はじめに
Guitar HeroやROCK BANDは日本ではほとんど無名のゲームです。ですから譜面の作り方についても日本語の解説サイトは皆無なのが現状です。細々と作っている人達もいますが、活発に情報交換がされていると言えるほどコミュニティは成熟していないため、海外サイトの情報を元に足りない部分は自己流という人ばかりです。そういった状況ですので有益な情報をお持ちの方は、wikiの情報の充実に手を貸していただけると有難いです。特にドラムとボーカルのパートは全くの手付かずの状態です。
譜面作りの難易度
5つのキーに圧縮された音階やコードを用いるGuitar Hero系の譜面は、音ゲー譜面の中でも楽に作れる部類です。突き詰めていくと、譜面作りに重要なのは「音の鳴るタイミング」と「音階の前後関係」です。
音の鳴るタイミングは低速再生すればほぼ分かります。音階は最初の一音に対して次の一音が高音か低音かという判定の繰り返しで割り出すことができます。最低これだけが判断できればなんとか作れます。過剰に複雑だというイメージを持たないことが大切です。
楽譜やMIDIを入手する
楽譜に書いてあるのは要するに音の鳴るタイミングと音階です。それが判明すれば後はエディタで打ち込むだけの作業になります。もし楽譜を入手できれば耳で聞き取る時間がほとんど不要になり、作業時間は大幅に短縮されます。MIDIは中身を書き換えればそのまま譜面データに流用可能なので、更に作業時間を短縮できます。
一曲あたりの作業量
BPMが160で4分の曲を作るとします。だいたいノートの総数は600-900といった所でしょう。一見すると大量のノートを打つ作業が必要のように感じられます。しかし、実際はそうでない場合が多いです。
一般的なポップスやロックは、イントロ・Aメロ・Bメロ・サビといったパートの組み合わせで作られています。そして、各パートは数小節のフレーズの繰り返しや、少し変化したもので構成されている場合が多いです。つまり、パーツごとに作れば残りの部分はコピーで埋めてしまえます。実際に作業する部分は全体の半分以下だったりします。
譜面の構成ファイル
FOFでは音声ファイルとMIDIファイルを同期させて譜面を表現しています。
下記が確認できた構成ファイルの種類。これら全てが揃っていることは稀です。太字がAlarian2系で読み込むための必須ファイルです。
drum.ogg |
ドラム演奏音源ファイル |
guitar.ogg |
ギター演奏音源ファイル |
label.png |
ラベルの画像 |
notes.mid |
譜面データの本体 |
preview.ogg |
プレビュー用音源ファイル |
rhythm.ogg |
ベース演奏音源ファイル |
song.ini |
曲名やスコア情報ファイル |
song.ogg |
原曲の音源ファイル |
- .oggは特許使用料が発生しない無償の音声圧縮形式。MP3の代わりに使われる事が多いです。ほとんどのオーディオエンコーダで出力できます。譜面の音声部分になります。
- .midはMIDI用のファイル形式。楽器の演奏情報が入っています。MIDIシーケンサーソフトで出力することもできます。譜面の音階とタイミングの判定に使われます。
- .iniは曲名やスコア情報が記載されています。テキストエディタで簡単に書き換えることができます。
譜面の内部構造
譜面情報の本体であるnotes.midをMIDIシーケンサーソフトMusic Studio Producerで開いた画像。ソフトの所在は便利ツールの項目を参照してください。フリーソフトです。
ギター譜面用の情報がトラック2に入っているのが分かります。ROCK BAND仕様のファイルなのでベースやドラム、ボーカルの情報も入っているのが分かります。ギター用譜面しか入っていないファイルだと、トラック2以外の部分は空白になります。専用エディタのEOFはベースとドラムパートも作ることができますが、ここではギターパートのみを解説します。
ギター用トラックの中身を表示しました。4から7オクターブの部分に各難易度の譜面情報が記載されているのがわかります。見たままの構造です。この方式で書いていけば、MIDIソフトでも譜面が作れます。Star Powerの情報は同じトラックの上のオクターブの部分に書かれます。
EOF(Editor On Fire)について
Frets on Fire用の譜面エディタです。TAB譜のような作業領域と実際のゲーム画面に沿ったプレビューが同時に表示されます。まさに「見たまま」のツールです。機能はシンプルにまとまっているため、英語のツールであることを差し引いても理解が早いと思われます。
上の画像はInverted Notesにチェック入れて楽譜に近いレイアウトに変更したものです。
EOFの使用方法は
EOFチュートリアルの項で説明されています。
BPMの判定
