◆
「ンッン~~、随分足掻くじゃあないか」
「くっ……!」
「くっ……!」
あからさまに見下されるも、挑発へ一々意識を割くだけ無駄だ。
鎧の下に刻まれた痛みを噛み殺し、牙狼剣を振るう。
ホラー達にロクな抵抗を許さない刃だが、此度の敵は並に収まる雑魚に非ず。
必殺の剣は拳闘士の持つ戦斧に阻まれ、甲高い金属音が鼓膜を震わせる。
鎧の下に刻まれた痛みを噛み殺し、牙狼剣を振るう。
ホラー達にロクな抵抗を許さない刃だが、此度の敵は並に収まる雑魚に非ず。
必殺の剣は拳闘士の持つ戦斧に阻まれ、甲高い金属音が鼓膜を震わせる。
両者へ掛かる重さはほぼ同じ、互いに弾かれ次の手を繰り出す。
「などと、馬鹿正直な打ち合いをよもやこのDIOに期待してたのか?」
嘲りを最後まで聞き取らずに、距離を詰めて斬り掛かる。
そうしなければ何が起こるかを、既に幾度も自分の体に叩き込まれた。
痛みに悶える暇すら惜しいと剣を振るうが、DIOの余裕は崩れない。
何度やっても無意味、そう教えてやるまで。
そうしなければ何が起こるかを、既に幾度も自分の体に叩き込まれた。
痛みに悶える暇すら惜しいと剣を振るうが、DIOの余裕は崩れない。
何度やっても無意味、そう教えてやるまで。
「――そして時は動き出す」
「がっ、は……」
「がっ、は……」
刀身がザ・ワールドを切り裂く筈が、全身へ衝撃と共に痛みが来たのは鋼牙の方。
吹き飛び、標的からは強制的に引き離される。
床へ叩き付けられ、勢いと重みで砕け散り下の階へ真っ逆さまだ。
吹き飛び、標的からは強制的に引き離される。
床へ叩き付けられ、勢いと重みで砕け散り下の階へ真っ逆さまだ。
受け身を取り、剣を支えに立ち上がる。
その間にも時間は無慈悲に過ぎ、タイムリミットまで残り5秒を切った。
心滅獣心だけは何としても回避せねばならず、鎧を解除。
生身に戻ると、受けたダメージが一気に押し寄せる感覚があった。
その間にも時間は無慈悲に過ぎ、タイムリミットまで残り5秒を切った。
心滅獣心だけは何としても回避せねばならず、鎧を解除。
生身に戻ると、受けたダメージが一気に押し寄せる感覚があった。
「……っ」
「辛そうじゃあないか。無駄に苦痛を長引かせるのが如何に愚かか、そのちっぽけな頭でも理解出来るだろう?」
「辛そうじゃあないか。無駄に苦痛を長引かせるのが如何に愚かか、そのちっぽけな頭でも理解出来るだろう?」
崩れかかる体勢を気合で持ち堪える姿に、頭上から嘲笑が降って来る。
悠々と着地したDIOは、鋼牙とは正反対の佇まいだ。
傍らに立たせたザ・ワールドと共に睥睨し、未だ微塵も色褪せない存在感を叩き付ける。
悠々と着地したDIOは、鋼牙とは正反対の佇まいだ。
傍らに立たせたザ・ワールドと共に睥睨し、未だ微塵も色褪せない存在感を叩き付ける。
時の止まった世界で唯一動けるのは、支配者たるDIOのみ。
黄金騎士と言えども、入門すら許されず一方的に痛め付けられる以外何も出来ない。
加えてDIOが己のスタンドに持たせたのは、バラゴが振るった暗黒斬。
牙狼剣との打ち合いすら可能な強度の戦斧で、時が動き出すまでの間に幾度も斬り付けたのだ。
防ぎ切れない傷は確実に蓄積し、鋼牙から体力を奪い去っていく。
黄金騎士と言えども、入門すら許されず一方的に痛め付けられる以外何も出来ない。
加えてDIOが己のスタンドに持たせたのは、バラゴが振るった暗黒斬。
牙狼剣との打ち合いすら可能な強度の戦斧で、時が動き出すまでの間に幾度も斬り付けたのだ。
防ぎ切れない傷は確実に蓄積し、鋼牙から体力を奪い去っていく。
「無論それは、お前達にも言えることだ」
「――っ!」
「――っ!」
鋼牙から視線は外さないまま、スタンドを遠隔操作。
近接パワータイプでありながら、射程距離も非常に長いザ・ワールドだから出来る芸当だ。
標的に選ばれたのはねむ、鋼牙に意識を割いた隙に紙片を飛ばし不意を打つ。
再度鎧を纏う時間稼ぎのつもりが、当然のようにお見通しだった。
黄金の拳闘士が眼前に出現、攻撃を中断し防御へ魔力を回す。
紙片を複数枚重ね盾にし、直後に怒涛の猛打が襲い来る。
近接パワータイプでありながら、射程距離も非常に長いザ・ワールドだから出来る芸当だ。
標的に選ばれたのはねむ、鋼牙に意識を割いた隙に紙片を飛ばし不意を打つ。
再度鎧を纏う時間稼ぎのつもりが、当然のようにお見通しだった。
黄金の拳闘士が眼前に出現、攻撃を中断し防御へ魔力を回す。
紙片を複数枚重ね盾にし、直後に怒涛の猛打が襲い来る。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
「う…あぁっ!?」
「う…あぁっ!?」
右脚を鞭のようにしならせ、四方八方より蹴りを叩き込む。
威力と手数、そこへスピードも加わった悪夢の如き暴力で盾は次々粉砕。
最後の一枚が壊されると同時に、衝撃で後方へ吹き飛ぶ。
小さな体が壁に激突、痛みで意識が軽く飛び掛けた。
威力と手数、そこへスピードも加わった悪夢の如き暴力で盾は次々粉砕。
最後の一枚が壊されると同時に、衝撃で後方へ吹き飛ぶ。
小さな体が壁に激突、痛みで意識が軽く飛び掛けた。
『SKULL!MAXIMAM DRIVE!』
力の差を知って尚も、DIOへ抗うのを止めはしない。
ドライバーのスロットにメモリを装填、高出力のエネルギーを発しながらスカルが跳躍。
巨大な髑髏を生成し蹴り飛ばせば、喰らい殺さんと歯を打ち鳴らし迫る。
黄泉へ誘う死神を思わせる光景も、何ら恐れるに至らない。
わざとらしく肩を竦め、ビルドドライバーを操作。
ドライバーのスロットにメモリを装填、高出力のエネルギーを発しながらスカルが跳躍。
巨大な髑髏を生成し蹴り飛ばせば、喰らい殺さんと歯を打ち鳴らし迫る。
黄泉へ誘う死神を思わせる光景も、何ら恐れるに至らない。
わざとらしく肩を竦め、ビルドドライバーを操作。
『Ready Go!』
「そんな生っチョロい蹴り、貧民街のゴロツキにも劣るぞっ!」
『HAZARD FINISH!』
回し蹴りを繰り出し、履帯状のエネルギーが髑髏を打ち消す。
勢いを殺さずスカルへ直撃、脇腹を削り取るように痛め付ける。
痛みこそ感じないが衝撃は別、蹴り飛ばされた先ではスタンドが待ち受けていた。
抵抗すべく身を捩るも、ザ・ワールドの前には余りにも遅い。
勢いを殺さずスカルへ直撃、脇腹を削り取るように痛め付ける。
痛みこそ感じないが衝撃は別、蹴り飛ばされた先ではスタンドが待ち受けていた。
抵抗すべく身を捩るも、ザ・ワールドの前には余りにも遅い。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄」
ラッシュの洗礼を容赦なく浴びせられ、強化外骨格に負担が圧し掛かる。
腹部を拳が叩き、腰のドライバーから火花が散った。
マズいと、そう思った時には勢い良く殴り飛ばされ、
腹部を拳が叩き、腰のドライバーから火花が散った。
マズいと、そう思った時には勢い良く殴り飛ばされ、
『HAZARD ATTACK!』
「無駄ァッ!!!」
スタンド使い本体による、トドメの蹴りをモロに食らう。
キャタピラのように脚部へ纏わせたエネルギーで、耐久性を削り取られた上でまたもや吹き飛ぶ。
壁をぶち破った末に転がり、ドライバーにも限界が来た。
メモリ諸共火花を散らし、やがてうんともすんとも言わなくなる。
キャタピラのように脚部へ纏わせたエネルギーで、耐久性を削り取られた上でまたもや吹き飛ぶ。
壁をぶち破った末に転がり、ドライバーにも限界が来た。
メモリ諸共火花を散らし、やがてうんともすんとも言わなくなる。
「~~~~~~っ!!!??!が、あぁぁ……!!」
唯一の変身手段の損失を嘆く余裕も、幻徳にはまるでない。
遮断していた痛覚が元に戻り、途端に駆け巡る激痛。
苦悶の声を上げる度に、肉体も悲鳴を訴えた。
仰向けになり荒い呼吸を繰り返し、立たねばと分かっているのに傷が枷となる。
遮断していた痛覚が元に戻り、途端に駆け巡る激痛。
苦悶の声を上げる度に、肉体も悲鳴を訴えた。
仰向けになり荒い呼吸を繰り返し、立たねばと分かっているのに傷が枷となる。
「っ、おおおおおおおおおおおおおっ!!!」
咆哮と共に己へ喝を入れ、鋼牙の魔戒剣が再び天を突く。
鎧を再召喚するや、床を蹴ってDIOの元へ一直線。
斬る、その二文字で背中を押し出し得物を振るう。
鎧を再召喚するや、床を蹴ってDIOの元へ一直線。
斬る、その二文字で背中を押し出し得物を振るう。
「やれやれ、東洋人というのは揃って学習能力に欠けているな」
傷の重さを感じさせない勢いも、DIOを怯ませるにはまるで届かない。
懲りない輩を躾けるのもまた、強者の務めだろう。
己がスタンドの名を口にし、幾度目かの完全なる静寂が訪れる。
既に複数回時を止めたが、やはりジョセフの血を吸った時よりも間隔を狭められてあった。
全く持って余計な真似をされたと、甚だ不愉快でならない。
だからといって、ザ・ワールドの脅威が薄れたかと言えば否。
現にどうだ、黄金騎士ですら手も足も出ないではないか。
懲りない輩を躾けるのもまた、強者の務めだろう。
己がスタンドの名を口にし、幾度目かの完全なる静寂が訪れる。
既に複数回時を止めたが、やはりジョセフの血を吸った時よりも間隔を狭められてあった。
全く持って余計な真似をされたと、甚だ不愉快でならない。
だからといって、ザ・ワールドの脅威が薄れたかと言えば否。
現にどうだ、黄金騎士ですら手も足も出ないではないか。
「がぁっ……」
くぐもった短い悲鳴と共に、打ち上げられた鎧が上階へ転がる。
狙ったのかどうか定かじゃないが、傍らにはよろよろと立ち上がるねむの姿が。
普段の眠た気な表情も、今は苦痛に歪んでいた。
剥き出しの肩や二の腕には生傷が見られ、痛々しさが際立つ。
生憎長々と気遣ってやれる状況ではなく、一跳びで追い付いたDIOに集中せねばなるまい。
狙ったのかどうか定かじゃないが、傍らにはよろよろと立ち上がるねむの姿が。
普段の眠た気な表情も、今は苦痛に歪んでいた。
剥き出しの肩や二の腕には生傷が見られ、痛々しさが際立つ。
生憎長々と気遣ってやれる状況ではなく、一跳びで追い付いたDIOに集中せねばなるまい。
「お兄さん……」
「無理はしなくていい…自分の身を優先しろ……」
「無理はしなくていい…自分の身を優先しろ……」
ぶっきらぼうな口調ながら、身を案じる言葉を投げて。
DIOと対峙する背を見つめるねむの脳裏に、問いが一つ浮かぶ。
DIOと対峙する背を見つめるねむの脳裏に、問いが一つ浮かぶ。
――このまま戦闘を続けるより、自分だけ逃げるべきじゃないのか。
自分の目的はあくまで、運営側の持つ力を奪って魔法少女…いろはを救済すること。
参加者へ積極的に戦闘を仕掛ける意味はなく、ましてDIOをこの場で必ずや倒さねばならない理由もなし。
無論、いろはの安全確保を思えば討伐は間違いじゃない。
しかしその為にねむ自身が必要以上のリスクを背負い、果てに力尽きる事態となったら。
今更死にたくないと言う気は無いが、無駄死にしたいかと言うと違う。
だったら鋼牙達に後を押し付け、己の生存を最優先にするのは間違ってない筈。
参加者へ積極的に戦闘を仕掛ける意味はなく、ましてDIOをこの場で必ずや倒さねばならない理由もなし。
無論、いろはの安全確保を思えば討伐は間違いじゃない。
しかしその為にねむ自身が必要以上のリスクを背負い、果てに力尽きる事態となったら。
今更死にたくないと言う気は無いが、無駄死にしたいかと言うと違う。
だったら鋼牙達に後を押し付け、己の生存を最優先にするのは間違ってない筈。
ポセイドンの蹂躙を目の当たりにした時と同じだ。
退いて灯花との合流を選べばいいと、ねむ自身の声で囁かれる。
退いて灯花との合流を選べばいいと、ねむ自身の声で囁かれる。
(多分、だけど。あの男がやっているのは時間停止だ)
必要な過程をすっ飛ばしてダメージを与える、奇怪な現象に心当たりがないでもなかった。
巴マミと同じ見滝原の出身で、キレーションランドでの戦闘時に現れた魔法少女。
暁美ほむらの存在を把握していた為、DIOの持つ能力にも見当は付く。
ついでに言うと、DIOは恐らく連続で時を止められない。
これまでの戦闘を振り返れば、奇怪な現象を起こすのに必ず一定の間を置いたのは確か。
元からの制約か、運営側の手で仕組まれた枷かを今深く考える意味もない。
巴マミと同じ見滝原の出身で、キレーションランドでの戦闘時に現れた魔法少女。
暁美ほむらの存在を把握していた為、DIOの持つ能力にも見当は付く。
ついでに言うと、DIOは恐らく連続で時を止められない。
これまでの戦闘を振り返れば、奇怪な現象を起こすのに必ず一定の間を置いたのは確か。
元からの制約か、運営側の手で仕組まれた枷かを今深く考える意味もない。
