有翼のセズリア第ニ話「急襲!囚われの部隊を救出せよ!」


立て籠もる人々、補助動器具を身に付けてはいるが、
傷だらけで、顔も皆疲労困憊の様相としている。

「まだ通信出来無いのか!」

遠距離通信用端末を背負った通信兵に怒鳴る。
「もう少しなんです。通信妨害で・・・繋がりました!」
「でかした!私が話す!」

「「救難要請!我が部隊は新型旧兵器群に囲まれて、身動きが出来ないでいる!
任務遂行が困難である!救難要請を頼む!籠城維持時間は12Twowが限度!
返答を求む!」」
「「返答把握しました。座標から換算し、お近くの船団より20機程度の
翼機が到着可能です。籠城維持時間が短縮される可能性は有りますか?」」
「「有る!装備状態にも依るが場合によっては2Twowだ!今すぐ欲しい!」」
「「把握しました。可能な限り維持していてください。
健闘を祈ります。」」

 


〜〜〜同時刻第24次編成船団内にて〜〜〜

黄金の大地に匙を差し込む。弾力の後に差し込まれる。
匙が引き上げ、大地に亀裂が裂けて浮かび上がるそれはまさに、
浮遊する黄金色の大地そのものだ。

その一時の楽しみを喧騒なサイレン音と共に命令が下された。

「「「第24次編成船団に出撃命令!巡航ユニット装着の上、
作戦ポイントに於いて籠城している輸送部隊を補助せよ!」」

「食べてる最中なのに。冷蔵庫に入れて、いや、掻き込んでしまえ!」

乱雑に口に放り込まれ、喉越し豊かに潤した。

 


スーツを常に着込んだ身体は張りを持った圧力となって現れる。
走る身体は、一歩毎にその肉を揺らして、重量感を振り撒く。
端末を首に着けながら、作戦概要の質疑応答をしている。
発言内容がログとして記載されて行く。


Shift「今回の作戦ではどうすれば?」

Alfa「救出作戦だ。隊の皆も聞いて欲しい。
本営からの通信ではこうらしい。

<<救出任務である。旧パンノニア領内旧文明都市遺構に於いて、
輸送中の部隊からの救難要請が発生した。
部隊自体が旧兵器群に囲まれており、
身動きが出来ず籠城しているとのこと。
部隊を援護し、安全圏まで輸送する任務である。
巡航ユニットを使用して急行し、可能な限り排除せよ。>>

とのことだ。

Stayt「何を輸送しているのかは言わなかったのか?」

Alfa「確かに言わなかった。
ただ、輸送部隊が組まれる程の物品で、
捨てることの出来ない程の重要品であることは分かる。

Straw「ある程度掃討して翼機で運ぶことが可能でしょうか?」

Alfa「その目的も有ると思う。運搬用予備浮遊機関も用意するべきだな。
誰か頼めるか?」

Reae「私が担当しましょう。ハッキングより運転の方が向いているんで。」

Alfa「頼んだ。各自質問は無いな?」

「「問題有りません!」」

Alfa「では参ろうか。」

 


肉に飲み込まれていく。

接続シーケンスに入り、

動き出す。

 

 

 

 

「「巡航ユニット、接続を開始します。作業腕が展開されますので、
作業員は腕より一定距離離れてください。」」

シャッターが開く。そこには軌道車両によって運ばれてきた、
『巡航ユニット』がそこにはあった。作業腕が駆動し、
ユニットを取り出して、接続されていく。

Alfa「皆、巡航ユニットは加速がキツイぞ、注意して」

Straw「初めてなので怖いです」

Stayt「まぁ、採掘場のユニットだもんな。そりゃあ恐ろしいぐらいにな。
すぐに慣れるさ。」

巡航ユニットは翼機に付属される、『使い捨て』のユニットである。
それは『このような事態』で使われるのが多いからである。

Alfa「では皆、出撃だ。」


母艦底部のハッチが開き、背中にユニットが装着された巨人が垣間見える。
巨人が底部からずり落ちて、ユニットが高周波を発しながら駆動し始める。

Alfa「さぁ、ダンスを始めよう」

吸気音が加速していく。オイルが噴気されて駆動する。
空中に放り投げだされた巨人が、ユニットの加速によって波打ち、
そして巡航を開始した。

 

 

 

 

「連絡いれてから何分経った?」
「60分だ。流石にきついですよ。」

風切音を発する。馬みたいな旧兵器を倒すが、反撃してくる。
壁が熱せられ、赤くなってくる。

「壁も長くは持たないですね・・・」
「全く何なんだ、この輸送物は。
こんな反抗、只の旧兵器の攻撃とはわけが違うぞ。」

立て籠もった旧文明の遺構は、高層建築物群の一角で、
登ろうとしてくる旧兵器を落としたり、
上がってきた旧兵器を破壊したりして事を凌いでいる。

その輸送物は立方体で、端には補助器具、
外装に何層も重ねた保護布を巻いていて、
大きさは人の背丈より少し大きい程である。

「屋上に立て籠っているが、
大型のやつがやってきたら、もうおしまいだぞ。」
「なんとか持ちこたえるんだ。それまでの・・何あ」
レーザー光が隊員の頭を吹き飛ばす。
「射線に入りやがって。新手が来やがった。」

 

それは数え切れない程の触手を口や側面に生やし、
レーザー収束の形にして発射したメルディオラの派生砲撃手だ。

「また出力の高いやつか。もう持たないな・・・」

そして彼方から光が見える。
「また新手か・・・いや違うな、このパターンは・・・

 

『支援』だ」

 

突如として放つレーザー光線は、
射線上に存在していた旧兵器共を焼き尽くし、
爆縮を起こす間も無く破壊する。

高周波音を発しながら外れたユニットが、
旧文明の道に衝突しながらぶっ壊れ、
炎上しつつやってくる。

砲撃手が口を向け、光を放つ。
鱗粉のように纏うチャフが分散する。

「使い捨てユニットだとしても、贅沢なやり方ですね」
「そういう使い方だから問題は無い。」

生体複合の浮遊ユニットが翼のように広がり、
減速しつつ、旧兵器を倒していく。

「輸送部隊の人たちだね。待たせてすまなかったね。」
「こちらも全滅寸前だった。間に合ってよかった。」

 

旧兵器もまた、戦力的にも不利のようで、
光線を発しつつ、後退していき、
こちらもまた光線を発しつつ、輸送物を守っていた。

「これが輸送対象ですね。」
「そうだ。これが対象だ。」

そして彼方からやってくる護衛されてくる輸送機を見て、
任務が完了したことに安堵していた。

 


布の下、それは黒い外装に覆われた、
そう、まるで『箱』のような形であることが、
世界を大きく変えることになるのだから。

 

最終更新:2016年01月05日 17:49