譜面作りの一番最初にやるべきことが、BPMの判定です。BPMは曲のテンポを意味しています。MP3形式にエンコードした音声ファイルをMixMeister BPM Analyzerに読み込ませることで自動的に検出してくれます。しかし必ずしも正しい値にならないので、BPMが検出しやすいパート(主にドラムが鳴っている部分)のみを切り出して測定させると精度が向上します。MBAはたまに1/2の数字を出すことがあります。明らかに低い数値が出た場合は2倍してください。
MBAで測定した後に、手動でも測定します。BPMCounterというマウスクリックの平均値からBPMを計算するツールを使います。ドラム音に合わせてクリックしていけば、かなり精度の高い数字が出ます。これらのツール類は便利ツールの項目から入手してください。
この方法でBPMを測定できない場合は、Googleなどで「曲名 BPM」で検索してください。運がよければあっさり正しい数値を発見することができます。
たまにBPMが変化する曲があります。イントロは静かに始まって、ボーカルが入ると急に激しくなる曲などがそうです。そういう曲は二箇所でBPMを測定する必要があります。
作業行程
1.楽曲の選択⇒2.音源の確保⇒3.音源の加工と補正⇒4.EOFでノートの記述⇒5.テストプレイ、の5段階で完成します。下に項目ごとに少し解説します。
1.楽曲の選択
譜面を作成する楽曲選びです。すぐさま好きな曲で作業したい所ですが、音ゲー向きの曲とそうでない曲があります。たとえば、楽器の音が拾えないパートが長い曲だと長時間ノートが流れて来ずプレイヤーが暇になります。
専用のギター演奏音源を使用しない場合は、原曲のドラムやシンセの音も拾わなければならない事もあり、あまり変な感じにならない曲に限定されます。
演奏が主旋律を全く拾わずに最後まで行ってしまう曲だと、食い足りなさが残ってわざわざこの曲の譜面を書く意味があるのかということになります(ギターがひたすら単調なバッキングに徹している楽曲など)。そういう曲は避けた方が無難です。
2.音源の確保
譜面の音源ファイルに当たる部分、guter.ogg(と必要ならばsong.oggを)確保してください。どうやって用意するか、代表的な方法を紹介します。
Windows Media Playerなどを使ってCD音源をMP3に変換します。一番簡単です。PCのトレイに音楽CDをセットして、取り込みタブから取り込んでください。
主にこの方法で楽器の演奏音源を入手する人が多いようです。SmileDownloaderを使って動画サイトから動画のオリジナルファイルをダウンロードします。実際はキャッシュから取り出すので、一回読み込んだ動画なら一瞬で動画ファイルが書き出されます。
後は動画ファイルから音声ファイルを抽出してください。BonkEnc Audio EncoderとかSplitFLVで。動画編集ソフトでもできます。
ローカルに落とせない音楽サイトありますね。実のところ元ファイルをダウンロードするのは無理なので、AmaRecCoなんかを使って強引にキャプチャーします。キャプチャーしたら音声ファイルを抽出してください。
これ以外に、自分で演奏して録音する方法もありますがここでは省きます。
3.音源の加工と補正
CD音源をそのまま使う場合は特に加工する必要もないんですが、カラオケ音源もある場合は重ねてボーカルのレベルを下げてやる方が演奏しやすい場合もあります。Guitar Heroの譜面は各楽器の演奏ラインが中心で、ボーカルのラインを追うことはまず無いはずです。一般的にボーカルより演奏音の音量が高い方が音ゲーでは演奏しやすくなります。
自力録音または動画サイトから抜いてギター音源を用意した場合、音質がかなり落ちてたりするんで原曲を重ねて高音・低音の波形の消失してる部分を補強すると少しマシになります。
音源いじるのにはAudacityを使ってください。雑音やらミスタッチの音は除去できるならやってみると仕上がりが良くなります。
ギター音のみを抽出した音源を用意する場合は歌声りっぷを使用します。ギター音入りの音源と原曲音源が必要になります。あまり設定する項目もないし、原曲の構成頼みの部分がかなり大きいツールなので無理ならあきらめて下さい。
4.EOFでノートの記述
最初にBPMを測定してEOFに入力する必要があります。これをやらないと、ノートの流れが曲とシンクロしないので違和感がかなり出ます。必ず正確な数値が必要です。
あとは盤面を見ながらマウスでノートを打つ作業です。Grid Snapは1/16に設定しておけば何かと楽です。
5.テストプレイ
ゲーム譜面としての整合性を実プレイで調整していきます。自分一人でひたすらテストしていると、慣れすぎて感覚が麻痺してくるので自動演奏を混ぜながらやるとよいです。客観的にCPUが演奏するのを眺めることで、タイミングのズレなどを把握しやすくなります。
