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決闘バトルロイヤル @ ウィキ

マスターピース

最終更新:2024年08月20日 21:39

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本当はさびしかった、君に会うまでは。
ひとりでいる方が気楽なんだって、嘘ついてた。


☆

ナオミ・マサツグ。
異世界に転移するまで、彼は孤独な人生を歩んできた。
学校ではミヤモト達にいじめられた。ミヤモトは弱い相手を見つけて嫌がらせをする、性格の悪い男だ。マサツグは彼のせいで何度か死にたい思いすらしてきた。
そして親にも愛されず、見捨てられた。……その過去が今のマサツグを形作り、反面教師ともなっているのがなんとも皮肉だが。

そんな彼は転移しても才能無しと判断されて、孤児院を任されたわけだが――まさかその結果、家族というものを知ることになるとは思わなかった。

運命とは皮肉なもので、もしも彼に誰から見てもわかる特殊な才能があれば――マサツグはきっと孤独なままだったろう。どれだけ褒め讃えられても、英雄視されても――孤独な心は埋まるものじゃない。事実として、孤児を失った後に聖剣に選ばれた時も彼女達を守れなかったことが原因で一度手放している。

空っぽの心を満たせるもの。それは純粋な愛であり、絆だ。
愛とは何も恋愛的な意味だけじゃない。家族に向けられるソレも、立派な愛である。
それは今までのマサツグに最も欠けていたもの。普通の家庭環境ならば誰もが当然に享受出来るが、そうじゃなければ決して手に入ることのないもの。――それが家族愛。

実際、マサツグは親に対して複雑な感情を抱いている。それが孤児達を大切にする理由にも繋がってるのは皮肉なものだが……彼女達には自分のような思いをしてほしくないという考えが強い。
それは弱さを知っているから。辛い過去を味わってるから得られた、優しさでもある。

彼が孤児達から好かれているのも、みんなそういう優しさを感じ取っているからだ。
孤児達は皆、様々な理由でここへ来た。……シーは色々と特殊な存在なのでともかく、リュシアやエリンなんかはそれぞれ辛い過去を背負っている。

痛みを知る者が集い、身を寄せあい――そうして孤児院で生活をしてきた。
彼らは紛れもない家族だ。血の繋がりこそないが、その在り方は家族そのものである。

――だから結論として、ナオミ・マサツグはリュシア達のことが大好きだ。
決して口には出さないが……だからもしも殺し合いに呼ばれていなかったら、後に処刑を乞うリュシアを意地でも止めようとする。

その方が楽だとわかっているのに――全員を助け出すという個人的な感情を優先した。
孤児達を失えば、何かが決定的に終わってしまう気がしたから――。

そんなマサツグだから――メグの気持ちがわからないわけじゃない。
もしも孤児達が見せしめにされていたら……自分も迷走していた可能性がある。そこは否定出来ない。

『チマメ隊は永遠だから……。この絆は誰にも裂かせないよー!』

絆。
過去のマサツグなら「そんな曖昧な言葉など知るか」と一蹴していただろうが――孤児や友と絆を育んだ今の彼には、彼女の気持ちが痛いほどわかってしまう。

孤児達を里親に出してから――静かで気楽な生活を送っていた。そこに居て当たり前の擬似家族を失った時に改めて思い知る、彼女達の存在の大きさ。
諸々の負担が減ったはずなのに――味気ない生活に虚しさすら感じていた。

それでもシルビィとアルノンが居たから、心を保つことは出来たが――以前なら地形を変えるほどの攻撃も随分と威力が落ちた。マサツグのスキルは心次第で強さが変わる。このデスゲームの参加者、キリトやpohの世界に存在し檀黎斗が取り入れた心意システムのようなものだ。

「ふっ……。まさか俺がこんなことで感傷に浸るとはな」

我ながら自分らしくないな――とマサツグは思う。
相手はまだ出会ったばかりの少女だ。リュシア達とは違い、思い入れなんて微塵もない。
ならばここは捨て置けば良い。助ける必要なんてないだろう。

……そう理解出来ているのに、どうしてだろうか。
理解は出来るが、納得が出来ない。ただの感情論になってしまうが――このままメグを放置したくはない。

ナオミ・マサツグは実は自分をあまり理解出来ていない。というよりもひねくれ者な彼は、あまり自分に素直になれない。
いつも孤児を守る為に行動しているから、本当は彼女達を愛しているのに。そんな自分をあまりわかっていない。

