羆帝国の劣等生 ◆Dme3n.ES16


水没した会場を流れる一本の丸太。その上に一匹のヒグマが跨っていた。

「たすけてくれ~~~!!たすけてくれ~~~!!」
(落ち着くんだモン、あの船に乗せてもらうモン。)

大型の流木にまたがり枝をオール代わりにして漕いでいる黒い熊、くまモンと
流木に捕まっているペドベアーは近づいてくる救助部隊と思われるイカ釣り漁船
に手を振った。彼らが何者か知らないが丸太に乗ってるよりマシだろう。

「まさかゆるキャラまで参戦してるとはのう。全く、節操のない運営じゃわい」
「早く乗せてあげましょう」

くまモンが目と鼻の先まで近づいたと思われた―――その時。
突然、水中から黒い影が飛び出し、船の甲板に張り付いた。

「なんじゃと!?」
「ヒグマか!?やっぱ水中でも元気一杯ってことなのかぁ!?」
「大丈夫ですぞぉ吉田君!今こそ研究の成果を見せる時だぜぇ!!」

熊そのものな外見のレオナルド博士は意気揚々と腰に装備したガブリボルバーを抜き、
襲ってきたヒグマに向けて光線銃を発射する。ヒグマ細胞破壊プログラムが容赦なく
ヒグマに襲い掛かった。

「ははははははははは!!!!死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

だが、黒いオーラを纏っているその細身のヒグマは光線を全く意に介さず
悠然と立ち上がり、腰に帯刀していた剣をゆっくりと引き抜いていく。

「おい博士!なんか全然効いてねぇっぽいぞ!!」
「なんとっ!データが足りねぇのか!?」
「……いや、ていうかさぁー」

鷹の爪団は一つ大事なことを忘れていた。この会場で行われているゲームの本来の目的は
ヒグマと戦う事ではない。集めた参加者同士が殺し合うことなのだ。


「■■■■■■■■■■■■■■■■ーーーーッ!!!!!!」


「こいつヒグマじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!?」
「なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」

雄たけびを上げるその男は漆黒の鎧騎士。ヒグマドンという目標を見失い路頭に迷っている所を
津波に襲われ流されていた英霊バーサーカーであった。強者と戦いそびれてイライラするので
とりあえず近くにいたイカ釣り漁船を襲うことにしたのだ。

「■■■■■■■■■ーーーーッ!!」
「なんだこいつは!?うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ヒグマ細胞破壊プログラム弾き飛ばしたバーサーカーは博士の隣にいた吉田君の傍へ
一瞬で近づき、手に持っていた木刀、アヤカシ殺しの妖刀童子切りを振り下ろして
脳天から真っ二つに切り裂き殺害した。

「よ、吉田くーーーーーーーん!!!!!」

絶叫する総統を唖然としながら見るくまモンは全力でオールを漕いで漁船へ接近する。

(や、やめるモーーーーーン!待ってるモン!いま助けに行くモン!)


◆  ◆  ◆


一方その頃。

「――――ごばぁぁぁぁ!?畜生っ!畜生ぉぉぉぉ!?なんなんだよこれはぁぁぁ!?」

放送が終わってしばらくした後、突如会場を襲い掛かった自然災害。
暴君怪獣タイラントによってもたらされた大津波に飲み込まれた
哀れな犠牲者の一人が濁流に流されながら必死にもがいていた。
アヤカシと呼ばれる特異生物と人間の混血児、ダブルブリッド・高橋幸児である。
宝具・羆殺しと名付けた強力な武器を手に入れ、有頂天になっていた彼だが
独覚兵になった樋熊さんを殺害した後は誰も見つけられずに一人街をうろついていた。
そこでこの津波である。いくら人間を遥かに凌ぐ身体能力を有しているとはいえ
都市を一つ消し去る天災が相手では一溜まりもなく、そのままなすすべもなく
瓦礫と共に流されてしまったのだ。必死にもがくが元々人体実験で肺を摘出された身。
間もなく酸欠で意識を失い命を落とすだろう。

(畜生ぉぉぉぉぉ!死ぬのか!こんな所で!なんでだよ!?なんで僕ばっかり!?)

