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陽がほとんど落ちたMIDTOWNのRED HOCKとWEST SIDEのちょうど堺にあたる通り道。
そこを幽鬼のような、この世の不幸を一身に集めたような形相をした小柄な少女が歩いていた。
足取りは全くもって定まっておらず、フラフラとしている。
実際彼女はこれといった目的地など一切考えていない。

少女、ハナ・N・フォンテーンスタンドは人生最大の絶望を抱えながら歩いていた。
サーヴァント、キャスターことデスドレインの常軌を逸した狂気によって心を折られただけではこうはならない。
この街における肉親である母親の死、ニュースで報道された訃報を受けて泣き叫んでいた彼女に世界は呵責なき追い打ちをかけた。
警察から父親が何者かに殺害された、という旨の電話が入ったのがつい先ほどのこと。
それ以外にも何か話していたような気はするが最早ハナの記憶には全く留められていない。

はっきりしているのは、今やこの世界でハナは一人ぼっちだという事実だけだった。
唯一、聖杯を手にしさえすれば全てを覆せるのであろうがそんなことは土台不可能だと思い知らされたばかり。
いつの間にか勝手に出かけたキャスターはこれからも好き放題に暴れた挙句そのうち勝手に満足して死ぬのだろう。
もう何もかもがどうでもよくなってしまった。
死ぬ覚悟をした、というわけではない。単にもう生きるに足る希望を全て見失ってしまったのだ。
端的に言って今のハナは自暴自棄の状態にあった。
それにも関わらず先ほど失禁した下半身の衣類はしっかりと履き替えて家を出たことに自分でも苦笑する。
もう何の意味もないことなのに、身体がオシャレを忘れていないのかもしれない。

そんな時、路地の片隅に見慣れない植物があることに気づいた。
それも雑草の類ではない。古びた建物などにたまに纏わりついているような蔦だ。
何故かその蔦が気になってしまう。どうせ他にすべきことも出来ることもないので少し足を伸ばして蔦を追うことにした。


「何デスか、これ」


蔦を追った先にあったのは不自然なまでに繁殖した植物だった。
何より目を惹いたのは見たこともないような毒々しい色合いの果実。
中学生故に学が十分あるとは言い難いハナにもこんな空気の淀んだ大都市で果実が実をつけるほど植物が育つわけがないことはすぐにわかった。
首を傾げてしばらく果実を見つめていると、何だか急速にお腹が減っていくのが感じられた。
そういえばご飯もロクに食べていなかったかもしれない。何か食べないと、という気になる。


「食べても良いデスよね」


平素のハナなら絶対にしない判断を以って成っている果実に手を伸ばし、そして掴んだ。
今、この瞬間のハナにとってはこの果実が今まで食べたどんなものより美味しそうに見えていた。
これまでの苦痛に満ちた出来事すら忘れ、満面の笑顔でそれを口にしようとして―――


「イヤーッ!」


―――突如振り落とされた手刀で果実を取り落とした。











ヤモト・コキとランサーはまずMIDTOWNで<令嬢>総帥の情報を探すことにした。
これまではUPTOWNを中心にして移動する生活を送っていたが、<令嬢>に関する情報は大して得られなかった。
ならば<令嬢>の本拠地はゴッサムの中心であるMIDTOWNにあるのではないか。
ヤモトとランサーがそう結論付けるまでにさしたる時間はかからなかった。
追われる身で土地勘のないエリアを動き回るのは少々躊躇われるものがあったが、こちらから動かなければジリー・プアー(徐々に不利)だ。

多くの不安要素を抱えながらも、しかしヤモトの瞳には以前のような陰は差していなかった。
多田梨衣菜との出会いによって本当の望みを取り戻し、そして出来る限り早く指名手配を解いて梨衣菜の手助けをしたい、という新たな望みも生まれた。
記憶を取り戻してから、あるいはネオサイタマで逃亡生活を始めた頃からなのか。
ともかくヤモトは初めて目指すべき場所、明確な目的を見出したのだった。


(ヤモヤモ、元気になったのは良いけどあんまり急ぎすぎちゃ駄目だよ~)
(わかってる。急いだヒキャクがカロウシしたって古事記にも書いてある)
(……前から思ってたけどヤモヤモの言葉遣いって大分独特だよね)
(えっ、アタイはランサー=サンやタダ=サンの方が変わってると思ってたけど)
(えっ)