だがそれでも、いつも行動するのがマサツグという男だ。――きっと大切な存在というものを、心の底では認めているのだろう。

「マサツグさん……」

クウカが心配そうな表情でマサツグを見つめる。
彼女はドMという拗らせた性癖こそあるが、善人か悪人かで言えば間違いなく前者だ。

自分が仲間を殺された状況でも――メグやマサツグを気遣うくらいの優しい心を持っている。
それはモニカという小さなリーダーの影響もあるかもしれないし、ヴァイスフリューゲルとして活動したから得たものかもしれない。
もちろん根っからの善人ではあるのだが、人助けをしていく積み重ねで……こういう心が養われたというのもあるだろう。

それはクウカだけに限らない。ヴァイスフリューゲルの面々はみんな特徴的な個性を持っているが、それでも仲間を気遣う『優しさ』というものを心の内に秘めている。

一見、まとまりのない寄せ集めに見えて実はしっかりと絆で結ばれている――それもまたヴァイスフリューゲルの特徴だ。

「そんな表情をしてどうした?俺の顔にゴミでも付いているのか?」
「そ、そうじゃないです。クウカはマサツグさんが心配で……」
「心配、か……」

ふっ――とマサツグは笑う。
まさか自分が守ろうとしている少女に、心配されるとは。我ながら情けない有り様だと思った。

だが――何故だろうか。不思議と嫌な感じはしない。……むしろマサツグ自身は自覚していないが、少し口元が緩んでいる程だ。

「まだ知り合って間もないというのに、俺なんかの心配をするとは……お人好しだな」

俺なんか――。
そんな言葉が出て来たのは、マサツグが自分自身を卑下しているからに他ならない。
孤児を里親に出した時もそうだが、彼は何かと自分を過小評価する傾向にある。

リュシア達に無償の愛を与えていたのは間違いなくマサツグであり、彼は立派に親代わりをしていたというのに――それでも自分なんかよりも他の者からしっかりと親の愛を受けた方が良いと思った。孤児達はマサツグの愛を受け取り、成長したのに――彼はそんなことにも気付けなかった。

それは家庭環境の歪みであったり、ミヤモト達から受けたイジメであったり――様々な原因が屈折した精神を作り上げたからだろう。周りに否定されてばかりの人生では、自尊心などというものは育たない。

普通ならば親が愛を与え、それによって自信や自尊心も成長するものだが――マサツグはそんな当たり前の『愛情』すらも享受出来なかったのだから。

「あぅ……。知り合って間もないと言われたら、たしかにその通りなのですが……」

クウカは少しだけ言葉に詰まる。
彼女は別に弁が立つ方でもないし、どちらかと言えば気が弱い方だ。
モニカやユキ、ニノンならばもっと違う反応を示したかもしれないが……クウカは彼女達ほど強いわけじゃない。

だが――それでも、クウカにも引けない場面というものが。曲げたくない意志というものはあって。

「そ、それでもクウカは――マサツグさんが好きです。大切な仲間だと思ってます……」

ここでちゃんと伝えなければ、きっと後悔すると思ったから。
別に自分がマサツグをどうこう出来ると思うほど、クウカに自信があるわけじゃない。こんなことを言っても無駄かもしれない。

それでも『俺なんか』なんて自虐するマサツグに、正直な気持ちを伝えたかった。大切な仲間だと思っていることを教えたかった。

「そうか。……俺は何かお前に『仲間』と呼ばれることをしたのだろうか?」

仲間。
そんなふうに呼ばれるようなことをした記憶はマサツグには無い。
たしかにクウカのことを保護したが――メグは闇堕ちさせてしまうし、彼の行動はお世辞にも褒められたものではないだろう。

別に仲間と呼ばれることに対して何か負の感情があるわけじゃないが――そんな言葉、今の自分には相応しくないとマサツグは思った。

普段ならその言葉を素直に受け取らず、何か言い返したり否定していたかもしれないが――マサツグも人間。感情の生き物だ。
今の状況が精神的に苦しいということもあり、つい口から素直な疑問が零れてしまった。

様々な情緒を感じさせる、マサツグの瞳を真正面から受け止めて――クウカは一瞬、言葉を失いそうになった。そこに秘められた感情が、あまりにも深そうだったから。

(……つ、伝えなきゃ!)

