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想い出にかわる君~Memories Off~ (前編)

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想い出にかわる君~Memories Off~ (前編) ◆LxH6hCs9JU



 時刻は午前八時を回っている――これが多くの人が想像する『日常』であるならば、駅周辺の状況はどうか。
 学校に向かう学生、会社に向かう社会人、裏路地を這い回るねずみ、安住を求めるホームレス、朝食のお零れを啄ばむ鳩、
 人間に限らず数多く命が群れを成し、騒音を運び、低血圧な者は起き抜けのテンションも影響し、多くの場合は『鬱陶しい』とストレスを蓄積させることだろう。

 通勤通学ラッシュの最中とも言える時間、無人の駅舎内、ホーム白線の内側にて。
 山辺美希は、そんな日常ならではと言える憂鬱とは別種のストレスを、ある男のせいで抱え込んでいた。

 男の名は大十字九郎。アーカムシティという街で私立探偵をやっている、風変わりな青年だ。
 なにが風変わりなのかと問われれば、私立探偵という職種よりもまず服装……と口ごもりつつも答えざるを得ない。
 頭からすっぽりと女物のローブを被り、歩きづらそうに時折生脚を覗かせる姿は、お世辞にも似合っているとは言えない。
 さらにこの服の下がパンツ一丁……どころか、腰にタオルを巻いただけのほぼ全裸という事実を知っている身としては、
 なおのこと気持ち悪がるしかなかった。もちろん、表の態度には微塵も出さぬが。

 しかし実際のところ、美希は九郎の服装にのことなど割りとどうでもよく思っていた。
 仮に九郎が女装趣味の変態であったとしても、美希にとっては些細なことである。
 彼女が同行者に求める条件はただ一つ――その人物が、『道具』と成り得るか否かだ。
 この『道具』とは、例えば狙撃兵の奇襲から守ってくれる盾であったり、逃走の際の安全ルートを確保してくれる逃がし屋だったり、か弱い女の子に狙いを限定するような暴漢を一発KOしてくれるヒーローであったりだ。

 大まかに解釈するならば、『山辺美希に安心感と事実として安心できる状況を提供してくれる人物』のことを差す。
 さらに理想を付け加えるならば、いざというとき自分の思惑通りに動いてくれる駒の要素を兼ね揃えていたほうが良い。

 過去に美希が接触した人物たちは、はたして美希の求める条件を満たしていただろうか。
 対馬レオ――盾にしかならなかった。貧弱すぎる。一回限りの使い捨て。役には立ったがそれでも最低ラインだ。
 杉浦碧――問題外。子供を放って独断行動に躍り出る大人の風上にも置けない人物。期待しただけにガッカリだ。
 そして、大十字九郎――熱血漢という印象がピッタリ合致するこの男も案の定、美希の求める存在にはなりえなかった。

「ごめん、美希ちゃん。やっぱり俺、あいつのこと放っておけないわ」

 俯き気味の顔で駅まで足を伸ばし、次発の電車がもう間もなく到着するという今になって、
 重苦しい表情を維持し続けていた九郎は、ようやっとその言葉を口にした。
 美希は表向きは「えっ?」という声を漏らし、心中では「ああやっぱりね」とぼやき、九郎の顔を覗き込む。
 メラメラという熱気が伝わるほどに、暑苦しい目をしていた。見ているだけでげんなりしてくる。
 そんな美希の心理は察さず、九郎は己の意を、あまりにも身勝手な誇りと共に主張した。

「俺なんかが行っても、なにもできないかもしれない。だけど、それじゃ自分が納得できねぇんだ。
 あんな死ぬ気満々のガキ放って、自分だけ安全なところに逃げ延びるなんてよ……できっこねぇ。
 ああ、できねぇさ! 俺はそういう男だ! だーもうなにウダウダ悩んで時間潰しちまってんだクソッ!」

 漠然とではあるが、第一印象からしてこの展開は読めていた。つまりは必然の結果。
 大十字九郎は、対馬レオや杉浦碧と同じ、いやそれ以上の無能であると――美希はこの瞬間、断定した。
 駅のホームに汽笛が鳴り響く。新たな電車がB-7へと到着したようだ。
 あれに乗れば、この危険極まりない地区を脱出できる。
 九郎はそれを理解し、だが瞳に灯した火種は燻ることなく燃え盛る。

「美希ちゃんはあの電車に乗って、次の駅で待っててくれ! 心配すんな、理樹とアサシンってやつを助けて必ず戻る!」

 心配なんて、まったく、これっぽっちも、一ミクロンたりともしてませんよ、と心のゴミ箱に吐き捨てる。
 表面上は良識溢れる女子高生を演じ、山辺美希としての体裁を保ちながら、九郎との縁切りに躍り出た。

