漆黒の推察 ◆F3/75Tw8mw




――――――それでは参加者の諸君、健闘を祈る。



「そんな……!!」


突如として聞こえてきた、第一の定期放送。
その無情且つ無慈悲な内容に、一条は驚きのあまり声を出してしまった。
隣に立つ鋼牙も、声こそ出してはいないものの、その表情には明らかに驚愕の意が表れている。
それも当然だ。


「……もう、18人も……!?」


彼等がこの会場に放り込まれてから、まだものの六時間しか経っていない。
それにも関わらず、既に参加者の内3分の1近くが死亡したと告げられたのだ。
ましてやこの二人は、殺し合いが始まって以来まだ、お互い以外の参加者――鋼牙だけは、相羽シンヤと出会っているが―――とは遭遇していない。
幸か不幸か、命の危機からは無縁のままに第一放送を迎えているのだ。
それだけに一層、受けた衝撃も大きかった。


(……零は無事、か……
薫の方も、知り合いが呼ばれた様子は無さそうだな)

(五代……良かった。
冴島君の方も、見る限り知人が亡くなったという事は無いか……)


そんな状況下で唯一救いと言えたのは、お互いに知っている名前―――五代雄介と涼邑零―――が呼ばれなかった事だろう。
彼等ならそう簡単に死ぬ事はないとは思っていたものの、それでも何分状況が状況だ。
生存している事には、素直に安堵せざるを得ない。




「だが……あの男の名前が、呼ばれてしまうとはな」


否、正確には二人の知る名前は一人だけ呼ばれていた。
主催者に真っ先に牙をむき、この殺し合いに異を唱えた男の片割れ……


「……本郷猛……」


仮面ライダー1号、本郷猛。
その名前が呼ばれた時、鋼牙と一条は息を呑み……同時に、危機感を覚えた。
彼がこの殺し合いを良しとせぬ正義漢である事は、会場にいる誰しもが知っている。
そんな人物が、真っ先に死亡してしまったというのだ。
反主催派の参加者にとって、それが如何に大きな動揺を生むかは、想像に難しくない。


(……彼の様な人物が、死ななければならなかった……殺されなければならなかった……)


同時に、刑事という職業柄だろうか……一条はその死因について考えていた。
直接話をしていない以上断言こそ出来ないものの、本郷猛は誰かから恨みを買う様な人間には思えないのだ。
では、そんな人物が……殺し合いを止める為に動く男が死んだ原因は何か。
殺されなければならなかった、その理由とは何か。

思いつく可能性など、一つしかない。


(……彼は……死の間際まで、誰かの笑顔を守る為に闘ったのだろうか……)


己が良く知る、最も頼りにしてきた相棒……五代雄介の様に、本郷猛もまた闘ったのではないだろうか。
誰かの命を守る為に、その笑顔を守る為に。
そして……その果てに、命を落としてしまったのではないだろうか。



(……五代……)


その考えに至ると同時に、一条の脳裏にある一抹の不安が浮かんだ。
本郷猛がそうならば、五代雄介とてきっと同じ筈だ。
この殺し合いを止める為に……誰かの笑顔を守る為に、彼は今も闘っているに違いない。
いつ、命を落とすかも分からない、この危険な場所でだ。


(なら……私は……!)


そんな彼の為に……彼等の為に、自分が出来る事とは何か?
決まっている。
警察としての使命を全うし、一人でも多くの命を救う事だ。
人々の笑顔を守る為に闘いたいというその気持ちは、全く同じなのだ。


「……死んだ者達の為にも、そして今も尚闘っている者達の為にも。
 一秒でも早く、この殺し合いを終わらせる……それが俺達の使命だ」


その気持ちを察してか、鋼牙が口を開いた。
警察官と魔戒騎士。
立場こそ違えど、彼と手その思いは同じだ。
守りし者として、この殺し合いを動かす巨悪を必ずや討つ。
死者達が安らかに眠られる為にも、一人でも多くの命を救う為にも。


「ああ……あんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくない。
 皆に、笑顔でいて欲しい……それには、私達が頑張らなくてはな」


嘗て雄介が自身に聞かせた、その言葉を胸に。
一条は僅かな笑みを顔に出し、鋼牙へとその意志を確かに口にした。

それは彼が初めて鋼牙へと見せた、笑顔に他ならなかった。


「よし……冴島君、少し待っていてくれ。
 着替えをしたいんだ」

「着替え?」

「ああ……さっき君を待っていた時に、私の支給品を確認した。
 君のその剣の様に……これから先、未確認生命体の様な相手は勿論、殺し合いに乗った暴徒を鎮圧する為にも
 力になるだろう装備があったんだ」


