tear~追憶夜想曲~ ◆UcWYhusQhw
雨が降っていた。
この島がきてから絶え間無い雨がしとしとと。
でも、それでも月の光は淡く僕を照らしている。
唯、僕は見続ける。
この島がきてから絶え間無い雨がしとしとと。
でも、それでも月の光は淡く僕を照らしている。
唯、僕は見続ける。
その先の見えない明日へ。
さっきまで弾いていたリセのフォルテール。
逝ってしまった者たちへの鎮魂歌。
逝ってしまった者たちへの鎮魂歌。
僕にはこれしか出来ないから。
だから僕にできる精一杯の事を。
だから僕にできる精一杯の事を。
だから、弾けた。
絶望をすらも乗り越えて。
驚くぐらい弾けたんだ。
驚くぐらい弾けたんだ。
ねえ、ユイコ。
僕は、しっかり出来てるのかな?
君と同じように真っ直ぐ生きているのかな?
君と同じように真っ直ぐ生きているのかな?
ねえ……明日は……
「本当に……明日は希望に満ち溢れてるのかな?」
「お前が、そう願うなら――……」
そんな僕の問いに答えてくれた人。
ダークブルーの髪を揺らし微笑んでいる。
ダークブルーの髪を揺らし微笑んでいる。
――玖我なつき。
僕の仲間で不思議な子。
怒ったり恥ずかしがったりと感情豊かな子。
シズルを止める為に一緒に歩んでいる。
とても、とても不思議な子だ。
また、ユイコと違ったタイプの。
怒ったり恥ずかしがったりと感情豊かな子。
シズルを止める為に一緒に歩んでいる。
とても、とても不思議な子だ。
また、ユイコと違ったタイプの。
ふと手に温かみを感じる。
とてもとても小さくて優しい手が重なっている。
やすらかな、とても穏やかな。
とてもとても小さくて優しい手が重なっている。
やすらかな、とても穏やかな。
とても穏やかな目で霞がかった月を見ている。
僕も追従するようにそれを見て。
唯、月が綺麗だった。
僕も追従するようにそれを見て。
唯、月が綺麗だった。
……君は
「……君はユイコと同じ事をいうね、ナツキ」
「……むっ」
「……むっ」
僕が望めば明日は希望に満ち溢れていると。
ユイコもそう言った。
だから僕はここにいる。
ユイコもそう言った。
だから僕はここにいる。
例え苦しくても。
例え哀しくても。
例え哀しくても。
ユイコが望むであろうから。
僕は「クリス君」でなきゃいけないのだから。
「なぁ……唯湖ってお前にとってなんなんだ?」
「ん……大切な人だよ、そう大切な」
「ん……大切な人だよ、そう大切な」
ナツキが何故か顔を真っ赤にしながら言う。
どこか不機嫌そうだ。
何でだろう?
どこか不機嫌そうだ。
何でだろう?
ユイコは大切だ、とてもとても。
僕に色々な事を教えてくれた。
沢山の事を。
だから僕も頑張らなきゃ。
僕に色々な事を教えてくれた。
沢山の事を。
だから僕も頑張らなきゃ。
――頑張らないといけないんだ。
「いや、だから、どんな『大切』なんだ?……大切な事がわかっている、ああ判ってはいるさ……」
「……はい?」
「色々あるだろう……ほら、親友とか、家族とか……こ、恋人とかだな!……ああ、もう」
「……はい?」
「色々あるだろう……ほら、親友とか、家族とか……こ、恋人とかだな!……ああ、もう」
勝手に怒って不機嫌になってまた真っ赤になっている。
ナツキは本当不思議な子だ。
ナツキは本当不思議な子だ。
しかしどんな「大切」?
んー?
……どうなのだろうか?
今までとても漠然的に考えていた。
ユイコが大切なのは変わらない。
もっと話していたい。
もっと笑いあっていたい。
もっと話していたい。
もっと笑いあっていたい。
一緒に居たい。
それは変わらない。
でもどういう大切といわれると……。
でもどういう大切といわれると……。
好きなのは確かだ。
でもそれは恋愛感情なのだろうか?
でもそれは恋愛感情なのだろうか?
んー……
僕は………………
「おーい、クリス、なつきって……おい!?……結局デートじゃねえか!?」
その思考は低い男の声でとぎれた。
ジャージを着ていて笑っている。
……どうやら人間としての尊厳を取り戻したらしい。
ジャージを着ていて笑っている。
……どうやら人間としての尊厳を取り戻したらしい。
――大十字九郎。
もう一人の行動を共にする人。
アルのパートナーである彼が戻ってきていた。
ナツキを指差し笑っている。
アルのパートナーである彼が戻ってきていた。
ナツキを指差し笑っている。
「な、なんだと!? ど、何処がだ!」
「いや、手を繋いで星を見てるなんて傍から見れば……」
「ん?………………あーーーーーー!!!!」
「だろ?」
「ク、クリス! 貴様が悪い!」
「いや、手を繋いで星を見てるなんて傍から見れば……」
「ん?………………あーーーーーー!!!!」
「だろ?」
「ク、クリス! 貴様が悪い!」
僕!?