「……わかりました。絶対に、絶対に生きて戻ってきてくださいね!」
「おう! 任せとけ!」

 無駄に威勢のいい声を返し、九郎は駅舎の外へと走り去っていった。
 もう二度と会うことはないだろう。乗車間、名簿の大十字九郎の欄に逸早く横線でも引いておこうか。
 いや、あるいは生き残るかもしれない。が、美希の勘は告げる。
 九郎がヒーローとしての勤めを果たし、理樹たちを連れて戻ってくる確率は……ゼロパーセントだと。

「ホント……つっかえなー」

 肩を落とし、深く溜め息をつく美希。
 また一人になってしまったわけだが、予測はしていたので精神的にはそれほど痛手でもない。
 問題は今後どうするか。駅を離れるのが第一として、向かう先に美希の求める安寧はあるのか否か。
 行動を起こさなければ何事も好転しないのは明らかであり、悪手を恐れて手を拱くほどの臆病者でもなく、
 しかしまったく懸念がないわけでもない現状で、美希はどう立ち回るべきが最善なのか、模索する。

 その、一瞬の隙。
 九郎が去り、美希が次のフェイズに身を転じる僅かな時間を縫い、声が齎された。

「あー、ちょっといいか?」

 道端で勧誘を行うような、軽い呼びかけだった。だからこそ驚き、気を動転させる。
 美希は総身を震わせ、オーバーリアクションで後ろを振り向いた。
 そこにいたのは、到着したばかりの電車から今まさに降りてくる最中の男性。
 背広を着た痩身は、ひょろ長くも軟弱者というイメージは与えず、掴みどころがない。
 一見してどこにでもいるような、痩せているという以外これといった特徴のない、中年の男だった。

 態度からして敵愾心を持った相手ではないと判断できるが、それでも美希は己の迂闊さを悔やんだ。
 まだ方針の組み立てが完了していない時期に、想定外の出会いを迎えることになってしまったからだ。
 こちらから接触するのならともかく、他者からの接触はなにかと懸念が残る。
 積極的に声をかけるということはそれなりの思惑があるということであり、
 そこに悪意がつけ込むのはある意味当然、少なくとも善意だけ持って接触を図ってきたと考えてはならない。

 後手に回ってしまったのならば、細心の注意を払い、対処策を練る必要があった。
 美希は不自然ではない程度に身を構え、人見知りな風を装って、痩身の男に対峙した。
 男は美希の様子を見て頭をぼりぼりと掻き毟り、気だるそうな顔で言葉を続ける。

「急に声かけられて驚いちまったか? あ、いや、すまん。驚かせる気はなかったんだ。
 ただ、君が着ているその制服なんだが……ひょっとしたら、と思ってな」

 美希はまだ口を開かない。男の態度は友好的だが、その本性はまだ知れず、先読みもできない段階。
 迂闊な言葉は致命傷となる。山辺美希という正体を晒すことすら、危険な行為となりかねなかった。
 だから今はじっと、男の出方を待つ。
 歩み寄ってくる男との距離を測りながら、電車のドアがまだ開いたままであることを視界の端で捉えながら。

「――佐倉霧って子を知らないか? 君と同じ、空色の制服を着た女の子なんだが」


 ◇ ◇ ◇


 竜鳴館高校館長橘平蔵と、竜鳴館高校生徒会副会長兼風紀委員長鉄乙女
 この二人が、互いに本気で試合を行ったならば、はたしてどちらに軍配が上がるだろうか――?

 そのような話題が竜鳴館の生徒たちの間に広まったとするならば、多くの者は館長こと橘平蔵を支持するだろう。
 第二次世界大戦において米軍に「彼が戦争に参加していたら勝敗はわからなかっただろう」とまで言わせ、
 実際にも数多くの英雄譚を持つ平蔵の実力は、もはや伝説の域だ。
 年季の差から言っても、平蔵の弟子に値する乙女が、師を下す可能性は低い。

 しかしそこは波乱万丈な学園ライフを売りとする竜鳴館高校。絶対とは言い切れない。
 学生の中には、鉄の風紀委員と恐れられる鉄乙女を支持する者も少なからず出てくるだろう。
 スポーツ万能、拳法の達人、居合道も習得……と、彼女も彼女で女学生とは思えないほどの武勲を立てている。
 未だ発展途上の蕾が、開花期をとうに終えた花を下すとも限らないのではないか。

 意見は交錯するのが目に見えている。ならば実際に戦わせるしか検証の術はない。
 とはいっても、二人とも血に飢えたバトルマニアというわけではないのだから早々対決など望めない。
 館長と風紀委員という双方の立場を考えても、大っぴらに拳を合わせることなどできようはずがなかった。
 方法があるとすれば、それはただ一つ。