それでもクウカは、引き下がらない。――このまま疑問に答えなければ、マサツグが悪い方向へ行ってしまう予感がしたから。
なによりクウカは感謝しているのだ。マサツグと出会えず、一人で居たらどうなっていたかわからないから。

……孤独の状態で仲間の死を知るのと、そうじゃないのでは色々と違ってくる。孤独は人を狂わせてしまう。人は独りでは、生きられない。

マサツグは本人こそ自覚していないが――クウカという少女をしっかりと守っていた。
そしてクウカもまた――マサツグの心を守りたいと思ったから。

「ク……クウカは……」

マサツグの瞳が、真っ直ぐとクウカを見据える。
まるで彼女の本質を試すかのように、次の言葉を待っている。
別にクウカを疑ってるわけじゃない。……ただ単純に彼女が何を伝えようとしているのか気になっただけで。

何故ならクウカはきっとそこまで気の強い女じゃないとマサツグは考えている。そんな少女が緊張しながらも、疑問に答えようとしているのだ。

……異世界へ来る前のマサツグならそれほど興味を示さなかっただろうが、やはり孤児達と触れ合ってから色々と変化したのだろう。

守るべき者も、絆も、愛さえない灰色の世界はいつしか虹色に彩られていた。

――もしもマサツグが孤児院で彼女達と交流する以前の状態で連れてこられたのなら、きっとクウカなんて放置したし、メグのことも大して気にしなかった。……心を乱されることもなく、自分だけが生き残る手段でも考えていた可能性が高い。

環境が人を変える、とはよく言ったもので。
ナオミ・マサツグという男は異世界召喚で大切なモノを得たことで、今までにない感情を知り――それが結果的に彼の強さとなった。

守るスキルは何かを守る際に真価を発揮する。それ即ち、心の力。
孤児院を経営することでリュシア達と絆が芽生え、家族のようになり――だからこそ彼はここまで強くなった。

才能がないと認定されたことで孤児院を任された結果、こんな想いを手に入れたというのは皮肉なものだが――別にマサツグとしては地位や名誉に興味がないし、なにより孤児と出会えたことを悪くないと思っている。

そしてクウカに仲間などと呼ばれたことも――正直に言えば、悪くない気分だ。
まだ出会って数時間。それも大して何かあったわけじゃないマサツグを素直に仲間だと言ったのは、クウカの人柄の良さゆえだろうか。

なんとなくそんな気もするのだが――それにしてもクウカを保護して以降のマサツグは不審者から守ったこと以外はロクに活躍していない。子供のような言動の男も殺され、メグは目の前で攫われ――それでもなお仲間だというのなら。

ならばクウカの口からその理由を聞きたい。……仲間呼ばわりされること自体は悪くないが、それでも不甲斐ない自分にそんな評価を下されたのが納得のいかないところではある。

「クウカは……マサツグさんと出会ってなければ、どうなっていたかわかりません……」
「……どういうことだ?」

マサツグからしたら、自分は何も助けていない。
クウカにとってはマサツグの存在が支えになったのだが――そんなことを察することが出来ないのがこの男だ。悪く言えば卑屈で、自分の価値をあまり理解していない。
……もっとも孤児達と交流するまでの環境があまりにも酷かったので、仕方ないのだが。

「えっと……最初の男の人に撲殺されてた可能性がありますぅ……」

竹刀でマサツグ達を襲った剣聖こと、虐待おじさん。クウカのみならば彼に嬲り殺されてた可能性は高い。
守りにこそ優れているが、攻めはそこまで得意じゃないのだ。ドMだけに。

「それは俺も同じだな。クウカが居なければ、真正面からあの猛攻を受けていた可能性もある」

「はい。だ、だからその……クウカ達は力を合わせて戦いました」

クウカがタンク役をして、マサツグが攻める。実に理にかなった役割分担だ。
マサツグとしては無意識的ではあったがこれは立派な協力であり、二人で戦ったということになる。

「ふ……。それで俺を仲間と呼んだのが」

ここまで説明されたら、マサツグでもわかる。たしかに共闘を果たした以上、仲間意識を持たれるのもおかしくない。
こんな自分に仲間意識など――という気持ちもあるが、本気で家族ごっこをしていたリュシア達の前例がある。クウカの気持ちも否定は出来ない。

「そ、そういうことですぅ。それにひとりぼっちだったら……クウカはどんな迷走をしていたかわかりません……」

クウカはヴァイスフリューゲルの大切な一翼を失った。
彼女のために殺し合いを肯定する――なんてことはしないだろうが、それでも何らかの形で迷走していたかもしれない。
これまでモニカ達が支えてくれたように、今回はマサツグという新たな仲間が彼女を支えてくれたのだ。

(一人きりの迷走……)

クウカのその言葉は、マサツグにも同じことが言えた。
もしもこの場で誰にも遭遇せず、敵対者と出会っていたら――自分はどうなっていただろうか?
もっと言うなら、異世界召喚されて偉大な力を得ていた場合――莫大な富と名誉を得られたとしても、果たしてその時マサツグはどうなっていただろうか?