い、いや!?
ちょっと待って!
出会ってから何時も思うんだけど理不尽だよ!?
というか僕何もしてない!
い、いや!?
ちょっと待って!
出会ってから何時も思うんだけど理不尽だよ!?
というか僕何もしてない!
「いや!? じゅ、銃向けないで!? というか顔真っ赤だよ!?」
「……っ!? う、五月蝿い!」
「えー!?」
「……っ!? う、五月蝿い!」
「えー!?」
なんでこんな事に……
ク、クロウ……
はぁ……
ク、クロウ……
はぁ……
「あーなんだ。痴話喧嘩なら……別所で……」
「ちーーーがーーーーうーーーーーーー!!!!!」
「ちーーーがーーーーうーーーーーーー!!!!!」
止まない雨の中に響く一発の銃の音。
真っ赤なナツキ。
笑うクロウ。
真っ赤なナツキ。
笑うクロウ。
そして僕の先程の疑問と考えも雨音に隠れ消えた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ナツキを何とか抑えた後、食事を取っていた。
ナツキが調達したらしいパンとご飯を丸めたお握りというもの。
その数多くのパンとお握りの中から各々好きなものを選んで食べている。
ナツキが調達したらしいパンとご飯を丸めたお握りというもの。
その数多くのパンとお握りの中から各々好きなものを選んで食べている。
僕が選んだのは鮭という魚のお握りとパスタみたいのが入ってる「焼きそばパン」
ナツキ曰く定番らしい。
どれも見たこともない僕にとっては全部の食べ物が新鮮のように感じるけど。
ナツキやクロウにとってはこの程度は良く見るらしい。
不思議なものだ。
ナツキ曰く定番らしい。
どれも見たこともない僕にとっては全部の食べ物が新鮮のように感じるけど。
ナツキやクロウにとってはこの程度は良く見るらしい。
不思議なものだ。
でもナツキは僕が鮭お握りを選んだ時何処かキョトンとしていた、何かデジャブに襲われているような。
直ぐに正気に戻り見つめていた僕を何故か真っ赤になって怒っていたけど。
何で怒られたか未だに分からない。
……はぁ。
僕は弄られたりかんしゃくぶつけられたりこういう役目なんだろうか。
やるせない想いとともにパンを齧る。
ソースの臭いが広がっていく。
初めて食べるけど中々。
さっき食べたお握りも中々だし。
海の越えた先の日本は発展してるのだろうなぁ……
田舎の故郷とピオーヴァしか行き来していない僕としては未知の世界だ。
元々人間関係も広いものではない。
アルとトルタが最も深い付き合いで後はニンナさん、アーシノ、コーデル先生、ファルさん。
そして最近出逢ったリセ。
それぐらいだった。
両手で収まるほど本当に少ない。
でも僕もそれを望んでいたしそれでよかった。
直ぐに正気に戻り見つめていた僕を何故か真っ赤になって怒っていたけど。
何で怒られたか未だに分からない。
……はぁ。
僕は弄られたりかんしゃくぶつけられたりこういう役目なんだろうか。
やるせない想いとともにパンを齧る。
ソースの臭いが広がっていく。
初めて食べるけど中々。
さっき食べたお握りも中々だし。
海の越えた先の日本は発展してるのだろうなぁ……
田舎の故郷とピオーヴァしか行き来していない僕としては未知の世界だ。
元々人間関係も広いものではない。
アルとトルタが最も深い付き合いで後はニンナさん、アーシノ、コーデル先生、ファルさん。
そして最近出逢ったリセ。
それぐらいだった。
両手で収まるほど本当に少ない。
でも僕もそれを望んでいたしそれでよかった。
だけどそれが崩れてしまった。
この島に着てから――――いや、彼女に出会ってから。
彼女は気ままで自由奔放だった。
僕を翻弄し、からかい楽しんでいる。
周りに居なかったタイプの少女。
その少女は僕のペースを瞬く間に崩していった。
結果思いのほか僕は動く事になったのだ。
彼女とであって直ぐ大聖堂で戦闘に巻き込まれるわで大変だった。
僕を翻弄し、からかい楽しんでいる。
周りに居なかったタイプの少女。
その少女は僕のペースを瞬く間に崩していった。
結果思いのほか僕は動く事になったのだ。
彼女とであって直ぐ大聖堂で戦闘に巻き込まれるわで大変だった。
そして最初に出会ったキョウ、ウェストさんと出会い―――リセの死を知った。
最初は唯哀しいだけで。
哀しくて。
彼女に助けてもらって、それでも僕は信じる事にした。
明日は希望があるって。
最初は唯哀しいだけで。
哀しくて。
彼女に助けてもらって、それでも僕は信じる事にした。
明日は希望があるって。
その後シズルに出会い彼女は殺し合いに乗って。
僕は彼女を止めたくて。
僕はここにいる。
その後にミドリ、ヘイゾウさんに出会って。
一旦は彼女を失ったと想った。
そのとき僕は無力と感じ唯絶望した。
そしてアル、ケイ、マコト達に出会い、それでも生きて「クリス君」でいて哀しみの連鎖を止めようと想った。
僕は彼女を止めたくて。
僕はここにいる。
その後にミドリ、ヘイゾウさんに出会って。
一旦は彼女を失ったと想った。
そのとき僕は無力と感じ唯絶望した。
そしてアル、ケイ、マコト達に出会い、それでも生きて「クリス君」でいて哀しみの連鎖を止めようと想った。
本当に、本当に沢山の人出会い交流をしている。
驚くぐらい沢山の人と。
これも彼女のせいだろうか。
驚くぐらい沢山の人と。
これも彼女のせいだろうか。
彼女――ユイコ――が望んだ「クリス君」
だから僕はここに立っている。
ユイコ――君は今どうしているのだろうか?