 ――ここが竜鳴館の外であるならば。

 橘平蔵の定めるルールから外れ、鉄乙女の監視からも逃れ、規律も秩序も乱れた舞台に二人が立たされたとするならば。
 対戦カードが組まれるのは師弟の必然かもしくは第三者の目論見か。その場合当人たちのやる気はどうだろうか。
 もし互いに異論なく、本気を発揮できるのであれば――実現する。

 橘平蔵対鉄乙女。
 竜鳴館高校に所属する者なら誰もが食いつくであろう、世紀の大決闘が――

「……っの、馬鹿もんがああああああああッ!!」

 ――既に幕を開け、その幕は早くも閉ざれようとしていた。
 理由はただ一つ。橘平蔵の圧倒的な実力が、乙女を防戦一方に強いている現状が続いているからだ。

「恥を知れ、鉄乙女よッ! 竜鳴館の風紀を守るべきおまえがぁ……なんたる愚行だ!
 非常時とはいえ、儂の許可なく抜刀し、さらに罪もなき若人を襲撃するとは。
 いずれも竜鳴館風紀委員にあるまじき行為だ。それ相応の罰を受ける覚悟はあろうな!?」

 周囲は中心街ということもあり、雑多にビルが並んでいる。
 立ち並ぶコンクリートの壁は、平蔵の肉声をダイレクトに反射し、響き渡らせる。

 大柄な体躯を和服で包み、その隙間からは屈強な筋肉と傷跡が見え隠れしている。
 肩を抜ける長髪とそれらと一体化するように伸びた顎髭が印象的であり、全身から日本古来の趣が感じ取れる。
 この壮年の男――いや、『漢』こそ、知る者ぞ知る橘平蔵だった。

 大太刀を振るう女学生相手に素手での奮戦を見せ、一歩も退かぬどころか逆に追いつめる。
 無謀ではなく、実力の伴った勇猛さを発揮する漢らしさは、同性に恋情を抱かせるほど。
 曰く、世の体育会系の男児で橘平蔵に憧れない男はいないという。

「……むぅ」

 平蔵が大太刀を振るう女学生――乙女と対峙している後ろで、漆黒色の痩身が細く唸った。
 表情を覆い隠す骸骨の白面。変わった形状の刃を握る隻腕。機を窺うような所作。
 見た目には怪しすぎる男、真アサシンことハサン・サッバーハは一応は平蔵の味方である。
 共通の敵を持っているというだけの間柄であり、アサシンはその敵を討つべく平蔵の背後で燻っていた。
 彼が未だ攻撃に移れぬ理由はただ一つ。平蔵の振るう覇気が、第三者の介入を困難にさせていたからである。


「ハサンさん、あの……」
「む……緊張を解くでないぞリキ殿。勝敗はまだ決してはおらん」

 アサシンの横、野球の打撃に用いるはずのバットで武装した少年が、心細そうに呟く。
 彼の名は直枝理樹。アサシン同様、今は平蔵と共闘するべくこの場に立っている戦士だったが……
 やはり平蔵と乙女の一戦には手出しができず、どうにか構えだけを取って観戦に徹してるのが現状だった。

「――シッ!」

 平蔵が拳を、乙女が刀を振るう隙を縫い、アサシンが遠方から『星』を放る。
 武器になどならぬ木彫りのヒトデ。ただしこの星は、投擲を得意とするアサシンが投げれば立派な牽制の役目を果たす。
 殺傷能力はなくとも平蔵の援護になれば――と、アサシンが乙女の顔面に迫る星を見届けるが、

「むっ!?」

 高速で放られたヒトデは、直撃の寸前、乙女の振るった刀に容易く弾かれてしまう。
 平蔵という猛者を相手にしていながら、外野からの攻撃にも反応できる俊敏さ。
 アサシンは敵対する者の力量を測りながら、次なる攻め手を模索した。

「ふっ、白面の者よ。小手先の一手など鉄には通じんぞ。あれは、歳若くして戦い方を心得ているのでな」
「御仁よ、貴殿はあの者を知っているのか?」
「左様。そしてだからこそ、奴は儂の手で成敗せねばならん……故に、手出し無用ッ!」

 拳を固く握り締め、平蔵が突貫する。
 対戦者――鉄乙女は、平蔵の教え子であり、竜鳴館の風紀を一任したほどの逸材だ。
 外見の美貌とは裏腹な、精神的たくましさ、肉体的強さを兼ね揃えている。
 若輩故に及第点は残るが、数少ない平蔵が認めた人間の一人だ。

 その鉄乙女が、今は冥府魔道に落ち、我を失っている。
 発端はなんなのか、理由はなんなのか、元凶はなんなのか、それらを断つことは可能なのか。
 考えるべくもないことだ。橘平蔵が竜鳴館館長として、竜鳴館の学生にしてやれる指導はただ二つ。
 女子は校庭十周――しかし乙女が対象とあっては、それしきの罰では生温い。
 ここは男子と同じく――『鉄拳制裁』の四文字を持って正すほかなかった。

