運命の鳥(前編) ◆7pf62HiyTE





   ▽   ▼



『AとKとBのメモリか、人とメモリは惹かれ合うっていうから何かあるのかもね、この3つと』


――Queen――


『クイーンお前パクろうとしたな!? メモリと呼び合ってる……』



   ▼   ▽



 走る、走る、走る――
 天道あかねはひたすらに森を駆けていた。
 立ち止まれば、悲しみから何も出来なくなってしまう、そんな気がしたのだ。

 あかねは先に出会ったキュアベリーこと蒼乃美希が口にしていた禁止エリアの方角とは逆方向の道を駆けていた――

 そして森を抜け焼けた野原が広がっているのを目の当たりにした。
 無論、既に鎮火しているものの数時間前は何かしらの理由――いや、十中八九戦いによって焼かれていたのだろう。

 これからどの方向に進もうか、そう考えていたら――


「う゛ーん……!?」


 視線の先に倒れている2人の姿が見えた。あかねは何気なくその方向へと向かった――


「酷い……」


 倒れている2人の姿を間近で見たあかねが真っ先に漏らした言葉がそれだ。
 倒れている2人――自分よりも幼い10歳弱の少年と少女は既に死んでいる――
 少年の方は右腕を文字通り潰され、近くに棒を手放している少女の方は腹に大きな穴を空けられ多量の出血が見られた。
 死体を見たのは初では無いとはいえ、自分よりもずっと幼い少年少女がここまで無残な姿にされているのを見てショックは隠せない――


「うっ……」


 全身から感じる虚脱感、そして湧き上がる吐き気――思わずあかねは右手で口を塞ぐ――


 そんな中――


『ひとつ……俺は自分の無力さで幼い仲間2人を死なせてしまった……』
『フェイト……ユーノ……』


 あの時、探偵の男と赤髪の魔法少女がそう口にしていた――
 彼等の言っていた『幼い仲間2人』と目の前の幼い2人の死体が不思議と重なって見えたのだ。
 この2人がフェイト・テスタロッサユーノ・スクライアなのでは無かろうか?
 だが、実際にそうであろうとなかろうと、それを確かめる術は無い。死人に口なしということだ。

 正直、死体をこのままにしておく事に抵抗がないではないが長居をしている余裕はない。あかねはすぐさまこの場所から離れようとした――が、


「あら?」


 そんな中、少女の手元に金色の三角形の物体が落ちているのを見つけた。


「何かしら……?」


 それが何かはわからない。だが、あかねは思わずそれを拾い上げ眺めてみる。
 その少女のものであろうそれを勝手に持ち出して良いとは思っていない。だがこのまま野ざらしにしておくのもどうかと思い何気なく拾ったのである。


「う゛ーん……?」


 一言で言えば違和感を覚えていたのだろう。だが、その金色の物体は傍目には何の変哲も無いアクセサリーでしかない。
 別に年頃の少女がアクセサリーの1つや2つ持っていてもおかしくはない。戦いに必要無いものならば没収されずそのまま所持を許されても不思議はなかろう。
 それでも何だろうか、何かが引っかかったのだ。


 とはいえ、眺めた所で答えなど出るわけもない。故にあかねはそのまま左胸に仕舞い、再び走り出す――


 違和感は消えたわけではない。だが、取るに足らない事なのだろう――だからこそ、もうその事については深く考えない――



   ▽   ▼



『仮面ライダーエターナル、お前にとって、カメンライダーとは何だ?』
『……そうだな。もとは、風都を守っていた『この街の希望』とやらの名前らしいな。……俺も同じだ、俺は風都、そしてこの殺し合いの新しい希望となる仮面ライダーだ!!』



   ▼   ▽



 結局あかねは市街地へ向かう方向とは真逆の方向を駆けていた――
 先程まで交戦した探偵と魔法少女(と言って良いのか怪しいが)、そして梅盛源太アインハルト・ストラトス、彼等のいる市街地には戻りたくはなかったのだ――無事であるならば、という但し付きの条件がつくものの――

 駆け抜けながら状況を整理しよう――
 早乙女乱馬の遺したガイアメモリの力でナスカ・ドーパントに変身したのが大体10時から11時の間、その後探偵達と遭遇し交戦したのが大体11時過ぎぐらい――
 それから10分から20分ぐらい戦っていた覚えがあるがその後の記憶が無い――
 そして気が付いた時には市街地ではなく森の中にいた。ドーパントへの変身は解除されていて服どころか髪型など大幅に変化していた美希と遭遇していた――
 その後美希を振り切った後で時計を確認した所、12時を15分ほど過ぎていたのは把握した。
 意識が飛んでいたのは4,50分程――いや、丸1日以上経過していた可能性も否定できない為断定は出来ない。

 自身の身に何が起こっていたのだろうか?
 いや、原因自体はナスカ・ドーパントに変身する力を与えるガイアメモリによるものなのは解っている。
 問題はそこで何が起こったのかである。