『あなたはいつも文句ばっかり言ってるわね』

薄れゆく意識の中、幸児の脳裏で白髪の少女が自分を見下しながら語りかけてくる。

『アヤカシは最初から強いから努力や向上心を持っていない。
 あなたは人間とアヤカシの悪いところばかり見習おうとしてるわね。
 ――――現状に不満があるなら、努力すればいいじゃない?』

……うるせぇ。

意識を取り戻した幸児は筋力増幅(ブースト)によって四肢の自由を取り戻し、
まだ右手に持っていた刀を意識を朦朧とさせながら両手で握って円を描くように
振り回し、自分の周囲を360°を切り裂く。

「黙ってろ白髪犬ぁぁぁぁっっっ!!!!」

絶叫してしばらくした後、横薙ぎに切り裂いた空間が上下に割れ、
透明な羆の大口のような空間が出来上がった。






「……はぁ、疲れた……」

とあるビルの一室。オフィスのデスクに突っ伏して肩で息をする学園都市レベル5第三位、御坂美琴は
長旅の疲れを少しでも癒すために睡眠を取っている。まさか北海道へ行くつもりが宇宙まで飛び出して
しまうなんて。とんだ回り道だった。体力の消耗は著しく、いまの状態では能力も使い物にならないだろう。

「……なにやり切った気になってるのよ。しっかりしなさい美琴。まだ何もしてないじゃん」

そう、ようやく会場までたどり着いたばかりなのだ。一刻もはやく佐天さん達を助けてあげないと。
誰が犯人かは知らないが、恐らく想定外であろう大災害で会場全体が沈没してしまっている
今が救出のチャンスかもしれない。

「寝るのはあと5分、それで起きてここから出なきゃ」

『グォ!グオ!グォ~!』

「……んん~?」

天井から獣の声が聞こえる。そういえばここは最上階。屋上にヒグマでもいるのだろうか?
にしてもなんだこのリズムは?まるで雌が喘いでいるような……?

「何考えてるのよ、馬鹿」

ふいにツンツン頭の事を思い出してしまい、美琴が少し顔を赤くしたその時。
激しい振動と共に美琴が潜んでいるビルが斜めに傾き始めた。


「なっ!何事っ!?」

慌てて跳ね起きた美琴はバランスを取りながら窓際まで地近づき、傾いたビルの下方向を視る。

「ちょっ!?なにあれ!?」

外界で巨大な渦潮が発生し、津波がどんどん吸い込まれているのだ。
その強烈な吸引力は周囲の瓦礫や建物までを巻き込み、すべてを飲み干そうとしていた

「ビ、ビルが津波ごと喰われている!?
 大変だ!急いで逃げなきゃ!」

窓から身を乗り出し、微量の電磁波を手足から放出してビルの壁際に張り付いた美琴は
出来るだけ高いところへ逃げようとする。だが脱出しようとする彼女を屋上から落ちてきた
巨大な物体が遮った!

「なにあれ!?きゃああああ!!」

屋上で自慰に浸っていたメロン熊が落下してきたのだ。咄嗟に電撃で応戦しようとするも
パワー不足で放出できず、そのまま衝突し無情にも巻き込まれて地上へ落下していく。

「痛っ!ちょっ!どいてどいて!死ぬ!死ぬからっ!わぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ビルと共に渦潮に巻き込まれ装になった直後、投げ出された美琴とメロン熊の姿が
唐突に空中から消え失せた。メロン熊の固有能力のテレポートが発動したのである。


図らずも九死に一生を得たレールガンの次の戦場は何処なのか?





妖刀羆殺し。胃の中にかめはめ波すら吸い込む強力なブラックホールを内臓した
上位ヒグマ「悟空殺し」の能力を引き継いだ宝具の力で空間を切り裂いたことで
周囲のすべての海水を消し去り、廃墟と化した街の道路の真ん中に大の字になって倒れ込む
高橋幸児は何かをやりきったように高らかに笑っていた。

「あはっ!あははははは!!!!!見たか白髪犬!!!!
 もう自然の摂理もボクを止められない!!!これが自由だ!!!!」

人間社会を容赦なく滅亡に追い込む自然災害。その自然現象すら克服した彼は
もはや無敵の存在だった。もう捕らえられて管理される人生とはオサラバだ。
自分はここで完全な自由を手に入れるのだ。

「―――もしもし、ああ、どうやらこの周辺の津波は消え去ったらしい。手間が省けた」

廃墟と化した建物の物陰から、電話で喋っているような話声が聞こえてきた。

「あの刀は回収しなければならないが……なるべく我々は介入しない方がいい。
 しばらく彼を泳がしておくのが得策かと」

それを聞いた幸児はゆっくりと腰を上げ、建物の向こうに居る者を凝視する。
誰だか知らないが、また自分を監視して管理するつもりなのか?