鋼牙相手にもう一度時を止めたら、生まれた猶予を利用し逃走に動く。
それが正しい、自分の目的を違えるつもりはない。
それが正しい、自分の目的を違えるつもりはない。
(これでいいんだ、僕はこれ、で……)
元々、戦力を利用する目的で鋼牙との同行を選んだだけだ。
切り捨て時が来たに過ぎず、袖を引かれる思いなど有りはしない。
そうやって灯花といろは以外は使い潰すと、一番最初に決めた筈。
切り捨て時が来たに過ぎず、袖を引かれる思いなど有りはしない。
そうやって灯花といろは以外は使い潰すと、一番最初に決めた筈。
――『お前も、お前の大切な者も、俺が守ると約束する』
だったらどうして、今更になってこんなものを思い出すんだろうか。
目に見えない強固な鎖と化し、自分の足に絡み付く。
出会って僅か数時間の男の言葉が、魔法少女救済の決意へ亀裂を生む。
目に見えない強固な鎖と化し、自分の足に絡み付く。
出会って僅か数時間の男の言葉が、魔法少女救済の決意へ亀裂を生む。
いろはだけでなく、自分の事も守ると言われた。
所詮口約束に過ぎず、本気にする程能天気じゃない。
目の前で繰り広げられる戦いを見ろ、DIOにいいようにあしらわれてばかりじゃあないか。
結局はこうなるのだ、信じた奴だけ馬鹿を見る。
最初から何も期待しなければ、有りもしないハッピーエンドに夢を見ない事が正解。
所詮口約束に過ぎず、本気にする程能天気じゃない。
目の前で繰り広げられる戦いを見ろ、DIOにいいようにあしらわれてばかりじゃあないか。
結局はこうなるのだ、信じた奴だけ馬鹿を見る。
最初から何も期待しなければ、有りもしないハッピーエンドに夢を見ない事が正解。
(僕は、何も間違って……)
あの日、自分達の浅はかさを突き付けられた時。
取り返しのつかない失敗が起き、ういの記憶を自分以外の全員から消してしまった瞬間。
希望に縋るのを止め、迷いと罪悪感はあれど手段を選んでいられなくなったのに。
膝を付きそうになる鋼牙を目にし、湧き上がったのが落胆と気付き愕然とする。
だってそれは、自分が無自覚の内に期待を抱いていたと。
そう告げてるのと同じではないか。
取り返しのつかない失敗が起き、ういの記憶を自分以外の全員から消してしまった瞬間。
希望に縋るのを止め、迷いと罪悪感はあれど手段を選んでいられなくなったのに。
膝を付きそうになる鋼牙を目にし、湧き上がったのが落胆と気付き愕然とする。
だってそれは、自分が無自覚の内に期待を抱いていたと。
そう告げてるのと同じではないか。
「鋼牙お兄さん……」
小さく零した声は背に届かず、闘争の音色に溶けて消える。
消耗に足を掬われ防戦一方へ追いやられても、一歩たりとも退かぬと剣を振るう。
それが、自分の元へDIOを近付けさせまいという決意の証であると。
見捨てて逃げようと考えた少女を、本気で守り抜くつもりだと。
彼の背が、雄弁に物語っていた。
消耗に足を掬われ防戦一方へ追いやられても、一歩たりとも退かぬと剣を振るう。
それが、自分の元へDIOを近付けさせまいという決意の証であると。
見捨てて逃げようと考えた少女を、本気で守り抜くつもりだと。
彼の背が、雄弁に物語っていた。
「僕、は…………」
合理的に考えろ、最優先を見失うな。
いろはと灯花、二人以外の参加者に心を許すのは無意味。
何を犠牲にしてでも目的を果たす、となれば『道具』に私情を挟むのは馬鹿のすることに他ならない。
誰に言われずとも、理解している。
いろはと灯花、二人以外の参加者に心を許すのは無意味。
何を犠牲にしてでも目的を果たす、となれば『道具』に私情を挟むのは馬鹿のすることに他ならない。
誰に言われずとも、理解している。
だから自分はきっと、馬鹿なんだろう。
「チッ、小賢しい真似を……!」
視界を埋める異形の群れに、DIOは舌打ちを零し対処に回る。
ぬいぐるみや無機物を繋ぎ合わせたような異形、ウワサが次々襲い掛かった。
ザ・ワールドを操作するのみならず、本体も拳で以て蹴散らす。
ウワサを創った本人も、これで倒せるとは思っていない。
足止めさえ出来れば構わない、向けられる視線を無視して駆け出し、
ぬいぐるみや無機物を繋ぎ合わせたような異形、ウワサが次々襲い掛かった。
ザ・ワールドを操作するのみならず、本体も拳で以て蹴散らす。
ウワサを創った本人も、これで倒せるとは思っていない。
足止めさえ出来れば構わない、向けられる視線を無視して駆け出し、
「っ!う、ぐ、ああああああ……!」
鋼牙の掌に、自分のを重ねた。
「なっ!?ねむ、何をしている!?」
魔戒騎士の鎧は常に高熱を帯び、生身で触れればタダじゃ済まない。
魔法少女だから幾らか耐えられてはいるも、無事で済む訳でもなく。
肉の焦げる音と共に、薄い手の皮が焼け出す。
急ぎ離そうとする鋼牙だが、ねむの方から指を絡めて来た。
痛みに顔を歪めながら、鎧の奥の瞳を見つめ返す。
魔法少女だから幾らか耐えられてはいるも、無事で済む訳でもなく。
肉の焦げる音と共に、薄い手の皮が焼け出す。
急ぎ離そうとする鋼牙だが、ねむの方から指を絡めて来た。
痛みに顔を歪めながら、鎧の奥の瞳を見つめ返す。
「僕は……お兄さんのことを、信じる気はなかった……!守ると言われて、それが絶対に果たされるかなんて分からないだろう……!」
安易に希望へ縋り付き、自分達なら絶対大丈夫と疑いもせず信じる。
そうやって楽観的な代償が何かを、嫌と言う程知った。
だから鋼牙の事も、善人とは分かっても心からの信頼を置く気は無い。
いずれは切り捨て、マギウスの二人だけでいろはを救う。
その程度の間柄で終わると、冷めた頭で考えていたのに。
そうやって楽観的な代償が何かを、嫌と言う程知った。
だから鋼牙の事も、善人とは分かっても心からの信頼を置く気は無い。
いずれは切り捨て、マギウスの二人だけでいろはを救う。
その程度の間柄で終わると、冷めた頭で考えていたのに。
「なのに……なのにどうして……っ!今更僕に、こんなものを見せるんだ……!」
過去に何をやったかを知り、見限って当然なのに。
いろはだけでなく、変わらず自分も守ると言った。
今の今まで、見捨てる算段を企ていた相手を守る為に。
傷の痛みすらも知った事かと捨て置き、剣を振るい続ける。
現実的に考えてるだけと偽った本心を、一切の容赦なく引き摺り出し。
灰になりそうな程の輝きで、照らされてしまった。
いろはだけでなく、変わらず自分も守ると言った。
今の今まで、見捨てる算段を企ていた相手を守る為に。
傷の痛みすらも知った事かと捨て置き、剣を振るい続ける。
現実的に考えてるだけと偽った本心を、一切の容赦なく引き摺り出し。
灰になりそうな程の輝きで、照らされてしまった。
抱いた希望が嘘ではないと、告げられてるようだった。
「僕はまだ、お兄さんを心から信じられない……信じていいのか分からなくて、恐い、から……」
信じれば信じる程、裏切られた時の傷は深い。
最初から信じなければ、期待なんてしなければ傷付かずに済む。
ああ、だけども。
もう一度、希望の齎す熱さを知ってしまった。
闇を照らす輝きを、自分の目に焼き付けたからこそ。
最初から信じなければ、期待なんてしなければ傷付かずに済む。
ああ、だけども。
もう一度、希望の齎す熱さを知ってしまった。
闇を照らす輝きを、自分の目に焼き付けたからこそ。
「僕にもう一度、希望を……鋼牙お兄さんを信じさせて……!」
「――――――っ!!」
「――――――っ!!」
言葉と共に、掌を通じて流し込む。
コネクトと同じ要領で、ねむ自身の魔力を鋼牙に授ける。
力は肉体に、声は魂へ届いた。
コネクトと同じ要領で、ねむ自身の魔力を鋼牙に授ける。
力は肉体に、声は魂へ届いた。
負ける気はない、退く気も諦める気も皆無。
彼女に交わした誓いを、違えるなど以ての外。
だが今、心火は一層の激しさを増し燃え上がる。
信じさせてくれと彼女は言った、自分に希望を見出したのだとハッキリ伝わった。
なれば、それに応えずして何が黄金騎士か。
誇り高き父、冴島大河の魂を継いだ守りし者としてするべき事は一つを置いて他に無し。
彼女に交わした誓いを、違えるなど以ての外。
だが今、心火は一層の激しさを増し燃え上がる。
信じさせてくれと彼女は言った、自分に希望を見出したのだとハッキリ伝わった。
なれば、それに応えずして何が黄金騎士か。
誇り高き父、冴島大河の魂を継いだ守りし者としてするべき事は一つを置いて他に無し。
「ねむ。お前の願い、確かに受け取った」
やがて訪れる絶望に抗う、希望となる少女達の力。
魔法少女の魔力を受け入れ、鎧が更に輝き出す。
昂る戦意を止める術はない、むしろまだ足りぬとばかりに奥底から湧き上がる。
魔法少女の魔力を受け入れ、鎧が更に輝き出す。
昂る戦意を止める術はない、むしろまだ足りぬとばかりに奥底から湧き上がる。
光あるところに、漆黒の闇ありき。
古来より恐れた闇が、此度も恐怖を齎す時。
希望の光を求める声を、必ずや聞き届けるのは誰か。
忘れるなかれ、世界や時代が違おうと。
闇を照らす騎士は、断じて不滅也。
古来より恐れた闇が、此度も恐怖を齎す時。
希望の光を求める声を、必ずや聞き届けるのは誰か。
忘れるなかれ、世界や時代が違おうと。
闇を照らす騎士は、断じて不滅也。
「お兄さん、君は本当に……」
輝きが一点に収束し、やがて新たな形を生み出す。
綺麗だと、胸から込み上げる熱さと共にそう思った。
銀色の縁取りが全身へ走り、各部の装甲は攻撃的で鋭利に変化。
されど、発せられる力は決して悪しき類に非ず。
真紅の瞳が爛々と光を放ち、見つめられてもねむに恐れはない。
最初に彼のこの姿を見た時と同じ、心を激しく揺さぶる衝撃が駆け巡った。
綺麗だと、胸から込み上げる熱さと共にそう思った。
銀色の縁取りが全身へ走り、各部の装甲は攻撃的で鋭利に変化。
されど、発せられる力は決して悪しき類に非ず。
真紅の瞳が爛々と光を放ち、見つめられてもねむに恐れはない。
最初に彼のこの姿を見た時と同じ、心を激しく揺さぶる衝撃が駆け巡った。
黄金騎士・牙狼翔。
異なる世界線において、鋼牙とは別の魔戒騎士が進化に至った姿。
魔法少女と黄金騎士、両者が持つ希望の可能性を心意システムが導いた。
悪辣なゲームマスターの恩恵、とは考えない。
鋼牙にとって重要なのはただ一つ、ねむの想いが己をここに押し上げたことのみ。
異なる世界線において、鋼牙とは別の魔戒騎士が進化に至った姿。
魔法少女と黄金騎士、両者が持つ希望の可能性を心意システムが導いた。
悪辣なゲームマスターの恩恵、とは考えない。
鋼牙にとって重要なのはただ一つ、ねむの想いが己をここに押し上げたことのみ。
「貴様それは――っ!?」
異様とも言える程に威圧感が増し、DIOも警戒心を引き上げる。
しかし問答を続けるつもりはない。
打ち倒すべき邪悪を前に、為すべき事は己が剣で斬るまで。
踏みしめた床が粉砕される加速で以て接近、重厚感の増した牙狼剣を一閃。
何らかの力を得たようだが、勝利を譲ると言った覚えはない。
ザ・ワールドを出現させ、暗黒斬の一撃を逆に見舞う。
パワーとスピード、両面で鋼牙にも全く引けを取らない。
しかし問答を続けるつもりはない。
打ち倒すべき邪悪を前に、為すべき事は己が剣で斬るまで。
踏みしめた床が粉砕される加速で以て接近、重厚感の増した牙狼剣を一閃。
何らかの力を得たようだが、勝利を譲ると言った覚えはない。
ザ・ワールドを出現させ、暗黒斬の一撃を逆に見舞う。
パワーとスピード、両面で鋼牙にも全く引けを取らない。
「ぐぉっ!?」
尤もそれは、先程までの話。
暗黒斬を弾き返し、間髪入れずに胴へ一文字を描く。
装甲の下でDIOが出血、焼ける痛みに顔を歪めるも相手は待たない。
相当な重量がありながらも軽やかで、それでいて一撃一撃に重みを宿す剣が襲来。
嵐の如く迫る斬撃に、ザ・ワールドを操作し迎撃。
暗黒斬を弾き返し、間髪入れずに胴へ一文字を描く。
装甲の下でDIOが出血、焼ける痛みに顔を歪めるも相手は待たない。
相当な重量がありながらも軽やかで、それでいて一撃一撃に重みを宿す剣が襲来。
嵐の如く迫る斬撃に、ザ・ワールドを操作し迎撃。
「オオオオオオオオオオッ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
刃と刃、善と悪。
互いに得物を振るう速度はとっくに、人間に視認可能な領域を外れている。
防ぎ、弾き、隙を掻い潜って捻じ込む。
互角に続くと思われた打ち合いは、数秒で攻勢が傾いた。
互いに得物を振るう速度はとっくに、人間に視認可能な領域を外れている。
防ぎ、弾き、隙を掻い潜って捻じ込む。
互角に続くと思われた打ち合いは、数秒で攻勢が傾いた。
(こ、この男……まだ速くなるだと……!?)