元気にしてるだろうか?
心が傷ついてないだろうか?
心がないと自嘲するけど誰よりも心があるユイコ。
生きていて欲しい。
元気にしてるだろうか?
心が傷ついてないだろうか?
心がないと自嘲するけど誰よりも心があるユイコ。
生きていて欲しい。
僕は君の望んだ姿でいるから。
心が痛んでも。
心が苦しくても。
僕は君の為に進まなきゃ駄目だから。
心が痛んでも。
心が苦しくても。
僕は君の為に進まなきゃ駄目だから。
それが……
それが君が望んだものなら。
それが君が望んだものなら。
だから今、ナツキ、クロウと共にシズルを止める為に居る。
哀しみの連鎖止める為に。
哀しみの連鎖止める為に。
ふとナツキを見る。
彼女は選んだクロワッサンを頬張っている。
とても美味しいそうに。
彼女は選んだクロワッサンを頬張っている。
とても美味しいそうに。
……小さい口だ。
まるで小動物の様にカリカリ食べていく。
……女の子なんだね。
……女の子なんだね。
「……ん? な、なんだ?」
「……いや、別に」
「いや、こっち見つめて……」
「……女の子なんだなと、想っただけ。可愛いよ」
「……な!? ちょ、何を言うんだ!? 貴様!」
「想った通りだけど?」
「な、な―――!?」
「……いや、別に」
「いや、こっち見つめて……」
「……女の子なんだなと、想っただけ。可愛いよ」
「……な!? ちょ、何を言うんだ!? 貴様!」
「想った通りだけど?」
「な、な―――!?」
ナツキが顔を真っ赤にしている。
なんか変な事言ったかな?
想った事言っただけど……
不思議な子だ。
表情をコロコロ変えて。
感情が豊かなんだなと想う。
本人は気付いてないかもだけど。
なんか変な事言ったかな?
想った事言っただけど……
不思議な子だ。
表情をコロコロ変えて。
感情が豊かなんだなと想う。
本人は気付いてないかもだけど。
「あー本当仲いいな……お前ら」
「な、なんだと!?」
「あー大きな声だすな、お前が出した変なパンのせいで調子が悪い」
「それが貴様がわざわざそんなパンを選んだだろう!」
「チャレンジしなきゃ男が廃るだろう! 当然じゃねえか!」
「……馬鹿だな、貴様」
「な、なんだと!?」
「あー大きな声だすな、お前が出した変なパンのせいで調子が悪い」
「それが貴様がわざわざそんなパンを選んだだろう!」
「チャレンジしなきゃ男が廃るだろう! 当然じゃねえか!」
「……馬鹿だな、貴様」
なんかクロウは食あたりをしたかのようにパンを食べた後横になっている。
なにやら「バナ納豆パン」「ドリアンパン」という名前のパンを食べたらしい。
……酷く食いたくない名前のパンだ。
そして「レインボーパン」というなんか豪華な名前のパンを食べた時クロウはぶっ倒れた。
一体どんなパンなんだろう?
ちょっと興味が出た。
残りのレインボーパンを取ってみて食べようと想った。
なにやら「バナ納豆パン」「ドリアンパン」という名前のパンを食べたらしい。
……酷く食いたくない名前のパンだ。
そして「レインボーパン」というなんか豪華な名前のパンを食べた時クロウはぶっ倒れた。
一体どんなパンなんだろう?
ちょっと興味が出た。
残りのレインボーパンを取ってみて食べようと想った。
……どうしてパンが七色に光っているのだろう。
……正直恐怖だ。
……正直恐怖だ。
……とりあえず一口。
そう想って齧ってみる。
そう想って齧ってみる。
瞬間。
「……!?」
世界が暗転した。
意識が飛びそうだ、色んな意味で。
何とも形容しがたい味……というより
何とも形容しがたい味……というより
「……不味い」
異常に不味かった。
これがパンなのか?
認めない……
むしろ食べ物である事すら認めない……
これがパンなのか?
