基準以下 海底の泥「推移見守る必要」
福島第1原発事故による影響で、東京湾の荒川河口付近の海底で放射性セシウムの濃度が上昇していることが近畿大の山崎秀夫教授(環境解析学)の調査で分かった。国は現時点で東京湾で調査を行っておらず、山崎教授は「今まさに原発事故由来の放射性物質が、首都圏の放射能濃度の高い地域を流れる河川から東京湾に届いたところ。今後の推移を見守るため、国による継続的な調査が必要だ」と指摘する。
山崎教授は昨年8月以降、湾内の36カ所で海底の泥に含まれる放射性セシウム134と137の濃度(1キログラム当たり)を測定している。
このうち、荒川河口の若洲海浜公園近くの地点では、泥の表面から深さ5センチの平均濃度が8月に308ベクレル、10月に476ベクレル、12月に511ベクレルと上昇。ほかの多くの地点でも濃度は上がる傾向で、湾の中央より河口付近で比較的高い数値が測定されたという。
ただ、いずれの地点も1000ベクレル以下で、国がそのまま埋め立てできるとする基準の8000ベクレルを大きく下回っている。
山崎教授は、核実験が盛んだった1960年代に、河川から琵琶湖に流入したセシウムの研究データから、地形が似る東京湾へのセシウム流入のピークを1、2年後とみる。「半減期30年のセシウム137はとどまるものの、半減期が2年の134は急速に減っていくため、今後、濃度が著しく上昇することは考えにくい」とする。
河口付近の4地点では、約1メートルのアクリル製の筒を使って、泥のどの深さまで134が含まれているかを測定した。その結果、最も深い場所では24〜26センチで検出された。
東京湾の河口付近の海底では泥が堆積するスピードは年間1、2センチ程度といい、「泥の中を動き回る底生生物によって運ばれた可能性がある。このまま放射性セシウムが河口付近の泥の中に深く潜ってくれれば、湾全体への拡散が抑えられるだろう」と話した。
山崎教授は東京湾で採取した魚介類の濃度も測定。検出限界値以下か多くても10ベクレル以下で、「このまま推移すれば全く問題のない数値だ」と指摘する。
東京湾は湾口が狭く、外洋からの海水が流れ込みにくいため、閉鎖性の高い水域とされる。国は2月17日から、東京湾に流れ込む荒川で放射性物質濃度の測定を始めており、4月以降、湾内の海水や海底の泥などの本格的な調査を始める。
最終更新:2012年05月14日 12:22