スタープラチナのラッシュすら追い越したザ・ワールドが、徐々に後れを取る。
繰り出される剣を防ぐのが遅い、弾かれた得物を引き戻すまで間に合わない。
一つ、また一つと打ち漏らした代償が刻まれていく。
あらぬ方へと戦斧を逸らされ、指二本で数えるまでもない隙が発生。
杭打機さながらの勢いで、鋼牙の拳が腹部を叩く。
本体へのフィードバックにより、内臓が潰れる激痛に襲われる。
繰り出される剣を防ぐのが遅い、弾かれた得物を引き戻すまで間に合わない。
一つ、また一つと打ち漏らした代償が刻まれていく。
あらぬ方へと戦斧を逸らされ、指二本で数えるまでもない隙が発生。
杭打機さながらの勢いで、鋼牙の拳が腹部を叩く。
本体へのフィードバックにより、内臓が潰れる激痛に襲われる。
「ほんのちょっぴり有利になったとて、このDIOの勝利を覆すには程遠いわっ!!」
傷は放っておいても治る、四肢が繋がっている以上は戦闘続行が十分可能。
何よりも、単純に力を増した程度で自分を打ち破れるものか。
未だに理解出来ぬ愚かしさを思い知らせるべく、己だけに許された能力を行使。
石像のように動かなくなった鋼牙へ、暗黒斬で執拗に攻撃。
そして時は動き出し、あえなく吹き飛ぶ無様な光景が――
何よりも、単純に力を増した程度で自分を打ち破れるものか。
未だに理解出来ぬ愚かしさを思い知らせるべく、己だけに許された能力を行使。
石像のように動かなくなった鋼牙へ、暗黒斬で執拗に攻撃。
そして時は動き出し、あえなく吹き飛ぶ無様な光景が――
「――っ、これがどうした!」
「なにぃっ!?」
「なにぃっ!?」
実現しない。
僅かに体勢が崩れるも、咆哮と共に踏み止まり隙を晒さない。
目を剥くDIOの反応すら切り捨て、前へと突き進む。
妨害へ動くが、今度ばかりは鋼牙の速さに置いてけぼりだ。
暗黒騎士の残骸諸共、無に帰す刃が放たれた。
僅かに体勢が崩れるも、咆哮と共に踏み止まり隙を晒さない。
目を剥くDIOの反応すら切り捨て、前へと突き進む。
妨害へ動くが、今度ばかりは鋼牙の速さに置いてけぼりだ。
暗黒騎士の残骸諸共、無に帰す刃が放たれた。
「おのれぇ……!!」
どうにか翳した暗黒斬は真っ二つに断たれ、ザ・ワールドにも斬傷を刻む。
ホラーという悪しき魂を斬る刃は、そこいらの鈍らで斬られるのとは大違い。
業火で炙られるかの如き痛みへ、炎にまつわる忌々しい記憶がチラ付く。
とはいえ感傷に浸る場合ではなく、鋼牙も剣を納める気配は無し。
一気に決めんと自身の装備、魔導火を取り出し着火。
刀身に纏わせた、揺らめく翠玉の炎が戦場の熱気を加速させた。
ホラーという悪しき魂を斬る刃は、そこいらの鈍らで斬られるのとは大違い。
業火で炙られるかの如き痛みへ、炎にまつわる忌々しい記憶がチラ付く。
とはいえ感傷に浸る場合ではなく、鋼牙も剣を納める気配は無し。
一気に決めんと自身の装備、魔導火を取り出し着火。
刀身に纏わせた、揺らめく翠玉の炎が戦場の熱気を加速させた。
「調子に乗るんじゃあないぞっ!金メッキを何枚重ねた所で、このDIOを倒せる道理などあるものかァーーーーーーーっ!!!」
『HAZARD FINISH!』
真正面から斬り掛かる鋼牙を近付けさせまいと、ビルドドライバーのレバーを操作。
蹴りと共に放った履帯状のエネルギーが、大蛇の如き獰猛さで迎え撃つ。
互いに一歩も譲る気は無い、しかし馬鹿正直に打ち合う気はDIOにある筈もなく。
仮面の下で騎士を嗤いながらスタンドを操作、戦斧は破壊されたが致命的な損失には程遠い。
蹴りと共に放った履帯状のエネルギーが、大蛇の如き獰猛さで迎え撃つ。
互いに一歩も譲る気は無い、しかし馬鹿正直に打ち合う気はDIOにある筈もなく。
仮面の下で騎士を嗤いながらスタンドを操作、戦斧は破壊されたが致命的な損失には程遠い。
(騎士道精神などと、野良犬の糞に埋もれるような下らんものを!このDIOが持ち合わせると思ったか?)
過程に拘り、正道に恥じない勝ち方をする?
馬鹿馬鹿しい、如何にもちっぽけな人間らしいものの考え方だ。
勝利するという結果へ辿り着くには、あらゆる手を使ってこそだろうに。
馬鹿馬鹿しい、如何にもちっぽけな人間らしいものの考え方だ。
勝利するという結果へ辿り着くには、あらゆる手を使ってこそだろうに。
時を止め、銃剣を大量に当てて多少なりとも怯ませるか。
いいやそれより、奴が必死こいて守りたがっている小娘を使うのもあり。
いずれにせよDIOだけの世界に入れない以上、最早敗北は決まったも同然。
いいやそれより、奴が必死こいて守りたがっている小娘を使うのもあり。
いずれにせよDIOだけの世界に入れない以上、最早敗北は決まったも同然。
「このDIOの勝利は最初から変わっていない!ザ・ワール――」
『プライムスクラップブレイク!』
揺るがぬ筈の帝王の勝利へ、決定的な亀裂を生み出す時が訪れた。
○
痛む体を引き摺り、どうにか仲間達が見える位置へ近付き。
そこで幻徳が見たのは、己の傷すら無視し鋼牙に力を与えるねむと、
少女の想いを受け取った、黄金騎士(ヒーロー)の姿。
そこで幻徳が見たのは、己の傷すら無視し鋼牙に力を与えるねむと、
少女の想いを受け取った、黄金騎士(ヒーロー)の姿。
諦めを踏み越え、邪悪に立ち向かう雄姿は。
正直に言って、眩しいくらいに羨ましかった。
嘗て決定的に道を間違え、数多の犠牲を生んだ悪党(ローグ)の自分には。
己が罪を炙り出されるのにも似た、羨望と苦痛を伴う熱さだ。
正直に言って、眩しいくらいに羨ましかった。
嘗て決定的に道を間違え、数多の犠牲を生んだ悪党(ローグ)の自分には。
己が罪を炙り出されるのにも似た、羨望と苦痛を伴う熱さだ。
けれど同時に、胸を強く打たれたのも本当。
希望を願う声を聞き届け、愛と平和の為に戦う。
それは桐生戦兎達が、自分の仲間が幾度となく見せて来たもの。
絶対的な邪悪に弄ばれ、打ちのめされる度に立ち上がるその様は。
いつだって見ている者に、これ以上ない勇気を与える。
希望を願う声を聞き届け、愛と平和の為に戦う。
それは桐生戦兎達が、自分の仲間が幾度となく見せて来たもの。
絶対的な邪悪に弄ばれ、打ちのめされる度に立ち上がるその様は。
いつだって見ている者に、これ以上ない勇気を与える。
(そうか……ああそうだ、肝心なことを忘れていたな……)
パンドラタワーでの決戦の時を思い出す。
恐いのは自分の死じゃない、何一つ出来ないままに力尽きる事だ。
善良な人々と、こんな自分を受け入れてくれた仲間達を喪う事だ。
強くなりたい、力が欲しいと。
ただそれだけを求めていては、悪党(ローグ)だった頃と何も変わらない。
恐いのは自分の死じゃない、何一つ出来ないままに力尽きる事だ。
善良な人々と、こんな自分を受け入れてくれた仲間達を喪う事だ。
強くなりたい、力が欲しいと。
ただそれだけを求めていては、悪党(ローグ)だった頃と何も変わらない。
力を欲する想いは同じ、だがそれは何もかもを壊す為じゃない。
我が身を大義の為に捧げても、守りたい者がいる。
死なせたくない奴らがいるからだと、今一度自分自身に答えを返す。
我が身を大義の為に捧げても、守りたい者がいる。
死なせたくない奴らがいるからだと、今一度自分自身に答えを返す。
見失いかけた信念を取り戻し、覚悟が最高以上に高まったというなら。
幻徳が己の力を取り戻すのもまた、自然な事だったろう。
幻徳が己の力を取り戻すのもまた、自然な事だったろう。
「もう一度、俺に力を貸してくれるのか……?」
心意システムが作用し、創造したソレは答えを返さない。
いいや、返す必要がないと分かる。
再び被る時が来たのだ、ラブ&ピースの元に地球を守った戦士の仮面を。
いいや、返す必要がないと分かる。
再び被る時が来たのだ、ラブ&ピースの元に地球を守った戦士の仮面を。
『プライムローグ!』
二つ折りの特殊な形状のボトルを、噛み付かせるように操作。
内部の成分が活性化し、変身に必要な準備が整った。
腹部に装着した機械、ビルドドライバーの機能に不調無し。
ボトルを装填するや、レバー回転と共にフラスコ型のファクトリーを展開。
己を奮い立たせる意味も籠めて、その言葉を叫ぶ。
内部の成分が活性化し、変身に必要な準備が整った。
腹部に装着した機械、ビルドドライバーの機能に不調無し。
ボトルを装填するや、レバー回転と共にフラスコ型のファクトリーを展開。
己を奮い立たせる意味も籠めて、その言葉を叫ぶ。
『Are You Ready?』
「変身……!」
『大義晩成!プライムローグ!』
『ドリャドリャドリャドリャ!ドリャァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』
パープルの装甲を全身に纏い、エングレービングを思わせる意匠が胴体に施される。
背には純白のマントを羽織り、無骨な全体とは裏腹の高貴さを醸し出す。
顎の噛み付いたような特徴的な頭部で、エメラルドグリーンの瞳が光を発した。
背には純白のマントを羽織り、無骨な全体とは裏腹の高貴さを醸し出す。
顎の噛み付いたような特徴的な頭部で、エメラルドグリーンの瞳が光を発した。
仮面ライダープライムローグ。
幻徳が本来変身する戦士、仮面ライダーローグの強化形態がここに再誕。
幻徳が本来変身する戦士、仮面ライダーローグの強化形態がここに再誕。
旧世界ではエボルト相手に一度は渡り合うも、ボトルの破壊で二度目の変身は不可能にされた。
まさか今になって、またこの姿になれるとは予想外。
自分の元へドライバーとボトルが現れた現象に、深く考えたい欲求も抑える。
戦う為の力が手元にあるなら、何をすべきか考え込む必要はない。
まさか今になって、またこの姿になれるとは予想外。
自分の元へドライバーとボトルが現れた現象に、深く考えたい欲求も抑える。
戦う為の力が手元にあるなら、何をすべきか考え込む必要はない。
見れば鋼牙とDIOが真っ向からぶつかっているが、敵が正々堂々とかけ離れた男なのは嫌と言う程知った。
出現させた拳闘士へ、抱くのは悪い予感ばかり。
ならば自分も急ぎ動きに出て、仲間の敗北を打ち砕かねばなるまい。
レバーを勢い良く回転、ボトルのエネルギーを変身時以上に活性化し付与。
出現させた拳闘士へ、抱くのは悪い予感ばかり。
ならば自分も急ぎ動きに出て、仲間の敗北を打ち砕かねばなるまい。
レバーを勢い良く回転、ボトルのエネルギーを変身時以上に活性化し付与。
「卑怯と言われる筋合いはないぞ。俺は元々、お前と同じ悪党だからな…!」
雑魚と侮ったのが大間違いとでも言うように、帝王の勝利へ楔を打ち込んだ。
「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?」
両足から発生させた顎状のエネルギーで、ザ・ワールドを挟み込む。
圧殺用の拷問器具に掛けられてるに等しい痛みが、本体にも容赦なく襲い掛かる。
時を止める筈が、DIOの口から飛び出すのは悲鳴のみだ。
圧殺用の拷問器具に掛けられてるに等しい痛みが、本体にも容赦なく襲い掛かる。
時を止める筈が、DIOの口から飛び出すのは悲鳴のみだ。
「は、離れん……!ザ・ワールドのパワーを以てしても、こいつを引き剥がせんだと……!?」
力任せに打ち破ろうにも、ローグのエネルギーからは逃れられない。
スカル以上のスペックもさることながら、ビルドドライバーを使用して感情を激しく震わせる。
これにより起きるのは、ゲームで万丈や一海が格上に食らい付いたのと同じ。
ハザードレベルの上昇により、ザ・ワールドにすら抵抗を許さない。
スカル以上のスペックもさることながら、ビルドドライバーを使用して感情を激しく震わせる。
これにより起きるのは、ゲームで万丈や一海が格上に食らい付いたのと同じ。
ハザードレベルの上昇により、ザ・ワールドにすら抵抗を許さない。
「冴島!」
「ああ…!礼を言う!」
「ああ…!礼を言う!」
スタンドの受けたダメージが本体にも伝わり、鋼牙を相手取るDIOの勢いも低下。
牙狼剣が大蛇の如きエネルギーを切り裂き、刃が突き立てられるまで一刻の猶予もない。
更にDIOの焦りを加速させるのは、刀身が向かう先にあるもの。
腹部の機械、ビルドドライバーが狙われていると気付いた。
牙狼剣が大蛇の如きエネルギーを切り裂き、刃が突き立てられるまで一刻の猶予もない。
更にDIOの焦りを加速させるのは、刀身が向かう先にあるもの。
腹部の機械、ビルドドライバーが狙われていると気付いた。