 落ち着いて振り返ってみよう。
 最初にナスカ・ドーパントに変身した時はお世辞にもその力を引き出せていたとは言い難かった。
 源太の変身したシンケンゴールドは愚か探偵の変身した仮面ライダーW、そして魔法少女相手に為す術もなかった。
 あかね自身もそれなりに場数は踏んではいたと自負していたがそれでも全く足りなかったという事だ。

 その後運良く道ちゃん――伝説の道着と再会出来それを身に纏い再びナスカ・ドーパントに変身した。
 今度は道ちゃんのお陰で潜在能力を最大限に引き出せていた。そのお陰かナスカの力もスピード及びパワーの面から見ても十二分に引き出せていたのを実感できた。
 RPGゲームとかで例えて言うならば――
 最初に変身した時をレベル1、伝説の道着で潜在能力を引き出した時をレベル2と言って良いだろう。

 が、その力を以てしても追い詰められていた。実際、道ちゃんを身につけていても最終的に乱馬に破れている為、それ自体はありえなくもない。
 だが、それで諦められるわけも無かった。だからこそあかねはさらなる力を欲したのだ。
 どんな代償を支払ってでもその想いを遂げる、その為の力を――
 そして体内のメモリから力が溢れ出し全身を駆け巡るのを感じた――
 その瞬間、あかねの意識はブラックアウト――途切れたという事だ。

 その後、何かしらの方法で美希によってメモリを排出されるまでの記憶は無い。
 だが、確実に言えるのは意識が途切れる直前に感じた莫大なパワーから省みて――レベル2を遙に凌駕するパワーを発揮していたと考えて良いだろう。
 敢えて言うならばレベル3の力を発揮したという事だ――

 追い詰められたとはいえレベル2でも探偵と魔法少女に肉薄していたのだ。それを踏まえればあの場にいた4人を全滅させていたとしても不思議では無い。

 結局、放送を聞き逃した以上、それを確かめる術は――無い――

 そう、どれだけ意識飛んでいたとしても確実なのはあかねは先の放送を聞き逃していた事なのだ。そしてそれは致命的な問題でもある。
 確かに乱馬の死を改めて伝えられるのを避ける事が出来たのは幸いだったかもしれない――
 だが、新たに発動される禁止エリアを把握できなかったのは大きな問題だ。
 それに加え――


「良牙君……それにパンスト太郎……」


 まだ健在だった知り合いである響良牙、そしてパンスト太郎の安否が聞けなかったのは痛い。
 もしかしたらもう2人とも既に――
 いや、考えた所で仕方が無い。問題はこれからどうするかだ。
 勿論、乱馬を取り戻す為に優勝を目指す――それを諦めたわけではない――諦めきれないと言った方が正確だろうが――
 しかし――


『本気かよ姉ちゃん……本気で俺達を殺すつもりなのかよ!! いや、俺達だけじゃねぇ……友達の良牙の兄ちゃんもいるだろうが!?』


 優勝を目指す――それは自分以外の参加者全てを倒す事だ。それが可能かどうか、力量的な面ではひとまず置いておく。
 結局の所、乱馬を殺した凶悪な怪人やエターナル、それに今にして思えば姉の天道なびきと声や髪型が似ていた黒服の少女を倒す事を意味する。
 それだけならば別に問題は無い。

 だが、倒すべきは彼等だけではない。先に交戦した4人や美希、他に警察署で出会った高町ヴィヴィオ、孤門一輝、沖一也、明堂院いつきと言った殺し合いを打破しようとしている者達をも倒さねばならないのだ。
 善良な者達である事に加え、自分よりも幼い少女達にも手にかけなければならないという事なのだ。当然、彼女達にむざむざ殺される理由など何処にも無い。

 それどころか、仲の良い大切な友人である良牙、そこまで仲は良くは無いが知り合いであるパンスト太郎をも倒――いや、敢えて言おう、殺さなければならないのだ。
 乱馬を取り戻し日常を取り戻す為に、日常の一部分である良牙(ついでにパンスト太郎)を自ら破壊する? それをあかね自身の手でやれというのか?