「ぬぅおおおお!」

 豪気に振り被った巨腕が、乙女の華奢な体を穿たんと振り落とされる。乙女はこれを後方に回避。
 空爆のような衝撃音がアスファルトの大地を叩き、砕け散った礫が避けた乙女に飛来する。
 刀で払うまでもない弾幕をあえて身に受け、乙女は後ろへの移動を続けた。平蔵の姿は正面に据えたまま。

 パンチ一発で路面を破壊する。常識からしてありえない光景を目にしポカンと佇む理樹とアサシン。
 そんな二人を蚊帳の外に置き、平蔵は固く大地を蹴り、それだけで足場が揺らいだ。
 まるで石像が戦っているかのような重厚な身体動作、それでいて放つ気迫は正しく人のもの。
 豪気、闘気、覇気、なんとでも称せるが平蔵に言わせるならそれは――漢気(おとこぎ)。

 日本の未来を担う若人に教えを説かんと、平蔵は暴力という手段を持ってして乙女に接する。
 刀を盾に構えたまま後進し続ける乙女に対し、正面から走って接近し、正面から拳打を放つ。
 正々堂々、何事も正面から。平蔵が貫く漢の信念は、豪胆すぎる戦闘スタイルとして表に体現される。

 豪腕一閃――ボクシングにおいて言えば右ストレートと呼ばれるであろう一撃が、乙女の身に降りかかる。
 これはパンチであってパンチではない。殴るという行為の本質自体は変わらないが、見た目から受ける印象はまるで別のものだ。
 迸る気が相手の視界を歪ませ、距離感すらも麻痺させ、巨人を幻視させる妖術にも似た一撃――これら全て、漢気の一因なり。

 平蔵の拳打を刀身で受け止め、さらにインパクトの瞬間に後ろに跳び、しかし衝撃は完全には消え去らない。
 乙女は防御の姿勢のまま十数メートル後ろへと吹っ飛ばされ、足を滑らせながらなんとか踏みとどまる。
 倒れはしない。盾として刀も折れてはいない。乙女は微動しているが、戦意を収めようとしない。
 それでこそ――と、平蔵は不謹慎にも、教え子の見せる闘志を喜ばしく思った。

「ほう、儂の拳を受けてもまだ砕けんとは。地獄蝶々に勝るとも劣らぬ名刀よ」

 乙女の振るう刀――斬妖刀文壱は、神代学園生徒会会長一乃谷兄妹の愛刀として知られる化け物刀だ。
 怪力妖怪『牛鬼』を祖に持つ人妖、一乃谷兄妹だからこそ扱える重量とそれに見合った強度。
 多少の心得があれど、人間が容易に振れる刀ではない――では、人間をやめた者ならばどうか。
 答えはこうして、乙女が斬妖刀文壱を使いこなしているという事実にあった。

 覇気を持って身の震えを一蹴し、乙女は再度、斬妖刀文壱を攻勢に構える。
 剣先には純然たる殺意が込められ、刀身に留まることなく切っ先の平蔵へと向けられていた。
 平蔵はそれを真正面から受け取る構え。そして正す心構え。果たすには腕一本で事足りる。

(刀で受け止める程度では、わからんか。やはり、直接鉄拳を叩き込むほかないようだな)

 闘争心がたぎるその裏で、平蔵の僅かな落胆が零れた。
 この手で教え子を下さなければならぬという、苦渋の決断。
 あるいは手にかけてしまうのもやむなしか――と考えたとところで、平蔵の漢気は鈍らない。

「……儂すらも忘れているというのならば仕方がない。今この場で、改めて刻みつけるまでよ」

 高齢者だからこその貫禄を持ってして、若き日に持ち合わせていた甘さを捨て去って、立つ。
 その間、乙女は斬妖刀を平に構え、地面に対し水平に滑らせながら突進してくる。
 間合いまで踏み込めば、即座に斬撃を与えられる姿勢。攻め手としては悪くはない。
 乙女が得意とするのは、厳密に言えば剣道ではなく居合道だ。彼女の振り抜きの速さには目を見張るものがある。
 鉄乙女という剣士を理解している平蔵だからこそ、相手が横薙ぎで攻めてくると察知したからこそ。
 平蔵は構えを解き――おもむろに腕を組み始めた。

 退かない避けない防がない。寛大ではあるものの愚かとも言える無防備の状態に至り、乙女の剣を待つ。
 九、八、七、六、五、四、三、二――互いの距離が、斬妖刀の尺度ほどまで詰まり、

「喝ッ!!」

 平蔵が突如、轟雷のような声を発した。
 腹からの大声に、大気が震えた。
 観戦者二人が、身を仰け反らせた。
 覇気だけで、眼前の敵が吹き飛びそうだった。
 しかし。
 乙女は怯まず、平蔵を間合いに捉えた瞬間に――斬妖刀を振りぬく。

