D6温泉を覆う影 ◆aa/58LO8JE
白。
白い平原が広がっている。
否、広がっていたというべきか。
その平原は今、薄っすらと桃色に染まっている。
だから、言い直すならばそこは薄桃色の平原だった。
よくみるとその平原には穏やかな……本当に穏やかな丘陵があった。
ただ、その丘陵はあまりにもなだらかすぎるので、単に平原があるとだけ言っても問題は無いのかもしれないが。
その筋の冒険家が見れば征服をしたくて堪らなくなるだろう、薄桃色に染まる可愛らしい2つの丘。
その丘の頂については今回は言及を避ける事として。
ともかくその2つの丘の麓から平原を下っていくと、小さな窪みが一つ。
そして、その窪みを越えた更に先にもまた、神秘的な世界が広がっている。
……筈なのだが現在、丘陵から下は灼熱の泉に飲み込まれていてその姿は定かではない。
丘陵の麓から発生した川は揺るやかな速度で薄い谷間へと飲み込まれ、そのまま泉の中へと消えていた……
白い平原が広がっている。
否、広がっていたというべきか。
その平原は今、薄っすらと桃色に染まっている。
だから、言い直すならばそこは薄桃色の平原だった。
よくみるとその平原には穏やかな……本当に穏やかな丘陵があった。
ただ、その丘陵はあまりにもなだらかすぎるので、単に平原があるとだけ言っても問題は無いのかもしれないが。
その筋の冒険家が見れば征服をしたくて堪らなくなるだろう、薄桃色に染まる可愛らしい2つの丘。
その丘の頂については今回は言及を避ける事として。
ともかくその2つの丘の麓から平原を下っていくと、小さな窪みが一つ。
そして、その窪みを越えた更に先にもまた、神秘的な世界が広がっている。
……筈なのだが現在、丘陵から下は灼熱の泉に飲み込まれていてその姿は定かではない。
丘陵の麓から発生した川は揺るやかな速度で薄い谷間へと飲み込まれ、そのまま泉の中へと消えていた……
簡潔に言うと、丘陵と谷間と平原と窪みとその他諸々の持ち主である山辺美希は露天風呂に入っていた。
ここはD-6にある温泉旅館である。
杉浦碧に保護させた後、ここまで移動した美希達。
すぐにでも鉄乙女を探しに行きたそうにしている碧を、言葉巧みに引き止めていた彼女だったが、
今現在は、碧の『お風呂にでも入ったら落ち着くから』との勧めで温泉に入っていた。
「ふや~」
“温泉宿でぃーろく旅館”と書かれた手拭いを頭に載せ、美希は首元までお湯につかる。
人類が消え、ガス・水道・電気が止まって数日……それにかけて幾つもの週末。
風呂に、それも熱いお湯の張られた湯船に入るのは、本当に久しぶりだった。
これが殺し合いの舞台でなければ、なお良かったのだが。
(なんで、こんなのわざわざ……?)
そう考えながら美希は、露天風呂の側にある立て看板をぼうっと眺める。
先ほど読んだそれには温泉の効能と一緒に、こう書かれていたのだ。
ここはD-6にある温泉旅館である。
杉浦碧に保護させた後、ここまで移動した美希達。
すぐにでも鉄乙女を探しに行きたそうにしている碧を、言葉巧みに引き止めていた彼女だったが、
今現在は、碧の『お風呂にでも入ったら落ち着くから』との勧めで温泉に入っていた。
「ふや~」
“温泉宿でぃーろく旅館”と書かれた手拭いを頭に載せ、美希は首元までお湯につかる。
人類が消え、ガス・水道・電気が止まって数日……それにかけて幾つもの週末。
風呂に、それも熱いお湯の張られた湯船に入るのは、本当に久しぶりだった。
これが殺し合いの舞台でなければ、なお良かったのだが。
(なんで、こんなのわざわざ……?)
そう考えながら美希は、露天風呂の側にある立て看板をぼうっと眺める。
先ほど読んだそれには温泉の効能と一緒に、こう書かれていたのだ。
『某県の温泉宿場、経観塚より旅館を源泉ごと移築しました。
是非、名湯に浸かり心も体もリフレッシュしてください。
是非、名湯に浸かり心も体もリフレッシュしてください。
P.S.首輪は耐水性なのでご安心を
主催』
主催』
「正直、そんな事書かれても……」
お湯の中に口まで沈ませながら唸る。
美希が息を吐き出すたびに、水面がぶくぶくぶくぶくと波立っていた。
お湯の中に口まで沈ませながら唸る。
美希が息を吐き出すたびに、水面がぶくぶくぶくぶくと波立っていた。
◇◇◆◇◇
「さーて、これからどうするかねぇ……」
山辺美希が温泉で温まっている頃、杉浦碧は旅館のロビーで一人、外の様子を見張っていた。
(てっちゃん……)
美希を保護してから――鉄乙女と別れてから、1時間以上が経過していた。
時間的にすでに何かしらの決着がついている頃だろう……それがどのような形であれ。
乙女が走り去った直後に追いかけていれば、すぐに追いついていたかもしれない。
だが深夜の、それも何の目印も無い森林内で1時間以上も前に居なくなった人物を探すのは至難の業だろう。
もちろん、これは美希が悪いわけではない。
普通の高校生である彼女に覚悟を決めろ、殺人鬼の居た場所まで案内しろというのは酷と言うものだし、
だからと言ってあの場面で美希を一人残して乙女を探しに行くのも薄情この上ないだろう。
山辺美希が温泉で温まっている頃、杉浦碧は旅館のロビーで一人、外の様子を見張っていた。
(てっちゃん……)
美希を保護してから――鉄乙女と別れてから、1時間以上が経過していた。
時間的にすでに何かしらの決着がついている頃だろう……それがどのような形であれ。