「お、のれぇぇぇ……!!!」
肉体の傷ならばまだいい、最悪四肢を失ってもどうにかなる。
だが、太陽を遮断する道具を破壊されてしまったら。
破壊の痕跡が大量に刻まれた屋敷内を照らす、目障りな光を浴びてしまったら。
抗う事の出来ない、終焉が齎されるだろう。
だが、太陽を遮断する道具を破壊されてしまったら。
破壊の痕跡が大量に刻まれた屋敷内を照らす、目障りな光を浴びてしまったら。
抗う事の出来ない、終焉が齎されるだろう。
「チィッ……!」
強引な体勢から身を捩り、ドライバーへの直撃だけは避ける。
直後、胸部を刃が奔るのも痛みが来るのも予想の範疇内。
憎たらし気に牙を打ち鳴らし、吹き飛ぶ最中も黄金の狼を視界に閉じ込めた。
決闘者達とはまた別の、忌々しい障害を。
直後、胸部を刃が奔るのも痛みが来るのも予想の範疇内。
憎たらし気に牙を打ち鳴らし、吹き飛ぶ最中も黄金の狼を視界に閉じ込めた。
決闘者達とはまた別の、忌々しい障害を。
「この屈辱、忘れはせんぞ……!」
吐き捨てた声は虚しく宙に消え、行先不明の空の旅へ暫し身を委ねる。
後に残るは、邪悪の帝王を退けたプレイヤー達。
脅威が一先ずいなくなり、意識は仲間の負傷へ向かう。
後に残るは、邪悪の帝王を退けたプレイヤー達。
脅威が一先ずいなくなり、意識は仲間の負傷へ向かう。
「ねむ、その傷は……」
「これくらいなら、魔力を使って治せるよ。僕よりも、二人の方が散々殴られただろう?」
「これくらいなら、魔力を使って治せるよ。僕よりも、二人の方が散々殴られただろう?」
痛みに慣れているとはいえ、鋼牙達の負傷は軽くない筈。
尤も、ゆっくり治療に充てる余裕はない。
これで終わったと気を抜くには、残念ながらまだ早いのだから。
尤も、ゆっくり治療に充てる余裕はない。
これで終わったと気を抜くには、残念ながらまだ早いのだから。
「あれは……!」
半壊した屋敷を震わせる雄叫びが響き渡り、もう一つの戦場もただならぬ事態と察する他なかった。
○
頭上より振り下ろされた大槌を躱し、聖剣の一撃を見舞う。
少女の細腕と侮るなかれ、騎士王の力を我が身に宿して振るう剣だ。
小癪な抵抗を許さぬ速さなれど、敵の焦りを引き出すには少々足りない。
右脚で蹴り上げ相殺、狙いを逸らせば即座に反撃に移る。
少女の細腕と侮るなかれ、騎士王の力を我が身に宿して振るう剣だ。
小癪な抵抗を許さぬ速さなれど、敵の焦りを引き出すには少々足りない。
右脚で蹴り上げ相殺、狙いを逸らせば即座に反撃に移る。
「ホラホラホラホラ!」
「う、く……!」
「う、く……!」
左拳の連打を剣の腹で防ぎ、どうにか押し返さんとする。
だが一手早く迫るは大槌、豪快に振り回し全身を肉片に変える気か。
ならばと地を蹴って跳躍、一刀両断の勢いで真下目掛け叩っ斬る。
だが一手早く迫るは大槌、豪快に振り回し全身を肉片に変える気か。
ならばと地を蹴って跳躍、一刀両断の勢いで真下目掛け叩っ斬る。
「カスが効かねぇんだよ!(無敵)」
淫夢最強と名高い武神の語録を無断で使いつつ、頭上へと右拳を放つ。
刀身を激しく震わせ、痺れが使い手の腕にも伝わる。
手放さないよう力を籠め、危ういながらも着地。
頬に一筋の汗を流すも、休憩時間は与えられない。
刀身を激しく震わせ、痺れが使い手の腕にも伝わる。
手放さないよう力を籠め、危ういながらも着地。
頬に一筋の汗を流すも、休憩時間は与えられない。
「攻撃だ!エアトス!」
仲間が少しでも呼吸を整えられるよう、モンスターに指示を飛ばす。
真っ向より斬り掛かる女剣士を視界に納め、浮かべる笑みの何と邪悪なことか。
嘗ては初代決闘王を苦しめた存在だろうと、まるで脅威にならない。
真っ向より斬り掛かる女剣士を視界に納め、浮かべる笑みの何と邪悪なことか。
嘗ては初代決闘王を苦しめた存在だろうと、まるで脅威にならない。
「だからこんなんじゃ戦力にならないんだよ(棒)」
大槌を頭上に掲げ、得物へ雷を落とす。
屋外にいる場合に限り効果がある招雷スキルは、クラスカードの使用者が変わっても健在。
帯電させた鉄塊がエアトスを叩き、悲鳴すら上げられずに炭と化す。
被害はモンスター一体で終わらない、地面を焦がしながら電撃が撒き散らされた。
屋外にいる場合に限り効果がある招雷スキルは、クラスカードの使用者が変わっても健在。
帯電させた鉄塊がエアトスを叩き、悲鳴すら上げられずに炭と化す。
被害はモンスター一体で終わらない、地面を焦がしながら電撃が撒き散らされた。
「させない……!」
エアトスの召喚者をも焼き潰す気だろうが、断じてやらせはしない。
主霊石の力を引き出し、こちらも聖剣を帯電。
薙ぎ払うように振り回すと、複数の光刃が飛来し電撃を打ち消す。
草花の焦げる臭いが立ち込める中、二人のカレイドライナーが睨み合う。
主霊石の力を引き出し、こちらも聖剣を帯電。
薙ぎ払うように振り回すと、複数の光刃が飛来し電撃を打ち消す。
草花の焦げる臭いが立ち込める中、二人のカレイドライナーが睨み合う。
『うぬぬ……!イリヤさんのパチモンになっただけでなく、無駄に使いこなすとは本当にとんでもないオッサンですね!』
「おじ↑さん↓だと!?ふざけんじゃねぇよオラァ!お兄さんだルォ!?」
「おじ↑さん↓だと!?ふざけんじゃねぇよオラァ!お兄さんだルォ!?」
どこぞの悶絶少年専属調教師のようにキレ散らかす、人間の屑こと野獣先輩。
相変わらず顔は元のままなのに、体はイリヤという非常に歪な姿だった。
見た目がシュールなだけならまだしも、能力も侮れないのだから始末に負えない。
相変わらず顔は元のままなのに、体はイリヤという非常に歪な姿だった。
見た目がシュールなだけならまだしも、能力も侮れないのだから始末に負えない。
「怒るとこそこなんだ、このおじさん……」
「24歳、学生です(全ギレ)」
「あっ(察し)」
「24歳、学生です(全ギレ)」
「あっ(察し)」
思わぬ所で実年齢と身分を聞かされ、何かを察したがそれはともかく。
傍目にはマグニのクラスカードを使い、互角か有利に見える。
しかし新説シリーズは使用を重ねる毎に消耗し、体力的な余裕が剥がれ落ちる諸刃の剣。
野獣先輩にも少なくない疲労が蓄積しており、戦闘を長引かせるメリットは無し。
よって、次に切るべき手札は決まったも同然。
傍目にはマグニのクラスカードを使い、互角か有利に見える。
しかし新説シリーズは使用を重ねる毎に消耗し、体力的な余裕が剥がれ落ちる諸刃の剣。
野獣先輩にも少なくない疲労が蓄積しており、戦闘を長引かせるメリットは無し。
よって、次に切るべき手札は決まったも同然。
「じゃけん奥の手使いましょうね~」
あくどい笑みを深め、大槌に再度雷を落とし帯電。
直後、野獣先輩の発するプレッシャーが数段階上昇。
数回に渡りマグニのカードの使い手とぶつかったイリヤには、何が来るか即座に分かった。
直後、野獣先輩の発するプレッシャーが数段階上昇。
数回に渡りマグニのカードの使い手とぶつかったイリヤには、何が来るか即座に分かった。
『イリヤさん!』
「分かってるよ……!遊戯さんごめん!」
「なっ――」
「分かってるよ……!遊戯さんごめん!」
「なっ――」
ルビーから詳細に促されるまでもなく、既に行動に移した。
遊戯の腕を掴むや、全速力で距離を取る。
自分一人だけならまだしも、彼がアレを避けるのはまず不可能と言っていい。
遊戯の腕を掴むや、全速力で距離を取る。
自分一人だけならまだしも、彼がアレを避けるのはまず不可能と言っていい。
「悉く打ち砕く雷神の槌(ミョルニル)!!」
予想通りの、当たって欲しくない雷撃が襲い来る。
真名開放により、これまでの攻撃がお遊び同然の脅威へ昇華。
万物を破壊する神の雷が、前方一帯を焼き払う。
手入れの行き届いた庭など、最早何処にも見当たらない。
人間が食らえば、消し炭の末路は免れないだろう。
真名開放により、これまでの攻撃がお遊び同然の脅威へ昇華。
万物を破壊する神の雷が、前方一帯を焼き払う。
手入れの行き届いた庭など、最早何処にも見当たらない。
人間が食らえば、消し炭の末路は免れないだろう。
「……っ、遊戯さん無事!?」
「あ、ああ…!」
「あ、ああ…!」
それを知っている故に、イリヤの判断は迅速だった。
騎士王の身体能力をフルに使い、並行し光の主霊石の力も上乗せ。
本来の所持者たるガナベルトがやったのと同じ、エネルギーを己に流し込んで敏捷性を爆発的に強化。
マグニの宝具の射線から、紙一重だが逃れるのに成功した。
騎士王の身体能力をフルに使い、並行し光の主霊石の力も上乗せ。
本来の所持者たるガナベルトがやったのと同じ、エネルギーを己に流し込んで敏捷性を爆発的に強化。
マグニの宝具の射線から、紙一重だが逃れるのに成功した。
「Foo!↑気持ちいい~(恍惚)。やっぱりこういう力は、俺が優勝する為に使ってこそだってハッキリ分かんだね」
自身が放った雷撃の威力へ、野獣先輩はクッソ汚いご満悦状態。
チマチマデュエルモンスターズのカードを並べるより、シンプルに強力な道具だ。
こんな力を目障りなメスガキに持たせておくなど、宝の持ち腐れもいいところ。
愛する後輩の蘇生の為に、今後も有効活用してやる。
クラスカードを完全に自分の物扱いし、人間の屑っぷりをこれでもかと見せ付けた。
チマチマデュエルモンスターズのカードを並べるより、シンプルに強力な道具だ。
こんな力を目障りなメスガキに持たせておくなど、宝の持ち腐れもいいところ。
愛する後輩の蘇生の為に、今後も有効活用してやる。
クラスカードを完全に自分の物扱いし、人間の屑っぷりをこれでもかと見せ付けた。
「ふざけないで……!」
クラスカードを奪った挙句、好き勝手言う男へイリヤの怒りが飛ぶ。
この力を元は誰が振るったのか。
どんな想いで、誰の為に戦っていたのかを知りもせず。
恋心を失う絶望に突き落とされて、それでももう一度同じ人を好きになれた。
『彼女』のことを知ろうともしない者が、
この力を元は誰が振るったのか。
どんな想いで、誰の為に戦っていたのかを知りもせず。
恋心を失う絶望に突き落とされて、それでももう一度同じ人を好きになれた。
『彼女』のことを知ろうともしない者が、
「その力は…籠められた想いは!あなたが触れていいものじゃない!」
「うるさいんじゃい!メスガキがグチグチと頭に来ますよ!」
「うるさいんじゃい!メスガキがグチグチと頭に来ますよ!」
上機嫌から一転、目力を異様に強めて怒りを剥き出す。
野獣先輩にとって、クラスカードの本来の所持者云々は心底どうでもいい。
自分はただ、大切な後輩を生き返らせたいだけ。
愛故の修羅の道を阻む者は、女だろうが子供だろうが蹴散らすまで。
野獣先輩にとって、クラスカードの本来の所持者云々は心底どうでもいい。
自分はただ、大切な後輩を生き返らせたいだけ。
愛故の修羅の道を阻む者は、女だろうが子供だろうが蹴散らすまで。
「爆砕かけますね~」
大槌で地面を叩き、地面の粉砕と同時に衝撃波が発生。
吹き飛ばされるイリヤ達を鼻で笑い、得物を数度目の帯電。
髪の毛一本残さず消し去れば、二度と小生意気な戯言も口に出来まい。
魔力が高まり出し、神罰を放つ瞬間が足音を立てて近付く。
吹き飛ばされるイリヤ達を鼻で笑い、得物を数度目の帯電。
髪の毛一本残さず消し去れば、二度と小生意気な戯言も口に出来まい。
魔力が高まり出し、神罰を放つ瞬間が足音を立てて近付く。
「っ!遊戯さん、出来るだけ離れて!」
受け身を取り、地面への激突は回避した。
だが二度目の雷撃を避ける時間は、どうやら残されていないらしい。
こちらも持てる最大威力で対抗する他ない。
背後にいる仲間を見ないまま、退避を促し覚悟を決める。
だが二度目の雷撃を避ける時間は、どうやら残されていないらしい。
こちらも持てる最大威力で対抗する他ない。
背後にいる仲間を見ないまま、退避を促し覚悟を決める。
「イリヤ……くっ…!」
醜悪さを煮詰めた男へ立ち向かわんとする少女の背に、遊戯は堪らず拳を握り締める。
持てる手札で支援に動いたといっても、結局はイリヤに負担を強いてばかり。
デッキが無いから仕方ない、そう内心で何度納得させようとしても。
湧き上がるのは、ロクに仲間の力になれない己への不甲斐なさ。
持てる手札で支援に動いたといっても、結局はイリヤに負担を強いてばかり。
デッキが無いから仕方ない、そう内心で何度納得させようとしても。
湧き上がるのは、ロクに仲間の力になれない己への不甲斐なさ。
(これじゃあ涼邑さんが死んだ時と同じだ……!)