認めない……
むしろ食べ物である事すら認めない……
「ク、クリス、お前食べたのか!?」
「うん……クロウ、何これ……」
「……な? 凄いだろ!」
「……うん、これ作った人って……ねえ」
「ああ……」
「うん……クロウ、何これ……」
「……な? 凄いだろ!」
「……うん、これ作った人って……ねえ」
「ああ……」
クロウと一緒に想う。
「「悪魔じゃないのか?」」
悪魔かと。
そのとき何故か触覚を持ったような女の人が見えたけど気にしない。
笑顔が絶対零度に感じたけどあえて気にしない。
そう、気にしないのだ。
そのとき何故か触覚を持ったような女の人が見えたけど気にしない。
笑顔が絶対零度に感じたけどあえて気にしない。
そう、気にしないのだ。
「……男って……はぁ……とりあえずクリス、口直しに飲むか?」
「ん、有難う」
「ん、有難う」
ナツキが何故か溜め息をついてパックに入ったコーヒーを薦めてくれた。
僕は遠慮せずそれを受け取り飲む。
とりあえず、口にべとつくあの不快な味を取り除かなければ。
……汚物は消毒。
僕は遠慮せずそれを受け取り飲む。
とりあえず、口にべとつくあの不快な味を取り除かなければ。
……汚物は消毒。
「……ぁ……そういえば……間接キ……ぁう」
何故か飲んでる最中にナツキが真っ赤になったけど特に気に留めなかった。
何故悶えてるのだろう。
分からないや。
本当に面白い子だ。
何故悶えてるのだろう。
分からないや。
本当に面白い子だ。
「そうだ……クリス。聞いておきたい事がある」
「うん?」
「うん?」
食事を続ける僕にクロウが話しかけてくる。
どこか真剣な趣で。
虚空を見上げながら。
相変わらず雨が降っているけど。
どこか真剣な趣で。
虚空を見上げながら。
相変わらず雨が降っているけど。
「お前、哀しみの連鎖をとめるとか言ってたよな? できるのか?」
クロウが空を見つめたままそう尋ねる。
僕は……
僕は……
「……わからない」
そんな事分からない。
僕が動いて何処まで止められるか。
結果的に哀しみが無くなるか、分からない。
でも。
僕が動いて何処まで止められるか。
結果的に哀しみが無くなるか、分からない。
でも。
「僕はそれでもやりたい。それが僕がやるべき事だから」
ユイコが望んでいた事だから。
僕にできなくても。
それでもやらなくちゃ。
やらなくちゃ駄目なんだ。
どんなに僕が傷ついても。
彼女の為に。
僕は進まなきゃ。
進まなきゃ駄目なんだから。
……そう、どんなに傷ついても。
僕にできなくても。
それでもやらなくちゃ。
やらなくちゃ駄目なんだ。
どんなに僕が傷ついても。
彼女の為に。
僕は進まなきゃ。
進まなきゃ駄目なんだから。
……そう、どんなに傷ついても。
「そうか、なあ、クリス。無理するなよ?」
「……うん」
「理樹は頑張ってそして逝った。無理してかは……今でもわかんねぇけど……」
「……うん」
「理樹は頑張ってそして逝った。無理してかは……今でもわかんねぇけど……」
あの後クロウは理樹という子の遺体を見つけたらしい。
よく分からないけど……でも哀しそうだった。
きっとクロウにとって……とても大切だったんだ。
よく分からないけど……でも哀しそうだった。
きっとクロウにとって……とても大切だったんだ。
「クリス、でもお前が進むんなら俺は支えるよ。理樹の為にも。希望に進む為に。それがあいつの為になるから……な」
「クロウ……」
「仲間だしな……大事な仲間だから、俺はお前とナツキを護り抜く、ずっと」
「クロウ……」
「仲間だしな……大事な仲間だから、俺はお前とナツキを護り抜く、ずっと」
そう言ったクロウはニカッと笑っていた。
後悔はないのだろう。
唯その先を望んで笑っていた。
何かを決意したかのように。
僕もそれに習い笑って。
後悔はないのだろう。
唯その先を望んで笑っていた。
何かを決意したかのように。
僕もそれに習い笑って。
「うん、よろしく……クロウ」
「ああ、よろしく……クリス」
「ああ、よろしく……クリス」
互いの拳をぶつけ合った。
互いの信頼の証として。
ずっとずっと進み続ける為に。
互いの信頼の証として。
ずっとずっと進み続ける為に。
「護ってやらないとな。お前らみたいなバカップルなんか特に」
クロウがニヤニヤして笑っている。
主にナツキを見て。
そしてさっきから悶えてたナツキは瞬間沸騰する事が如く
主にナツキを見て。
そしてさっきから悶えてたナツキは瞬間沸騰する事が如く
「な!? 九郎! 貴様!」
「ん? お前のこと言ったつもりじゃねえけど?」
「っ!? 貴様ァーー!」
「ん? お前のこと言ったつもりじゃねえけど?」
「っ!? 貴様ァーー!」
ナツキが怒りつつ銃を取り出したとき。
――私、極上生徒会書記の蘭堂りのです――
声、そう声が聞こえてきた。
明朗で柔らかな声が。
