荒野を駆ける船。
土煙を撒き散らし、駆けて往く。
そこに乗る、数人の乗組員と、一人の『女』。
砂漠を駆けて往く。
遠方から砂煙が上がる。
『旧兵器』だ。
独特の高周波音を複数混じりながらやってくる。
群れに捕まったようだ。
「野郎共、戦闘準備だよ!」
女が張った声で指示を出す。
乗組員が銃器を持って、構える。
見える瞬間、光が遠方よりやってくる。
光が膜を反射して、分散していく。
そして少しの穴が開き、
「「「「放て!」」」」
光線が砂煙を貫いて往く。
遠方の旧兵器が貫かれ、爆縮していき、爆発する。
そして穴が閉じられる。
「さぁ、スピードを上げるよ!」
高周波を上げながら、駆ける。
浮遊都市に停泊しているのは、第24次編成船団の船団。
組み込まれて、第37次編成船団への配船替えが行われている。
『浮遊都市』というものは、
実際の所、艦船の集まりで構成された『集落』だ。
各艦船がインフラ・シップと呼ばれる『幹』に、
色んな時代、
そう『前時代紀』『脱出紀』『翼人紀』の艦船が、
まるで房のように接続されている。
トラムに乗っているのは、アルファという女性。
そう『セズリア』と呼ばれる『生物』を操るパイロットだ。
メルパゼル語とかでは『翼人』と言われている。
今の時代を語る、象徴的な生物だ。
アルファは雑多としたトラムに乗っていた。
浮遊都市には、各地の集落から来たような人々が居る。
恰好としては、スクムシの布で編まれた外套を着込み、
その模様は、各地の民族の特徴を刺繍した服装を着込んでいる。
垣間見える内側は、かつて≪連邦≫と≪帝国≫が戦っていた時のような、
兵士が着ているような服装だ。
その人の記章によって、その役割がある程度判別できる。
私が着けている記章は『翼人操縦士』。
『翼人』を『操縦』する『士官』。単純な意味だ。
アーキルに伝わる、『セズレ』と呼ばれる神話上の『鳥』、
その人の形にしたのが『セズリア』の語源らしい。
実に単純で、人に銀翼が生えて、その羽根が見える記章だ。
向かいの人は『生体技師』の記章に『食糧改善役』の記章が見える。
『生体技師』は心臓とビーカーを象徴とした記章で、
『食糧改善役』は麦と遺伝基を表したシンプルなものだ。
多分今私が向かっている所と同じ、
そう『研究所』の人なんだろう。
そして頭に乗っているのは、クイゼラ・シフト。
私が乗っている『セズリア』の『意識体』だ。
クルカの身体に意識を移して行動している。
クイゼラもアーキルの神話に出てくる『有翼人』から来ている。
私がやっている『ハッキング』の応用で乗り移っている。
トラムの外は艦船であった光景が見える。
パイプが幾つも跨っていて、所々から煙が立つ。
艦砲上にクルカが寝ているし、
パイプを調整したりしている人達も見える。
そして・・・
「「研究所前ー。研究所前ー。現トラムは次研究所前に到着します。」」
アナウンスだ。
「研究所だね。用事は覚えてる?」
「勿論だよ。」
『研究所』と呼ばれている建物は、
前時代に建造された艦船『アーキエリン』という戦艦をベースに、
各区画に研究施設を設置したものらしい。
とはいえ、このアーキエリンとされている艦船ではあるが、
実態としてはよくわからないものらしい。
まぁ、この配管でびっしりとした姿では、
よくわからないというのは事実だろうけど。
エントランスでは、防衛兵士が守衛を行っていた。
手に持っているのはレーザー銃だろうか。
多分そうだろう。携行し易い、今の私達にとっては普通の装備だ。
「第二十四次編成船団所属の翼人操縦士のアルファさんですね?」
「えぇ。呼ばれて来ましたもので。」
「では、こちらへ。」
兵士に付いて行くと、配管が張り巡らした通路が見える。
所々からは浮遊機関の光だろうか。
水緑の光が漏れ出ている。
幾つか扉もあった。
閉まっていたりしていたが、中には人が居るようで、
議論の最中だろうか。
階段も上がり、左右を見れば、
配管が這いずり回っているかのような、
さっきと同じような通路に出た。
「こっちだ。」
そして付いて行くと、ある扉の前で立ち止まり、
「ここが二柱様の片方、『セイゼイリゼイ』様のお部屋だ。
粗相のないようにな。」
そして、その扉に二回、ノックした。
「はい~。入ってどうぞ。」
...気が抜けた。
「失礼致します。私第二十四次編成船団所属の翼人操縦士アルファであります。」
「いいよ、いいよ。そこまで堅苦しくならなくていい。
入って来なさい。」
扉を開けると、
義体用の腕と、機械的な部分が垣間見える『女性系』の義体?
いや、それにしては高級なイメージを感じる。
服は白衣、
「私が、皆に『二柱様』と呼ばれている片方、
セイゼイリゼイ、
その本人よ。
貴方が呼ばれた理由はね、
『案件』に触れたということと、
そして出生も教えないといけないからということもあるのよ。」
「私の出生に関して、もですか・・・」
「まず、私から伝えることは、
貴方のハッキング方法は特殊だということ。
これは判るよね?」
「えぇ。いつものように使用していますし、
周りとは違うことも分かります。」
「まぁ、要はかなり特殊な『用途』で造られた存在っていうことを言いたいのよ。
通常の人では、あんな『ハッキング』では精神に異常を来してしまうし、
何よりも、「人格が分裂して、崩壊してしまう」からね。
そしてここからが、あのスウェイアからの伝言よ。
「「アルファっていう子、そろそろ『案件』に触れておいてね。
あの子はとても重要な役割を背負うことになるから、
『あの箱』の事も話しておいてね」」
とね。」
「『あの箱』、ですか」
「そう、『あの箱』。
前に輸送部隊が運んでいた物があったでしょ?
あれが、『あの箱』の欠片なのよね。
これが『案件』ということになるけど、
今後その関係で色々と頼むことになると思うから、
先に話しておこうと思ってね。
ついでに呼び出したのよ。」
「顔を見知っておく、その為に呼び寄せた、と。」
「そうよ。今後も頼むことになるからね。
先に話しておいた、ということになるね。
何か質問はある?」
「いえ、拍子抜けしてしまったのですが、
特に問題はありません。」
「そうか・・・まぁ、下がっていいよ。」
「では失礼致しました。」
開いた扉の横にはシフトが、
パイプの上でくたっとしていた。
「アルファ、どうだった?」
「うん、問題は無かったよ。
今後も頼むかもしれないからということさ。」
「・・・うん、わかった。」
そうして頭に乗っかり、兵士が声を掛ける。
「終わったか?では戻ろうか。ついて来なさい。」
そうして連れられて、入り口に戻ったのである。
「で、どうする?ここから。」
「そうだね。ちょっと市にでも行こうかな。」
等間隔に配置された、軽戦車ダッカーの残骸。
そこから顔を出すクルカ。
そして通り過ぎる連絡艇。
クルカが念じて、情報が伝わる。
人工のクリスタルの装甲板で構成された壁が開門する。
通り過ぎる舟。
そして横向きになって、それと同時に女性が降り立つ。
「さぁ、着いたよ!とっとと準備しな!」
その掛け声を放つ者の名は、『ミケラダスウェイア』。
「スウェイア様、採掘場の方にお越して頂きまして」
「あぁ、構わないよ。『案件』のことで飛んできただけだからな。
早速話してもらおうか、その『案件』と共に、な。」