もっと自分にやれることがあったんじゃないか。
そうすれば零はまだ生きて、共に戦えたのではないか。
そうすれば零はまだ生きて、共に戦えたのではないか。
零だけじゃない、城之内も死力を尽くして強敵に勝った
遊星や海馬だって、仲間達の大きな助けになったと聞く。
一方自分はどうだ、本当に仲間の支えになっていると言えるのか。
今だって、イリヤ一人に負担を押し付け。
自分は彼女の援護どころか、守らせるせいで重荷も同然だろうに。
遊星や海馬だって、仲間達の大きな助けになったと聞く。
一方自分はどうだ、本当に仲間の支えになっていると言えるのか。
今だって、イリヤ一人に負担を押し付け。
自分は彼女の援護どころか、守らせるせいで重荷も同然だろうに。
「俺は……」
デッキが無ければ、初代決闘王の称号もただのお飾りに過ぎない。
無力感を噛み締める己を嗤う、それこそがゲームマスターの目的だとでも言うのか。
ただの憶測をも、馬鹿正直に信じ兼ねない自分が情けなく――
無力感を噛み締める己を嗤う、それこそがゲームマスターの目的だとでも言うのか。
ただの憶測をも、馬鹿正直に信じ兼ねない自分が情けなく――
(諦めちゃダメだ!もう一人の僕!)
沈み行く心へ手を伸ばし、引き上げる声が届いた。
聞こえるのは遊戯…名も無きファラオただ一人。
本来の人格たる少年から喝を入れられ、ハッと顔を上げる。
聞こえるのは遊戯…名も無きファラオただ一人。
本来の人格たる少年から喝を入れられ、ハッと顔を上げる。
「相棒……」
(もう一人の僕。君にばっかり戦わせてる僕に、偉そうなことを言う資格なんてないのは分かってる……)
(もう一人の僕。君にばっかり戦わせてる僕に、偉そうなことを言う資格なんてないのは分かってる……)
僅か数枚のカードを武器に、本物の殺し合いに挑んで来た。
その度に傷付く相棒へ、ずっと潜んだままの自分が何かを言うのもおかしな話だ。
その度に傷付く相棒へ、ずっと潜んだままの自分が何かを言うのもおかしな話だ。
(だけど、僕は今まで何度も見て来た。決闘(デュエル)で追い詰められても、デッキを信じて勝利の鍵を掴む君の事を!)
それでも、彼の戦いを一番傍で見続けて来たのは間違いなく自分なのだ。
だからこそ誰にも否定させず、自信を持って言える。
カードの可能性と絆を信じる時、彼は必ず敗北を跳ね除けられると。
だからこそ誰にも否定させず、自信を持って言える。
カードの可能性と絆を信じる時、彼は必ず敗北を跳ね除けられると。
(たとえ僕達の元にデッキがなくても、可能性を信じる事をやめなければきっと……!)
「……ああ。ありがとうな、相棒。どうやら俺も、大事な事を忘れそうになってたぜ」
「……ああ。ありがとうな、相棒。どうやら俺も、大事な事を忘れそうになってたぜ」
俯いていた顔を上げた時、そこに己を責める姿はない。
ああ全く、相棒である彼の言う通りだ。
たとえ手元に無いとしても、これまで共に戦って来たカード達を。
心強い仲間との絆を、信じずにどうする。
ああ全く、相棒である彼の言う通りだ。
たとえ手元に無いとしても、これまで共に戦って来たカード達を。
心強い仲間との絆を、信じずにどうする。
目を閉じ、強く願う。
今も自分を守ろうと、強敵に立ち向かおうとする少女がいる。
彼女の力になりたい、大切な仲間を喪わない為に。
今も自分を守ろうと、強敵に立ち向かおうとする少女がいる。
彼女の力になりたい、大切な仲間を喪わない為に。
(俺の声が聞こえているなら、力を貸してくれ……!)
確実に得られる保障はない、誰しもがそこへ至れるとは限らない。
都合の良い展開へ期待してるだけと、吐き捨てる者だっているかもしれない。
なれど、遊戯は手を伸ばし続ける。
幾つもの決闘(デュエル)に勝利し、時には苦い敗北を味わい。
数え切れない程の戦いの道(ロード)を歩んだ、絆の力を。
都合の良い展開へ期待してるだけと、吐き捨てる者だっているかもしれない。
なれど、遊戯は手を伸ばし続ける。
幾つもの決闘(デュエル)に勝利し、時には苦い敗北を味わい。
数え切れない程の戦いの道(ロード)を歩んだ、絆の力を。
「仲間を守る為の力を、俺に……!」
――そして、戦友(とも)はその声に応えた。
目を開いた時、手には今まで無かった一枚のカード。
名前は記されておらず、テキストだって皆無。
しかし遊戯は、このカードを知っている。
描かれた蒼き眼の竜を、知らないなんて有り得ない。
名前は記されておらず、テキストだって皆無。
しかし遊戯は、このカードを知っている。
描かれた蒼き眼の竜を、知らないなんて有り得ない。
「そうか……もう一度俺と戦ってくれるんだな……」
問い掛けへ応と言うように、咆哮が聞こえた。
思い出すのは、嘗てイメージに導かれ剣を引き抜いた瞬間。
心の闇が齎す、憎悪と絶望が蔓延する魂を賭けたゲーム。
戦いの中で半身を喪い、だが自らの弱さに打ち勝つ事が出来た死闘。
役目を終え眠り付いた筈が、今再び共に戦ってくれるのなら。
思い出すのは、嘗てイメージに導かれ剣を引き抜いた瞬間。
心の闇が齎す、憎悪と絶望が蔓延する魂を賭けたゲーム。
戦いの中で半身を喪い、だが自らの弱さに打ち勝つ事が出来た死闘。
役目を終え眠り付いた筈が、今再び共に戦ってくれるのなら。
「俺は手札から――ティマイオスの眼を発動!」
その想い、確かに受け取った。
ドーマとの戦いで手にした、名も無き竜の一体。
ティマイオスの眼が、遊戯の宣言により効果を発動。
正規のデュエルとは状況が大きく違うも、決して無意味ではない。
ティマイオスの眼が、遊戯の宣言により効果を発動。
正規のデュエルとは状況が大きく違うも、決して無意味ではない。
「イリヤ!受け取ってくれ!」
「えっ?えぇっ!?」
「えっ?えぇっ!?」
突然の名指しへ困惑も一瞬、驚愕に目を白黒させる。
いきなり自分の目線が高くなり、何事かと視線を動かせば即座に理由が判明。
何時の間にやら、巨大な蒼竜へ跨っているではないか。
いきなり自分の目線が高くなり、何事かと視線を動かせば即座に理由が判明。
何時の間にやら、巨大な蒼竜へ跨っているではないか。
『ふおおおおおお!?こ、これが噂の乗っただけ融合ですか!?』
「そんな噂聞いたことないけど!?で、でも何だろう、この子と一緒だと力が湧いて来るみたい……!」
「そんな噂聞いたことないけど!?で、でも何だろう、この子と一緒だと力が湧いて来るみたい……!」
本来ティマイオスの眼は場のモンスターと融合し、新たなモンスターを召喚するカード。
とはいえ、現実の戦闘にデュエルモンスターズの干渉が可能なゲームにおいて。
参加者がティマイオスの恩恵に与ったとて、何ら不思議じゃあない。
イリヤを背に乗せ、人竜一体の力を授けた。
とはいえ、現実の戦闘にデュエルモンスターズの干渉が可能なゲームにおいて。
参加者がティマイオスの恩恵に与ったとて、何ら不思議じゃあない。
イリヤを背に乗せ、人竜一体の力を授けた。
「爬虫類一匹に乗った程度で勝つ気とか甘過ぎィ!笑っちゃうぜ!馬鹿じゃねぇの(嘲笑)」
その姿を見ても、野獣先輩に怯む様子は欠片程も無し。
今更デュエルモンスターズのカードに頼った所で、一体何の役に立つ。
自分が振るうのは神域の力、それもホモガキに祭り上げられたGOなどとはモノが違う。
本物の神話が如何なるものかを、メスガキの体にたっぷりと味合わせてやる。
今更デュエルモンスターズのカードに頼った所で、一体何の役に立つ。
自分が振るうのは神域の力、それもホモガキに祭り上げられたGOなどとはモノが違う。
本物の神話が如何なるものかを、メスガキの体にたっぷりと味合わせてやる。
「もう一発いきますよ~イクイク!」
見るがいい、矮小な小娘よ。
物質と霊子にまで物理的な破壊を齎す、神罰の味を噛み締めろ。
己の愛の贄として、ここで朽ち果てるがいい。
想い人を取り戻さんとするが故に、善性を捨て去った傲慢な光が再び放たれる。
物質と霊子にまで物理的な破壊を齎す、神罰の味を噛み締めろ。
己の愛の贄として、ここで朽ち果てるがいい。
想い人を取り戻さんとするが故に、善性を捨て去った傲慢な光が再び放たれる。
「悉く打ち砕く雷神の槌(ミョルニル)!!」
視界いっぱいを覆い尽くす雷を前に、人間に出来ることはただ一つ。
跪き、自らの最期を受け入れるのみ。
だがしかし、そんな殊勝な心掛けなどイリヤには真っ平御免だ。
死ねない理由がある、生きて為さねばならない理想(わがまま)があるから。
跪き、自らの最期を受け入れるのみ。
だがしかし、そんな殊勝な心掛けなどイリヤには真っ平御免だ。
死ねない理由がある、生きて為さねばならない理想(わがまま)があるから。
「行くよ!」
押し付けられる幕切れなんて、真正面から打ち砕く。
イリヤの声に頷き、蒼竜が飛翔。
雷撃を避ける事もせず、真っ直ぐに突き進む。
跨ったまま聖剣を前に突き出し、更に主霊石を行使。
刀身へエネルギーを一点集中、神の裁きへ挑まんとする。
雷撃を避ける事もせず、真っ直ぐに突き進む。
跨ったまま聖剣を前に突き出し、更に主霊石を行使。
刀身へエネルギーを一点集中、神の裁きへ挑まんとする。
誰がどう見ても、無謀以外の何者でもない。
所詮はただの悪足掻きと、下衆同然の笑みを浮かべ、
所詮はただの悪足掻きと、下衆同然の笑みを浮かべ、
「ウッソだろお前!?」
雷撃を真っ向から切り裂き迫り来る竜騎士に、凍り付いた。
成程確かに、神の力は圧倒的と言う他ないだろう。
されど、人間が神に届かないと誰が決めた。
ブリテンとデュエルモンスターズ界、それぞれの民の理想を一身に背負い戦った王と蒼竜。
両者の力は反発する事なく、少女の理想(わがまま)の為に力を授ける。
時代や世界は違えど、誰かの願いを叶えるべく戦った彼らの英雄譚は。
愛で誤魔化した醜悪な欲望に、断じて屈しない。
されど、人間が神に届かないと誰が決めた。
ブリテンとデュエルモンスターズ界、それぞれの民の理想を一身に背負い戦った王と蒼竜。
両者の力は反発する事なく、少女の理想(わがまま)の為に力を授ける。
時代や世界は違えど、誰かの願いを叶えるべく戦った彼らの英雄譚は。
愛で誤魔化した醜悪な欲望に、断じて屈しない。
「願いの強さは、神様にだって負けない!!」
主霊石のエネルギーの出力を、数段階上昇。
イリヤと蒼竜自身が、魔を貫く必殺の弾丸と化す。
最早誰にも止められない、敵の焦る顔が間近に見える。
殺戮で以て叶えんとする理想へ、刃が深く差し込まれた。
イリヤと蒼竜自身が、魔を貫く必殺の弾丸と化す。
最早誰にも止められない、敵の焦る顔が間近に見える。
殺戮で以て叶えんとする理想へ、刃が深く差し込まれた。
「出会いたい!(届かぬ思い)」
堪らず叫んだ相手は愛しの後輩か、或いは自分を助ける都合の良い存在か。
いずれにせよ届く筈がなく、聖剣が胴体を走る。
痛みに悶絶する暇すら与えず、片手を添えてトドメの一手を発動。
この距離だからこそ、そしてクラスカード相手だからこそ使える方法だ。
いずれにせよ届く筈がなく、聖剣が胴体を走る。
痛みに悶絶する暇すら与えず、片手を添えてトドメの一手を発動。
この距離だからこそ、そしてクラスカード相手だからこそ使える方法だ。
「返してもらうよ。もうこれ以上、あの娘達の想いを汚させない為にも!」
強制排出魔術により、マグニのクラスカードを取り戻す。
元の姿に戻った野獣先輩は膝を付き、だが殺意の籠った瞳でイリヤを睨む。
元の姿に戻った野獣先輩は膝を付き、だが殺意の籠った瞳でイリヤを睨む。
『力の急上昇を確認!急いで退避を!』
「う、うん!」
「う、うん!」
相棒の感知機能を今更疑わず、迅速に距離を取る。
判断は正解だ、野獣先輩の体から尋常ならざる力が放出。
マグニのカードを奪還されようと、何の問題も無い。
神になる為の力は、まだ持っているのだから。
判断は正解だ、野獣先輩の体から尋常ならざる力が放出。
マグニのカードを奪還されようと、何の問題も無い。
神になる為の力は、まだ持っているのだから。
「お ま た せ」