明朗で柔らかな声が。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「むぅ……」
私は唸っていた。
あの蘭堂の放送と第4回放送の後私たちは直ぐに山に向かう事にした。
クリスの提案だった。
あの蘭堂の放送と第4回放送の後私たちは直ぐに山に向かう事にした。
クリスの提案だった。
また多くの人が逝った。
直接あったのは蘭堂、如月のみ。
哀しかった。
直接あったのは蘭堂、如月のみ。
哀しかった。
そして蘭堂。
九郎も哀しんでいた。
蘭堂の放送が心に響く。
クリスと同じことを言っていた。
しっかりと自分の意志を伝えて。
九郎も哀しんでいた。
蘭堂の放送が心に響く。
クリスと同じことを言っていた。
しっかりと自分の意志を伝えて。
とても……とても立派だった。
彼女が目指したもの……私たちは叶えられるのだろうか。
彼女が目指したもの……私たちは叶えられるのだろうか。
しかし……それより今はクリスだ。
何処か……何かおかしい。
繊細だった彼。
それがさらに脆くとても脆く感じる。
何処か……何かおかしい。
繊細だった彼。
それがさらに脆くとても脆く感じる。
今も私の前一歩先で鬱蒼とした山を登っていく。
彼が大切と言ってたもう一人の人間。トルティニタ・フィーネ。
彼女が死んだ。
私は彼女がどんな人間かは知らない。九郎もそうだ。
でもクリスにとって大切だったかは彼の話を聴いてわかる。
その彼女が死んだ。
彼女が死んだ。
私は彼女がどんな人間かは知らない。九郎もそうだ。
でもクリスにとって大切だったかは彼の話を聴いてわかる。
その彼女が死んだ。
――――なのに、彼は進んでいる。
哀しむ事もせず。
苦しむ事もせず。
なく事もせず。
苦しむ事もせず。
なく事もせず。
ただ、前は進んでいた。
クリス・ヴェルティンは冷たい人間なのだろうか?
違う。
彼は優しい。
その優しさを誰にも与える事ができる。
そんな人間だ。
そして人一倍哀しみに敏感だと想う。
彼は優しい。
その優しさを誰にも与える事ができる。
そんな人間だ。
そして人一倍哀しみに敏感だと想う。
―――なのにどうして前を向いているのだろうか?
怖い。
何故かそれがとても怖い。
クリスが遠くにいってるような。
クリス・ヴェルティンが「クリス・ヴェルティン」じゃないようなそんな錯覚さえ。
何故かそれがとても怖い。
クリスが遠くにいってるような。
クリス・ヴェルティンが「クリス・ヴェルティン」じゃないようなそんな錯覚さえ。
でも解らないのだ。
クリスの心が。
クリスが何を望み何を想ってどうやって生きてるか。
クリスの心が。
クリスが何を望み何を想ってどうやって生きてるか。
私には分からない。
それが悔しくて。
何故か悔しくて。
何故か悔しくて。
私は何も出来ないのか?
このまま、クリスが進み続けて、そして磨耗して行くのを見ている事しかできないのか?
私は……
「なぁ……クリス」
「……何?」
「……何?」
堪らなくなって話しかける。
私に何もできない事なんか知ってるのに。
私に何もできない事なんか知ってるのに。
「辛くないのか?」
「……別に」
「……無理をするな。大切な人が……逝ったのだろう……だから」
「無理なんかしてないよ。僕は前を向かなきゃ……亡くなったの人の分まで背負って生きなきゃ……哀しんでいられない」
「……別に」
「……無理をするな。大切な人が……逝ったのだろう……だから」
「無理なんかしてないよ。僕は前を向かなきゃ……亡くなったの人の分まで背負って生きなきゃ……哀しんでいられない」
クリスは言う、事も無げに。
……だから。
……それが。
……それが。
私はクリスに近づき迫って言う。
「それが無理をしてると言うんだ、哀しいんだろう!」
「……まぁ一応……」
「……貴様! 何だそのいい方はな…………すまない」
「……まぁ一応……」
「……貴様! 何だそのいい方はな…………すまない」
クリスの言い方に怒りそうになった。
でも。
何でお前の目はそんなに泣きそうなんだ?
どうしてそんなに哀しそうなんだ?
どうしてそんなに苦しそうなんだ?
でも。
何でお前の目はそんなに泣きそうなんだ?
どうしてそんなに哀しそうなんだ?
どうしてそんなに苦しそうなんだ?
なぁ本当は辛いんじゃないのか?
心が軋んでるのじゃないか?
心が軋んでるのじゃないか?
……言ってくれよ。
……私はなんでこんなにもクリスに言ってるのだろう。
……分からない。
……分からない。
でも……私はこんなクリスは見たくない。
唯、それだけだった。
「……行こう。シズルを止めなきゃ」
そしてクリスは前を向き歩く。
全てを背負い込んで。
心は軋んでいるかもしれないのに。
全てを背負い込んで。
心は軋んでいるかもしれないのに。
……何もできないのか私は。
「なつき」
「……九郎」
「酷い顔してるぞ、お前」
そっと肩に手を置かれる。
九郎がそう言う。
私もそんな酷い顔しているのか?