念話をしながら歩いていると奇妙な光景に出くわした。
つい今しがたまでコンクリートばかりの街並みだった筈なのに、角を曲がると鬱蒼とした植物が広がっていた。
それどころか蔦が伸び放題な上に不気味な色の果実が実をつけている。


(ヤモヤモ、あれ)
(うん、アタイにもわかる。あれは良くないモノだって)


ランサーは魔力を探知して、ヤモトはニンジャセンスで目の前にある植物や果実の危険性を見抜いた。
誰が何の目的で繁殖させたものかはわからないが、感覚的にあれは厄災を齎すものだと理解できる。
何であれ近づくべきではない、と判断して踵を返そうとした時、一人の少女が虚ろな瞳で無防備に植物に近づいていった。
それどころか虚ろな目のまま笑顔を浮かべ、拾った果実を口にしようとしているではないか。
よく考えなくても道端に生えている毒々しい色の果実を食べるのは非常にアブナイ!


(ヤモヤモ!?)
「イヤーッ!」


ヤモトは決断的に少女に接近、狙いすました手刀で果実を地面に落とした。
ニンジャの身体能力では少しでも力加減を誤れば少女の腕をネギトロにしてしまいかねなかった。
しかし極限まで力を抜き、かつ精密・最速の動作で少女には傷一つつけなかったのだ。ワザマエ!


「アイエエエ!?」
「そんな怪しい果物食べちゃ駄目。いいね?」


突然の手刀に慌てふためく少女を努めて優しく諭す。
指名手配されている現状を思えばこの行動は悪手だったのかもしれない。
しかしヤモトはどうしても放っておくことができなかった。
それは魔力を持つ果実のせいでもあるだろう、しかし本当の理由は少女、ハナの目を見た瞬間に理解できた。


(この子はさっきまでのアタイと同じだ)


彼女の目は理不尽に打ちのめされたもののそれだ。
治安の悪いこの街なら聖杯戦争とは関わりなく血なまぐさい出来事があっても不思議ではない。
その点についてはゴッサムもネオサイタマもさほど変わりはないらしい。

出来ることなら話をしたり、相談に乗ってあげたいと思う。
こんなことを思えるようになったのも梨衣菜と出会ったからだろうか?
しかし指名手配されている身分では誰かとゆっくり会話することさえままならない。
それどころかいつマフィアやヤクザに変装を見破られて少女にまで迷惑をかけてしまうかもわからない。


「もうこの植物には近づかない方がいい」


一言だけ忠告を残してその場を立ち去ることにした。
指名手配さえ解くことができれば、誰かとゆっくり触れ合うこともできるのだろうか。
そんなことを考えていた時、控えていたランサーが不意に実体化した。
目の前に人がいるにも関わらず、だ。


「ヤモヤモ、サーヴァントがすごい勢いでこっちに来てるよ。
これはちょっと逃げられそうにないかな~」
「え!?」
「!?」


この時ヤモトとランサーがもう少し注意深ければ気づけただろう。
ハナがサーヴァントという言葉に、NPCでは有り得ないほど強く反応したことに。
しかし実際にはそうはならず、怪物然としたサーヴァントが空中から地上に降り立つ方が早かった。


「その程度の変装で我らの目を欺けると考えていたのなら、些か失望せざるを得ない」


牢獄の看守のような服装の、濃紺のサーヴァントはまっすぐにヤモトを指差した。


「ヤモヤモ、後ろっ!!」
「!!」


突如、ヤモトの背後に魔法陣が出現しそこから槍が高速でヤモトの頭部目掛けて射出された。
マスター狙いのアンブッシュを紙一重で躱したものの、変装用に身に着けていた帽子と伊達眼鏡が地面に落ちてしまった。
ヤモトは未だ未熟なニンジャであり、アンブッシュへの耐性は高くない。
今の攻撃もランサーの助言がなければ今頃ヤモトは爆発四散していたことであろう。


