第一話「戦闘と日常」

ピュィィィィ・・・・



かつてアーキルと呼ばれた国の首都、

その廃墟の上を飛ぶクルカが、『見る』。

その情報はルータとなっているクルカを経由し、

浮かぶ都市に伝わる。


「旧アーキル首都観測所より旧兵器。メルカヴァ型と推定。
ラ号を保有す。」

「近くには・・・第24次編成船団か。拾参式を搭載していたよな?」

「はい。搭載済みです。対応できるとのことです。」

「では向かわせておけ。丁度いい機会だ。」

出撃命令が、伝わる。


「「出撃命令。第24次編成船団翼機部隊に出撃命令。
総員、配置へ。搭乗者は翼機搭乗の上、出撃せよ。」」


艦が慌ただしく蠢く。

「メンテナンスは完了。装備も装着済みです。いつでも出撃できます。」

「了解。」

翼機<セズリア>に埋もれる搭乗者<パイロット>。

装甲が閉じ、搭乗者が見るは、外。

[
    Boot_Sequence...

    FloatSystem:    good.
    HackSystem:     good.
    OrgaCondition:  good.
    PilotCondition: good.

    Scaning.....Finishing!
    MainLink...Start.
]

翼機の手足が、動く。

握り拳を握り、開く。

「「一番機、型名拾参式翼機、個体名クイゼラ・シフト。認証完了。レーンへどうぞ。」」

床が開き、台が下がる。そして発射台に足を載せる。

「「発進許可。どうぞ。」」

「一番機クイゼラ・シフト、アルファ、行きます。」

電磁カタパルトに電流が迸り、発進台が加速する。

そして、大空へ飛び立つ。



それは突如として起こった。

南東の報告の無い領域よりやってきたのは、旧兵器。

そして瞬く間に帝国を占領し、『巣』を生み出した。

この『巣』の発生により、人類は『空』と『地下』に逃亡した。

国は崩壊し、各地に『巣』から生み出された兵器達が巡回し、

人々は『集落』単位での生活を余儀なくされた。

結果として飢饉が発生し、大規模な人口減に見舞われた。

そして大地を取り戻すまでの期間のことを人々は『逃亡期』と呼ぶ。

そして、人類の領域を回復する時代が、今である。



「第三観測領域に対象到達。各機散開し、可能ならば鹵獲せよ。」

「了解」


「二番機ニヒル・スタイト、合流します。」
「三番機アストラ・エール、迂回しこれを叩きます。」
「四番機エヒント・ストロー、艦載機を撃墜しに参ります。」
「五番機オースト・リーエ、情報サポートを担当します。」

「把握した。では参ろうか!」
「「了解!」」


各機が浮かぶ雲に紛れ、出た時には姿は見えない、というよりは見辛いだろう。

巡航ジェットエンジンの飛行機雲が見えないように、

溶剤と一緒に噴射して見えないようにしている。

眼前、対象の姿を見る時、最初の閃光が迸る。


「第一射、弾着確認、反撃来ます。注意。」

反撃の重力放射が、空間をねじ切るように抉れる。

そして光線が幾つも空を描き、

艦載機が出撃する。

そして、それを迎撃する。

「ちょっと遅かったのだよなぁ・・・」

そしてチャフをばら撒きながら進む各機。

「侵食弾、発射。」

放たれた弾頭が対象に食い込む。そして周囲を融合する。

「ハッキングに入る。後は任せた。」

精神となった隊長が、直接対象に乗り込む。


「火器制御系・・・主制御幹線回路だな。これを通って・・・」

敵艦の中においての免疫系が攻撃を仕掛ける。

「むぅ、小賢しいぃ!」

この免疫系をラリアットの如く薙ぎ払う。

「よし、主制御脳・・・これを乗っ取れば。」


外ではレーザー砲台を携行レールガンぶっ放しながら無力化していた。

「ったく、旧ミケラ社の兵器は面倒なもんだ。潰してもしばらく経てば回復してしまう。」
「隊長機は大丈夫か?シフト。」

「はい。隊長の精神リンクは正常です。あと1分で乗っ取り完了です。」

「早いなぁ。昔は10分は掛かっていたのに。流石は精神体ハッカーだな。」
「スタイトさん!重力放射砲が!」

「やばい・・っ」

次発の放射が、腕を削ぐ。

「危なかった。助かったよ。」
「あと3秒、2秒、1秒・・・完了しました!」

「「「よっしゃぁ!」」」
「隊長!大丈夫ですか?」

「あぁ。問題ない。ただ、少し酔った・・」

「曳航して帰還しましょ。アルファ。」
「そうね。」


[Result:
今回の戦果:メルカヴァ型戦艦一隻鹵獲。ラ号4機撃破。
今回の被害:翼機(拾参式)5機、被害軽微(二号機右腕破損、各機軽微な損傷)
]
最終更新:2015年05月05日 20:40