「……九郎」
「酷い顔してるぞ、お前」
そっと肩に手を置かれる。
九郎がそう言う。
私もそんな酷い顔しているのか?
「クリスの事で気を張るな」
「……それは」
「心配なのは俺も一緒だ。無理はさせない。させてたまるか。もう、後悔したくない」
「九郎……」
「だから……な。一緒に考えようぜ」
「……それは」
「心配なのは俺も一緒だ。無理はさせない。させてたまるか。もう、後悔したくない」
「九郎……」
「だから……な。一緒に考えようぜ」
そっと言う。
言葉が響く。
そうだ、もう私は独りじゃないんだ。
だから……うん。
言葉が響く。
そうだ、もう私は独りじゃないんだ。
だから……うん。
「そうだな……うん、そうだ」
「な?」
「な?」
もう独りじゃない。
そうなんだ。
そうなんだ。
クリス……お前もそうだ。
……もう独りじゃないんだぞ?
だから。
だから。
だから。
もう……独りで苦しむ必要なんてないんだ。
……クリス。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
私たちはそのまま山を登ってそして廃屋に辿り着いた。
まぁ地図に書かれたまんま廃屋だったのだが。
一つ言うならば……血だまりがあったこと。
……恐らくここで誰かが死んだという事。
……とてもやるせなかった。
クリスが捜索をしないのもそれが理由だろう。
まぁ地図に書かれたまんま廃屋だったのだが。
一つ言うならば……血だまりがあったこと。
……恐らくここで誰かが死んだという事。
……とてもやるせなかった。
クリスが捜索をしないのもそれが理由だろう。
私たちは意図を汲み九郎と二人で中に入る。
未だに臭う血の臭い。
とはいえ、廃屋という名の通り何も目ぼしい物はなかった。
登山者の休憩部屋が使われなくなり廃屋になったのであろう。
あるのは少しずつ垂れている血しかなかった。
未だに臭う血の臭い。
とはいえ、廃屋という名の通り何も目ぼしい物はなかった。
登山者の休憩部屋が使われなくなり廃屋になったのであろう。
あるのは少しずつ垂れている血しかなかった。
「行こう、九郎。余り居心地のいいものじゃない……」
「……そうだな……行こう」
「……そうだな……行こう」
そう九郎に促し出口に向かう。
血の臭いが充満するこの部屋には余り居たくなかった。
血の臭いが充満するこの部屋には余り居たくなかった。
「さて……クリスは大丈夫かな」
「なつき……本当に心配なんだな……あいつの事」
「なっ!?……ただ気になっただけだ! 仲間だしな!」
「……んーそれだけか?」
「知らんっ!」
「なつき……本当に心配なんだな……あいつの事」
「なっ!?……ただ気になっただけだ! 仲間だしな!」
「……んーそれだけか?」
「知らんっ!」
……まったく。
何を勘繰ってるのだ……
しかも何故私はドキドキしてるんだ。
……イライラする。
何を勘繰ってるのだ……
しかも何故私はドキドキしてるんだ。
……イライラする。
なんなんだ。
この気持ちは……
この気持ちは……
まったく……
「兎も角、クリス何とかしねぇと……理樹の二の舞は勘弁だ……本当に」
「……ああ」
「……ああ」
九郎がそういって出口に出た先、見えたのは
「クリ……ス?」
膝を突き唯、虚空を見上げクリス。
その目に生気は無く唯虚ろに虚空を見てるだけ。
……何があった?
……私は間に合わなかったのか?
なぁどうしたんだ?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ふう……」
ナツキ達が廃屋に入ったのを見送り僕は一息をついた。
……頑張らなきゃ。
僕はこんな所で止まらない。
とまっちゃ駄目だから。
止まると全てが崩壊しそうで。
僕はこんな所で止まらない。
とまっちゃ駄目だから。
止まると全てが崩壊しそうで。
止まるわけにはいかなかった。
哀しんでるわけにはいかなかった。
苦しんでるわけにはいかなかった。
哀しんでるわけにはいかなかった。
苦しんでるわけにはいかなかった。
リノという子の言葉が響く。
同じく哀しみの連鎖をとめようとしていた。
同じく哀しみの連鎖をとめようとしていた。
でも彼女は死んだ。
死に逝く彼女が残した言葉。
僕はそれを背負って生きなきゃ駄目なんだ。
それが僕の役目なんだから。
死に逝く彼女が残した言葉。
僕はそれを背負って生きなきゃ駄目なんだ。
それが僕の役目なんだから。
ユイコが望んだから。
哀しみの連鎖をとめるって。
哀しみの連鎖をとめるって。
僕は止まってはいけないんだ。
極上の日々。
それを皆が目指せるように。
僕は止まってはいけない。
それを皆が目指せるように。
僕は止まってはいけない。
心が哀しもうと。
心が苦しもうと。
心が救えなくとも。
心が苦しもうと。
心が救えなくとも。
僕は進まなきゃ。
トルタ……。
トルタが死んだ。
僕の事を思ってくれた彼女が。
あんなにも優しい子が。
誰よりも優しい子が。
死んだ。
何故だろう。
何故彼女が死ななきゃならないんだろう。
僕の事を思ってくれた彼女が。
あんなにも優しい子が。
誰よりも優しい子が。
死んだ。
何故だろう。
何故彼女が死ななきゃならないんだろう。
苦しい……
哀しい……
哀しい……
でも……とまっちゃいけないんだ。
でも響くんだ。
頭に言葉が。
頭に言葉が。
僕がトルタを「選択」しなかったと言う言葉が。
アルに与えられたトルタに会いに行くという選択肢。
僕はそれを選ばなかった。
僕はそれを選ばなかった。
結果トルタは死んだんじゃないかと。
そんな筈は無いと想いたい。
でもそう想ってしまう。
でもそう想ってしまう。
ほんの少しでも想っていればトルタは救えたんじゃないかと。
ほんの少しでも想っていればトルタは生きたいんじゃないかと。
ほんの少しでも想っていればトルタは生きたいんじゃないかと。
そんな考えが無数に巡ってとまらない。
それでも僕は選ばなかった。
ユイコの為に。
全ての哀しみを救おうと。
でも結果はなんだ?