「ほう、躱してみせるか。その身のこなし…やはりマスターだったか、ヤモト・コキ」
「……ドーモ、ヤモト・コキです」


怪物のサーヴァントの背後から現れたのはマントを羽織り杖を持った一人の少女。
しかしヤモトもランサーも彼女が見た目通りの存在などではないことを一目で見抜いた。


「……最悪。こんなことって有り得るの?」


相手方のマスターを見たランサーの顔と言葉からは普段の呑気さが完全に消えていた。
保有する魔力量、技のキレ、隠しきれない威圧感、どれを取っても人間が有していて良いものではない。
それこそサーヴァント級。否、サーヴァントが英霊をクラスという器に落とし込んだ劣化コピーであることを踏まえれば凌いですらいるかもしれない。
恐らく、ランサーですら手加減して戦うことはまずできないであろうほどの存在だ。
今のヤモトとは最早比べるべくもない。

ランサーをして戦慄させる少女の名はミュカレ。幾度も転生を繰り返した完全者。
従者のクラスはセイヴァー。真名(な)をジェダ・ドーマ


――――――殺戮者たちのエントリーだ。











ミュカレは空いた午後の時間をまずは奪取したベルト・戦極ドライバーの解析に使った。
約五時間の格闘の末、製作者が見れば怒りで憤死しかねないほどの早さでイニシャライズ機能を解析・無効化してしまった。

何故異世界出身者であるミュカレがこうも容易くドライバーを解析できたのか。
それは聖杯がミュカレに授けた知識と予選での過ごし方に起因する。
マスターに授けられた現代知識によりさして問題なくゴッサムで過ごせたミュカレだがそれだけでは満足しなかった。
セイヴァーを召喚してからもこの世界の科学技術について時間の許す限り知識を吸収していたのだ。
他のマスターがミュカレの知らない科学技術を用いて思わぬ攻撃に出る可能性を予見してのことだ。

戦極ドライバーは先進的な技術が盛り込まれているものの概ね再現されたゴッサム・シティと同様の年代に作られた物だ。
この世界の科学に関する知識をも蓄えたミュカレにとっては僅か数時間で破れる程度のセキュリティに過ぎなかった。

戦極ドライバーの開発者、戦極凌馬は世紀の天才と称しても過言ではないほどの人物ではある。
しかし彼の生きた時間は僅か三十年にも満たない。
転生を繰り返しながら数百年も生き続け、知識を蓄え研鑽を続けたミュカレの経験値には遥かに及ばないと言わざるを得ないのである。

さらに言えば戦極凌馬は死者(サーヴァント)でありミュカレは生者(マスター)である、という差がある。
戦極凌馬は確かにゴッサムに現界してからも生前の発明の改良に努めている。
が、それでも英霊たる彼は既に完結した存在であり、そうであるが故に大きな成長・進歩は見込めようはずもない。
そしてミュカレはどんなに歪であれ今を生きる存在だ。故に彼女には先がある。進歩も成長もできる。
これは死者たる戦極には到底埋めがたい差であった。


「まさかこの短時間で解析してしまうとは…流石は我が主人、というところかな?」
「世辞などいらん。それにこのベルトは製作者にとっては所詮見せ札に過ぎぬ。
本当の切り札をNPCなどに大量に配る馬鹿はおらぬはず。
十中八九、より高性能の上位機種を隠し持っているのだろうさ」


認証機能を解除し、キルプロセスを取り外しても尚ミュカレは気を緩めることはしなかった。
恐らく存在するであろう戦極ドライバーの上位機種をも解析、理解しなければ製作者であるキャスターを上回ったことにはならないからだ。


「とはいえ存外に早くこれを使えるようになったのも確か。ふむ……。
セイヴァー、346プロへ出向くぞ。マスターなりサーヴァントなりを捕捉できれば試運転も出来よう。
無論このベルトだけではなく貴様の試運転も含むがな」
「なるほど、確かに私はまだ他のサーヴァントと戦ってはいなかったか。
無論この私が凡百の英霊に遅れを取るなど有り得ぬ話ではあるが、実際に私がサーヴァントを斃すところを見ていない君が疑問視するのも当然か」
「わかっているのなら結果を出すことだ」


ミュカレは既に、変身せずしてアーマードライダーや所持するロックシードが生成するアームズのあらましをも解析していた。
手にあるのはイチゴのロックシード、アームズウェポンは投擲武器であるイチゴクナイ。
武器ならば既に元帥杖があるが小振りの投擲武装というのは中々に好都合ではあるか。
何より脆弱な肉体は純物理的なダメージに弱く、その弱点を鎧で補強できるというのが良い。
主従共に闘志をふつふつと滾らせながら獲物を探しに大学を出た。