「ああ、邪魔だよ。ここは僕の居場所なんだからさぁ。」

やや調子に乗った幸児はその場から跳ね起き、羆殺しを大きく上下に振り抜いた。
すると、幸児の体が一瞬で話し声が聞こえてきたコンクリート壁まで移動した。
空間を削り取ったことで自身を瞬間移動させたのである。そして続けざまに壁に
刀を叩きこみ、コンクリート壁を跡形もなく消滅させる。
右手に携帯電話をもった小柄なヒグマが慌てたように振り向いた。

「消えろぉぉぉ!ボクを縛る奴は人間だろうがヒグマだろうがみんな消えちまえぇぇぇぇ!!」

幸児は絶叫しながらヒグマに消滅の力をもつ妖刀を振り上げ、叩き込もうとする。
だが、突然、なんの前触れもなく空中を飛び上がっている幸児の全身に孔が空き、
至る所から血を吹き出して吹き飛ばされた。

「なに!?―――がはぁ!?」

幸児は何が起こったかも分からず刀を振り上げた体勢のまま地面に落下し、
そのまま激痛に悶えて地面を転がりまわった。


「がごげぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
『どうしたのシバさん、なんか起こった?』
「参加者の一人に襲われたので正当防衛に移行した。細胞物質を分子レベルに分解して
 全身に孔を穿った。大丈夫だ。まだ死んではいない」
『少しは手加減しろ。大事な実験対象だぞ』

地上に出てきた穴持たず48シバさんは電話で喋りながら苦しむ幸児を悠然と見下ろす。

「もうこいつは使い物にならなそうだな。悪いが刀だけ回収させてもらおうか」

ゆっくりこちらに手を伸ばしてくる冷たい目をしたヒグマを幸児は睨み付ける。

「ざけんなよ。ここはボクの聖地なんだ。お前らは消えろ!消えてなくなれぇ!」

再び刀を強く握った幸児は人外の筋力で、羆殺しをヒグマに向けて投げつけた。
投擲された刀の速度についていけず、防御が遅れたシバさんの顔面に直撃し、頭を吹き飛ばしながら
羆殺しまるで自分の意思を持っているかのように空高く飛んで行った。

「へへっ、どうだ白髪頭ぁ?少しは努力してやった、ぜぇ――――」

幸児が満足気に笑顔を浮かべた数秒後、彼の全身の細胞組織が分解され、
50.01%のダブルブリッドはこの世界から跡形もなく消滅した。

『シバさん!?大丈夫か!?』

地面に倒れ伏す首のないヒグマの肉体。その頭部の斬れ口から端正な顔つきの青年の頭が飛び出し、
無表情で地面に落ちた電話を手に取った。

「大丈夫だ、問題ない。やれやれ、オーバーボディを来てなかったら即死だったな。」

腰を上げたシバさんは壊れたヒグマの着ぐるみを脱ぎ捨て、一張羅のような白い制服を着た
本来の姿を露わにする。帝国住民に誤解されないように普段はヒグマの姿をしているが、
自分は工藤健介や烈海王のようなスタディの実験に志願して人間からヒグマになった者の一人らしい。
らしい、というのはどうも実験の副作用で記憶に障害ができていて自分が何者だったのかあやふやなせいだ。
とりあえず強力な能力を持っているので面倒を見てもらっている帝国に貢献する為働いている訳であるが。
シバさんが遠くの方を見ると、まだまだ大量の海水が会場を覆い隠しているようだった。