トルタは哀しましたんじゃないか?
僕は……。
僕は……。
分からない……
考えちゃ駄目だ。
進まなきゃ。
進まなきゃ。
進まなきゃ。
進まなきゃ。
壊れる。
全てが。
全てが。
哀しみはとめないといけないんだ。
その為には僕は哀しんでもいい。
その為には僕は苦しんでいい。
その為には僕は苦しんでいい。
だから……
だから……
だから……
そんな事考えちゃ駄目なんだ。
僕は哀しみの連鎖をとめないと。
全てを背負って。
ユイコの為に。
僕は哀しみの連鎖をとめないと。
全てを背負って。
ユイコの為に。
それが僕の役目のなのだから。
だから僕は……
……ん?
何か土の盛り上がった所に棒が刺さっているのが見える。
なんだろう?
なんだろう?
僕は近寄ってみて見る。
……墓なんだろうか。
誰のだろう。
……墓なんだろうか。
誰のだろう。
ふと刺さっている棒を見てみる。
その時、時が止まっているような錯覚に襲われた。
棒に結び付けられたリボン。
棒に結び付けられたリボン。
緑色のリボン。
これを間違えるものか。
見間違えるものか。
見間違えるものか。
ああ。
これは……
これは……
リセルシア・チェザリーニの墓なんだ。
ああ……
リセはこんな所で死んだんだ。
思わず膝を突く。
こんな所でひっそりとリセは死んだのだ。
こんな所でひっそりとリセは死んだのだ。
彼女は幸せだったのだろうか?
彼女は笑っていたのだろうか?
彼女は笑っていたのだろうか?
分からない。
分からない。
分からない。
でも望むしかなかった。
彼女の幸せを。
リセルシア・チェザリーニの幸福を。
ただ祈る事しかできなかった。
僕は……
リセを救えなかった僕はこんな事しか……できない。
ああ。
無力だね。
僕はこんなにも小さく何も出来ない。
でも。
でも。
哀しみを出しちゃ駄目なんだ。
でも。
哀しみを出しちゃ駄目なんだ。
僕は進まないと。
止まらないと。
止まらないと。
例え無力でも……
僕は立ち止まっちゃいけない……
ねぇ……
そうなんだ。
雨が強くなっていく。
止まない。
止まない雨がただ。
唯ひたすらに。
止まない雨がただ。
唯ひたすらに。
それがクリス・ヴェルティンのやるべ……
―――それは本当に望む事なんですか?
―――それはクリスがやりたい事?
―――それはクリスがやりたい事?
唐突に僕の頭に二つの声が聞こえる。
リセとトルタ?
リセとトルタ?
僕が望む事にきまっ……
―――違います。
―――違うよ。
―――違うよ。
え?
違うはずが無い。
違うはずが無い。
そうだよ
―――だって今クリスさん……『クリスさん』じゃありません
―――だって今のクリス……『クリス』じゃないもん。
―――だって今のクリス……『クリス』じゃないもん。
はい?
僕はクリスだよ。
何も変わらない。
変わらない……
変わらない……
―――『クリス君』を演じてるんです。
―――『クリス君』じゃないの? 今のクリスは。
―――『クリス君』じゃないの? 今のクリスは。
あ……
クリス君?