(マスター、朗報だ。探し人を発見した)
(その迂遠な物言いはやめろ。何を見つけた?)
(例の指名手配犯のヤモト・コキだ。変装しているようだが私の目は誤魔化せない。
加えてサーヴァント反応もある。これは確定と言っていい)
(ほう、ならばそこまで我を連れて行け。折角の機会を逃す手もあるまい)
(了解した)


索敵そのものにはさほど時間はかからなかった。
先んじて空中に飛んだセイヴァーがRED HOCKとWEST SIDEの堺付近にいるマスターを発見した。
後は語るまでもない。空から一気にヤモトの元まで迫り対峙したのだ。









ハナ・N・フォンテーンスタンドは腰を抜かしただ事態の推移を見守ることしかできなかった。
彼女はこれまでずっと日常に没頭し、聖杯戦争から目を背け続けてきた。
当然ながら戦場に出たことなど一度たりともありはしない。
そもそも自分以外のマスターやサーヴァントに出会ったことさえこれが初めてだ。
故に、魔術師や英霊が放つ殺意、敵意に対してはどこまでも無防備だった。

そしてこの場にいるハナ以外のマスターもサーヴァントも、誰一人としてハナがマスターなどとは思いもしない。
ミュカレとジェダに至っては道端を歩いていたら進路上に小石が転がっていた、という程度の認識しかない。
外出用のコートを着て手袋をつけているために令呪が隠蔽されているのも理由ではあるのだが。


(れ、令呪。令呪でキャスターを……!)


キャスター、デスドレインがしたような脅しの領域ではない純度百パーセントの殺気。
修羅場への耐性など無きに等しいハナに生存本能を呼び起こさせるには十分すぎるほどの効果があった。
先ほどのデスドレインとのやり取りでタンクが空になっていなければ、またも失禁していたであろう。
恐怖に慄いたハナは震えながら令呪を使おうとする。


―――令呪を使って、オレを縛ろうなんて考えるなよ。オレは誰かに命令されたり、縛られるのがこの世で一番嫌いなンだよ
―――もし令呪なんて使ってみろ。殺すから

「あ、ああ…………」


デスドレインの顔が、言葉が何度もリフレインされる。
このままでは殺される。けれど令呪を使ってもきっと自分のサーヴァントに殺される。
何も出来やしない。命がかかったこの状況にあっても、今までと同じように。






ヤモトのニンジャセンスが過去最大の警鐘を鳴らしている。
目の前に初めて敵対的なサーヴァントがいるから、というのも勿論ある。
しかしある意味最大の問題はマスターだ。
ヤモトは過去にもソウカイヤのニンジャと何度も交戦してきたが、あのマスターはその全てを軽く凌駕している。
恐らく自分にインストラクションを授けたシルバーカラスですら分が悪い。
以前助太刀してくれたニンジャスレイヤーでも手こずるだろう。


(アタイは何てイディオットなんだ……)


心のどこかでは慢心があったのかもしれない。
サーヴァント相手ならともかく、マスターの中に曲がりなりにもニンジャである自分を凌ぐ者などそうはいないと思っていた。
だが現実はどうだ。結局自分の役割(ロール)が原因になって圧倒的に格上な主従に捕捉されてしまったではないか。
こんなマスターに引き当てられてしまったランサーへの申し訳無さがこみ上げる。


(ヤモヤモ)
(何、ランサー=サン)
(ちょっとここは私に任せてくれないかな~。
ほら、ここは俺に任せて先に行けってやつ)
(そんなの駄目!アタイも戦うよ)


そのランサーが提案してきたのは、あろうことか単独で相手主従と戦うという無謀としか思えないものだった。
当然、そんな命を捨てるような行動に賛同できるヤモトではない。
ランサーの宝具が守りに秀でていることは予め聞いているが、世の中に絶対などというものは絶対にないのだ。
あの主従を相手にしては怪我で済めば御の字だという確信めいた予感がヤモトにはある。


(大丈夫大丈夫、こういうのは慣れてるから。
それにあの子のことはヤモヤモにしかお願いできないかな~って)