 平蔵の顔面を狙った見事な横一閃。刃にぶれはなく、宿る殺意には曇りもない。
 一刀に込められた乙女の『殺し』が、平蔵の顔に容赦なく浴びせられる。
 が、

「――どうした、儂の気にあてられ臆したか? 鉄一族の末子ともあろう者が……嘆かわしい!」

 斬妖刀は、間違いなく最後まで振り抜かれた。
 ただしその切っ先に血の痕跡は残らず、平蔵の顔にも外傷はない。
 当たり前だ。腕組みをしたままの平蔵の顔面には、刃など一ミリも触れなかったのだから。

 ――第三者の視点から見るならば、乙女の放った横一閃は、完全なる空振りに終わった。
 刃にはぶれなく、殺意に曇りなく、しかし、空振り。どこに失敗の要因があったのか。
 それは乙女が正常な思考回路を保っていたとしても、すぐにはわからなかっただろう。

 古来より、武に精通した達人は、『気』を操るという。
 気――それは誰しもが持つ、見えざる力の奔流。
 ある者は気を破壊エネルギーに変換し、弾丸として用いる。
 ある者は気を全身に纏い、鋼鉄よりも頑強な無敵の鎧とする。
 ある者は気を相手に放ち、相手の五感を麻痺させる――平蔵がやったのはそれだ。

 一閃の刹那、気を込めた全身全霊の一喝で、乙女の身に揺さぶりをかけた。
 表には出ずとも、相手が生命である以上、影響は出る。
 おそらくあの一瞬、乙女の視界では、平蔵の姿が元の何倍も大きく映ったはずだ。
 相手との相対距離を把握する能力、平衡感覚を狂わせ、斬妖刀の間合いを見誤らせるほどまでには。

「刻みつけよ、漢の拳を! 思い出せ、儂の名を! よいか! 儂の名は――」

 平蔵の気にあてられた乙女は、斬妖刀を振り抜いた姿勢のまま僅かに硬直。
 防御不可能回避不可能反撃不可能不可避の硬直状態――!
 平蔵は的と化した乙女の胸元目掛け、制裁のための鉄拳を繰り出す。

「――竜鳴館館長、橘平蔵ッ!!」

 その、尊大すぎる名乗りと共に。
 平蔵の漢気を正面から受け止めた乙女は、衝撃に耐え切れず吹き飛ばされる。
 衝突先はファーストフード店。自動ドアを突き破り、カウンターの奥にある厨房まで飛ばされ、音と粉塵が生まれる。
 平蔵が、理樹が、アサシンが、乙女の消失先へと視線を転じた。
 一秒、二秒、三秒と待っても、変化は現れない。
 即座の反撃がないと取るや、平蔵が静かに口を開く。

「……しばし頭を冷やせ。このたわけ者が」

 呟くように放った平蔵の口元には、どこか哀愁の念が滲み出ている。
 かくして、竜鳴館が誇る二強の対決は幕を下ろした――

 ――そして、新たな幕はすぐに開かれる。

「リキ殿……リキ殿の目から見て、あの御仁はどう映る? 人……でよいのだろうか?」
「……うん。人には、違いないと、思うけど……え、ええええ~……?」
「あのような御仁が聖杯戦争に参加していたら……戦況も大いに変わったであろうな」

 アサシンですら悟れぬほどの気配隠蔽能力を持ち、さらに身体能力も人間の範疇を越えていた鉄乙女。
 正面から戦えば確実に苦戦を強いられたであろう相手はしかし、平蔵の一撃で沈黙してしまった。
 拍子抜け……いや、この場合は平蔵の実力に目を見張るべきか。乙女が怪人であったことには変わりないのだから。

「ふぅむ。儂の教え子が迷惑をかけたな。改めて名乗ろう。儂の名は橘平蔵。竜鳴館館長、橘平蔵だ」
「あ、えと……直枝理樹です。こっちはアサシンさん……その、館長って?」
「ま、早い話が学園長だ。おまえたちを襲ったあやつは儂の教え子……鉄乙女といってな。
 普段ならあのような蛮行を取り締まる側にいるべき人間なのだが、鉄になにがあったか知らぬか?」
「ううん。僕とアサシンさんはいきなり襲われて、ろくに会話もしてないんだ」
「完全に無差別の様子だった。どこか精気を抜かれていたような気配さえ漂っていたが……」
「……奴が落ちた理由はわからぬ、か。だが安心せい。儂の目が黒いうちは、二度とあんな真似はさせぬ!」

 説得力に満ちた声で、豪快に笑い飛ばす平蔵。つい先ほどまで死線に立っていたとは思えない姿だった。
 理樹は失笑気味ながらも平蔵の笑いに同調し、アサシンも決して警戒は解かぬまま、それぞれを紹介し合った。

