いつの間にか着いていた。
帝国兵はスクルフィル付近のグラン・バルカ基地に所属しているしがない偵察機乗りだったのだが数時間前、あるいは数日前にメルパの戦闘機に堕とされている。
落ちた時は死んだものかと思っていたが、現にこのようにして謎の無人島に着いていた。
そして帝国兵は起き上がり周りを見てこの島がクルカばかりだという事に気がついた。
帰る手段は無さそうなので帝国兵はそこで生活を始める事にした。
帝国兵はまず、近くにあった木をポケットにあった軍用ナイフで切り倒し、さらに分断して雨除けを建てた。
ついでに簡単なかまどを作り、簡素なベッドも取り付けた。
建築中にクルカが邪魔をしてきたが帝国兵はクルカが好きなので我慢しつつ作業を進めた。
そして食糧も木にくくりついていた実を食って過ごす。
帝国兵は森の奥深くに入ってゆき、木を切る、水をくむ。
なにやら旧時代の遺跡のようなものが見えたが特に気にすることもなく作業を続ける。
木材を運んで、雨除けを簡易的な家に進化させる。
そうすると腹が減る。
再び木の実を食う。
そして寝る。
起きて食料をとったり、木材を採ってくる作業を始める。
そんなことを繰り返していくとある問題に直面した。
木の実だ。
ここに来て二か月くらいがたったが近くの木の実は全てを採ってしまった。
だが痩せていた土地のためかなりその数は少なく、遠出をしてもほとんど手に入らなかった。
仕方ないので帝国兵は魚を採って食べることにした。
帝国兵はヒグラート南部のグゼリエン出身なので当然魚を食った事も無ければ、見たことも無かった。
だが訓練学校の同期にネネツ出身の奴がいてそいつからある程度の魚の捕り方なら学んだので何とかなるだろうと思っていたが、実際はとても道具を作るのに苦労して、ようやく始められた釣りでもいい成果を上げられなかった上、調理方法をよく知らないため過熱不足になってしまった魚でピーゴロを起こしてしまった。
散々疲れて、一息付けた帝国兵はどうしようかと考えた末、クルカを食べることを決意した、クルカ調理方法は訓練学校時代に色々学ばされたが、この帝国兵はクルカが好きなのでなかなかその気になれなかった。
だがそんなことを言ってる場合ではないので、仕方なく、渋々とクルカ狩りに出かけ、岩場で昼寝をしていたクルカを捕まえ、寝ている間にナイフで意識を断ち切ってから調理をした。
帝国兵は悲しそうな表情をしながらクルカを食した。
クルカの肉は意外にうまかった。
周りのクルカにバレない様にするため、内臓含むすべてを食べた。
その時、帝国兵の体にあることが起こった、今まで頭を取り巻いていた暗い気持ちが一瞬にして晴れ上がり、どんな物でも口に入れたくなった。
そしてナイフを口にした、当然口の中を切ったが、それで満足だった。
また、ポケットの拳銃を乱射してみたりした。
周りには帝国兵の好きなクルカが大量にいる。
帝国兵はしばらく時間を忘れて、自分以外誰一人いないこの島のクルカ達と一緒に駆け回った。
もう二度とバルカ基地に戻ろうとも思わなかった。
ただ大好きなクルカと仲良く水入らずに楽しみたかった。
クルカと一緒に海の魚を捕ったり、山に入って木の実を取ってきたり、楽しいことをいっぱいやった。
3ヶ月が経ってクルカだらけのこの島の上空を超高速で通過していった物体があった。
帝国兵とクルカ達は少し疑問に思ったが自分達には関係無い事だと思い、無視した。
だが、この物体は何回も何回もこの島の上空を通過していった。
6回目にもなると気にも止めなかったが、9回目の通過時に家の近くに緑色の物体がいくつか落ちているのを見つけた。
帝国兵とクルカ達は興味深そうにその緑色の物体の包みを開けると、中から茶色い板が出て来た。
帝国兵はこれは外の世界の食べ物だと思った。
帝国兵はこの”たからもの”をみんなに平等に上げるために細かく砕いて、島のクルカ達全てに分け与えた。
この島に住むやつらみんなが一斉に食す。
この後、どうなったかは誰も知らない