 そもそもの話――理由も伝えず有無を言わさず殺し合いを強要する連中が乱馬1人取り戻してくれる確証が全く無い事ぐらいあかね自身にもわかりきっている。
 例えばの話、些か狂人的な考えではあるが、優勝して全てを無かった事にして元に戻す――それが出来るならばそれが一番良い。
 だが、そんな事が出来る保証など何処にも無い、連中が『出来ます』と言った所でそんな事全く信用出来るわけもない。仮に出来たとしても無情に殺し合いを強いる連中が素直に願いを叶えてくれる道理など無い。
 それ以外に手段が無い、だからといってその手段ですら有効とは全く言えないという事だ――


『言った筈だ……他人の都合も知りもせず勝手な願い事をしたせいで誰もが不幸になったって……願い事が叶ってその彼氏が戻ったとしても……あんたも彼氏も幸せになんてなれないって事さ……』


 そして――仮に自身の願いが叶ったとしても、それを本当に皆が喜んでくれるのだろうか?
 幾ら願いを叶える為とはいえ――何の罪も無い人々を殺す事を家族や友人達が認めてくれるだろうか?
 そんな事考えるまでもない――自分だけの日常を取り戻す為に、他の人々の日常を歪める様な事を――自身の日常を象徴する家族や友人達が認めるわけもない。
 天道かすみが自分の妹が人様に迷惑をかける事を望むか?
 天道早雲が自分の娘が(幾ら許嫁の乱馬を生き返らせる為とは言え)何の罪も無い人々を虐殺する事を求めるか?
 そんな事、絶対にあるわけがないのだ――それをした瞬間、彼等はあかねに対し幻滅するだろう。同時にそれは日常に二度と戻れなくなる事を意味する――


『姉ちゃんは本当は心優しい筈なんだ……人を殺せる様な事なんて出来るわけねぇしやっちゃいけねぇよ……
 そんな事したら姉ちゃん心から笑えなくなっちまうじゃねぇか!! 俺にはそれが耐えられねぇ!!』


 何より――例え、他の誰もが知らなかったとしても――あかね自身が多くの人々を殺したという事実は決して消えない。
 あの時魔法少女を仕留めた(実際は仕留められなかったが)と思った時は強い不快感を感じたのを今でも覚えている。
 そして意識が飛んだ間に誰かを殺したのかもしれないと考えれば強い罪悪感に苛まれる。
 願いを叶える為には直接間接問わず多くの者達を殺さなければならないだろう。当然、その重圧はこれまでの比では無い。
 仮に乱馬を取り戻し日常に戻れたとしても――そんな重圧に晒された仲で心から笑えるわけもないのだ――

 それ以前に――


『ずっと私なんかやヴィヴィオさんの事を気遣ってくれた……そして何より……あかねさんを戦わせまいと身体を張ってくれた……そんな乱馬さんがあかねさんに人殺しを望む筈がありません! それはあかねさん自身が一番知っている筈です!!』


 そんな事――誰に言われるまでも無くあかね自身が一番理解している――
 乱馬が乱馬自身の為にあかね自身の手を汚す事を望むわけがない事を――
 きっと今の自分を見たら乱馬は是が非でも止める――
 直接自分にではなくアインハルトに止めてと頼んだのかという部分に引っかかりが無いではないが(が、実際の所、乱馬自身が直接あかねの夢に現れ説得したところであかねが素直に聞く筈もないと推測できる)、実際にそうして止めようとしてくれたのだ。


 だが自身はそれを全て突っぱねた。自分勝手な願いでありながらあろうことか乱馬自身に全ての責を押しつけてだ――


『繰り返すがあたしは別にあんたが殺し合いに乗ろうが乗るまいがそんな事は知ったことじゃねぇ、あんたが決めた事ならそれは全部あんたの自業自得だ……
 けどさ……あんた自身の行動を……誰かの所為になんてするんじゃねぇってんだよ!!』


 思い返せば――他の3人はともかく魔法少女だけは殺し合いに乗った事自体は否定しなかった(その魔法少女があかねに立ちふさがったのは『友達』のリンクルンを取り戻す為)。
 しかし乱馬に責を押しつけた事に関しては全面的に否定していた。無論、他の3人もあかね自身の言動を否定しているのは理解している。
 あの時はガイアメモリの影響か頭に血が上っていたのか、あるいは売り言葉に買い言葉だったがあかね自身聞く耳持たなかったが、こうして冷静に見ればどう考えても乱馬に全ての責を押しつけて良いわけがない。

 これから全ての参加者が死ぬのは全て乱馬の所為?
 仲間達や自分を守ろうとして散った乱馬の所為?
 乱馬は皆の命を危険に晒すために散ったのか? 命を賭して戦ったのか?

 違う、それは絶対に違う――

 乱馬が命を捨てて戦ったのは自身の矜持――『格闘と名のつく勝負には絶対に勝つ』それを守る為だったのではなかろうか?
 死んでいった園咲霧彦山吹祈里達の無念を晴らす為ではなかろうか?
 アインハルトや源太達、そして警察署で待っていたであろうヴィヴィオ達を守る為ではなかろうか?
 そして何より――許嫁であるあかねを戦いに巻き込み危険な目に遭わせない為だったのではなかろうか――


 だからこそ無謀とも言える戦いにも挑みリンクルンを取り戻したのだ。結果は完全敗北ではあったが乱馬は最後まで自身の生き方を貫いたのだ――
 きっと最期には自身の無事を願っていたのだろう――
 少し冷静に考えれば赤の他人でもわかる筈なのだ――