乙女が走り去った直後に追いかけていれば、すぐに追いついていたかもしれない。
だが深夜の、それも何の目印も無い森林内で1時間以上も前に居なくなった人物を探すのは至難の業だろう。
もちろん、これは美希が悪いわけではない。
普通の高校生である彼女に覚悟を決めろ、殺人鬼の居た場所まで案内しろというのは酷と言うものだし、
だからと言ってあの場面で美希を一人残して乙女を探しに行くのも薄情この上ないだろう。
でも、それでも碧は思うのだ。
何かいい方法が無かったのかと。
自分の判断は間違っていたんじゃないだろうかと。
何かいい方法が無かったのかと。
自分の判断は間違っていたんじゃないだろうかと。
「駄目だなー……前向きに頑張るって、てっちゃんに言ったのに」
自分にやれる事をやる。
乙女に言った言葉を思い出し、碧はある決意をする。それは……
自分にやれる事をやる。
乙女に言った言葉を思い出し、碧はある決意をする。それは……
◇◇◆◇◇
「ごめん、あたし、てっちゃん探してくる!」
風呂からあがり、ロビーに戻った美希を待っていたのは碧のそんな言葉だった。
「えっ? で、でも、ミドリちゃん」
「大丈夫! すぐに戻ってくるから、ミキミキはここで隠れてて」
困惑する美希をよそに彼女は矢継ぎ早に告げる。
「鞄の中身は自由に使っていいから! あたしが帰るまで、ここでじっとしててね」
それだけを言い残し、ポニーテールの少女は夜が明けつつある表へと飛び出していった。
風呂からあがり、ロビーに戻った美希を待っていたのは碧のそんな言葉だった。
「えっ? で、でも、ミドリちゃん」
「大丈夫! すぐに戻ってくるから、ミキミキはここで隠れてて」
困惑する美希をよそに彼女は矢継ぎ早に告げる。
「鞄の中身は自由に使っていいから! あたしが帰るまで、ここでじっとしててね」
それだけを言い残し、ポニーテールの少女は夜が明けつつある表へと飛び出していった。
「使えない……」
その姿を呆然と見送った美希は、ようやく一言ポツリと漏らした。
本当に使えない。
正義感が強いのはいい。
けれども強すぎて制御できないのはさすがに困る。
「どうしようかな、この状況」
とりあえず、ここに隠れて碧を待つか、それとも早々に切り捨てて他に利用できそうな人間を探すか。
ふと、足元に置かれたままの2つの鞄が眼に映る。
(まあ、武器を確認しながら考えようかな?)
そんな風に思いながら、碧の鞄を開ける。
中から出てきたのは、真新しいプラスチック製の四角い物体――ノートパソコンだった。
その姿を呆然と見送った美希は、ようやく一言ポツリと漏らした。
本当に使えない。
正義感が強いのはいい。
けれども強すぎて制御できないのはさすがに困る。
「どうしようかな、この状況」
とりあえず、ここに隠れて碧を待つか、それとも早々に切り捨てて他に利用できそうな人間を探すか。
ふと、足元に置かれたままの2つの鞄が眼に映る。
(まあ、武器を確認しながら考えようかな?)
そんな風に思いながら、碧の鞄を開ける。
中から出てきたのは、真新しいプラスチック製の四角い物体――ノートパソコンだった。
「中身も使えない!」
山辺美希は思わず頭を抱えた。
【D-6 旅館周辺/1日目 早朝】
【杉浦碧@舞-HiME 運命の系統樹】
【装備】:不明
【所持品】:
【状態】:健康
【思考・行動】
1:鉄乙女を探す
2:1の終了後、旅館に戻る
3:反主催として最後まで戦う
4:知り合いを探す
【装備】:不明
【所持品】:
【状態】:健康
【思考・行動】
1:鉄乙女を探す
2:1の終了後、旅館に戻る
3:反主催として最後まで戦う
4:知り合いを探す
【D-6 旅館ロビー/1日目 早朝】
【山辺美希@CROSS†CHANNEL ~to all people~】
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式×2、投げナイフ4本、ランダム支給品0~2(本人確認済み)
ノートパソコン】
【状態】:恐怖(芝居)、健康、呆れ
【思考・行動】
基本方針:とにかく生きて帰る 集団に隠れながら、優勝を目指す
0:使えない……
1:旅館で碧を待つor他に利用できそうな人間を探しに行く
2:太一、曜子を危険視
3:刀を持った人間が危険だと言う偽情報を、出会った人間に教える
【備考】
※ループ世界から固有状態で参戦。
※つよきす勢のごく簡単な人物説明を受けました。
【装備:投げナイフ1本】
【所持品:支給品一式×2、投げナイフ4本、ランダム支給品0~2(本人確認済み)
ノートパソコン】
【状態】:恐怖(芝居)、健康、呆れ
【思考・行動】
基本方針:とにかく生きて帰る 集団に隠れながら、優勝を目指す
0:使えない……
1:旅館で碧を待つor他に利用できそうな人間を探しに行く
2:太一、曜子を危険視
3:刀を持った人間が危険だと言う偽情報を、出会った人間に教える
【備考】
※ループ世界から固有状態で参戦。
※つよきす勢のごく簡単な人物説明を受けました。
060:見上げた虚空に堕ちていく | 投下順 | 062:楽園からの追放 |
059:参加する事に意義がある | 時系列順 | |
037:吊り天秤は大きく傾く | 杉浦碧 | 077:last moment |
山辺美希 | 081:Crossing The River Styx |