チャージランプがぼんやり灯る(オルタネーター修理)

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okapon

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本稿の内容:

  • 何が起きたのか&その原因:症状、原因の特定、余談
  • 実際の修理作業:オルタネーターの取り外し、レクチファイアーの交換(キモはこれだけ。他はヨタ話。なので暇じゃない方はここだけ読まれたし。)、余談
  • 修理の結果:Youtube動画
  • おまけ:オルタネーターの発電とそれを制御するレクチファイアー、レギュレーターの機能について

何が起きたのか&その原因

症状

昼間走っている時は判らなかったが、夜になってチャージランプがぼんやりと灯っていることに気がついた。アイドリング状態で消えず、エンジンの回転数を上げるとさらに暗くはなるが完全には消灯しない。(今回はオルタネーター装備車の話で、後述するようにこの故障はオルタネーター特有のものだった
発電に問題があるなら、このまま走っているとバッテリー上がりを起しかねない。いつ止まるか、ヒヤヒヤしながら家に戻った。

原因の特定

考えられるのはオルタネーター関連の故障。
  • レギュレーター
  • ブラシ
  • コイル
  • レクチファイアー
  • アース
  • バッテリー

レギュレーターとブラシは予備があったので取り替えてみたが改善せず。アースやバッテリーは導通、電圧ともに正常だった。となるとオルタネーター本体か?

なお、下の図では便宜上、端子番号を振ってあるが正式名ではない。(ただしB+はオルタネーター本体に記されている)


とりあえず、(スターターモータースイッチ+端子経由で)直接バッテリーへ給電するオルタネーターの端子B+の電圧をテスターで測ってみるとエンジンの回転に応じて13V〜14V出ている。あれ?発電してるじゃん。今度は端子1につながっている緑線のコネクターを外してレクチファイアーから出ている電圧を測ると10V前後と頼りない。これだ!
(暇じゃない方は次の「余談」をとばして「実際の修理作業」に進まれたい)

余談:

ちょっとここで簡単にチンクのチャージランプの点灯のメカニズムをおさらいしてみよう。レクチファイアーやレギュレーターの内部については今のところ無視して構わない。(発電の仕組みは後述)

 実体配線図↓ (次の「簡略化した図」のほうが見やすいかも、、、)
  • エンジンがかかってない状態でメインスイッチをオンにするとバッテリー+端子からの電流がスターターモータースイッチ+端子を経由して端子2に入り、さらにオルタネーター内部でブラシ→ローターコイル→ブラシ→端子4(緑線)→レギュレーター→アースと流れるため、その経路の途中にあるチャージランプが点灯する。(今回の故障状態でもここまでは機能している)
  • スターターを回してエンジンが回転し始めるとオルタネーターの発電が始まるので、端子1にコネクターでつながっている緑線に電圧がかかる。端子1はブラシホルダー内で端子2(オルタネーターにしようではD+と表記)につながっており、発電圧がバッテリー電圧を超えると端子2からバッテリーへの線に先程とは逆方向に電流を流そうとする。一方、B+端子からも同じ電圧が発生していて、両方の線はスターターモータースイッチ+端子(上の図ではヒューズ左側の合流点)で合流しているから電圧が拮抗して電流は流れない。したがってその回路の中間にあるチャージランプは消灯する。
  • エンジンの回転数が増して発電圧がさらに上昇(およそ14V)すると過充電や過電圧からバッテリーを保護するためにレギュレーター内部でアースが遮断される。するとローターコイルに電流が流れなくなり発電が止まる。同時にチャージランプのアース経路も断たれるのでランプは消灯したままになる。
 簡略化した実体配線図↓

再び原因:***

さて余談はここまでにして、本題を整理すると、、、

エンジン停止中でオルタネーターが回転していない時にメインスイッチをオンにてもチャージランプが点灯しなければ、断線やコネクターの接続不良、アース不良、ブラシやレギュレーターの故障、ランプ切れなどが考えられるが、現状でここは正常に点灯する。
また、エンジンがHey回転しているにも関わらずチャージランプが停止中と同じくらい明るく「しっかり灯る」のならオルタネーター自体の故障、あるいはベルト切れなどで、オルタネーターが全く発電していないはず。

しかし「ぼんやりと点灯」というのなら、上記のように端子B+と端子1(=端子2)の発電圧バランスが崩れてチャージランプに正常より弱い電流が流れ続けていると考えられる。はたして先にテスターで調べたとおり、レクチファイアーから出て端子1につながるところ、ひいては端子2の電圧が低かったのである。

