグリを視界に収めながら、こいつを戦闘不能にすること。可能であれば殺しておいた方が今後楽ではある…が、シグリの手前少々気が引けるのも事実。
 だがそんなこと言ってる場合ではないのも、シグリは承知だろう。

「海圻の服それっぽいし、カンフー映画見てるみたい!」

 本当に承知してくれてるのか不安になるくらい能天気だ。

「はぁ…君の攻撃何回も喰らうわけにはいかないし、さっさと終わらせないとね。
 そんな顔しないでよ、褒めたつもりなんだけどなあ…まあいいや、『開劇の号令(テンバット・カーテンコール)』」

 カーテンシーのように、男は俺の目の前でコートを広げて見せた。
そこには舞台袖のような真っ黒な闇が蠢き――形をとって飛び出してくる何かがある。

「っ…!」

 頬を掠めた鋭い刃と、微かに灯る熱。あそこから飛んできた何らかの武器か、恐らくあれは四次元ポケットに類する異能だ。
 これでは避けるのに手いっぱいで攻撃に転じるのは難しい。…やはり守りながらの戦闘は骨が折れる。
 ふと、目の前に見慣れない光景が広がった。いつもであればその側面を見ることが多いはずのソレは、今まさに俺にぶつかろうとしている。

「よく避けたけど…これは無理でしょ」

 遠くに響く男の声。1秒の猶予もなく、俺は放たれた自動車にはね飛ばされた。


 ***


 おれを守ってくれてた人が突然出てきた自動車にはね飛ばされた。何が起こったか理解できず、ただ茫然と自動車が突き刺さった貯水タンクに視線が釘付けになる。

「そんな…おれのせいで…」

 海圻と戦っていた男が次はお前だと言わんばかりにコートを広げる。
 おれが何もできないばっかりに、おれも海圻もこいつに殺される。嫌だ。そんなの、おれは認めない。

「いきなり出てきたやつに、俺の人生めちゃくちゃにされたくなんかないんだよ!」

 あいつが放ったナイフを拾い上げる。それと同時に、背後から盛大な爆発音が響いて――海圻があいつの目の前にいた。


 ***


 呆けたように口を開ける男は気に留めず、鳩尾に全力のボディアッパーを叩き込む。

「ごふっ?!」

 確かに臓腑を押しつぶした感触が拳へ伝わってきた。その勢いのまま男は落下防止用の金網へ吹っ飛んでいく。
 あの程度の重量で抑え込めると思われたなら心外だな。
 額から流れる血はうざったいがそう大した傷じゃない。埋まってたのは2秒ほど…パワー不足が否めないしアレも予兆に気付けたはずだ。己が未熟は何れ克服するとしよう。

「海圻!よかったぁ…」
「魔人、それも戦闘系の奴がアレでくたばるわけ…お前、なんだその姿」
「え、姿って別に変って…えええ?!」

 シグリはさっきまでただ観光に来ましたといった感じの普通の格好だったはずだ。
 だが、今は両手両足が透明な鉱石の輝きに染まっていた。服装もどこかラッシュガードを彷彿とさせるものへ変化している。
 背にはトランプのダイヤがそのまま形になったような、翼と思わしき何かを背負っている。

「うわっなんか生身っぽいところとダイヤっぽいの不思議だけど馴染んでる…
 海圻、この街だとこういうこと割とある?」
「ないよ…ダイヤっぽい、か。合点がいかないわけじゃあないが…」

 本当にダイヤと人が合体するとはな。まあ、今はそれより目の前の相手に集中しよう。

「げほっ…うぇ、ほんとに気持ち悪い…だからこういうやつの相手嫌なんだけどなあ…」
「ならさっさと退け。今退くなら殺しはしない」
「と言われてもね、命令だからさ…悪いけど覚醒しちゃった以上、そいつも絶対もっていかないと」

 再びコートが開かれる。大量に飛んでくる物体を全部避けるのは不可能だ。感知できても機動力には限界がある。

「っさせない!」

 だが突如俺の目の前に青白い糸が張り巡らされた。盾のように編まれた糸は飛んでくる武器たちを難なく受け止めている。
 そしてその発生源はシグリだ。彼の手から伸びた青白い糸が、堅牢な盾を形作っている。

「こんなこともできるようになってるなんて…ううん、今は後!
 海圻の事はおれが守るから、海圻はあいつを倒して!」
「ああ」

 この力の感じは魔人能力だ。…よもや、無能力者を魔人にしてしまうとはな。

「四霊、我が身に来たれ――」
「うざったいなぁ!」

 再び自動車が放たれ、シグリの盾に激突する。こればかりは衝撃もあってか、糸はほどけて俺はやつの射線上に身をさらすこととなった。
 だが時間は十分に稼げた。一歩を大きく、強く踏み込む。次なる一撃は絶技の壱。矛を砕く巌の拳。

「破槍――『霊亀砕』」

 向かい来る数多の武器を一撃のもとに叩き落し、一瞬で男の眼前へ迫る。避ける隙も反撃の暇も与えない。
 放った拳は男の顔面を捉えた。鼻骨を砕き脳を揺らす一撃に、男は金網の外へとその身を躍らせて行った。この高さでは助かるまい。

「海圻~!」
「シグリ、無事だったか」
「うん!海圻のおかげでね!…さっきの人は…」

 流石に人が死ぬところなんて見たこともないし見たくもなかっただろう。
 俺としても見せたくはなかった。彼にはこの件から離れた後にも残りの人生がある。俺たちみたいなものと関わらない、普通の生活が。

「誤魔化しても仕方ないな。何もなければ、あいつはあのまま死んでる。
 …これからお前は見たくもないことを見ることになっていく。けどそれは、お前が元の生活に戻るために必要なことだ」
「何となく、分かるよ…でも、おれは自分の事を狙ってくる人たちの命を心配できるほど善人じゃない」
「よかった、とは言わない。嫌なものは嫌だろうからな」

 一息ついたところでシグリの服装が元の物に戻っていく。ダイヤモンドになっていた手足も元に戻っていた。

「とりあえず、次あの姿になった時のために俺のジャケットやっておく。あの恰好はさすがに寒いだろ」
「うん…ありがと、海圻は寒くないの?」

 この状況でも他人を思いやれる、か。なんてことはない、人の善性。
 それがどうしようもなく嬉しかった。だからこそ守り通す…この戦いから、何があっても。

「――鍛え方が違うからな」
「脳筋みたいな考え~」
「茶化すなら捨てていくぞ」
「うわーん待って待って置いていかないで~~~」
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