 だが――あかねはその乱馬の想いを踏みにじったのだ――
 乱馬の遺したガイアメモリを使い何の罪も無い他の参加者や自分を傷つける為に使い――
 リンクルンすら独占し他者に渡そうともしなかった――
 なるほど、これでは乱馬自身の生き様を自ら穢しているとしか言い様が無い。

 あろう事かそれはあくまでもあかね自身の選択であるにもかかわらず乱馬自身の所為だと言ってしまったのだ――
 あかね自身であっても客観的に見ればそれが決して肯定されない事である事は今なら理解している。

 ガイアメモリの影響? 頭に血が上っていた? 売り言葉に買い言葉? 理由など言い訳程度にしかなりえない。
 どんな理由があろうとも乱馬自身の生き方の否定、天道あかね自身が一番やってはいけない禁忌(タブー)、
 それをあかね自身が犯してしまったのだ――


『天道あかね……』
『さぁ……』
『『お前の罪を数えろ……!!』


 そう――天道あかねの一番の罪――それは早乙女乱馬の否定なのだ――


 だが――どれだけ考えようともそれで諦められるかどうかは全く別問題だ。

 例えどれだけの代償を支払う事になっても、
 例えどれだけ否定されようとも、
 例えその結末が報われるものではなくても、

 乱馬を取り戻して元の日常を取り戻したいあかね自身の願いだけは他の誰であっても、例え乱馬自身であっても絶対に否定はさせない。
 故にこのまま優勝を目指す事には変わりが無い――

 ――のだが、冷静になったが故にそれが非常に困難である事を実感する。
 たった1人で自分よりも圧倒的に強い参加者が数多くいる戦いを勝ち抜く?
 素直に負けるつもりは無いが無謀以外の何者でもない事などわかりきっている。

 仲間など当然いない。誰かと組んだ所で最終的には殺すのだ、そんな状態で協力してくれる殊勝な人などいないだろう。

 ならば自分の知り合いならばどうだろうか? この場合ならば極端な話、あかね自身が優勝する事に固着する必要は無い――

 いや、なおの事無理だ。シャンプーが相手ならば乱馬を生き返らせるという条件ならば了承してくれる(但し寝首かかれる危険性は非常に大きい)だろうが彼女自身が既に退場済みである以上それは無理。
 今生き残っている可能性のある2人――その内パンスト太郎についてはまず無理だ。真面目な話パンスト太郎にあかねの願い事を叶えてやる義理は全く無い。
 大体『オカマ野郎』及び『パンスト太郎』と呼び合い(乱馬自身は正しく名前を呼んでいるだけ)度々一触即発になっているのにそこまでやってくれるわけもない。

 だったら良牙ならば――確かに良牙から見ても乱馬は友人であるのでもしかしたら協力してくれるかも知れない。
 しかし――良牙は弱い者いじめが出来ない良い奴なのだ。乱馬が弱体化した時、他の連中は日頃の恨みを晴らすべく仕掛けて来たが良牙は決して仕掛けなかった(但し、ある意味一番乱馬にはショックが大きかっただろうが)。
 それどころか、幾ら強さを取り戻す為に必要な事ではあっても、弱体化した乱馬に全力で仕掛ける事が出来なかったのだ(最終的に仕掛けたがそれは乱馬があかねを襲ったという嘘に騙された為)。
 そんな良牙に何の罪も無い人々を殺す事など出来るのか? 出来るわけがないだろう。

 そして何より――あかね自身、大事な大事な友人である良牙の良心を利用しようとする事に強い抵抗があったのだ。そこまで嫌な女にはなりたくなかったのだ――

 きっと今も方向音痴で迷いながらも知り合いであるパンスト太郎を捜し、あるいは出会った仲間達を助け皆でこの殺し合いを打破する為に駆けずり回っている事だろう――
 そんな彼を利用する事など――あかねにはどうしても出来なかった――


 結局、全て自分自身で戦うしかないという事だ――しかし、絶大な力を与えてくれたガイアメモリを使う事に関しては抵抗がある――
 確かに絶大な力は与えてくれる――だが明らかにこれはあかね自身の精神を冒す――勿論、これはあかね自身に(ナスカとは違うが)メモリが支給されていたお陰でその説明書きでリスクについては把握していた。
 かつて(年頃の少女としては)致命的な副作用があったにも関わらず乱馬の話を信用しなかったばかりに(年頃の少女としては)酷い目に遭わされた剛力ソバの時とは違う。
 最初からデメリットがある事を把握しており同時にこうして実感しているのだ。