……それはユイコに求められたもの。
ユイコが僕といることを望んだ姿。
ユイコが僕と居る事を有意義で楽しみたいといったから。
だから僕は……
ユイコが僕といることを望んだ姿。
ユイコが僕と居る事を有意義で楽しみたいといったから。
だから僕は……
……やってるんだ。
……『クリス君』で居ようと。
……『クリス君』で居ようと。
哀しみの連鎖を必死に止めようとした『クリス君』
ユイコの望んだ『クリス君』はただ前向きに走っていた。
哀しみの連鎖を止める為に。
ユイコの望んだ『クリス君』はただ前向きに走っていた。
哀しみの連鎖を止める為に。
そう『クリス君』はユイコの為だけのものだった。
『クリス君』はユイコが望んだ僕そのものだったから。
『クリス君』はユイコが望んだ僕そのものだったから。
そして『クリス君』でなきゃとあの時誓ったんだ。
ユイコを失ったと思ったあの時。
ユイコはきっとそれを今でも望んでいるから。
哀しみの連鎖をとめることを。
ユイコを失ったと思ったあの時。
ユイコはきっとそれを今でも望んでいるから。
哀しみの連鎖をとめることを。
だから『クリス君』で居た。
ユイコが僕に望むであろう姿を。
ユイコといた時の僕の姿を。
ユイコが僕に望むであろう姿を。
ユイコといた時の僕の姿を。
ユイコの為にも。
僕はそれで居続けた。
本来の『クリス・ヴェルティン』と違った姿。
何時もよりも前向きで。
何も動こうとしない僕と違って。
唯ひたすらに理想に向かって突き進む姿。
まるで英雄のような……
そんな僕とは全然違うクリス君であり続けた。
後悔も……
哀しみも……
何時もよりも前向きで。
何も動こうとしない僕と違って。
唯ひたすらに理想に向かって突き進む姿。
まるで英雄のような……
そんな僕とは全然違うクリス君であり続けた。
後悔も……
哀しみも……
全て心にしまって。
―――見てられません。こんなにボロボロになって
―――見てられないよ。こんなクリス……
―――見てられないよ。こんなクリス……
あぁ……
言わないで。
言わないで。
リノの放送で哀しみの連鎖を僕が背負う事も。
トルタを救えなかった事を背負う事も。
トルタを救えなかった事を背負う事も。
僕はそれでも。
ユイコの為に。
傷ついても
―――ねえ? 教えてください。
―――ねえ? 教えてよ。
―――ねえ? 教えてよ。
……うん。
―――『クリス・ヴェルティン』は何がしたいんです? 『クリス君』ではなくて。
―――『クリス・ヴェルティン』は何がしたいの? 『クリス君』じゃなくてさ。
―――『クリス・ヴェルティン』は何がしたいの? 『クリス君』じゃなくてさ。
……僕?
……僕は。
……僕は。
哀しみの連鎖を止め……
―――それは本当にそうなんですか? 本当に自分の意志と?
―――それは本当なの? 本当に?
―――それは本当なの? 本当に?
ああ……
そうなのか?
それは『ユイコ』の意志じゃないのか?
『クリス君』じゃないのか?
僕は何がしたい?
僕は……何だ?
僕は……
―――お願いです。クリスさん。前を向いてください。哀しみに向き合って。自分自身を見つめて。
―――お願い。クリス。前を向いて。独りで苦しまないで。独りじゃないから。自分自身を見つめて。
―――お願い。クリス。前を向いて。独りで苦しまないで。独りじゃないから。自分自身を見つめて。
―――じゃないと誰も救えないです。誰も喜ばない。哀しんでるだけ。
―――じゃないと誰も救えない。誰も笑えない。苦しむだけ。
―――ねえ? クリスさん。貴方は『クリス・ヴェルティン』……意志を見つけて。
―――ねえ? クリスさん。貴方は『クリス・ヴェルティン』……本当の貴方を教えて。
―――じゃないと誰も救えない。誰も笑えない。苦しむだけ。
―――ねえ? クリスさん。貴方は『クリス・ヴェルティン』……意志を見つけて。
―――ねえ? クリスさん。貴方は『クリス・ヴェルティン』……本当の貴方を教えて。
ああ……ああ。
僕は。
僕は。
僕は。
結局。
結局。
結局。
何も。
何も。
何も。
「あぁぁあああああああぁぁぁぁあああああああああああああああああぁあああああああああぁあぁあぁああ
あああぁぁああああああああああああああぁぁぁああぁぁああああああああああああああぁあああああああ
あぁぁあああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああ」
あああぁぁああああああああああああああぁぁぁああぁぁああああああああああああああぁあああああああ
あぁぁあああああああああああああああああああああああああぁあああああああああああああああああああ」
そう。
クリス君を演じる僕は
本当は何の意志もない『クリス・ヴェルティン』じゃ……
「救えない!……何も……何も何も何も!……救えない!……あああああああああ……誰も救えない!……空虚な『クリス・ヴェルティン』じゃ
リセルシアも! トルティニタも! シズルも! ユイコも! 皆! 皆! 救えない! 僕は何も救えない! なにもない! 空っぽだ!
あぁあああああああ僕は……僕は……僕……は……あぁぁああああああああ」
リセルシアも! トルティニタも! シズルも! ユイコも! 皆! 皆! 救えない! 僕は何も救えない! なにもない! 空っぽだ!
あぁあああああああ僕は……僕は……僕……は……あぁぁああああああああ」
「だれもすくえないっ!!!!!!!!!!」
215:吊り天秤は僅かに傾く | 投下順 | 216:tear~追憶夜想曲~(後編) |
時系列順 | ||
197:PERFECT COMMUNICATION | クリス・ヴェルティン | |
玖我なつき | ||
大十字九郎 |