その言葉にハッとして背後にいる少女を見やる。
彼女はNRS(ニンジャリアリティショック)を受けたモータルめいて腰を抜かしており、明らかに一人で逃げられる状態にない。
この状態の彼女を放置してヤモトたちがイクサを始めれば確実に余波を受けてネギトロめいた死体に早変わりするだろう。
聖杯戦争に何も知らぬモータルを巻き込んでしまったことへの後悔が募る。

けれど、それとて究極的には無視してしまっても構わないはずの問題だ。
要するにランサーはバレバレの建前を使ってでもヤモトをこの場から逃がしたいのだ。
そしてヤモトがあの少女を放っておけないとわかった上で言っている。
実際サーヴァントはランサーが抑えるにしてもあのマスターにヤバレカバレで立ち向かうのはヤバイ。


(……ずるいよ、ランサー=サン)
(ごめんね~後で何でも奢るから~)


涙をこらえて踵を返し、少女を抱えて走った。


「ひゃっ!?」
「ごめん、少し黙ってて。舌を噛む」


ニンジャ身体能力を全開にしてただ、走る。
ランサーが考えあって一人で殿を引き受けたようにヤモトにも考えがある。
可能な限り早く、可能な限り離れてから令呪を使ってランサーを呼び戻す算段だ。
とはいえ半端な距離ではあの主従に再び捕捉されて振り出しに戻る結果に終わるのはわかりきっている。
空を飛べる相手のサーヴァントから完全に逃れるには相当の距離を稼がねばならないだろう。
その間にランサーが自分の身代わりになってどれだけ傷つくのか、考えるだけで胸が締めつけられる。


(この人はどうして……)


いきなりお姫様抱っこのような態勢で抱えられたハナはわけがわからなかった。
間違いなくマスターである女性―――少なくとも中学生のハナにはそう見える―――は何故自分を助けるような真似をするのだろうか。
きっとそれはハナをマスターではなくNPCと誤認しているからなのだろうが、だとしてもわからない。
マスターとは聖杯を手に入れるために他の全てを蹴落とし勝利へと邁進するものではなかったのか?

何時しかハナを抱えた女性は建造物を巧みに飛び回り今はいくつものビル群を跳躍一つで次々と渡っていた。
あまりにも現実離れした身体能力。人間にこんな真似が出来るはずがない。
これはそう、まさしく――――――忍者の業だ。


「ヒッ……!?」


そこで思い出した。
自分のサーヴァントである、あまりにも悪辣で暴虐の化身としか呼べないニンジャの姿を。
一瞬、女性の姿にあのキャスター、デスドレインが重なる。
体格も性別もまるで違うはずなのに、二人が全く同質の存在であるように見えてしまう。
ハナの怯えを感じ取ったのか、女性がハナへと顔を向けた。


「アタイがコワイ……よね。
安全なところまで逃げたら降ろすから。……あと、巻き込んでごめん」


不思議なことに、女性は今にも泣きそうな顔をしていた。
何故そんな顔をするのかハナにはまるで見当がつかない。
けれど、彼女の泣き顔からはもうデスドレインの影は見えなくなっていた。











ランサーは戦闘態勢に入ったまま不気味なほど沈黙を保つ少女とサーヴァントを睨んでいた。
どちらもヤモトには近づかせないという至上命題がある以上、こちらから仕掛けることは有り得ない。


「セイヴァー、念話が可能な距離は本来1kmもないということだったな」


ふと、マントを羽織った少女が口を開いた。
まるで芝居を演じるように傍らのセイヴァーと呼ばれたサーヴァントが答える。


「ああ、あくまでも君は例外中の例外。
ヤモト・コキもかなりの魔力量も持ち主ではあるが見たところ彼女は本職の魔術師ではない。
今頃はもう念話の範囲外にいると考えて良いだろう」
「では令呪で余計な邪魔を入れられる恐れはなくなったというわけだな」


少女が懐から黒い奇妙なベルトらしき物体を取り出した。
腰に装着すると続けてイチゴの形状をした錠前を取り出した。


「では性能を試すとしよう」
「イチゴ」


起動したのか音声を鳴らした錠前をベルト中央部に嵌め込んだ。


「ロックオン!」
「えっ!?」


すると、空中にファスナーが開いたとしか形容しようがない現象が起きた。
ファスナーが開いた先からは巨大なイチゴが出現し少女に覆いかぶさろうとしていた。


(頭からイチゴを被って……一体何するつもり!?)