そう告げると、一条は自身のデイパックよりある物を取りだした。



―――髑髏が描かれた、漆黒のヘルメット。


―――各部に装甲板が取り付けられた、同じく漆黒のライダースーツ。


―――炸薬が取りつけられた、ナックルダスター。


―――強力なスタンガンが内蔵された、漆黒のブーツ。



これらの装備が、四つで一式として一条に支給されていた。
それは、人々を邪悪から守るべく戦う仮面の戦士……その戦士を助けようと一人の男が身に纏った、魂の武装。
五代と共に闘う一条の様に、奇しくも同じ状況に立った刑事が手にした、正義の体現。


滝和也のライダースーツだ。


(付属していた説明書によれば、この装備は私と同じ警察の人間が、ショッカーという
 巨大な悪の組織に立ち向かう為に身に着けていたという……)



―――その身は生身なれど、仮面ライダー1号・2号を助ける為、彼等とショッカーへと共に立ち向かった滝和也。


―――同じく唯人の身なれど、仮面ライダークウガを助ける為、グロンギへと共に立ち向かった一条薫。


―――そんな二人の魂が交わったのは、ある種の運命と呼べるだろう。


(本来ならこれは私官が身につけていい様な代物ではないかもしれない。
 だが……この場は敢えて、使わせてもらおう)


今も尚戦い続けている人の為に……その笑顔を守る為に。



◇◆◇



(……殺し合いに乗った人間が、思ったよりもいるという事か……)


一条が少しばかり離れた位置で、ライダースーツに着替えをしている最中。
鋼牙は、現状について頭の中で整理をしていた。
この六時間の内に、既に18人もの死者が出ている。
ならば、最悪の場合……一人一殺として、18人もの人物が殺し合いに乗っている計算になる。
もしそうだとしたら、実に恐ろしい事だが……
彼にはどうしても、腑に落ちない点があった。



(……分からないな。
そんな、壮絶な命の奪い合いを俺達にさせておいて……奴等は何がしたいんだ?)


それは、この殺し合いを行う目的だ。
加藤に加え、サラマンダーなる人物が主催にいる事がこの放送で分かったが、どうにも彼等の考えが見えてこない。
自分達を一か所に集めて、殺し合いをさせる……その理由が、分からないのだ。


「……薫、お前の意見を聞かせてほしい。
 警察官と言う職業の見地から、答えてくれないか?」


体は動かさず、視線のみを僅かに向けて一条へと問いかけた。
彼等が殺し合いを行う、その狙いは何か。
こうして自分達が争い殺し殺される事に、何の意味があるのか。
疑問に感じていた全てについて、魔戒騎士ではない別の立ち位置から答えてほしかったのだ。


「……殺し合いの目的か……そうだな」


ライダースーツに着替え終わり、鋼牙の隣へと歩みよりつつ。
一条は、素早く冷静に、己が分析結果を述べる。


「あくまで一般的な可能性を述べるなら、典型的な愉快犯というパターンだ。
 私達が殺し合いを行うその様を見て愉悦を覚える事こそが、目的という事だな」


まず一条が思いついたケースは、殺し合いを見て楽しむ事が、加藤達の目的ではないかという事。
参加者達の争う様・協力し合う様・希望と絶望の間を行き来する様・命を散らす様。
会場内で起こる全てを、一種のショーとして楽しんでいるのではないかという事だ。
実際、人が苦しむ様子を見て楽しむという凶悪犯は、世の中じゃ決して少なくない。
故に加藤もまた、そんな者の一種かと考える事は出来る。



「だが……私には、そんな単純な話とは思えない。
 これはあくまで勘だが、この殺し合いには何か……もっと大きな意味がある気がする」


しかし一条は、その一般的な可能性をいまいち信じられなかった。
自分達や未確認生命体は勿論、鋼牙の様な異世界の者達の存在に、ガイアメモリといった全く未知の技術。
神秘といっても差し支えない程の超常を集めておきながら、ただそんな事の為に使うとは思えないのだ。