「ふむ。その歳にして皆のリーダー役を担い、ゲームの転覆を狙うか……その意気や良し!
 若人とは、いや漢とは、そうでなくてはいかん。直枝と言ったな。儂もおまえの策に一枚噛ませてもらおう」

 理樹がゲーム開始当初から抱いていた算段を聞くや否や、平蔵は喜色に満ちた声でまた笑う。
 平蔵は指導者である。将来を掴み取らんと奮起する若者を前にするというのは、それだけで嬉しいものだ。
 願わくば、竜鳴館に属する対馬レオたちにもこうあって欲しい……と。
 間違っても、乙女のような醜態は見せんで欲しいと願いながら、平蔵は理樹から木彫りのヒトデを受け取った。

(さて、そろそろ鉄に喝を入れ直して……む、なにやら背中が妙にあつ、い……?)

 ――その発覚に、前触れはなかった。
 理樹はもちろんのこと、平蔵自身も、こういうことに長けた能力を持つアサシンですら、気づかず。
 いつの間にか。時間も、感覚すらも遅らせて。僅か、あまりにも僅かな平穏は崩される。

 引き金はそう、平蔵が背中に流れるなにか熱いものを察知し、首を後ろに振ったそのときに。
 視界の端、理樹とアサシン共々、戦慄の要因を視認しなければ――あるいは混乱なく逝けたのか。

(――ぬ? これ、は……!?)

 事実。
 橘平蔵の背には、一本の太刀が突き刺さっていた。

「ぬ、がぁぁ……っ!」

 血の滴る感触。時間差で伝わってきた激痛が、平蔵の身を沈める。
 前のめりに倒れそうになる巨躯、だがあと一歩というところで軸足に力を込め、踏み留まる。
 わかる。背中に突き刺さっているのは、乙女が振るっていた斬妖刀文壱。
 平蔵の拳を持ってしても砕けなかった業物だ、彼の分厚い筋肉を裂くくらいわけはない。
 気になるのはただ一点。いつ、何者が、皆の目を掻い潜り、こうやって平蔵の背後に凶刃を向けたのか――?

 答えは、すぐに。

「っ!? お、と――」

 平蔵の背後に位置するファーストフード店から、猪突猛進の勢いでなにかが飛び出してきた。
 人の影にも思える俊敏ななにかの正体は、考えるまでもなく、先ほど制裁を加えた鉄乙女にほかならない。
 乙女は前触れもなく戦地に舞い戻ると、平蔵の背に刺さっていた斬妖刀に手を伸ばし、握る。
 引き抜くと同時に、平蔵の大柄な背中を斬り裂いた。

「ぐおっ……!?」

 その一撃を持って、平蔵の身は今度こそ完全に倒れ伏した。
 斬妖刀に血が染みる。最強の日本男児と謳われた橘平蔵の血と、僅かにこびりついた肉が。
 斬妖刀を握る者は、その刀身をぺロリと一舐め。さらなる血肉を欲さんと、視線は次なる獲物のほうへ。

「くっ! 逃げるぞリキ殿!」
「は、ハサ――」

 思わぬ奇襲に所作が遅れた二人ではあったが、アサシンの機転によりどうにか難を逃れる。
 どんどん遠ざかっていく理樹とアサシンの後姿を捉えながら、平蔵は己の呼気が荒くなっていくのを感じていた。

(ぐっ……これも、制限とやらの一環か? この儂が、これしきの傷で参るなど……ぐはっ)

 口から鮮血が零れる。視界が揺らぐ。全身から覇気が失われていく。手足の感覚も、次第に。
 とある一線を退き、竜鳴館の館長を務めるようになってからは、久しく味わっていなかった窮地の到来。
 傷を負う辛さ、獅子を前にしての生への渇望、駆け巡る思想、平蔵の体からアドレナリンが噴出する。

(乙女……! おまえ、は……ッ!)

 顔を僅かに持ち上げ、すぐ隣に立つ乙女を見やった。
 乙女は斬妖刀を手に持ったまま、チラリと平蔵の姿を一瞥する。
 死骸を見つめるホリフィック・キラーの目ではない。
 瞳に灯った色は、切なさを感じさせる虚無の色……無色。

「レ、オ」
「……!」

 乙女がか細く発した二句の語を聞き逃さず、耳に入れて、平蔵は理解した。
 鉄の蛮行が愛ゆえのものであり、彼女が深い悲しみを背負っており、恋する乙女はただそれに溺れただけなのだと。

(そうか……対馬レオ。愛する男が、逝ったか……)

 対馬レオ――鉄乙女と一つ屋根の下で生活を共にしている、乙女が認めた男児の名を思い出す。
 あの夏の日、竜鳴館の道場で二人の恋仲を公認にしたのは、他でもない平蔵自身だ。
 二人はともに、真剣な表情を持って平蔵に言った――レオを、乙女さんを、愛していると。