初めて見る現象にランサーも驚きを隠せない。
そして悠然とした佇まいでベルト中央にちょこんと付いた剣を倒した。


「イチゴアームズ!シュシュッとスパーク!」


舞い降りたイチゴを頭から被ると姿そのものが変わり、イチゴが鎧として展開された。
変身と呼ぶしかない現象を起こした少女は「…何と趣味の悪い音声か」と呟くと高々と左腕を掲げた。

ランサーは知らないが、これこそ戦極ドライバーで変身するアーマードライダー。
アームズの下の素体は黒影トルーパーのものと同一にデザインされている。
言うなれば黒影トルーパー・イチゴアームズ。
ただでさえ魔術師の英霊に匹敵する魔導を振るうミュカレにアーマードライダーの力が付与された。


「我が従僕に令呪を以って命ず。速やかにランサーを撃滅せよ」


令呪。各マスターに与えられた三回限りの切り札をこんな序盤で使おうというのか。
セイヴァーの持つ魔力とプレッシャーが格段に増したことが伝わってくる。


「セイヴァー、これは貴様への投資だ。
我の魔力提供と令呪を受けて尚サーヴァント一騎討ち果たせぬようならば我がサーヴァントたる資格など無いと知れ。
我はヤモト・コキを追い、これを捕獲する。そこなランサーめの首級を以って自らの価値を示せ」
「承知した。その程度の蛮勇を振るってみせねばどのみち我々が勝ち抜くことなど無理な話だ」


指示を受けたセイヴァーがついに戦闘態勢に入った。
圧倒的不利を通り越して絶望的ですらある状況だが素直に通してやるわけにはいかない。


「悪いけど、行かせないよ!」
「いいや、通らせてもらうとも。行け、セイヴァー」
「承知した」


ミュカレの指示に従い、翼を千切り鎌にしたセイヴァーが強烈な攻撃を見舞った。
ランサーを守護する精霊が防御するも衝撃の重さは無視できるものではない。
セイヴァーに抑えられたランサーを横目にミュカレは一足飛びに民家の屋根へ跳躍。
ヤモトが逃げた方向へと人間の域を大きく上回る俊足で追跡を始めた。

追跡を阻止したいランサーだがセイヴァーに容易く阻まれる。
力が出ない。自分の実力が本来より落とされていることをランサーは今更ながらに感じ取った。
相手の持つ何らかのスキルによってステータスを削がれているのか。
逆に相手は令呪の支援によって本来以上の力を発揮してくる。
これではヤモトを助けに向かうどころではない。


(ごめん、ヤモヤモ。何とか逃げ切って……!)


戦闘力の差は歴然。念話も通じない。
絶望的な戦いが始まった。



【MID TOWN WEST SIDE /1日目 午後(夜間より少し前)】

【ランサー(乃木園子)@鷲尾須美は勇者である】
[状態]健康、対英雄スキルによる能力低下
[装備]無銘・槍
[道具]特筆事項無し
[思考・状況]
基本:ヤモヤモ(ヤモト)を元の世界に帰す。
0 . セイヴァー(ジェダ・ドーマ)への対処
1. できればヤモヤモを戦わせたくない。汚れ仕事は自分がする
2. 令嬢のボスを説得して、指名手配を取り下げる。

[備考]
※ランサー(ウルキオラ・シファー)、デェムシュの戦闘を感知しました。
どこまで視認できたかは不明です。
多田李衣菜の連絡先と住所を知りました
※ハナをNPCと誤認しています

【セイヴァー(ジェダ・ドーマ)@ヴァンパイアセイヴァー】
[状態]健康、令呪による能力増幅
[装備]万全
[道具]万全
[所持金]私には何の価値もない代物だ
[思考・状況]
基本:全ての魂の救済
0 . まずはこのランサー(乃木園子)を救済する
1. この街には良識の欠片もない
2. 果実に浸食されたインベスは何とも哀れだ
[備考]
ヘルヘイムの森とサガラの正体に見当がついています。これをミュカレに教えました。
※ゴッサムに在住する日本人の姓をそこそこの数把握しています。
※魂喰いをする際は、NPCをサングェ=パッサーレで破裂させて殺害し、キャスター(デスドレイン)が殺したように見せかけています。
※ジェダが魂喰いをした際は、アンコクトンは残りません。
※グラスホッパー団員から情報を収集しました。他にもグラスホッパーについて何か知っているかもしれません。
※ハナをNPCと誤認しています