(Alarian2系 Modはプレイ中に"uptomytempo" というチートコマンドを入れると自動演奏モードになります。FOFをウインドウ表示にしてフレットの上部を別のウインドウで覆ってしまえば、フレット下部の判定エフェクトのみが強調されるのでタイミングを計るのが容易になります。)
FoFiXでもゲーム中にオプションを開きチートをOnにすれば自動演奏可能です。Alarianより自動演奏の反応が良くなっています。
テストプレイは最後だけというわけではなく、各フレーズを作る度にやった方がいいです。他のプレイヤーに公開するのを前提に作る場合は、なるべく念入りに、丁寧にやると評価が高まると思います。あまりに譜面製作に慣れすぎると頭の中だけでテストプレイが成立してしまったりするんですが、ちゃんとやった方がいいですね。
color(red){ミスしたときに鳴る効果音を完全に消音してやることでテストプレイが快適に行えます。}不要な音が出なくなりますので。オプションにあるScrew Up Sounds(ミス音)の項目をOFFにすると良いです。
ゲームの効果音ファイルを直接書き換えて消す方法もあります。やり方は、data>Soundsフォルダの中にあるfiba1.wavからfiba6.wavを無音ファイルに置き換えます。
ドラムのミス音を消すにはdrumscw1.wav-drumscw8.wavです。
ベースだとbassscw1.oggかbfiba1.oggになります。
Modのバージョンが進んで、細かく効果音を設定できるようになってます。Screw-Up Soundsの設定でミス音を切れます。Miss VolumeとSingle Track Missの数値を高めに設定するとミス時の音の減衰が無くなります。
ノートの打ち方・基本
音階は5キーしかないしbeatmaniaのようにキーこどに音が設定されてないので実は簡単なんですが、多少の耳コピ能力は必要かもしれません。まず音の鳴っている正確なタイミングを把握する必要があります。
次に音階を判定します。前の音に対して次の音が高いか低いかというのを調べていきます。これが基本だと思います。キー音が無いので音階を外していてもBPMさえ正確なら手拍子感覚でノートは書けます。曲の進行を妨げてなければゲームなんだからアリと考えると気が楽です。
単音、和音、ロングノートを書いてみた画像です。ロングノートはマウスホイールを回転させれば伸ばしていけます。16分音符間隔で配置した単音ノートは自動的にHO/POパートに設定されます。
ノートを記述する法則は緑が低音、紫(ゲームではオレンジ)が高音です。音の高低を判定するのに耳だけでは自信が無い場合は楽器を使います。だいたいのフレーズが弾けるものならなんでもいいと思います。
楽器を持ってない人はTiny Pianoを使えばよいです。非常に軽いのでEOFと同時起動しとけばいいです。たとえピアノが全く弾けなくても自分の耳だけに頼るよりは、はるかにマシです。
作業領域はデフォルトではTABに近い構成ですが、File>PreferencesのInverted Notesにチェック入れると、楽譜に近いレイアウトになります。この方が良い人はそうしよう。音階重視で作る人や、MIDIや楽譜を参考にして作る人はこのレイアウトをお勧めします。このページに掲載されているEOFの画像は全てInverted Notesにチェック入れた状態のものです。
ノートの打ち方・バリエーション
ノートの打ち方は3つの方向性が考えられます。
1.音階重視
高音・低音のルールに従ってノートを配置していきます。プレイヤーが直感的に曲の進行を把握して入力できます。メロディ重視の曲だとこれがいいです。
2.ギターの指の動きに忠実
リアルさを追求した書き方です。主にコードを刻んでいくようなパートで使われる手法。パワーコードは簡単に二個押し、バレーコードなどは難しいので三個押しにするとリアルさが増します。また、緑を押さえるのが音を鳴らすためではなくミュートを再現するためだったりして素直に音階の法則に従わなかったりします。
ギターを知らない人には直感的ではないがハマると心地よい感触が味わえます。これがGuitar Heroの醍醐味と言ってもいいでしょう。ギターが弾けない人も演奏動画を観察することである程度再現できます。
3.ゲームバランス重視
ゲーム的な快感や難易度を重視して音階やコード進行をあえて無視する手法です。普通に作ったら単調になる場合にあえてダイナミックスさを加えることを容認します。強引といえば強引なんだけど、むしろプロフェッショナルな感じすらします。
こういったさじ加減を調整できると譜面作りの上級者と言えるでしょう。
ユーザビリティも考えるとよいです。同じコードはなるべく同じ形で、同じフレーズは同じパターンで表記してやります。また、同じ構造で半音上がってるだけのパートなどは似せて作ります。
ユーザーが譜面を記憶しやすいように複雑なようで前後や音階でシンメトリーな構造にしてあげるとバランスがよくなります。