 精神を冒される――それ自体は全て悪いという事は無い。
 実際問題として優勝の為には多くの参加者を殺さなければならない。だが、実力的な面とは別に、心情的な問題がある。
 先にも述べた通り、多くの参加者を殺す事についてはあかね自身非常に大きな抵抗がある。凶悪な怪人や怪物ならばともかく、何の罪も無い人々を殺す事など出来やしない。
 それは武道家のすべきことでは無い、只の人殺しの所行だ。
 だが、ガイアメモリを使えばその抵抗を消すことが出来る。それは先程自分自身が身を以て体感した。

 が――一番の問題はそんなことでは無い。一番に恐れているのは――ガイアメモリによって乱馬に対する想い、そして願いが壊される、あるいは消される事だ――

 絶対にそうなるとは限らない? 強い意志で押さえ込む?
 そう考えているのなら相当におめでたい話だ、実際どうなったのかは先程の自分が証明しているではないか。
 あろう事か乱馬の生き様を否定し、最終的には自我を無くして無差別に暴走していたではないか。
 そんな醜態を晒していて大丈夫なんて言えるわけも無いだろう。
 あの時は美希の力――恐らくはプリキュアの力なのだろう、そのお陰で元に戻れたがそんな奇跡が二度も三度も起こるわけがない。

 何にせよ、乱馬を失ったショックで半ば衝動的に使ったあの時とは違う。どうしてもガイアメモリを作動させる気にならなかったのだ――

 結論が出る事も無く――あかねは一人数キロの道を駆けていた――



   ▽   ▼



『冷たい躰が嫌できっとあたしがヒートに引き合ったんだ』
『メモリと引き合う………………まさか、ここに!? ………………ここに来てたのか……最後の1つがコイツだったなんて……どうやら切り札は……常に俺の所に来る様だぜ』


――Joker――



   ▼   ▽



「え゛……」


 一体どれぐらい走り続けたのだろうか――道ちゃんのお陰で躰が軽い為、数キロの道のりであっても1時間も経過はしていないだろう。
 あかねの眼前には巨大なクレーターがあった。確かこの場所はI-5、つまりは図書館があった筈なのだ。
 にも関わらず、図書館は無く無残な破壊の跡があった――それはこの地での戦いが相当なものだったという事なのだろう。
 真面目な話、あかね自身、激しい戦いでクレーターが出来てしまうのを何度も目撃している為、それ自体は驚く事でも無いかもしれない。
 が、そんなあかね自身から見ても出来ていたクレーターは巨大すぎたという事だ。
 どれだけ強大な技をぶつけ合ったのだろうか? 想像すら絶する事だ。

 巨大なクレーターを目の当たりにし、改めて今後の事を考える.

 無論、ここに長居を為ても仕方が無いが大きな問題があった――


「禁止エリア……」


 放送を聞き逃した為に禁止エリアがわからないのだ。既に1時は過ぎていて何の反応も無い事から現在位置は禁止エリアでは無いのはわかる。
 しかし通ってきた道が禁止エリアになっている可能性は多分にあるし隣接エリアがそうなっている事も考えられる。
 誰かに聞くにしても都合良く他の参加者と遭遇しなければどうにもならない。
 下手に動いて気が付いたら取り返しの付かない場所まで来ていたという事にもなりかねない。
 格闘で負けて死ぬならばまだ諦めもつくかもしれない。だが、不用意に禁止エリアに入って自滅してしまっては死んでも死にきれない。
 正直途方に暮れていたが――


『G……six……』
「!?」


 何処かから声がするのが聞こえた。気のせいなのか? いや間違いなく聞こえた。


『C……three……』


 声の方向は自分の左胸から――それが意味するのは


「まさか……!?」
『D……nine……』


 あかねは胸に仕舞った金色のアクセサリーを手に取る。


『H……nine……F……eight……G……three……』


 声は金色のアクセサリーから響いてきた。そして、



『G……six……C……three……D……nine……』


 金色のアクセサリーは無機質にアルファベットと数字を繰り返し音声として発し続ける――


「待って……G-6、C-3、D-9……これ禁止エリアの場所よ!」


 あかねが聞き逃したのは2回目の放送であり1回目の放送は聞いている。それ故、発した音声が口にしていた前半の3つがその時の禁止エリアである事は把握できた。


「という事は……」
『H……nine……F……eight……G……three……』

 後半の3つが次の放送で伝えられた禁止エリアという事になる。更に先の3つが発動する順番だった事を踏まえこの3つも発動する順番を示しているのであれば――


「13時にH-9、15時にF-8、17時にG-3が禁止エリアになる……そういう事?」


『G……six……C……three……D……nine……H……nine……F……eight……G……three……
 G……six……C……three……D……nine……H……nine……F……eight……G……three……』


 アクセサリーはあかねの問いに応えること無く機械的に繰り返すだけだ。そして数分後、勝手に発していた音声は勝手に途絶えた。


「ねぇ……貴方……何なの?」


 あかねはそう問いかけるがアクセサリーが反応する事は無かった。
 もしかすると戦いで壊れていたのが何の偶然か作動したが今度こそ完全に壊れ動かなくなったのかも知れない。