【ヤモト・コキ@ニンジャスレイヤー】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]ウバステ、着替えの衣服
[道具]
[所持金]極貧
[思考・状況]
基本:生き延びる。
0 .この子(ハナ)を連れて安全な場所まで逃げる
1.令嬢のボスを説得して、指名手配を取り下げる。
2.可能な限り戦いを避ける。
3.ランサーを闘わせたくないが……。
4. 脱出の方法を探すタダ=サンを手伝いたい
[備考]
※<令嬢>の社長の息子を殺した罪で追われています。が、本人に殺害した覚えはありません。
※ニンジャソウルを宿している為、攻撃に神秘が付加されています。
ただし、ニンジャの力を行使すると他のサーヴァントに補足される危険性があります。
※バスター(ノノ)の外見、パラメーターを確認しました。
※多田李衣菜の連絡先と住所を知りました
※現在FORT CLINTON方面へ逃走しています。少なくともランサー(乃木園子)と念話ができる圏外までは離れました。
※ハナをNPCと誤認しています


【ハナ・N・フォンテーンスタンド@ハナヤマタ(アニメ版)】
[状態]精神不安定(大)、ヤモトに抱えられている
[令呪]残り3画
[装備]私服 、外出用のコートと手袋
[道具]特筆事項無し
[所持金]三千円程
[思考・状況]
基本:???
1.女性(ヤモト)への僅かな恐怖
2.キャスター(デスドレイン)が怖い!怖い!

[備考]
※キャスター(デスドレイン)の凶行を認知しています。
※キャスター(デスドレイン)に対して絶対的な恐怖を抱きました。
強いきっかけが無い限り、デスドレインに令呪を使うことはありません
※セイヴァー(ジェダ・ドーマ)とランサー(乃木園子)を視認しましたがステータスまで確認できたかは不明です


【ミュカレ@アカツキ電光戦記】
[状態]健康、黒影トルーパー・イチゴアームズに変身中
[令呪]残り二画
[装備]イチゴアームズの鎧、元帥杖、イチゴクナイ 、量産型戦極ドライバー、イチゴロックシード
[道具]ヘルヘイムの果実(それなり)、マツボックリロックシード
[所持金]現金十万程と、クレジットカード
[思考・状況]
基本:聖杯戦争、負けるつもりはない
0 .ヤモト・コキを追い捕獲。転生の器とする。ついでに目撃者のNPC(ハナ)も始末する。
1. ヘルヘイムの森の呪縛からも人類を解き放たねばならない
2. 煩わしい事だが、ゴッサム大学には足を運んでやる
3. サフィール教授には会いたくない
4. あの果実は召喚術の補助に利用できそうだが、魔力に関しては魂喰いで間に合っている
5. あの蛇(サガラ)の顔はもう見たくない
[備考]
犬養舜二が聖杯戦争の参加者だろうとあたりをつけています。
※所持している果実系のロックシードはイチゴです。
※サーヴァントのいるマスターに転生できないことをサガラから教わりました。
※ヘルヘイムの森とサガラの正体をジェダから教わりました。
※グラスホッパーが団員を鎧武者に変身させていることを知りました。
※グラスホッパーには道具作成に優れたキャスターが噛んでいると見ています。
※ランサー(乃木園子)のステータスを視認しました。
※量産型戦極ドライバーのイニシャライズ機能を無効にし、キルプロセスを排除しました
※ハナをNPCと誤認しています
※セイヴァー(ジェダ・ドーマ)がランサー(乃木園子)を討ち取れなかった場合、サーヴァントの乗り換えを検討します



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036:そして完全の世界より―― ミュカレ
セイヴァー(ジェダ・ドーマ)
034:The future of four girls? ヤモト・コキ
ランサー(乃木園子)

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最終更新:2016年10月04日 20:34