だんのこまち@wiki
第十四章 星の綾が結ぶ場所
最終更新:
dannocomachi
-
view
――朝が来る前の、静かな夜。
温かい毛布に包まれ、意識がふわりと沈んでいくと、不意に足元が地面から浮くような感覚に襲われた。
温かい毛布に包まれ、意識がふわりと沈んでいくと、不意に足元が地面から浮くような感覚に襲われた。
(……あれ?)
重力が消えたような無重力の浮遊感。
目を開けると、そこは見知らぬ世界だった。
目を開けると、そこは見知らぬ世界だった。
満天の星が空いっぱいに広がり、地面は鏡のように夜空を映している。
風はないのに、草花が優しく揺れていた。
ここがどこかも、自分がなぜここにいるのかも――わからない。
風はないのに、草花が優しく揺れていた。
ここがどこかも、自分がなぜここにいるのかも――わからない。
(夢……だよな?)
自問しながらも、現実の夢とは明らかに違う“リアルな感覚”に、みたらしっぽは慎重に一歩を踏み出した。
「……あっ!」
声がした。
澄んだ声。どこか嬉しそうで、ずっと前から待っていたかのように。
澄んだ声。どこか嬉しそうで、ずっと前から待っていたかのように。
「やっと来た!」
草原の向こうから駆けてくるのは――ゴールドの髪にケモ耳を生やした、見知らぬ少女だった。
パーカーの袖を軽くまくり、スカート姿で足取りはとても軽やか。
彼女は一気に距離を詰めて、勢いよく飛びつくようにみたらしっぽに抱きついた。
パーカーの袖を軽くまくり、スカート姿で足取りはとても軽やか。
彼女は一気に距離を詰めて、勢いよく飛びつくようにみたらしっぽに抱きついた。
「……えっ……!? ちょ、ちょっと……!」
「やっと会えたー! ねぇ、ねぇ、やっとだよね? 夢って、すごいね!」
「え、えぇと……君は……?」
抱きつかれたまま固まるみたらしっぽに、少女はぱっと離れて、嬉しそうにしっぽを揺らした。
「……ふふ、やっぱり。ちゃんとわかったよ。あなたのにおい、ちゃんと覚えてた」
「……?」
彼女の言っていることの意味が、すぐには理解できなかった。
だが、そのしぐさや目の形、耳の動き――何かが、どこかで見たことがある気がした。
「……君、まさか……ペットショップで見た……」
「うん! あの時、ガラス越しにいっぱい見てくれてたでしょ? なんとか声をかけようとしてたのも、聞こえてたよ!」
「……聞こえてた……って」
みたらしっぽは口を開いたまま言葉を失った。
確信した。この少女は、あの――ゴールドのトイプードルだ。
まだ名前すらつけていない。それでも、彼女は間違いなく自分を覚えていて、会いにきてくれたのだ。
まだ名前すらつけていない。それでも、彼女は間違いなく自分を覚えていて、会いにきてくれたのだ。
「夢の中って、すごいね! 言葉、話せるし……走れるし……あなたに会えるし!」
くるくるとその場で回って、耳をぴょこぴょこ動かす。
しっぽも嬉しそうに大きく振られていた。
しっぽも嬉しそうに大きく振られていた。
「……まだ名前、ないんだよね?」
ふと、みたらしっぽが口にした。
少女は立ち止まり、少しだけ考えるような表情になってから、にっこりと笑った。
「うん、ない。でも、あなたがくれるって……なんとなく、そんな気がしてる」
その言葉は、どこか予感めいて響いた。
みたらしっぽは、ゆっくりと彼女に歩み寄る。
この世界は夢。だけど、この出会いが偽物だとは思えなかった。
この世界は夢。だけど、この出会いが偽物だとは思えなかった。
「……そうだな。じゃあ――これから、名前を考えようか」
「ほんと!? やった!」
少女は両手を広げて喜び、再び彼に軽く飛びついた。
「じゃあまずは、ね? ……いっぱい、遊ぼ?」
「じゃあまずは、ね? ……いっぱい、遊ぼ?」
夢の世界《夢紡ぎのフィナリア》。
名もなき少女との出会いは――こうして始まった。
名もなき少女との出会いは――こうして始まった。