このアンバランスの原因は、レクチファイアー内部にある整流ダイオードが壊れているからで、おそらく端子1へ向かう緑線の手前の経路にあるダイオードの1つか2つが何らかの理由でパンクして正方向の抵抗が異常に大きくなったのだろうと思われる。この緑線の電圧が出ていないのは3系統あるステーターコイルのいずれかが断線しているとも考えられるが、その場合は端子1だけでなく端子B+の電圧も下がるので結果的にB+と端子1の電圧は等しくなり、チャージランプは点灯しないはず。しかしわずかに電流が流れてぼんやり点灯しているのだから現状そうはなっていない。

交流電流を直流に変換するレクチファイアーの異常ということで、これはオルタネーターに特有の事故障である。もっとも、ダイナモ装備車でも表面的に似た事象は別の原因で起こりうるが、自分はダイナモを使ったことがないのでわからない。長々書いてきたが要するにレクチファイアーを交換すれば良いだけのこと。しかし国内ではこのFIAT 500用のオルタネーターに使用できるレクチファイアーがなかなか売っていない。実はFIAT 500R/126用で、メーカーの違いにより種類が複数あるようだが、自分のものはMagnetti Marelli製のオルタネーターだ。いずれにしてもオルタネーターごと買うとなれば出費はかなりのもの。先日ベアリングを交換したばかりなので、今回も何とかパーツ交換でしのぎたい。

いかれたレクチファイアーを分解してダイオードだけ取り替えることも検討したが、熱や振動対策のためかアルミの放熱ハウジングの内部に樹脂でガチガチに固めてあるし、一部は外部に出ているがこれも単体のダイオードではなくブラックボックス化されていてどうにも手が出ない。もとより電気はあまり得意じゃないのでここはすっぱり諦めた。

レクチファイアーの修理も、部品の国内手配もできないとなれば、あとは海外からの取り寄せとなる。「FIAT 126 500 alternator rectifier Marelli」(rectifierではなく「diode plate」と呼ばれることもあるので注意)で検索すればヨーロッパの旧車部品専門サイトでいくらでも見つかる。500で使えるMarelli製オルタネーター用レクチファイアーはMarelli純正品と、いわゆる「相当品」があり、前者は数が少なく高いし、後者は当然に安い。非純正の信頼性は?だが、それでも送料込みで8,000円(2023年1月現在)ほど。ヨーロッパからDHLで1週間かからず到着する。

実際の修理作業

エンジンを降ろさずにオルタネーターを取り外す作業するのはなかなか手間がかかる。なぜなら、バンドで台座に固定されているダイナモと違い、オルタネーターは台座と一体になっており、オルタネーターの軸(及びオルタネーターとファンシュラウドを留めているネジの軸線)と台座とエンジンを締結しているスタッドボルトの軸が直行しているためにスッキリと外れてくれないのだ。そのためファンシュラウドをエンジンから切り離す必要がある。(解決策として台座のスタッドボルトを抜きさって通常の六角ボルトに置き換えると良いのだが、、、)

もっとも、レクチファイアーだけの交換なら、器用な人であればオルタネーターの取り外しをせずに、エンジンベイの内部でそのままハンダごてで部品の取り外しとハンダ付けができるかも。。。失敗を恐れてやらなかったが、次回は(あってほしくはないが)やってみよう。

取り外しと修理手順は以下のとおり。

オルタネーターの取り外し

  • バッテリーケーブルのマイナス端子を外す。(重要!忘れると危険
  • オルタネーターの端子、コネクターも(レギュレーターのコネクター以外)外す。(B+端子を外す前に今一度バッテリーケーブルのマイナス端子を外したか確認する。硬いバッテリーケーブルはうっかりすると元の位置に戻ってしまうこともある。B+⇔バッテリー間のケーブルは大容量で通常はブレーカーやヒューズも入ってないから、ショートで大電流が流れた場合、火災や火傷の恐れがある)
  • ベルトプーリーとその基部を軸から取り外す。(レンチサイズ19mmナイロンロックナット)
  • エアインテイクダクトを外し、ファンシュラウドの内部にあるファンの固定ナット(レンチサイズ19mmナイロンロックナット)と押さえ金具を軸からHey外す。(ファンの前後位置調整用シムがある場合があるので、シュラウド内に落とさないよう注意)
  • オルタネーター台座を固定する4本のスタッドボルトからナット(レンチサイズ13mmナイロンロックナット)を外す。(写真ではスタッドボルト自体をダブルナットで抜こうとしているが、失敗。ナットのみを外して以下に進む。)