そして現れるは、エーデルフェルト邸を見下ろす赤い巨体。
とぐろを巻き睥睨する様を前に、誰もが戦慄を隠せないだろう。
野獣先輩オシリスの天空竜説。
ウルヴァリン説や情報生命体説に並び、野獣先輩の正体に最も近いとされる説だ。
聖都大学附属病院での戦闘に続き、此度も小癪な連中を蹴散らす為に発動。
出現と同時に放つ洗礼、招雷弾がイリヤを蒼竜共々痛め付ける。
とぐろを巻き睥睨する様を前に、誰もが戦慄を隠せないだろう。
野獣先輩オシリスの天空竜説。
ウルヴァリン説や情報生命体説に並び、野獣先輩の正体に最も近いとされる説だ。
聖都大学附属病院での戦闘に続き、此度も小癪な連中を蹴散らす為に発動。
出現と同時に放つ洗礼、招雷弾がイリヤを蒼竜共々痛め付ける。
「くぅうううっ……!」
対魔力スキルの恩恵で、ダメージはある程度防げた。
しかしティマイオスと融合中な事が皮肉にも、デュエルモンスターズのモンスター扱いされたのだろう。
オシリスのモンスター効果の影響をモロに受け、力を削がれる。
痺れが纏わり付く感覚を、腕を振るって強引に振り払う。
敵は更に力を増した状態で健在、怯んでなんかいられない。
しかしティマイオスと融合中な事が皮肉にも、デュエルモンスターズのモンスター扱いされたのだろう。
オシリスのモンスター効果の影響をモロに受け、力を削がれる。
痺れが纏わり付く感覚を、腕を振るって強引に振り払う。
敵は更に力を増した状態で健在、怯んでなんかいられない。
「本当にオシリスなのか……!?」
見上げる程の巨体へ、遊戯も驚きを隠せなかった。
いろは達から聞いていたとはいえ、三幻神に姿を変えるなどこの目で見ても信じ難い。
ネットミームの集合体であるホモビ男優が、敵の正体だと知る由もなく。
一体何者なのかと困惑するも、駆け寄って来る気配で我に返った。
いろは達から聞いていたとはいえ、三幻神に姿を変えるなどこの目で見ても信じ難い。
ネットミームの集合体であるホモビ男優が、敵の正体だと知る由もなく。
一体何者なのかと困惑するも、駆け寄って来る気配で我に返った。
「遊戯!イリヤ!無事か!?」
「冴島さん?こっちに来たってことは……」
「一先ず僕達の方は勝ったと、言って良いだろうね。…まだ気を抜ける状況じゃなさそうだけど」
「まさかとは思うが、あの竜の正体は……」
「冴島さん?こっちに来たってことは……」
「一先ず僕達の方は勝ったと、言って良いだろうね。…まだ気を抜ける状況じゃなさそうだけど」
「まさかとは思うが、あの竜の正体は……」
DIOとの戦闘を終えた鋼牙達も、無事に合流を果たす。
案の定各々驚愕し、嫌な予感を拭えない様子で幻徳が問う。
的中させてしまい申し訳ないが、遊戯も頷き肯定を返した。
案の定各々驚愕し、嫌な予感を拭えない様子で幻徳が問う。
的中させてしまい申し訳ないが、遊戯も頷き肯定を返した。
「彼の手元に今このカードは無い筈だけど、それとは無関係に姿を変えられるのかな」
「なに?っ、それは……!」
「なに?っ、それは……!」
何でもありにも程がある野獣先輩に軽く引きつつ、ねむが手に持ったカードを見せる。
描かれた赤い竜は正しく、自分達を見下ろすオシリスと全く同じ。
DIOが現れる前、焦燥と怒りに急かされ野獣先輩が召喚を試みたカードだ。
コピーロボットが破壊された時、掌から放れそのまま屋敷内に放置。
マジェスペクターのデッキ諸共破り捨てられず、戦闘の巻き添えで焼き払われてもいない。
二つの幸運を経て、外へ出る前に偶然見つけたねむに回収されていた。
描かれた赤い竜は正しく、自分達を見下ろすオシリスと全く同じ。
DIOが現れる前、焦燥と怒りに急かされ野獣先輩が召喚を試みたカードだ。
コピーロボットが破壊された時、掌から放れそのまま屋敷内に放置。
マジェスペクターのデッキ諸共破り捨てられず、戦闘の巻き添えで焼き払われてもいない。
二つの幸運を経て、外へ出る前に偶然見つけたねむに回収されていた。
何はともあれ、オシリスが遊戯の手元に再び戻って来た。
だが一安心と言うにはまだ早い。
だが一安心と言うにはまだ早い。
(今の状態で、本当にオシリスを召喚できるのか……?)
上級モンスターのエアトスを正規の手順を踏まずに召喚出来る事から、デッキ無しでも扱えるようカードに細工されてるのは分かる。
とはいえ三幻神までその括りに入るかと言うと、確信は抱けない。
もし仮に召喚が可能だとしても、三体の生贄を揃えず呼べば相応に弱体化してるんじゃないか。
神の力を深く知り、尚且つ決闘者故の疑問が遊戯に次の一手を打たせない。
とはいえ三幻神までその括りに入るかと言うと、確信は抱けない。
もし仮に召喚が可能だとしても、三体の生贄を揃えず呼べば相応に弱体化してるんじゃないか。
神の力を深く知り、尚且つ決闘者故の疑問が遊戯に次の一手を打たせない。
「にしても、身一つであの大きさになれるのは流石に驚いたよ。今呼べるウワサでも、あれ程のサイズは流石に……」
「……なんだって?」
「……なんだって?」
遊戯の様子に気付いてか気付かないでか、オシリスを見上げてねむが呟きを漏らす。
何と無しに言っただろう内容が、一筋の光明を差した。
何と無しに言っただろう内容が、一筋の光明を差した。
○
勝ったも同然、その筈だった。
聖都大学附属病院での戦闘時のように、同じサイズの怪獣になれる者もいない。
巨体を思う存分に暴れさせ、蹂躙し。
憎たらしい連中を一人残らず殺せると、今度こそ己の勝利に確信を抱いた。
聖都大学附属病院での戦闘時のように、同じサイズの怪獣になれる者もいない。
巨体を思う存分に暴れさせ、蹂躙し。
憎たらしい連中を一人残らず殺せると、今度こそ己の勝利に確信を抱いた。
「え、なにそれは(困惑)」
では、今見ているコレは何だ。
何が起きてるのかを、誰か説明してくれと内心で叫ぶ。
何が起きてるのかを、誰か説明してくれと内心で叫ぶ。
大木よりも太い胴に、伝説上の蛇の如き長さ。
前脚と巨大な翼を兼ね備え、竜の特徴も併せ持った姿。
上下二つの顎を持ち、自身を睨み付ける様は間違いなく。
今の野獣先輩と寸分違わぬ神、オシリスの天空竜がもう一体現れたではないか。
前脚と巨大な翼を兼ね備え、竜の特徴も併せ持った姿。
上下二つの顎を持ち、自身を睨み付ける様は間違いなく。
今の野獣先輩と寸分違わぬ神、オシリスの天空竜がもう一体現れたではないか。
そんな馬鹿なと、頭を抱えたくてしょうがない。
仮に自分が落っことしたカードを使ったのだとしても、オシリスの召喚には生贄が三体必要な筈。
デッキも持たない奴が呼ぶのは不可能だろうに、どんなインチキをしでかしたというのだ。
仮に自分が落っことしたカードを使ったのだとしても、オシリスの召喚には生贄が三体必要な筈。
デッキも持たない奴が呼ぶのは不可能だろうに、どんなインチキをしでかしたというのだ。
「まさか、ウワサにこんな使い道を見出すとはね」
「本当に上手くいくかは賭けだったけどな」
「本当に上手くいくかは賭けだったけどな」
呆れと感心の混じったねむの呟きこそ、召喚に成功した理由。
固有魔法で呼び寄せた、ウワサの使い魔。
それらを三体生贄に活用し、オシリスの召喚に漕ぎ付けたのである。
デュエルモンスターズが決闘者同士のみならず、現実のプレイヤーにも干渉可能。
その土台があったからこそ行えた、一種の抜け道だった。
固有魔法で呼び寄せた、ウワサの使い魔。
それらを三体生贄に活用し、オシリスの召喚に漕ぎ付けたのである。
デュエルモンスターズが決闘者同士のみならず、現実のプレイヤーにも干渉可能。
その土台があったからこそ行えた、一種の抜け道だった。
「さあ行くぜ!オシリスの天空竜で奴を攻撃!」
「調子こいてんじゃねぇぞこの野郎!大人しくしろぉ!ばら撒くぞこの野郎!この野郎!(KTNTKS)」
「調子こいてんじゃねぇぞこの野郎!大人しくしろぉ!ばら撒くぞこの野郎!この野郎!(KTNTKS)」
焦る余り絶対唯一神GOの語録を無断で使った挙句、語彙力も消失する人間の屑。
しかし殺意は本物だ、口内にエネルギーをありったけ充填。
本物のオシリスもまた、遊戯の攻撃宣言に応え力を溜め込む。
両者タイミングを同じくして、超電動波を放つ。
上空にて特大の熱線が激突、互いを消し去らんと喰らい合う。
しかし殺意は本物だ、口内にエネルギーをありったけ充填。
本物のオシリスもまた、遊戯の攻撃宣言に応え力を溜め込む。
両者タイミングを同じくして、超電動波を放つ。
上空にて特大の熱線が激突、互いを消し去らんと喰らい合う。
現在、遊戯の手元にあるカードは四枚。
オシリスの効果により、攻守の数値は手札一枚につき1000P上昇。
よって攻撃力4000という、オベリスクの巨神兵と同じにまで並んだ。
故に勝負は拮抗を見せるが、デッキが無ければそこで打ち止め。
やはり自分の勝利は揺るがないとほくそ笑み、
オシリスの効果により、攻守の数値は手札一枚につき1000P上昇。
よって攻撃力4000という、オベリスクの巨神兵と同じにまで並んだ。
故に勝負は拮抗を見せるが、デッキが無ければそこで打ち止め。
やはり自分の勝利は揺るがないとほくそ笑み、
「それはどうかな?」
天秤が遊戯へ傾いた。
「ファッ!?ファッ!?ファッ!?(ビーストドライバー)」
どこぞの魔法使いのベルト音声に似た声で、驚愕に竜の眼を見開く。
押されている、自分の放った熱線が勢いを弱めてるではないか。
反対に敵は出力を更に高め、巨体を飲み込まんと迫り来る。
意味が分からず視線をあっちこっちに泳がせ、ふと一点を捉えた。
オシリスを召喚した、奇抜なヘアースタイルの決闘者。
そいつの手札が何時の間にか増えて――
押されている、自分の放った熱線が勢いを弱めてるではないか。
反対に敵は出力を更に高め、巨体を飲み込まんと迫り来る。
意味が分からず視線をあっちこっちに泳がせ、ふと一点を捉えた。
オシリスを召喚した、奇抜なヘアースタイルの決闘者。
そいつの手札が何時の間にか増えて――
「うせやろ……?」
野獣先輩の呟きを無視し、遊戯の元へ送られるカード。
否、ねむが自身の本から飛ばした紙片だ。
否、ねむが自身の本から飛ばした紙片だ。
大前提として、殺し合いにおけるデュエルモンスターズの効果は正規の決闘(デュエル)のソレとは違う。
最大の特徴は決闘者ではないプレイヤーにすら、干渉可能な点。
サテライト・ウォリアーの効果で、大尉がデイパックを破壊されたように。
アームズ・エイドを、アーマードライダー・バロンに装備したように。
レッド・デーモン・アビスの効果が、ポセイドンの三又槍の耐性を無効化したように。
或いはジャンヌが風の主霊石を用い、魔法や罠カードを破壊してみせたように。
デュエルモンスターズとは異なる力に干渉し、逆に干渉されて来た。
最大の特徴は決闘者ではないプレイヤーにすら、干渉可能な点。
サテライト・ウォリアーの効果で、大尉がデイパックを破壊されたように。
アームズ・エイドを、アーマードライダー・バロンに装備したように。
レッド・デーモン・アビスの効果が、ポセイドンの三又槍の耐性を無効化したように。
或いはジャンヌが風の主霊石を用い、魔法や罠カードを破壊してみせたように。
デュエルモンスターズとは異なる力に干渉し、逆に干渉されて来た。
そして今、遊戯もそこへ注目し逆転の一手を打ったのだ。
オシリスの効果は、手札一枚に付き自身のステータスを1000ずつ上げる。
デッキが手元に無い以上、4000より上にはいけない。
それを覆したのが、ウワサを召喚可能なねむの固有魔法。
新たなウワサの創造には自身の寿命を削るものの、既存のウワサならば魔力消費のみでいつでも呼び出せる。
オシリスの効果は、手札一枚に付き自身のステータスを1000ずつ上げる。
デッキが手元に無い以上、4000より上にはいけない。
それを覆したのが、ウワサを召喚可能なねむの固有魔法。
新たなウワサの創造には自身の寿命を削るものの、既存のウワサならば魔力消費のみでいつでも呼び出せる。
つまり、だ。
モンスターを召喚する触媒の紙、その一点において。