つまり……この殺し合いには、もっと別の何かがある。
自分達が命を奪いあう事で生まれる『何か』があると。


「……未確認生命体の殺人行為には、一部の例外を除いて何かしらの法則があった。
 奴等は自分達の殺戮にルールを定め、意味を持たせていたんだ」


ここで一条は、自分自身の経験談を語った。


―――円を描くように正確な軌道で上空を飛翔し、その軌道上にいる人間のみを殺害し続けてきた第14号。


―――東京23区に住む住人を、50音順に9人ずつ殺害し続けてきた第37号。


―――まるで自らの力を誇示するかの如く、警察署を襲撃して男性警察官のみを殺害した第46号。


未確認生命体が行ってきた殺人行為には、不思議な事にほぼ全てに何かしらの法則があったのだ。
しかも彼等は、その法則を乱される事を極端に嫌っていた。
そう……言うなれば、彼等にとっての殺戮とは、ある種の『儀式』なのだ。



「つまり……この殺し合いもそれと同じで、何か目的がある儀式の様なものだと?」

「ああ……おかしいか?」

「いや、俺もその意見には賛成だ。
 事実俺が戦ってきた者達には、似た行動を取った連中も多くいた」


鋼牙もまた、その意見を肯定した。
三神官によるメシア降臨の件が好例であるように、寧ろこの手の話は一条より彼の方が得意分野だ。


「なら……君の知っている者達か、或いはその関係者が黒幕にいると?」

「いや、そうだとは断言できない。
 そもそもこれがホラーの仕業かどうかですら、正直言って現段階だとかなり怪しいんだ。
 何が背後にいて、何を目的としているのか……皆目見当がつかない」


せめてザルバがいてくれれば、ホラーが関わっているか否かは判断出来るかもしれないのだが……
そう思いながら、鋼牙は小さく溜め息をついた。
いない者の事を言ったところで、どうにもならないのは仕方が無い。


「……ん……?」


そこまで考えて、鋼牙はふと疑問に思った。
何故彼等は、己からザルバを引き離したのだろうか。
どうして、魔戒騎士から魔導輪を奪う必要があったのだろうか。
まるで、この両者が揃っていては不都合があると言わんばかりに。


(……俺とザルバを離す理由があるだと?
 だとしたら、この殺し合いにはホラーが……?)


考えられるのは、やはりホラーが関わっている可能性だ。
それも魔導輪単体だけでなく、それと魔戒騎士との接触を明らかに避けている。
魔導輪が持つ知識とホラーに対する探知能力。
魔戒騎士が代々受け継いできた、ホラーに対しての豊富な経験と技能。
これ等が交わる事を……恐れているのではないだろうか。


(……思いだせ、考えろ。
 何かある筈だ……奴等が、俺達を封じなければならない理由が……)


ここまでで主催に対する情報を得られたのは、最初の広場での会合と、今の放送のみ。
あまりにも短すぎる期間であり、推理材料と呼べるものは相当に少ない。
しかし、それでも何かある筈だ。
自分達を避ける理由……気付かれてはまずい、不安材料が。



―――この首輪には特別な爆弾が内臓されており、起爆すると確実に皆様を死に至らしめることが可能です。



「…………!!」


その瞬間、鋼牙の脳裏に電撃が走った。
彼が口にした、この何気ない一言。
どんな者だろうと殺傷出来るという爆弾の存在……考えてみればこの言葉は、明らかにおかしいのだ。
そう……もし本当に、何者であろうとも確実に殺傷出来るというのであれば……


「薫、確かめたい事がある。
 未確認生命体は、普通の武器で殺す事は可能なのか?」

「冴島君……?
 いや、奴等は強靭な生命力と耐久力を持っているから、並の道具で倒す事は不可能だ。
 神経断裂弾の様な特殊な装備を使うか、或いは単純に破壊力に優れた兵器を持ち出すしか……」


「なら、この首輪に取り付けられている爆弾はどうだ?」

「あ……!?」


鋼牙に指摘され、一条は思わず声を上げた。
その通りだ……幾ら零距離とはいえ、こんな首輪に搭載される様な爆弾では、殺傷力など高が知れている。
実際、広場で見せしめに殺された者達は、首から上が吹き飛ぶ程度の爆破で死んだ。
その程度の爆破で……あの未確認生命体を、本当に殺せるのか?