  • オルタネーター後部をファンシュラウドに固定する2個のナット(レンチサイズ10mmナイロンロックナット)を外す。(下図参照)
  • ファンシュラウドをエンジンブロックに固定するナット(レンチサイズ10mmと13mmのボルトと13mmのナイロンロックナット)を外す。(下図参照。赤丸部分のみ。最中合わせのシュラウドを分割する必要はない)

  • ファンシュラウドがフリーになるので、シュラウドの左端を奥に押してオルタネーターの台座をエンジンブロックから浮き上がらせ、オルタネーターを手前に引き出す。(ファンとオルタネーターの軸の間にもシムがあることも想定して、慎重に抜き出すこと)
復旧は逆の順序だが、一番手の届きにくく目視できないエンジン後面のシュラウド取り付けボルト類を先に仮止めする。間違って表面側から仮止めを進めると最後のほうで後面にあるシュラウドのネジ孔とエンジンブロックのネジ穴位置が合わなった場合に融通が利かなくなり、ボルトのねじ込みが困難になる。

レクチファイアの交換

必要なもの:

  • 新しいレクチファイアー(今回はMarelli純正品ではなく、若干安い社外品を用意した。社外品はフィンの数が少なく、放熱に心配がある。)
  • ハンダごて(50〜100Wほどの強力なものが望ましい)
  • ハンダとハンダ用ペースト
  • あと、ニッパー、ラジオペンチなど若干の工具
注意:ハンダごての熱量が小さいと、ハンダ付けに要する時間が長くなり、近隣のダイオードにダメージを与える。

社外(非純正)レクチファイアー↓

Magnetti Marelli純正品↓


作業手順:

  • オルタネーター前面(プーリー側)の緑色のプラスチックカバーを外す。(うーん、汚い!しかも、入っていたレクチファイア−も社外品だった)
  • ヒートシンクのフィンの隙間から出ている界磁コイルからの3本線を、端子のハンダを溶かして外す。(切断してはいけない。短くなると後でハンダ付けが困難になる。)
  • 古いレクチファイアーを取り除き、新しいものを設置。
  • 界磁コイルからの線をそれぞれ対応する端子に挟み込み、絶縁被覆が傷んでいないか、露出している部分がレクチファイアーのヒートシンクに接触していないか確認。
  • 端子にハンダ用ペーストを塗る。各端子は二枚重ねになっているのでその間を浅いV字型に少し開き、爪楊枝などを使って隙間にもペーストを塗り込む。これを怠ると端子の表面が酸化してハンダがきれいに回らなくなる。
  • 界磁コイルからの線、レクチファイアーに元から付いていた単線、二枚重ねの端子をハンダ付けする。
  • レクチファイアーに元から付いていた単線の余分な部分を切断。(上の写真では切断済)
  • 界磁コイルからの線、レクチファイアーに元から付いていた単線、二枚重ねの端子がそれぞれ導通があるかテスターを当てて確認。
  • 緑色のプラスチックカバーを閉じ、ネジを締める。
以上がレクチファイアーの交換作業。取り付ける前に発電とチャージランプの動作確認をする場合は、回路図を参考にバッテリーと豆球を含む臨時回路を作り、レギュレーターが付いた状態で端子B+と端子1、アース(バッテリーの−端子)などに各々の線を接続した上で、電気ドリルなどでオルタネーターの軸を時計回りに回転させて発電状況をみる。(今回は省略)

後はオルタネーターをエンジンに取り付け、配線を復旧するだけ。

余談:

前のオーナーはオルタネーターのアース線を端子B+の直ぐ側にあるM6のボルト(ゴムカバーの付いた端子B+のすぐ右横)に固定していたが、これではバッテリー直結のB+と(ゴムのカバーは付いているが)偶然のショートを起しかねない。昨年行ったワイヤリングハーネス聡取り替えでもこの接続をそのまま引き継いでいた。今回、オルタネーターの脱着に伴いこれを別の場所に変更することにした。(写真でオルタネーターボディー上部右側にある白っぽいプラスネジ)

ではこのM6のボルトが突出している理由は何か、はっきりしたことは判らないが、おそらく端子2につながるバッテリーからの線が長くてぶらぶらするので、プーリーに巻き込まれないように留めるバンドか何かの固定用ではないかと考え、線の支持金具をアルミ薄板で作って取り付けてみた。バンドではないので線を傷めないようにグロメットをはめてある。(ただ、この金具が端子B+に近いという状況は変わらない。気をつけないと)

修理の結果

チャージランプのあの薄ぼんやりとした光り方はなくなり、エンジンをかけたらスパッと消えてくれる。ああ、こうでなきゃ。
以上で修理完了!