 愛ゆえの狂い。認めがたし、だがわからなくもない。現に今わかった。しかしわかるのが遅すぎだ。
 極地に至った恋情は、乙女ほどの人間すらも歪めてしまうほどの魔手なのか。だとしても悲観できないのが、人の恋路。
 眼前で看取ったのか、もしくは放送でその死を知ったのか。数時間前なで気絶していた平蔵に知るよしはなく。

(この歳にして……女を知らぬ儂では……気づけてやれなんだか)

 乙女が落ちた根源の理由――レオの死をあらかじめ知っていれば、まだ対策も取れたのだろうか。
 ああ、きっとそうに違いない。乙女を突き動かすのは殺意ではなく、愛なのだ。
 予兆すら掴めず突き刺された一刀。それに込められたものが殺気であったならば、平蔵もアサシンも気づけた。
 だが違う。乙女はただ恋情を募らせ、刀を放り、凶刃が標的である平蔵の背中に突き刺さったにすぎない。
 彼女が取る戦闘行為、それらの根底に位置する衝動はあまりにも悲しく、察してやれなかった事実に平蔵はただただ悔やんだ。

(阿修羅の道を進むか……鉄乙女よ。ならば往けい。破滅を恐れぬならば、な――)

 最後に。
 乙女を救ってやれなかった無念を胸に抱きながら。
 平蔵は深く……這い上がれぬほど深い混沌の穴へと……落ちていった。


 ◇ ◇ ◇


(はしたない?)
「うん。はしたない」

 若い男女が一つ屋根の下、二人きりで暮らす――人はこれを、同棲と呼ぶだろう。
 これ自体は、はしたないものではない。なんせ私とレオは愛し合っている。
 お互いが真剣な気持ちで愛を育んでいるのだから、不純異性行為にはならないわけだ。

 麗らかな夏の午前。お昼を前にしたこの時間、私は自宅のキッチンで昼餉を拵えていた。
 自宅というのはもちろんレオの家だ。私が住まいとしているのだから、自宅と言って差し支えない。
 将来的に引っ越すこともあるかもしれないが、それでも私の居場所はこれから先ずっと……レオの家だと思う。

(私のいったいなにがはしたないって言うんだ、レオ?)
「だって乙女さん、食材を調理もせず生で食べてる」
(む、たしかに私は料理が下手だと自認しているが……それでも日々上達してるだろう?)
「だったらなおさら、料理してから食べなきゃ」

 ――平蔵に殴り飛ばされた総身は、まだガクガクと震えていた。
 ――震えているということは、動くということに相違なく。
 ――乙女は震えたままの総身を持ち上げ、ひっそりと立ち上がる。

(そうは言うがな……私はなぜか、さっきからお腹が減ってお腹が減ってお腹が減って……お腹が減ってるんだ。
 どうしてこんなにも空腹なのかはわからないがとにかくお腹が減っていて腹ペコで今すぐなにか食べたい。
 食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい食べたい――)

 ――脳を蹂躙する食欲。失せていく闘争心。残るのは、相手に危機を抱かせる殺意ではない。

「だーめ。ほら、俺も乙女さんの手料理食べたいしさ。生は駄目。まず食材は全部料理して、それからランチ。オッケー?」

 ――震えは止まった。刀を握る手に痺れはない。ああ、だが食材は遠い。だから、投げた。

(むぅ……レオがそう言うのなら)
「えらいえらい。それでこそ乙女さん」

 レオが私の頭を優しくなでる。生意気に。だが不快ではない。むしろ嬉しい。もっとしてほしい。
 アレを上手く調理できたら、レオはもっと、私のことを……そうだ、そうだな! きっとそうに違いない!

 ――投げつけた刀は大きな肉に突き刺さり、バランスが崩れたのか前倒れになる。
 ――乙女は即座に駆け出し、突き刺さった刀を引き抜くと同時に斬る。肉を細かく分断するつもりで。
 ――しかし、この肉はあまりにも分厚い。一刀で切り崩すのは困難だった。
 ――そうこうしている内に、残りに食材が逃げ出してしまった。まずい、拾わなければ。
 ――せっかくなら豪勢なランチがいい。食材は余すことなく、有効的に活用したい。

(よし、ではまず下ごしらえだ。次に調理。それから食べる。……私と、レオの二人で)

 ――平蔵の一喝にあてられた影響か、かつての日常を鬼の脳裏に思い返した乙女は、恋情を再燃させる。
 ――愛する人の笑顔が見たく、愛する人の喜びが見たく、愛する人の、そして自分の空腹を満たしたい。
 ――だから、楽しいランチタイムはまだまだこれから。