檀黎斗主催のゲームでは、デュエルモンスターズのカードとねむの固有武装の本は近しい存在。
デュエルディスクにデッキを装着して行う戦い方ではないのも、介入が許された理由の一つだろう。
ウワサを出現させる為の紙片が手札と解釈され、オシリスの力を上げる事に成功したのだった。
モンスターを召喚する触媒の紙、その一点において。
檀黎斗主催のゲームでは、デュエルモンスターズのカードとねむの固有武装の本は近しい存在。
デュエルディスクにデッキを装着して行う戦い方ではないのも、介入が許された理由の一つだろう。
ウワサを出現させる為の紙片が手札と解釈され、オシリスの力を上げる事に成功したのだった。
「高過ぎィ!」
4枚のカードと10枚の紙片。
全てを合わせ、1万4000の攻撃力に野獣先輩が悲鳴を上げてもお構いなしだ。
全てを合わせ、1万4000の攻撃力に野獣先輩が悲鳴を上げてもお構いなしだ。
「オシリス!偽りの神に打ち勝て!」
召喚主たる決闘者に応え、オシリスの熱線が勢いを最大にまで増す。
一度は拮抗したのが嘘のように、片方の力は見る影もない。
どうしてこうなると、降り掛かった理不尽を野獣先輩は呪う。
あの銀髪のメスガキも言った筈だ、願いの強さは神にも負けないと。
大切な後輩の蘇生を願う己の力では、足りないと言うのか。
一度は拮抗したのが嘘のように、片方の力は見る影もない。
どうしてこうなると、降り掛かった理不尽を野獣先輩は呪う。
あの銀髪のメスガキも言った筈だ、願いの強さは神にも負けないと。
大切な後輩の蘇生を願う己の力では、足りないと言うのか。
「ンアーーーーーーーーーーーーーッ!!!!??!!」
答えを返す者など現れない。
愛を理由に死を押し付ける願いは間違いだと、そう断言するように。
汚らしい悲鳴諸共、神の裁きに飲み込まれた。
愛を理由に死を押し付ける願いは間違いだと、そう断言するように。
汚らしい悲鳴諸共、神の裁きに飲み込まれた。
○
光が晴れた時、赤い巨体はもうどこにも存在しない。
草花の消し飛んだ地面で、痛みに悶える野獣先輩が転がるだけだ。
オシリスに姿を変えたのと、淫夢ファミリー故の頑丈さ。
かの悶絶少年のヤメチクリウム合金程でなくとも、常人を超える打たれ強さを持つ。
上記が理由で生きてはいるものの、流石にダメージは深い。
草花の消し飛んだ地面で、痛みに悶える野獣先輩が転がるだけだ。
オシリスに姿を変えたのと、淫夢ファミリー故の頑丈さ。
かの悶絶少年のヤメチクリウム合金程でなくとも、常人を超える打たれ強さを持つ。
上記が理由で生きてはいるものの、流石にダメージは深い。
「エアトス、頼んだ」
戦闘終了に伴い姿を消すオシリスと入れ替わる形で、エアトスを再召喚。
身動ぎする野獣先輩に剣を添え、余計な抵抗を封じる。
今の内に拘束や、装備を取り上げておくのが正解だろう。
近付こうとした時、弾かれたように野獣先輩が顔を上げ一同を睨み付けた。
ネットで玩具にされた恨みを募らせる、肉体派おじゃる丸にも引けを取らない憎悪が視線に宿る。
身動ぎする野獣先輩に剣を添え、余計な抵抗を封じる。
今の内に拘束や、装備を取り上げておくのが正解だろう。
近付こうとした時、弾かれたように野獣先輩が顔を上げ一同を睨み付けた。
ネットで玩具にされた恨みを募らせる、肉体派おじゃる丸にも引けを取らない憎悪が視線に宿る。
「ふざけんな!(迫真) 揃いも揃って俺の邪魔をしやがって頭に来ますよ!」
『いやー、清々しいまでの逆ギレですねー。殺しに来られたら普通邪魔するでしょうに』
「黙れや猿ぅ!」
『いやー、清々しいまでの逆ギレですねー。殺しに来られたら普通邪魔するでしょうに』
「黙れや猿ぅ!」
喚き散らすも正論を返され、目がない筈のスッテキにすら白い目で見られる錯覚を覚えた。
よくもまあ、まだ口の回る元気があったものだ。
怒りの、というよりは八つ当たりの矛先は自分と最も遭遇回数の多い少女へ向かう。
よくもまあ、まだ口の回る元気があったものだ。
怒りの、というよりは八つ当たりの矛先は自分と最も遭遇回数の多い少女へ向かう。
「大体人のことを散々悪者扱いしたけど、それならまずそこのメスガキをボコすべきじゃんアゼルバイジャン。あのハンサムなマスクと均整の取れた体のアイツみたに、こいつらもその内見捨てるんだルォ?」
「…………」
「…………」
恨みがましく、それでいて仲間割れを狙った姑息な笑みを浮かべて言う。
野獣先輩の言葉に、周囲から驚きの視線が自分に集まるのがねむにも分かった。
シラを切り通せばいい、心情的にも自分とこの汚い男じゃどっちがマシかは言うまでもない。
君は何を言ってるんだと、本気で困惑する顔を作れば。
殺し合いに乗った輩の、苦し紛れの嘘と見なされ話は終わり。
野獣先輩の言葉に、周囲から驚きの視線が自分に集まるのがねむにも分かった。
シラを切り通せばいい、心情的にも自分とこの汚い男じゃどっちがマシかは言うまでもない。
君は何を言ってるんだと、本気で困惑する顔を作れば。
殺し合いに乗った輩の、苦し紛れの嘘と見なされ話は終わり。
だけど、
「そうだね、君の言う通りだ。僕のせいで御伽お兄さんは死んでしまった」
自分を守ると約束した騎士に、忘れた筈の希望を思い出させてくれた男に。
嘘を吐く事はどうしても、今のねむには出来なかった。
抑え付けていた筈の、仕方ないの四文字で誤魔化し続けて来た想いが。
罪悪感とも呼ぶべき痛みが、もう一度誰かを信じてみたいと強く思ったからこそ。
今更になって顔を出す。
我ながら本当に都合の良い奴だと、自嘲を浮かべるのは内心に留める。
嘘を吐く事はどうしても、今のねむには出来なかった。
抑え付けていた筈の、仕方ないの四文字で誤魔化し続けて来た想いが。
罪悪感とも呼ぶべき痛みが、もう一度誰かを信じてみたいと強く思ったからこそ。
今更になって顔を出す。
我ながら本当に都合の良い奴だと、自嘲を浮かべるのは内心に留める。
「なん……だって……?御伽くんを……?」
定時放送で脱落を告げられた仲間の名を、ここで聞くとは思わなかった。
困惑する遊戯と、説明を求める面々と目を合わせる。
無意識の内に深呼吸し、思った以上に緊張してる自分がいると気付き。
彼らにずっと黙っていた、己が犯した罪を告白する。
困惑する遊戯と、説明を求める面々と目を合わせる。
無意識の内に深呼吸し、思った以上に緊張してる自分がいると気付き。
彼らにずっと黙っていた、己が犯した罪を告白する。
「…………」
話を聞き終えた一同は暫し無言。
殺し合いが始まり最初に会った善良な参加者を、魔力温存を理由に助けなかった。
魔法少女の救済の為に、いろはと灯花以外は利用か排除の二択。
そう決めたが故、不要な戦闘でソウルジェムを濁らせるのを避けた。
殺し合いが始まり最初に会った善良な参加者を、魔力温存を理由に助けなかった。
魔法少女の救済の為に、いろはと灯花以外は利用か排除の二択。
そう決めたが故、不要な戦闘でソウルジェムを濁らせるのを避けた。
「結果として、御伽お兄さんは殺された。僕が彼を見捨てたせいでね」
「……っ」
「……っ」
俯く遊戯の拳が強く握られたのに気付くも、あえて触れない。
ねむ自身、素直に話して丸く収まるとは思っていない。
己に向けられる視線を見つめ返し、一拍置いて口を開く。
ねむ自身、素直に話して丸く収まるとは思っていない。
己に向けられる視線を見つめ返し、一拍置いて口を開く。
「僕を許せないと思うのは当然だね。気が済むまで痛め付けても良いし、殺されても文句は言わない。捨て駒として使い潰すとしても、それを受け入れる。金輪際関わりたくないと言うのなら、二度と君達の前には姿を見せないと約束するよ」
「……仮に俺達がそう言ったら、お前はこれからどうするんだ?」
「灯花…僕の友達に会って、やり方を変えるよう言ってみる。君達には迷惑が掛からないようにするさ」
「……仮に俺達がそう言ったら、お前はこれからどうするんだ?」
「灯花…僕の友達に会って、やり方を変えるよう言ってみる。君達には迷惑が掛からないようにするさ」
戸惑いがちな幻徳の問いにも、平坦な声色で返す。
どのような扱いを強いられたとて、そうなって当然の事をしでかしたのだ。
不満を唱える気はない、ただ一つだけ言わせてもらえるなら。
どのような扱いを強いられたとて、そうなって当然の事をしでかしたのだ。
不満を唱える気はない、ただ一つだけ言わせてもらえるなら。
「僕は君達を騙して来たけど、いろはお姉さんの話は全部本当だ。あの人は僕と違って、本気で殺し合いを止めるつもりで戦ってる。もし御伽お兄さんと会ったのがいろはお姉さんなら、絶対に守ろうとした筈だよ」
使い捨ての戦力として、鋼牙の利用を目論んだのは否定しない。
けれど、いろはの話に偽りを混ぜた覚えは一つもない。
もしも会えたら守って欲しいと、そう告げたのだって本心からだ。
自分を余り大切に出来ず、いつだって誰かの為に奔走するいろはを助けたいと願う気持ちは変わらない。
けれど、いろはの話に偽りを混ぜた覚えは一つもない。
もしも会えたら守って欲しいと、そう告げたのだって本心からだ。
自分を余り大切に出来ず、いつだって誰かの為に奔走するいろはを助けたいと願う気持ちは変わらない。
「勝手な事を言ってる自覚はある。でも、いろはお姉さんは君達とも仲間になれる人だから、だから…あの人の事だけは信じて欲しい。……お願いします」
言い切り、頭を下げる。
地面を眺める時間がいやに長く感じられ、自分の息遣いが普段より大きく聞こえる。
数秒か数十秒か、どれくらい経ったかも定かでなく。
沈黙を打ち破ったのは、聞くに堪えない醜悪さを煮詰めた声。
地面を眺める時間がいやに長く感じられ、自分の息遣いが普段より大きく聞こえる。
数秒か数十秒か、どれくらい経ったかも定かでなく。
沈黙を打ち破ったのは、聞くに堪えない醜悪さを煮詰めた声。
「あ ほ く さ。そんな自分勝手な要求が通る程世の中甘くないってそれ一番言われてるから。所詮はメスガキの戯言ってハッキリ――」
「黙れ」
「黙れ」
ここぞとばかりに罵声を浴びせる汚物ステハゲを、鋼牙が睨み付ける。
語録を遮られた野獣先輩は、当然のように不満顔。
矛先を鋼牙に変えて、執拗に言葉で責め始めた。
語録を遮られた野獣先輩は、当然のように不満顔。
矛先を鋼牙に変えて、執拗に言葉で責め始めた。
「あ、お前さ、白コートさ。話の途中で邪魔するとか常識な――」
「黙れと言った筈だ」
「クゥーン……(子犬)」
「黙れと言った筈だ」
「クゥーン……(子犬)」
首に刃を添えられたに等しい威圧感が、それ以上何も言わせない。
後輩の体に狙いを定める野獣の眼光とは大違いの、歴戦の魔戒騎士の瞳が射抜く。
調子付くのも一瞬で終わり、途端に怯み縮こまった。
後輩の体に狙いを定める野獣の眼光とは大違いの、歴戦の魔戒騎士の瞳が射抜く。
調子付くのも一瞬で終わり、途端に怯み縮こまった。
クッソ情けない人間の屑から視線を外すと、鋼牙も再び口を閉じる。
ねむに言いたい事がない訳ではない。
ただ自分以上に、彼女と言葉を交わすべき者がいる。
視線の向かう先では、御伽の仲間の少年が言葉を紡ごうとしていた。
ねむに言いたい事がない訳ではない。
ただ自分以上に、彼女と言葉を交わすべき者がいる。
視線の向かう先では、御伽の仲間の少年が言葉を紡ごうとしていた。
「ねむ、顔を上げな」
促され、自分に声を掛けた人物を見る。
遊戯の表情は当たり前だが、笑顔なんかじゃない。
眉間に皺が寄り、瞳にも険しさが籠められてあった。
直接手を下したのでないとはいえ、仲間が命を落とす原因の一つを生んだ自分への。
糾弾が行われるのだろうと、ねむも察しが付く。
遊戯の表情は当たり前だが、笑顔なんかじゃない。
眉間に皺が寄り、瞳にも険しさが籠められてあった。
直接手を下したのでないとはいえ、仲間が命を落とす原因の一つを生んだ自分への。
糾弾が行われるのだろうと、ねむも察しが付く。
「……」
一度目を閉じ、自分を落ち着かせるように息を吐き出し。
改めて、遊戯はねむと視線を合わせた。
改めて、遊戯はねむと視線を合わせた。