「羆殺しを回収しそびれた。仕方がないので津波対策は自前の能力で実行することにする。」
『なんだって!?――――ちょ、ちょっと待て!』

シバさんは腰から専用デバイス、シルバーホーンを抜き、海面に向けて引き金を引いた。

「マテリアル・バースト(質量爆散)」

質量をエネルギーに分解する究極の分解魔法が数キロ先の海面に襲い掛かり、
会場の南西部が戦略兵器級の凄まじい爆発に包み込まれた。


◆  ◆  ◆



「フィリーーーーープ!!!!!」

水上移動用小型船舶型メカ『鷹の丸』の船上で惨劇を繰り広げるバーサーカーは
吉田君に続いてフィリップ君の全身を瞬時に切り刻んで殺害した。

(い、今助けるモン!)
「え?―――ぬおおおおおっ!?」

その様子をみていてもたっても居られなくなったくまモンは釣り針に引っかかったペドベアーを
引っ張り上げ、モーニングスターの様にぶん廻して振り回して船の上のバーサーカーに向けて
投げつけた。バーサーカーは振り向くも対応できず、ペドベアーを側面に叩きつけられ吹き飛ばされた。

「■■■■■■■■■ーーーーッ!?」

その吹き飛ばされたバーサーカーの体が不可視の力で逆エビ反りに折り曲げられ、
船板にクレーターを作って叩きつけられた。抵抗しようとするも、その体勢のままピクリとも動けない。
鷹の爪団最強戦力の菩薩峠君のサイコキネシスである。見た目は大きな目をした紫色の気持ち悪い子供だが
地球の自転を反転させたり異星人の艦隊を蹴散らす程の強力な超能力を持つ彼の能力の前には
バーサーカーも一溜まりもなかったのだ。完全に動きを封じられ膠着する漆黒の騎士。

「……パパ」
「おお、よくやった!菩薩峠くん」
「もうちょっと早く使よ。二人を蘇生させるの面倒くせぇじゃねぇか。」
(すごい!あの子供強いモン!)

甲板に引っかかり気絶するペドベアーに引っかかった釣り糸をよじ登ってようやく
くまモンが船の上に辿りついた。

「で、どうすんのこいつ?」
「ヒグマじゃないみたいだけど、危ないから殺しとこう」

バーサーカーに止めを刺そうとする菩薩峠君。だが、不意に異変を感じ北の方角に振り向いた。

「え?」
「な、なんじゃありゃ!?」
「赤い津波!?」
「ち、違う!爆風だ!巻き込まれるぞぉぉぉぉ!!」

シバさんが先ほど放ったマテリアル・バーストによる質量爆発による熱風が、
海水ごと全てを無に帰そうとするように高速で船体に迫っていた。

「か、回避ぃぃぃぃ!!」
「間に合う訳ねぇだろっ!うわあああああああ!!!!!!」

破滅の光が鷹の丸を飲み込み、会場の南西部が灼熱の炎に包み込まれた。




◆  ◆  ◆



仕事を終えたシバさんは無表情でシルバーホーンをホルスターに仕舞いこむ。
欠陥のない穴持たずが唯一持っていないのは、かめはめ波のような強力な遠隔攻撃手段だ。
その点においては自分は並のヒグマよりはるかに優れていると言えよう。
まあ彼らの筋力ならそこら辺の岩でも投げつければ小型ミサイル並の威力が出せると思うが。

「ミッションコンプリート」
『……じゃ、ねーよ!なにしてんのシバさん!今の絶対地上のヒグマも巻き込んじゃったでしょ!?』
「え?あの程度の攻撃じゃ死なないだろヒグマ?」
『いやいや!結構強さの個体差大きいから!あー、もういいよ。
 羆殺しと津波はこっちでなんとかするから本部に帰ってきて。』
「あ、ああ。了解した。すまない」

電話を切ったシバさんは深く溜息をついた。

「やはり駄目だな俺は……所詮は劣等生か」

強力な能力も有効に使いこなして成果を挙げねば意味がない。
そもそも人間を見るだけで一瞬で分解出来て何が嬉しいというのだ。
社会を動かすのは破壊ではなく生産である。屋台を経営し刀鍛冶としても才能を
発揮している灰色熊や艦むすの製造ラインを作りだしたヒグマ提督達の方がよほど自分より
帝国に貢献しているといえよう。役に立たない必要以上の力など宝の持ち腐れに過ぎないのだ。

