陰謀の帝国

パルエ標準歴621年1月15日帝都インダストラリーゼ 

 南半球最大勢力であるクランダルト帝国の首府にして、陰謀渦巻く謀略の都である。都市の中心部にある産業塔という名の摩天楼は無数の黒煙を吐き出し、その根元には各地から収奪した富の成れ果てであるゴミとガラクタの山が積みあがっている。

 この歪な怪物とも言える都市の中心部通称「一等区」にある「内務省」産業塔の一室。帝国の古典的芸術様式によって主張しすぎない程度に飾られ、整理された執務室の机には大量の書類が積みあがっている。

 「見てみてくださいよこの帝都をまるで今の帝国そのものだ

 執務机の帝国人特有の白い肌をした壮年の男が居た。

 「・・・」

 「この国はごく一部の特権階級が無駄で非生産的で、彼らの私欲以外においては何の意味もない無意味な戦争で国力を蕩尽している。帝都においても貴族の大部分と一部の上級市民が産業塔の能力の大半を収奪して、大多数の忠実な臣民や隷属民たちは極貧に喘いでいる」

 壮年の男は窓際で外に広がる曇天の帝都を眺めながら、来訪者に語り続ける。 

 

 

最終更新:2023年02月26日 22:25