「…正直に言えば、お前への怒りがないわけじゃない。御伽くんも俺の大切な仲間だった」
「……うん、それは知ってる。本田という人を殺された君を、強く心配していたからね」
「…っ、そう、か」
「……うん、それは知ってる。本田という人を殺された君を、強く心配していたからね」
「…っ、そう、か」
数少ないやり取りの中でも、御伽が遊戯にとってかけがえのない友の一人だとは知った。
そんな相手を見捨てた少女へ、遊戯は――
そんな相手を見捨てた少女へ、遊戯は――
「だけどな、俺はお前に復讐するつもりはない」
ねむが全く予想していなかった事を、ハッキリと言ってのけた。
「怒りに突き動かされる気持ちは否定しない。だが俺は復讐の脆さと虚しさを知っている」
決闘都市の準決勝にて、海馬とぶつかった時を思い出す。
過去との決別を籠め、復讐の記憶こそを糧に己との決闘(デュエル)に挑んだ。
未来だけを見ていると海馬は言ったが、憎しみを束ねて勝った先に待つのは。
新しい復讐で舗装された、歪み切った未来しかない。
だからこそ己が勝利し、誤った道(ロード)を打ち壊したのだ。
過去との決別を籠め、復讐の記憶こそを糧に己との決闘(デュエル)に挑んだ。
未来だけを見ていると海馬は言ったが、憎しみを束ねて勝った先に待つのは。
新しい復讐で舗装された、歪み切った未来しかない。
だからこそ己が勝利し、誤った道(ロード)を打ち壊したのだ。
「憎しみに目を曇らせて……俺も嘗ては大きな過ちを犯した」
ラフェールとの決闘(デュエル)で心の闇に負け、自身のデッキを裏切った。
その代償をよりにもよって、相棒に支払わせてしまった。
レベッカに詰られ、城之内から喝を入れられるのも当然だ。
心の闇が引き起こす悲劇を、遊戯は身を以て味わっている。
故にもう二度と、同じ過ちを犯す気はない。
その代償をよりにもよって、相棒に支払わせてしまった。
レベッカに詰られ、城之内から喝を入れられるのも当然だ。
心の闇が引き起こす悲劇を、遊戯は身を以て味わっている。
故にもう二度と、同じ過ちを犯す気はない。
「ねむ。もしお前がイリヤ達に犠牲を強いて目的を果たすつもりなら、その時は俺が倒してでも止める。だがそれは復讐が目的じゃない、仲間をこれ以上奪わせない為だ!」
「…………」
「けどお前が、御伽くんの死に思う所が…罪悪感を感じてるんだったら。俺達と共に、このゲームを終わらせる為に戦ってくれ」
「……本気で言ってるのかい?」
「…………」
「けどお前が、御伽くんの死に思う所が…罪悪感を感じてるんだったら。俺達と共に、このゲームを終わらせる為に戦ってくれ」
「……本気で言ってるのかい?」
償いを求められてると、捉える事も出来るだろう。
しかし心身を捧げて使い潰されるのではない、遊戯の言い方はまるで。
自分を、仲間と受け入れるようなものじゃないか。
しかし心身を捧げて使い潰されるのではない、遊戯の言い方はまるで。
自分を、仲間と受け入れるようなものじゃないか。
「君達はどう思うんだ?彼の言葉に、賛成するのか?」
迷いなく言い切った遊戯から目を逸らし、他の者達にも話を振る。
誰か一人でも難色を示せば、その通りにした。
なのに複雑さは見え隠れすれど、拒絶の感情はまるでぶつけられない。
誰か一人でも難色を示せば、その通りにした。
なのに複雑さは見え隠れすれど、拒絶の感情はまるでぶつけられない。
「過去に犯した罪の大きさで言ったら、俺に何かを言う資格はない。それでもあえて口にするなら、放送の後に言ったのと同じだ。お前が感じてるものから目を逸らすな」
パンドラボックスが原因であれど、多くの犠牲を生んだ事実に変わりはない。
恨まれ、蔑まれ、果てに地獄に落ちて当然の悪党(ローグ)。
そんな自分を仲間と受け入れたのは、恋人や舎弟を殺された二人の男だった。
万丈や一海、そして戦兎が再起の切っ掛けをくれたように。
最も憎む筈の少年から手を差し伸べられた意味を、無駄にして欲しくない。
過去の罪に苦しんだ幻徳だからこそ、ねむにどこか自分を重ねて告げる。
恨まれ、蔑まれ、果てに地獄に落ちて当然の悪党(ローグ)。
そんな自分を仲間と受け入れたのは、恋人や舎弟を殺された二人の男だった。
万丈や一海、そして戦兎が再起の切っ掛けをくれたように。
最も憎む筈の少年から手を差し伸べられた意味を、無駄にして欲しくない。
過去の罪に苦しんだ幻徳だからこそ、ねむにどこか自分を重ねて告げる。
「…あなたがやった事は、簡単に許されるものじゃないけど。でも、いろはさんを助けたいって想いは間違いなんかじゃないって思う」
『まあ年下の女の子だけでなく、めんどくさい殿方まで惹き付ける人ですからねー。フラグ建築士って意味じゃ、イリヤさんともいい勝負ですよ』
「フラグってなに!?…それくらいいろはさんが大切なら、一人で傷付いていなくなったりしないで?」
『まあ年下の女の子だけでなく、めんどくさい殿方まで惹き付ける人ですからねー。フラグ建築士って意味じゃ、イリヤさんともいい勝負ですよ』
「フラグってなに!?…それくらいいろはさんが大切なら、一人で傷付いていなくなったりしないで?」
情報交換の場で知った、複数の戦闘だけではない。
他者を寄せ付けない異形の剣士にも手を伸ばす姿へ、無茶をする人だとは薄々察しが付いた。
イリヤを知る者が聞けば、人の事を言えた口かと呆れられるだろうが。
他者を寄せ付けない異形の剣士にも手を伸ばす姿へ、無茶をする人だとは薄々察しが付いた。
イリヤを知る者が聞けば、人の事を言えた口かと呆れられるだろうが。
何よりイリヤ自身、大切な人達と二度と会えなくなる。
誰もが笑っていられる世界の中に、自分が存在しないとは覚悟の上で過去に飛んだから。
ねむが自分から孤独を選び、いろはの元を去る気なら見過ごせなかった。
誰もが笑っていられる世界の中に、自分が存在しないとは覚悟の上で過去に飛んだから。
ねむが自分から孤独を選び、いろはの元を去る気なら見過ごせなかった。
「君達は……」
突き放し、敵意を叩き付けるのとは全く違う。
予想した光景が現実にならず、言葉に詰まる。
そんなねむの元へ屈み込み、視線を合わせる者がいた。
予想した光景が現実にならず、言葉に詰まる。
そんなねむの元へ屈み込み、視線を合わせる者がいた。
「ねむ、お前の罪を忘れるとは言わない。だが俺達は、それだけがお前の全てじゃないとも知っている」
目的の為に御伽を見捨てた事実に、鋼牙も目を背けなかった。
事情がどうあれ、永遠の時を費やしても向き合わねばならないだろう。
しかし負の一面だけが、柊ねむという少女の全てじゃない事もこの目で見て来た。
打算があったのは否定出来なくとも、幾度も自分を助けた。
我が身が傷付くのも厭わず、力を授けた。
信じさせて欲しいと叫んだのが紛れもない本心であると、確信を抱いている。
環いろはをどれだけ深く想っているかを、今更になって疑うつもりもない。
事情がどうあれ、永遠の時を費やしても向き合わねばならないだろう。
しかし負の一面だけが、柊ねむという少女の全てじゃない事もこの目で見て来た。
打算があったのは否定出来なくとも、幾度も自分を助けた。
我が身が傷付くのも厭わず、力を授けた。
信じさせて欲しいと叫んだのが紛れもない本心であると、確信を抱いている。
環いろはをどれだけ深く想っているかを、今更になって疑うつもりもない。
「約束を違える気はない。いろはだけじゃなく、お前の事も必ず守る」
「…僕と一緒にいるせいで、お兄さんまで余計な敵意に晒されるかもしれないよ?」
「それがどうした。お前を守らない理由にはならないだろう」
「…僕と一緒にいるせいで、お兄さんまで余計な敵意に晒されるかもしれないよ?」
「それがどうした。お前を守らない理由にはならないだろう」
魔戒騎士の無骨な手が、ねむの小さな手にそっと触れる。
簡単な回復魔法で治療中なれど、未だ火傷の痕が残る掌。
自分を助ける為に傷を付けさせてしまい、申し訳なさを覚える反面。
幼き身に宿す彼女の覚悟を、認めない訳にはいかない。
簡単な回復魔法で治療中なれど、未だ火傷の痕が残る掌。
自分を助ける為に傷を付けさせてしまい、申し訳なさを覚える反面。
幼き身に宿す彼女の覚悟を、認めない訳にはいかない。
「お前が俺を信じようとしたように、俺もお前を信じる」
「……っ」
「……っ」
その言葉は、どんな剣よりも深くねむに突き刺さり。
真っ直ぐに見つめる力強い瞳から、堪らず目を逸らしたくなるのに。
彼の目を見ていたいと思う自分も、確かに存在していて。
都合の良い己に呆れと嫌悪を抱く一方で、彼らに受け入れられてることに。
彼がそうまで信頼していることに、込み上げるものを感じずにはいられなかった。
真っ直ぐに見つめる力強い瞳から、堪らず目を逸らしたくなるのに。
彼の目を見ていたいと思う自分も、確かに存在していて。
都合の良い己に呆れと嫌悪を抱く一方で、彼らに受け入れられてることに。
彼がそうまで信頼していることに、込み上げるものを感じずにはいられなかった。
「鋼牙お兄さんは、思ってたよりもズルい人だね……」
自分を誤魔化せる段階は、とうに過ぎたのだろう。
おずおずと握り返し、小さく零すのが精一杯だった。
おずおずと握り返し、小さく零すのが精一杯だった。
「は?(全ギレ)」
ただ一人、納得出来ないのは野獣先輩だ。
何度も自分の邪魔に出て、挙句激しい動揺を引き出した憎たらしい少女。
そいつが周りから詰られ孤立するどころか、受け入れられている。
自分は愛する後輩を惨たらしく殺され、本当はやりたくもない悪役染みた真似に手を汚したのに。
これまで同様の苛立ちとは別に、沸々と妬みが湧き上がる。
嫉妬深いのは女の子の特徴、ハッキリ分かんだね。
何度も自分の邪魔に出て、挙句激しい動揺を引き出した憎たらしい少女。
そいつが周りから詰られ孤立するどころか、受け入れられている。
自分は愛する後輩を惨たらしく殺され、本当はやりたくもない悪役染みた真似に手を汚したのに。
これまで同様の苛立ちとは別に、沸々と妬みが湧き上がる。
嫉妬深いのは女の子の特徴、ハッキリ分かんだね。
「あーくっせぇ!くっせぇなお前…(苛立ち) 俺が許されなくてそのメスガキは良いとか、差別ですよ差別!(AMMHRK)」
『空気が読めないにも程があるでしょう、このオッサン』
『空気が読めないにも程があるでしょう、このオッサン』
話が纏まり掛けた所でまたもや喚き散らす男へ、友好的なものが欠片も含まれない視線が集中。
自分がどんな目で見られてるかなど、野獣先輩にはどうでもいい。
何故、愛する後輩を喪った自分ばかりがこんな目に遭う。
そのメスガキが許されるなら、自分の行いも許されて然るべきだろう。
大切な者を取り戻したいと思って何が悪い。
自分がどんな目で見られてるかなど、野獣先輩にはどうでもいい。
何故、愛する後輩を喪った自分ばかりがこんな目に遭う。
そのメスガキが許されるなら、自分の行いも許されて然るべきだろう。
大切な者を取り戻したいと思って何が悪い。
「本気で怒らせちゃったねぇ……俺のことねぇ!」
優勝の道を阻む者達への怒りが、奥底から無限に湧き上がる。
自分だって好きで殺してるんじゃない。
なのにどいつもこいつも、人間の屑のようにしか扱わない。
俺がこうなったのは殺し合いを始めた連中や、愛する後輩を殺した奴が悪いのに。
自分だって好きで殺してるんじゃない。
なのにどいつもこいつも、人間の屑のようにしか扱わない。
俺がこうなったのは殺し合いを始めた連中や、愛する後輩を殺した奴が悪いのに。
至極真っ当、同時に己の行いから目を逸らすとも取れる憎悪が湧き上がる。
消耗の激しさなど気にしてられない、どの道捕まったままでは優勝は閉ざされたも同然。
悪しき気配が高まり、自身に眠る力を引き出さんとし、
消耗の激しさなど気にしてられない、どの道捕まったままでは優勝は閉ざされたも同然。
悪しき気配が高まり、自身に眠る力を引き出さんとし、
「はいはい、そこまでだよー。あなたみたいなキモいおじさんの出番は、もうお終いだにゃー」