 ◇ ◇ ◇


 ――そして彼が目覚めた頃には、全ての幕が閉じた後だった。

「ぬ、ぐっ……お」

 軋む巨体に喝を入れ、ゆっくりと起き上がる。
 斬りつけられた切創から、脳髄を抉るような痛みが伝達される。
 意識もふらふらで、視界もどこかおぼろげだ。血を流しすぎたのだろう。
 しかし、出血のほうはもう止まっている。平蔵の鍛え抜かれた後背筋が、切れ込みを強引に圧縮し止血した。
 未熟な剣士の斬撃など、熊九頭を相手にした際負った傷に比べれば、どうということはない。
 ……とはいえ、制限の影響もある。深手を負った平蔵の状態は、決して万全とは言えなかった。

「日は……まだ、昇っているか。あれから、どれほど経った? 乙女たちは……」

 周囲を見渡すが、そこには人影は愚か、気配すら感じ取れない。
 乙女、理樹、アサシン、三者ともに既にこの場を離れたか。

(未熟よのぉ……儂も。あれしきの攻撃で気を失うとは、修行が足りん)

 己の身体的甘さ、そして乙女の心情を察せなかった精神的甘さ、全て受け止める。
 受け止めた上で、それらの甘えは全て不要だと、振り払った。

「……ああ、儂が甘かった。鉄拳制裁など、生温い。鉄乙女よ、おまえが奈落の底に落ちたというのであればぁ――」

 竜鳴館館長として、苦渋の決断をしなければならない。
 鉄乙女の恋情による暴走が、既に引き返せぬところまで行ってしまったというのであれば。
 力ずくで連れ戻すは無粋。想い人への情念を胸に焦がしたまま、送ってやるのがせめてもの情け。

「――儂の手で、沈めるしかあるまい。さらなる、黄泉路へとぉ……な」

 そして平蔵は、『殺す覚悟』を決めた。
 教え子をこの手にかけ――抹殺するという決意を心に刻みつけたのだった。

「しかし、乙女たちはどこぞへ消えたのか。ぐっ……血も、足りぬな。
 どこかで飯にありつきたいところだが……まずは活力を取り戻す必要があるか。
 直枝とアサシンには無事であって欲しいが……ええい、ままよ」

 平蔵は右往左往した末、天命に身の矛先を委ねることにした。
 道路端へと足を伸ばし、罪もない電柱にいきなりの鉄拳粉砕。
 根元から折れた電柱を棍棒のように肩に提げ、空を仰ぐ。

「方角、風向き、力加減……どうでもいいわっ!!」

 電柱を、昼下がりの青空へと放り投げる。
 そして、すぐさま跳躍。飛行する電柱へと飛び乗り、平蔵は空路に躍り出た。

 竜鳴館館長、橘平蔵が向かう先――そこに、宿敵と定めた元教え子はいるのか否か。
 将来有望なる二人の若人の命運は、はたして?

 彼が飛来する先、そこに待ち受けるのは――



【B-7 ドーム付近/1日目/昼】

【橘平蔵@つよきす -Mighty Heart-】
【装備】:なし
【所持品】:マスク・ザ・斉藤の仮面@リトルバスターズ!、木彫りのヒトデ×1@CLANNAD
【状態】:粉まみれ、肉体的疲労(大)、左腕に二箇所の切り傷、背中に切創(再出血の恐れあり)、貧血気味
【思考・行動】
 基本方針:ゲームの転覆、主催者の打倒。
 1:鉄乙女をこの手で成敗する(殺す)。
 2:直枝理樹、アサシンを探す。
 3:女性(ユメイ)を探す?
 4:協力者を増やす。
 5:生徒会メンバーたちを保護する。
 6:どうでもいいことだが、斉藤の仮面は個人的に気に入った。
【備考】
 ※自身に掛けられた制限に気づきました。
 ※遊園地は無人ですが、アトラクションは問題なく動いています。
 ※スーツの男(加藤虎太郎)と制服の少女(エレン)全裸の男(九郎)を危険人物と判断、道を正してやりたい。
 ※乱入者(美希)の姿は見ていません。わかるのは女性だったことのみです。
 ※第一回放送を聞き逃しました。が、乙女の態度から対馬レオが死亡したと確信しています。
 ※乙女ルート終了後からの参戦。

 ※平蔵がどこに飛んで行ったかは、後続の方におまかせします。


 ◇ ◇ ◇



128:日誌とクドリャフカと刑務所とドライ 投下順 129:想い出にかわる君~Memories Off~ (中編)
時系列順
106:これより先怪人領域-another-/ランチタイムの時間だよ 橘平蔵 148:sola (前編)
直枝理樹 129:想い出にかわる君~Memories Off~ (中編)
真アサシン
鉄乙女
大十字九郎
山辺美希
099:どこでもいっしょ (後編) 加藤虎太郎

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