サイドスリップ(トーイン)調整

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okapon

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前置き

以下はユーザー車検で「サイドスリップ」検査に不合格が出てしまったときに、現場で応急的にタイロッドを回してトーイン(トーアウト)を調整する目安を示す。実際の調整作業方法についてはまぁさんの「トーインの調節」を参照。

ここで説明する事はあくまで車検場で行う緊急処置なので、事後にプロの機器で再調整されることをお勧めする。(なら検査に落ちた時点ですぐに車検場近隣にあるテスター屋さんへ持ち込めばいいじゃん、ということになるが、午後の最終ラウンドなどで時間がない場合には「とりあえず」車検に通っておくのに使える。あるいはテスター屋さんに数千円も出すのはイヤという向きもあろうかと、、、)

以前、ヘッドライトの光軸調整でも似たような応急調整を書いた。その節は長ったらしい説明がダラダラ続けてしまった反省から(ていうか、すでにここまでが長い!)、今回は簡潔にする(つもりだ)が、調整の数値だけ知りたければこのリンクから「結論」へ。

サイドスリップ検査

検査不合格

トーイン角(に限らず、アラインメント/アライメント)は前輪を縁石や車止めに前輪を当てるなどして狂っている可能性はあったが、とりあえず車検を受けてみないと状態は判らない。ユーザー車検の場合、1日に3度まで検査を受けられる。1回めで落ちてもあと2回でなんとか調整と再検査でチャンスはある。で、案の定、サイドスリップ不合格。

ユーザー車検で落ちた場合、コースで行われる個々の検査についてダメな箇所と正規値からのズレ具合を書いた紙(下の写真)がもらえる。サイドスリップなら例えば単位なしで「5.3」というような数字が書かれている。
(画像は加工済み)

このサイドスリップの数値の単位はミリで、後述するようにタイヤの「サイドスリップ(=横滑り)」の大きさを表す。トーインであろうがトーアウトであろうが、車メーカーの仕様とは関係なく、とりあえず±5.0以内に収まっていればOKとなる。ダメ出しを食らった後でもらった紙に「IN 5.3」とあったのでトーインが強すぎる状態。(OUTに丸がついていればトーアウト)

車検のサイドスリップとは

実はサイドスリップと言っても、別にタイヤが目に見えて滑っているわけでもなく、まして車が横に移動したりするわけでもない。その判定基準として「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示 第91条」にタイヤの横滑りが走行1mについて5mmを超えるものはダメだと書いてある。これは片方のタイヤの横滑りではなく、両輪について同時に計測した値となる。要するにトーインの場合、1m進むとトレッド(両輪の間隔)がどれほど縮もうとするかを計測し、その許容範囲が最大5mmである。実際にはトレッド幅は固定されているから縮まないので、その分だけタイヤがスリップしているという訳。

マニュアルの「トーイン」との違い

ところで、FIAT 500本来のトーインは「0〜2.0mm」とヘインズのマニュアルには書いてある。しかし、これは車検のサイドスリップと計測方法が異なり、同マニュアルや当サイトのまぁさんのトーイン」の調節によると、トーインの場合、前窄まり(上から見てハの字)になっている左右前輪のホイール前方と後方でホイール間隔の違いを測る。ホイールサイズ12インチつまり直径30cmの前後距離で間隔にどれだけ差があるかを計測するが、実際には左右のホイールに長い棒を当てがい、その延長上で棒の先端と、先端からホール径の2倍(60cm)の位置で左右の棒の間隔を測り、そこで出した2つの距離の差を1/2にした値をヘインズのマニュアルでは「トーイン」と呼んでいる。そして、これを車検で計測するサイドスリップの1mに置き換えると0〜約6.7mmということになる。

なんと、マニュアル通りに調整し、トーインを最大の2.0mmにするとサイドスリップは5.0を超えてしまい車検に落ちる?! (本当か?)
  • 注意)まぁさんの図もヘインズの図も若干ミスリーディングな感じがするので、見やすく図を描き直してみた。棒の、ホイールに接する側の端から30cmの位置に印を付けるというが、この30cmは実は40cmでも50cmでも構わない。計測の元になるホイール径の30cm(=12インチ)と同じ数値にしてしまったところが紛らわしい。


本題

では話を、どれだけタイロッドを回せば「IN 5.3」を基準値(±5.0)に収められるか、という本質の問題と実地の作業に移そう。

車検場で知り合ったプロの整備士さんから「回すのはほんの少しでいい」とのアドバイスで、とりあえず片方だけ分かりやすく1回転させてみた。よしんば行き過ぎてトーアウトになっても、+5mm〜-5mmまで結構マージンがある。下手に1/2とか1/4とかだと回した感覚が掴みにくいし、後で戻すにしても更に回すにしても基準が判らなくなる恐れがあったから。

結果は「IN 0.4」で合格!
  • 注意)合格した場合はこちらから何も言わないと数値を書いた紙を貰えない。事後に言っても次の受験車両のために計測データが消されていることもあるので、前もって数値が欲しいと告げておく。

結論

片方のタイロッドを1回転しただけで4.9の変化。はっきりした印を付けて回したわけでもなく、ボールジョイントのガタなどを考慮すれば:

タイロッド1回転で、サイドスリップの変化はおよそ5mmという数値が得られた。

車検のサイドスリップ不合格で出てきた数値にもよるが、IN側で許容最大値の5.0を少しオーバーしたくらいならタイロッド1回転は多すぎるかもしれない。半回転で十分だろう。逆にOUT側にオーバーであれば逆方向に1回転以上回して、少しだけIN側(つまりトーイン)になるようにすれば良い。六角ナットの1山(面?)分だけ回すなら0.83mmになるが、元々の1回転5mm自体が大雑把だから、1山およそ1mmと丸めても良いかも。

いずれにしても、陸運支局の駐車場で死んだカエルみたく仰向けで、フロントバンパーの下に頭を突っ込んでいる状況はあまり美しいものじゃないので、ちゃちゃっと済ませて再検査で受かりますように、、、。

後始末

車検場では微妙な調整は難しいので混乱を避けるため、片方のタイロッドだけしか回さない方が良い。よって調整後は直進走行状態でハンドルのセンターが狂っているかもしれない(ハンドルのセンターは車検の「サイドスリップ」とは直接関係ないが、、、)。わずかでもハンドルの向きが気になるなら、家に帰ってからタイロッドを回した分の半分だけ戻し、もう一つのタイロッドを同じだけ逆方向に回せば「おおよそ」ハンドルは元の位置に戻るはず。だが、もっと正確に調整するためには自動車整備工場に持ち込むのが一番良いと思う。

あと、車検場での作業では締め付けトルクの管理もできないから、帰宅後にトルクレンチでタイロッドクランプのネジの締め付け具合の確認をするべきだろう。(まぁさんの関連記事「トーインの調節」によれば、タイロッドクランプボルトの締め付けトルクは1.0~1.5kgf-mとなっている)


by Okapon 2024.01.
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