 ともかく、禁止エリアの場所だけは把握できた。信用に値するかどうかはともかく、そのエリアに不用意に入らなければ何の問題も無いだろう。

 さて、問題はここからだ。地図に従いこのまま道なり(御覧の通りI-5は焦土と化しているが)に進んだ場合、17時に禁止エリアとなるG-3に入るあるいは急接近する事になる。
 今更、市街地方面に戻る事には抵抗がある。となると、地図から見て上方向の森を進む事となる。進む方向についてはそれで良い。
 ちなみに――先にナスカ・ドーパントに変身した時さらなる力を得る為に呪泉郷方向を目指していたが今となってはそこに向かう気にはならなかった。
 そもそもの前提として呪泉郷で力を得るという事はそこの水を浴びる事で変身体質になるという事だ。
 パンスト太郎はそれを利用しさらなる力を得たがそうそう都合良くはいかない。
 シャンプーの変身する猫、ムースの変身するアヒル、早乙女玄馬の変身するパンダの様に必ずしもパワーアップに繋がるとは言い難くむしろパワーダウンに繋がりかねない(パンダ辺りはそうでも無い気もする)。
 乱馬が浴びた女溺泉なんぞ浴びた所で元々女であるあかねには意味が無いし、元の男に戻す男溺泉を浴びて男性化しても大幅に強化されるとは言い難い。
 それこそパンスト太郎が浴びた牛鶴鰻毛人溺泉かルージュの浴びた阿修羅となる阿修羅溺泉ぐらいしかアテに出来るものが浮かばない。
 だが、呪泉郷の様子をざっと見た限り、どの泉がどんな泉かはわからなかった。よく調べればどれがどの泉かを指し示す資料があったかもしれないが既に13時間も経過している事を考えるとそれが奪われている可能性は多分にある。
 そもそも下手に変身体質を身につければ道ちゃんを身に纏う事が出来なくなる。
 どんな力が得られるかわからない呪泉郷とノーリスクで潜在能力を最大限に発揮できる道ちゃん、どっちが頼れるかなんて選択にもならないだろう。
 頭が冷えた今という状態から考えれば呪泉郷に執着する意味は低いという事だ。

 が、一方でこう考えていた――
 自分達との仲間意識が無いパンスト太郎はともかく、良牙は呪泉郷を第一の目的地と考えなかっただろうか?
 実の所、乱馬、シャンプー、パンスト太郎と違い、良牙はあかね同様呪泉郷の水を浴びていない、つまり変身体質を持っていない。(注.あかねは良牙も変身体質である事を知らない)
 しかし、友達思いの良牙の事だ、真っ先に乱馬達との合流を目指すのは想像に難くない。だとすれば共通の場所である呪泉郷を目指すのは今にして思えば当然の理だろう。
 良牙の方向音痴はあかね自身も知っている。だからといって絶対に辿り着けないというわけではないし、道案内が誰かいれば高い確率(確実と言えないのが良牙のある意味恐ろしい所)で辿り着ける筈だ。
 そう――幾ら乱馬を取り戻す為とはいえ、殺し合いに乗り人々を傷つける今の自分の姿をどうしても見られたくなかったのだ。だからこそ良牙の向かう可能性の高い呪泉郷に向かう事には気が引けたのだ。

 その為、目的地が浮かばないのだ。市街地が駄目なら村に向かうというのも考えたが少々距離がありすぎる。
 まずは適当な所から森へ――全く道案内が無いとうっかり禁止エリアに入りかねないのでもう少し道なりに進んだ所にある川から川沿いを進めば良いだろう。
 そのルートならば現状禁止エリアに入ることは無い。当面の方針としてはそれで良いだろう。

 そうして再び走り出す――だが脳裏には不安が拭えないでいる――

 目の当たりにした2人の少年少女の死体と焼けた平原、
 想像を絶する程巨大なクレーターと焦土と化した図書館があったであろうエリア、
 そして乱馬を殺した怪人――確かン・ダグバ・ゼバという名前だったか、そいつは未だに健在。同時に似た名前のゴ・ガドル・バの存在も気に掛かる。
 更には仮面ライダーエターナルや筋金アクマロといった危険人物、
 キュアムーンライトに執着していたなびきと声と髪型が似ている黒服の少女といった倒さねばならない強敵、
 そして殺し合いに乗るならば美希達プリキュアとも戦う事になる。
 繰り返すが実際に勝負になったならば負けるつもりは全く無い。しかし素直に勝てると言える程自惚れてはいない。
 だが道ちゃんの力が幾ら頼れると言ってもそれだけでは厳しいのは先の戦いで実証済――