無理な間隔での入力や、タブー的な配置(全部押しとか)を避けるのも大事。16分音符の3連以上にはオルタネイティブピッキングが必須になることも考えて書きましょう。16分音符以下の間隔のノートは圧縮するといいです。HO/POがダラダラと繋がっていくとしまりが悪くなるパートもあるので、途中で区切るようにしてやるとよい場合もあります。
MIDI音階の圧縮記述
MIDIファイルは中を開けば音が鳴っているタイミングやらBPMの変化やら全部書かれてます。必ずしも使えるわけではないけど、これを参考にするとずいぶん楽ができます。
まず、FOF譜面をMIDIシーケンサーソフトMusic Studio Producerに読み込んで構造を把握することにします。
トラック2にPART GUITERという名称が付いています。そのトラックの7オクターブの部分にEXPERTに該当する譜面情報が記載されているのがわかります。使用しているキーは5つだけなので、このまま再生しても曲としては成立しません。
しかし、このパートは原曲のメロディ部分の音階を5キーに詰め込んで書かれています。
上はFOF用の譜面、下はオリジナルのMIDIの譜面データ。同じフレーズの部分です。上は曲として成立しませんが、下は全ての音階を使って書かれているため成立します。音の鳴っているタイミングは全く同じなので、音階を5つのキーに圧縮してやることできれいにはまっているのが分かります。
つまり、オリジナル音源にきっちりはまるMIDIファイルを運良く入手できたならば、音階をFOF用に圧縮して流用することも可能です。きっちりはまるというのは、原曲音源と同じBPMで作られたMIDIファイルです。原曲を耳コピしたMIDIファイルは普通この形になります。まるごと使用できなくても一部のパートの参考にはなります。
楽譜とかTAB譜でも同じことができます。FOF譜面は音階を考慮して書かれているため、リアルの音階を圧縮した形でそのまま違和感無く成立させることができます。コードやらハンマリングやらの指の形を重視した場合は、また違う書き方になるんですが、基本的には音階重視の記述で間違いないと思います。ただ、多くのMIDIは主旋律だけで作られてるので、伴奏を主とするGH系の譜面にはマッチしない事も多いです。
逆の発想ですが、まずMIDIで耳コピしてFOF用に圧縮するというテクニックもあります。こうすると音階の前後関係に確実な整合性を持たせることができます。
番外・プレビュー動画も作る
国内だとプレイヤーが少ないので、いつの間にか自分で譜面のプレビュー動画を作って自分で宣伝するようになってました。ほとんど無名のゲームですので、そうやって布教活動をしているとも言えます。実際、国内ではニコニコ動画やYouTubeでこのゲームの存在を知る人が多いようです。無名のゲームなので視聴者の反応は薄いですが、やってみたい人のためにヒントを書いておきます。
動画の圧縮やら編集については自力で調べてください。FOF側で調整できる部分についてだけ書きます。
Alarian 2.7ベースです。無編集を前提にFOF単体である程度の見栄えを確保するにはどうしたらいいか試行錯誤した結果です。
背景画像はpng形式。サイズは760x590で不具合がでないはずです。date/Themes/個々のテーマフォルダ/Stagesの中に収納されてます。Stage01.png~Stage99.pngみたいな連番。3桁でもOKですが枚数が増えると負荷が大きくなります。
連番表示にするにはSettings>Game SettingsでStages:Random Rotate Stage:In Order Rotate Delay:好みの切り替え時間に設定します。
ゲーム的な効果音を入れない方が動画作品としてベターな場合もあります。FOFで使われている効果音ファイルはoggとwav方式。無音ファイルに置き換えれば効果音を消してしまえます。好きに差し換えもOK。
効果音類はdate/Soundsとdate/Themes/個々のテーマフォルダ/Soundsの二箇所にあります。ミス音を消すにはfiba1~6.wavを無音に。スタート時と終了時の歓声はstart.oggとrocksound.ogg。スターパワーはstarpower.wav。これらを全部無音にすればプレイ時に楽曲しか鳴らなくなります。Miss Volumeを90%に設定しておけばミスによる音の変化は気にならなくなります。
動画のキャプチャーには初心者でも分かりやすいAmaRecCoがお勧めです。その他動画制作にも使えるツール類を便利ツールの項にまとめてあります。参考にしてください。プレイ技術が低くて動画にするのが躊躇われる人は、自動演奏モードを使ってみてください。コマンドはMODによってかわります。Alarian2系 Modは「uptomytempo」です。
最終更新:2010年05月30日 14:22