「……ホラーも同様だ。
 さっきも説明したが、ホラーには普通の人間が扱う様な武器では傷を与える事は出来ない。
 魔戒騎士が扱うソウルメタルをはじめ、一部の特殊な武具でのみ奴等を倒しうる。
 ならば、いなければ問題は無いが、もしも参加者にホラーがいたとしたら……この爆弾で奴等は、殺せない。
 いや、それどころか魔戒騎士か魔戒法師以外の者では、絶対に倒せない相手だ」


鋼牙の意見もまた、同じだった。
もし仮に参加者の中にホラーが紛れていたならば、爆弾で倒す事など絶対に不可能だ。
それどころか、誰の手でも倒す事が出来ない……殺し合いが成り立たなくなってしまうのだ。

そしてこれは彼の知らない事だが、参加者の中にはホラーはいないが……ホラーになった者は確かにいる。
バラゴの魔弾を受け、ホラーにその身を乗っ取られた園咲冴子だ。
しかし彼女は、タイガーロイドの砲撃により死亡した。
通常兵器では死ぬ事が無いホラーが、あっさりと消されてしまったのだ。
それは、つまり……


「……恐らくこの首輪は、爆弾以外にも何かを内包している。
 未確認生命体やホラーであろうとも、強制的にその力を抑えこまれ、人の手でも撃破を可能とされる……そんな仕組みがある筈だ」



そうとしか、判断のしようが無い。
殺し合いを成り立たせ、かつ爆薬によるホラーや未確認生命体の殺傷を可能とするには、こういった仕組みを用いる以外に手は無いのだ。
では、その仕組みとは何か。
そのヒントと思わしきモノは、既にある。

一つは、言うまでも無く鋼牙とザルバを引き離したという事実。
そして二つ目は……加頭が唯一口にした、首輪の素材についての証言。



―――加えて申し上げますと、時間を止めている間に取り外すことも不可能です。



―――時間操作の影響を受けずに作動するよう出来ていますから。



(……まさか……!?)


この時、鋼牙はある恐ろしい考えに至った。
時間操作の影響を受けずに作動できる首輪……その仕組みについて、心当たりがあったからだ。
かつて彼が退治したホラーの一体には、この様なホラーがいた。

流れる時の陰我に憑依し、あらゆる時計に化ける事が出来る……モラックスという名のホラーが。
もしその存在が何かしら影響しているとしたら、時間操作を無効化出来るという言葉の意味も分かる。
そして、ホラーの持つ人知を超えた力ならば、同族は勿論未確認生命体をはじめとした未知の怪異相手にも、影響を与えられるかもしれない。

確証は無い、あくまで推論でしかない。
事実は大きく違うかもしれない。
しかし、もしそうであったとしたら、ザルバを引き離した事にも一応の理由がつく。
それはつまり、材料を悟られない為だとしたら……!




(この首輪……ホラーが、憑りついているのか……!?)


この首輪には……モラックスか、あるいはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと。



【1日目/朝】
【D-4/森】

【冴島鋼牙@牙狼─GARO─】
[状態]:健康
[装備]:魔戒剣、魔導火のライター
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:護りし者としての使命を果たす
1:首輪とホラーに対し、疑問を抱く。
2:加頭を倒し、殺し合いを終わらせ、生還する
3:再びバラゴを倒す
4:一条と共に行動し、彼を保護する
5:零ともできれば合流したい
6:未確認生命体であろうと人間として守る
7:相羽タカヤに会った時は、彼にシンヤのことを伝える
[備考]
※参戦時期は最終回後(SP、劇場版などを経験しているかは不明)。
※魔導輪ザルバは没収されています。他の参加者の支給品になっているか、加頭が所持していると思われます。
※ズ・ゴオマ・グとゴ・ガドル・バの人間態と怪人態の外見を知りました。
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。
※首輪には、参加者を弱体化させる制限をかける仕組みがあると知りました。
 また、首輪にはモラックスか或いはそれに類似したホラーが憑依しているのではないかと考えています


【一条薫@仮面ライダークウガ】
[状態]:健康
[装備]:滝和也のライダースーツ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1~2(確認済み)、警察手帳、コートと背広
[思考]
基本:民間人の保護
1:警察として、人々を護る
2:魔戒騎士である鋼牙の力にはある程度頼る
3:他に保護するべき人間を捜す
4:未確認生命体に警戒
※参戦時期は少なくともゴ・ガドル・バの死亡後です
※殺し合いの参加者は異世界から集められていると考えています。
※この殺し合いは、何らかの目的がある『儀式』の様なものだと推測しています。


【滝和也のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS】
滝和也が、仮面ライダー達と共に闘う為に身につける、その魂を体現した漆黒のライダースーツ。
顔面の部分に髑髏をペイントしてある黒いヘルメットと、耐衝撃用の装甲が着けられた漆黒のスーツ。
炸薬入りのナックルダスターと、強力なスタンガンを仕込んであるブーツとで、ワンセットになっている。


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最終更新:2013年03月15日 00:13