 いや、きっと方法はあかね自身の脳裏にあったのだろう――


「!?」


 気が付いた時には手に持っていた筈のメモリが無くなっていた。


「あれ……メモリは……!?」


 走っている間に落としてしまったのか? 使う事に抵抗はあったが、貴重な戦闘手段であるメモリを失いたくは――


――Nasca――


 その音声が響くのが聞こえた。誰かがメモリを拾ったのか? しかし

「え゛え゛え゛え゛え゛~~っ!?」


 次の瞬間、メモリ自身があかね目がけて高速で飛んでくるのが見えた。

 あかねは高速で後方へと跳ぶ。しかしメモリも負けじと高速で迫ってくる。


「(どういう事? まさか私を……!?)」


 何者かの攻撃である事は考えにくい、だとすればメモリ自身があかねを変身させるべく勝手に動いたという事なのだろうか?
 だが只の機械部品の一種とも言えるメモリが自分の意志を持つ事など――いや、よくよく考えて見れば道ちゃんの様に自分の意志を持っている道着だってあるのだメモリがそういう意志を持った所で不思議は全く無い。


 だからといって、素直に変身するつもりはない。変身したら再び自我を失いかねない、それは同時に乱馬への想いを失う事になるのだ。
 それだけは絶対に避けなければならない。だからこそメモリの挿入だけは避けねばならない。


「!! メモリが消えた?」


 そんな中、あかねの視界からメモリが消失した。明後日の方向に飛び去っていったのか?


 だが、突如としてあかねの後頭部にメモリが急速に迫る――


 完全にあかねの死角を突いている、故にあかねはそれを避ける事が出来ない――


 だが、今のあかねはあかね1人で戦っているわけではない。


 そう、伝説の道着こと道ちゃんがいるのだ――


 例え死角に入られていても伝説の道着は気付いている。


 例え視線から消え失せても、道ちゃんの力で潜在能力を極限に高められている今のあかねにとって――


 いかに凄まじいまでのスピード、あるいはパワーでメモリが迫ろうとも――


 挿入されるより先に掴む事など――造作もない――


「はぁ……はぁ……」


 何とか、挿入を阻止しナスカ・ドーパントへの変身を避ける事ができた。
 しかし結局の所、何故突如メモリが勝手に作動したのだろうか?
 誤作動と片付けても良いがあかねにはどうしてもそれで片付ける事が出来なかった。


「もしかして……貴方、私の為に……?」


 確かにあかね自身メモリを使うべきか使わざるべきか迷っていた。
 得られるパワーは確かに強大だが、乱馬に対する想いが壊されるのは容認出来ない。
 しかし、この道のりで遭遇した惨状を目の当たりにし、無意識の内にナスカの力、それもレベル3の力が必要であると改めて認識したのだ。
 メモリはそんなあかねの無意識の内の想いを察し応えようとした――そう思えてならないのだ。
 そう考えればいきなり変身させられた事はともかくそこまで無碍にも出来ないだろう。


「そう、私に力を貸してくれるのね……Nちゃん!」
『N……chan……???』


 何処からともなくそんなツッコミが聞こえた気がした。


「ナスカ(Nasca)のNちゃん……あれ、今誰が……?」


 周囲を見回してもあかね自身、道ちゃん、そしてナスカメモリことNちゃん以外誰もいない。


 何はともあれ、今は先を急ぐべきだろう。と、


「う゛っ……」


 突如、怠さがあかねを襲ったのだ。Nちゃんの挿入を避ける為に派手に動いたからか?
 いや、道ちゃんの力で引き出される力はあかねにとっては全く負担にならない。では今のは何か――


「がはっ……!」


 そして突如、吐き気に襲われ――


「え゛……!」


 口を押さえた右手が赤く染まっていたのを見た――吐血したという事だ。
 あかねは別段そういう病気というわけではない。だとすれば考えられるのはこの殺し合いで受けたダメージによるもの――
 しかし、何度か敵に襲われてはいるが吐血するほどの深刻なダメージは受けてはいない。
 一番大きいのはWによるマキシマムドライブの直撃だったがそれにしても道ちゃんとナスカ・ドーパントの力のお陰で致命的にはならなかった筈、
 美希ことキュアベリーの攻撃もガイアメモリの毒素を浄化するものであったならばそれも吐血には繋がらない。

 だとすれば考えられるのは――


「Nちゃんの力を限界まで引き出した状態……レベル3……」


 レベル3に到達したナスカ・ドーパントの膨大な力による反動があかね自身の躰を蝕んでいた、そうとしか考えられない。
 プリキュアの力で精神を冒す毒素は浄化できた。だが膨大な力により破壊されたあかねの躰は決して治らない――
 恐らく、変身が解除された時点からあかねの躰はずっとそれを訴え続けていたのだろう。
 痛みや虚脱感といったものは不調を示すシグナル、ガイアメモリの毒素に冒されている間はそれに気づきにくくなるが、毒素が浄化されたからこそ実感できる様になったのだ。