マサツグはリュシア達『家族』が――ルーナ孤児院ファミリーが居たからこそ、これほどまでに成長した。
誰かと繋がるということの大切さは――口にこそしないが、理解している。何故ならその想いこそが無限の力を呼び覚ますのだから。

「やれやれ……。殺し合いの最中に仲間が出来るとは思わなかったが……」

今、自分達は殺し合いに巻き込まれている。
それはどうしようもない事実だし、これから次々と失う羽目になるかもしれない。

「ふ、不謹慎だったでしょうか?」

だが――そんな状況でもこの時ばかりは自然とマサツグの口も緩んで。

「ふ……。わかった。じゃあ俺たち仲間で、さっき攫われたメグも助けるとするか」

その道はきっと、困難を極めるかもしれない。
もしかしたらもう間に合わないかもしれない。
それでも――――。
優しい孤児院(おうこく)で培った精神は、マサツグの心を後押しした。

「は……はい!」

クウカもつられて、にこやかに笑った。

『俺たちルーナ孤児院ファミリーで、家を守るとするか』

――懐かしいな。
三人の孤児と共に家を守った時のことを、ふと思い出す。
それほど大きな月日も経ってないだろうに、随分と懐かしい。……あいつらは今も元気にしているだろうか?

夜空を眺める。
あいつらを失った時と同じ、静かな空間――。

「綺麗な夜空ですぅ~っ!」

……とはいかなくて。
またしても俺の生活にはやかましい存在が加わった。
まったく――変態性癖のドM野郎とは、シーと引けを取らんキャラの濃さだ。
だがこういうのも――悪くない。静かで味気がない毎日より、ずっと良い。

『チマメ隊は永遠だから……。この絆は誰にも裂かせないよー!』

メグ、お前は――――。

『寂しい気持ちでいっぱいになっちゃいそうでしたけど……ご主人様が来てくれたおかげでそんな気持ちどこかに消えちゃいました!』

家を守る決戦前夜――あの時のリュシアの言葉を思い返す。

『ご主人様はすごいです。傍にいるだけで勇気をくれます』

――果たして俺は、リュシア達のようにメグのことも救えるのだろうか?
リュシアは故郷の両親を失ったが、マサツグと交流したことで多少は助けてやることが出来た。
だが――必ずしもメグまでもがそういくとは限らない。あのベルトに、同行者……どちらも油断ならない存在だ。

だがいつまでも迷っても、仕方ない。
ならばナオミ・マサツグは迷える子供を救うための道を選ぼう。

「行くぞ、クウカ」
「わ、わかりました!」

「ルーナ孤児院ファミリー出撃だ」
「ヴァイスフリューゲル ランドソル支部、出発ですぅ~!」

「「……」」

「……ふっ。まさかチーム名が被るとはな」
「ご、ごめんなさい……!こうなったら、クウカはどんなお仕置でも……ぐふふ……」
「いきなり気持ち悪い顔をするな。とりあえず今後は『ルーナフリューゲル』とでも名付けるか」


☆

誰も同じじゃない。
それこそが生きてる意味だから。時として出した音が、不協和音でも。
だから諦めない。信じ抜ける強さで――。
辿り着ける世界の果てで君と見る景色が真実なんだ


【D-4/一日目/黎明】
【直見真嗣@異世界で孤児院を開いたけど、なぜか誰一人巣立とうとしない件(漫画版)】
[状態]:健康、疲労(小)
[装備]:竈門炭治郎の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:ラスボスを倒す。殺し合いを脱出するには、これしか手段がないようだな
1:エリン、クウカ、メグとその友人を守る。
2:メグを連れ去った仮面の戦士を見つけ出し、メグを取り戻す
3:もう失うことは御免だな
[備考]
「守る」スキルは想いの力で変動しますが、制限によりバランスブレイカーになるような化け物染みた力は発揮出来ません
参戦時期はリュシア達が里親に行ってから。アルノンとも面識があります

【クウカ@プリンセスコネクトRe:Dive】
[状態]:ダメージ(小)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:こ、困ってる人を助けます……
1:ク、クウカはメグちゃんを取り戻したいのです……
2:モニカさん達と合流したいです
3:クウカ、マサツグさんのことが気になりますが……今はそれどころじゃないですね
[備考]
頑丈です。各種スキルも使えますが魔力を消費します。魔力は時間経過で回復していきます


045:RIDE OR DIE(前編) 投下順 046:彼と彼女の情景
044:集いし願い 未界域のヴェアヴォルフ 時系列順 048:グレイブ・スクワーマー
017:DIVE to DEEP ―青い季節の罪深き夜に― 直見真嗣 070:Break&Peace
クウカ
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