おまけ

今回の問題がレクチファイアーの不具合であることは単にテスターを当てるだけで特定できた。しかし修理の過程で実際にその内部で何が起きていて、どのような作用が働いているのか、を考えてみた。実はレギュレーターの不調という疑いも完全には払拭できていなかった(予備を含めて2個とも同時にアウトというのは考えづらいが、可能性はゼロではない)ので、ついでにレギュレーターの内部構造とその動作も推測してみた。

本筋ではないのでここでは詳しくは述べないが、興味のある方は回路図(実体配線図)を参照されたい。(ただし、レクチファイアーとレギュレーターは分解できないので、下記説明とこの稿で示した実体配線図はあくまで「推測」に基づくものであることに注意!また、実際にはレギュレーター内部に逆流防止ダイオードや保護回路などもある可能性があるが、ここでは省略。)

レクチファイアー(レクチファイ=補正、修正する)とは、オルタネーター(オルタネート=交互に入れ替える)で発電される交流電流を自動車で使用される直流に変換する「整流器」のこと。自動車では3つの界磁コイル(ステーターとも)で三相の交流電流を作っている。レクチファイアーはその内部にある整流ダイオードを組み合わせたブリッジ回路で、それぞれの相の電圧サインカーブのマイナス側をプラス側ににひっくり返して「直流化」する。

レギュレーターは、12Vそこそこの電圧で機能するバッテリーや灯火類、車載機器などにダメージが及ばないように、エンジンの回転(→オルタネーターの回転)に応じて変動するオルタネーターの発電圧を制御する

以下、それらの働きと、チャージランプの関係を4つのフェーズごとに記す。
  • エンジンが停止状態でメインスイッチもオフの状態では回路に一切の電流は流れていない。当然チャージランプも消灯したまま。(下図 Phase1)
  • メインスイッチをオンにすると、レギュレーターは発電準備のためにローターコイルに通電させる。すなわち、バッテリーだけの電圧(12V少々)ではレギュレーター内のツェナーダイオード(ZD)がトランジスター2(Tr2)のベースへの通電を阻止している。その一方、トランジスター1(Tr1)のベースには電流が流れて同コレクター→エミッターを開通させる。チャージランプ点灯。(Phase2)
  • エンジンがかかりオルタネーターのローターが回転すると発電開始。チャージランプ消灯(理由は後述)。回転数が上がるに連れてレギュレーターはオルタネーターに発電を増加させる。レクチファイアーから給電される端子B+からバッテリーへの経路と、端子2からチャージランプ経由でバッテリーへ向かう経路(Phase2の逆流)は、バッテリーの手前(実際にはスターターモーターのスイッチ端子)で合流しており、2つの経路の電圧は相殺されるのでチャージランプは消灯。(Phase3)
  • エンジンの回転数が上がり過ぎて過電圧にならないようにレギュレーターはオルタネーターの発電を止める。具体的には、発電圧が14V辺りになったところでレギュレーター内のZDがTr1のベースに通電し、同コレクター→エミッターに電流が流れる。それを受けてTr2のベースに行くべき電流が急激に減少して同コレクター→エミッターが遮断される。その結果、ローターコイルの通電も止まり、オルタネーターの発電を止めるように作動する。(Phase4)

オルタネーター用のレギュレーターの場合、これらの制御を司るのはレギュレーター内部にあるトランジスター(=スイッチ機能)とツェナーダイオード(=電圧弁として機能)で、大抵はIC(集積回路)として一体化されていて、レクチファイアー同様に修理はまず不可能。

しかしFiat 500 オリジナルの古き良き時代のダイナモ(直流発電機)は電子回路ではなく古典的な物理リレーと抵抗を内蔵したコントロールボックスによって制御される。ボルテージ(電圧)リレー、カレント(電流)リレー、カットアウト(遮断)リレーという3つのスイッチが絶妙に働く仕組みはHaynesマニュアルの第8章「電装系」で2ページに渡り図入りで解説されている。本当ならこのようなアナログ感満載で「修理可能な伝統的機構」を採用したいのだが、アイドリングではほとんど発電しない非力なダイナモと、コイルと接点がカチカチと忙しく動く結果、物理的な故障の多いリレーの信頼性を考えると、どうしてもオルタネーター頼りにならざるを得ない。(同様の理由でディストリビューターやポイントを電子式に置き換えているので、何言ってるの?と怒られそう、、、)
(;´д`)トホホ…

by Okapon

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