 それだけレベル3、Rナスカ・ドーパントの力は膨大という事だ、霧彦ですらレベル2の力すら耐えきれなかった。それよりもずっとパワーが上のレベル3に耐えられるのはそれこそ冴子の様に限られた人達だけと言えよう。
 そのパワーにあかねが耐えきれる保証など最初から無かったのだ――
 そう、道ちゃんの力を以てしても――いや、むしろ逆だ、道ちゃんの力があったからこそあかねが受けたダメージはそれだけで済んだと言える。
 繰り返すが道ちゃんによって引き出されたあかねの力はあかねには全く負担になっていない。
 つまり道ちゃんはあかねの力を最大限に引き出すと同時にそれによる反動を最小限に抑えていると考えられる。
 そしてこれはナスカ・ドーパントに変身した後も変わらない。
 道ちゃんはナスカ・ドーパントと一体化しつつその力を最大限に引き出すと同時に、ナスカ・ドーパントの膨大なエネルギーによってあかねにかかる負担を最小限に抑えていたのだ。
 だからこそ短時間でレベル2の力を使いこなせ、仮面ライダーWと魔法少女の2人とやりあえたわけであり、同時にレベル3への土壌すら築き上げる事が出来たという事だ。
 しかし、その道ちゃんの力をもってしても――レベル3の力は余りにも膨大過ぎた――故にあかねへの負担を完全に抑える事は出来なかった。
 だが、逆を言えば道ちゃんの力で負担を抑えたからこそあかねが受けたダメージはそれだけで済んだという事になる。そう、道ちゃんがいなければそれこそ既にあかねは戦えなくなっていたのかも知れない――


 ここに来て再び大きな問題に直面した事になる――


「道ちゃんの力があればNちゃんの力を引き出せる……」


 道ちゃんとしては自身が好きなあかねがNちゃんなどと呼ばれるメモリ如きで苦しんで欲しくは無い。だからこそ、ナスカ・ドーパントの負荷から全力で守るだろう。


「多分、レベル2までは大丈夫……でも……」


 それでもレベル2が限界だ。レベル3のパワーを完全に抑えきる事は出来ない以上、長時間戦う事は不可能だ。当然暴走して自我を失えばそれで終わりなのは言うまでも無い。
 恐れが無いわけではない――だが、自身を変身させるべく自ら動いたNちゃんを見て考えが変わった。


「道ちゃんが私を守ろうとしている様に……Nちゃん、貴方も私の願いに応えようとしてる……そうなのね……」


 そう、例え自身の乱馬に対する想いが消える恐れがあろうとも――やはり諦めきれないのだ。
 乱馬を取り戻し元の日常へと戻る願いを――


 その一方、もう1つ果たさねばならない事があったのを思い出した――


『恐らく、ダグバの襲撃を受け彼女の許嫁……婚約者と言うべきかな、彼が命を落とした……だが何とかメモリを奪取する事に成功して彼女がそれを手に入れた……といった所だね』
『そしてアンタはその婚約者……恋人を殺された復讐をする為に……』


 仮面ライダーWはそう口にしていたのはその時のあかねは否定した。
 だが、今更ながらに考えたのだ。復讐するつもりで考えているわけではないが――


 ――あの乱馬が、格闘で負けたまま終わる事を容認出来るだろうか?――


 そう、乱馬ならば往生際悪くても再びリベンジすべく動く、そして最後には必ず勝ってきたのだ。
 しかし最早乱馬自身がダグバに対してそれを果たす事は出来ない――


 ならば、乱馬の代わりにそれをあかね自身が果たさねばならないのではなかろうか?


 勿論、こんな危険な事を乱馬が求めるわけもない。
 そう、これは完全にあかね自身の自分勝手な我が儘なのだ、
 少しでも早乙女乱馬の矜持――『格闘と名のつく勝負で負けたことが無い』
 それを守りたいと願うあかね自身の――

 このまま優勝を目指して戦い続けていれば何れダグバと再び出逢う事となる、
 奴は自身の笑顔の為だけに多くの人々の笑顔を奪ってきた、
 今更それを名乗って良いものではないが、化け物から人々を守るのは武道家のつとめ、故に奴を倒す事に迷いは無い。
 このまま乱馬が完全敗北したままで終わらせるつもりはない、運良くあるいは運悪く奴と出会えたならば――必ず倒す。

 どちらにしてもダグバを倒さなければ自身の願いはどう転んでも叶わないのだ、それについては迷う理由など何処にもない。


 そう、その為ならば――自身の生命を代価にしても――一向に構わない。
 メモリの副作用でその想いや願いが穢され消え失せるのならば――完全に消え去る前に全ての決着を着ける。


 無論、その時が今と言うわけではない、だが、その瞬間が刻一刻と近づいている――


 ――Nasca――


 静かにメモリから音声が響く――



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最終更新:2013年03月22日 12:55