「平和になったら布束さんに師事して技術部に回してもらうか。
 俺の演算能力も評価してもらいたいものだな」

そう思いながらシバさんは寂しそうに地下帝国に続くマンホールを目指して歩き出した。


【高橋幸児@ダブルブリッド 死亡】


【D-6 廃墟/昼】

【穴持たず48(シバさん)@魔法科高校の劣等生】
状態:健康、記憶障害、ヒグマ化
装備:攻撃特化型CADシルバーホーン
道具:携帯用酸素ボンベ@現実、ランダム支給品1~2(武器ではない)
[思考・状況]
基本思考:ヒグマ帝国と同胞の安寧のため、危険分子を監視・排除する
0:帝国へ帰還する
[備考]
※司馬深雪の外見以外の生前の記憶が消えました
※ヒグマ化した影響で全ての能力制限が解除されています

※シバさんのマテリアルバーストで島の南西部の島内の海面がすべて蒸発しました



「……んん~?」

激しい爆発に巻き込まれ一時的に気を失っていたくまモンはよろけながら体を起こす。
周囲を見回すと総帥とベルナルド博士も同じように起き上がろうとしていた。

「た、助かったのか?」
「そのようだなぁ。おお!見ろ!」

博士が指さした先には紫色の救世主が居た、宙に浮いた菩薩峠君が強力のバリアを張って
マテリアルバーストの破壊をシャットアウトしたのである。

「うおおおおおおお!!!でかしたぞ菩薩峠君~~!!!」

菩薩峠君は歓喜する総帥の方を振り向き、嬉しそうににっこりと笑った。
その次の瞬間、切断された菩薩峠君の頭部が笑った形のまま地面に落ちた。

「え?」
「ぼ……菩薩峠く~~~~~~~ん!!!????」

地面に落ちた紫色の子供の頭部を踏みつぶしたのはバリアを張ったおかげで
サイコキネシスから解放されたバーサーカーである。

「■■■■■■■■■ーーーーッ!!」
(い、命の恩人になんてことするモン!もう許さないモーーーン!)

怒り狂ったくまモンは回転しながらバーサーカーに突撃してスレッジハンマーを叩き込んだ。
漆黒の甲冑騎士はそれを振り向きざまに童子斬りで受け流す。ぶつかり合う鈍器と鈍器の間に火花が飛び散った。

「■■■■■■■■■ーーーーッ!?」

だが均衡が崩れ徐々に押されていくバーサーカー。ゆるキャラでもヒグマ。
東京へ出てアッコさんに鍛えられたその力は並大抵のものではない。

「おお!いいぞくまモン!」
(モブォッ!?)
「あっ」

バーサーカーの強烈な回し蹴りがくまモンの腹部に叩き込まれた。
そのまま背後で気絶しているペドベアーを巻き込み、船を飛び出して遥か遠方の森の中へと吹き飛ばされていった

「……■■■■■■■■■……」

バーサーカーはくまモン達を追わずに立ち尽くす二人の男の方を向いている。
レオナルド博士は総帥のパイプに火をつけた。一服する総統。

「すまんな、博士」
「なぁに、俺の研究はあのゆるキャラたちが引き継いでくれるさぁ」

総統はこちらに突っ込んでくるバーサーカーを見つめてニヤリと嗤った。

「せめてもの手向けじゃ、受け取れぃ!」

瞬時に二人の首を斬りおとすバーサーカー。崩れゆく総帥の手から四角い何かが落ちた。
髑髏マークの描かれたスイッチである。

「―――■■■■■■■■■ーーーーッ!?」

総帥が船の自爆スイッチを押したのだ。
質量爆破程ではないが、凄まじい爆発がバーサーカーに襲い掛かり、火柱が船体を覆い隠した。




「――――あれ?あそこで気絶してるのは?」

海面が蒸発したことで再び地面が見えるようになった森の中。
テレポートで移動した背中に気絶した美琴を引っ掛けたメロン熊が
意外な知り合いを発見する。

「くまモンとアナログマじゃない!ひさしぶりね!」

くまモンを揺さぶって起こそうとするメロン熊。
その体からSF作品に出てくる光線銃のようなものがポロリと落ちた。


【総統@秘密結社鷹の爪 死亡】
【吉田君@秘密結社鷹の爪 死亡】
【レオナルド博士@秘密結社鷹の爪 死亡】
【菩薩峠君@秘密結社鷹の爪 死亡】
【フィリップ@秘密結社鷹の爪 死亡】


【C-7 森/午前】

【くまモン@ゆるキャラ、穴持たず】
状態:気絶
装備:釣竿@現実
道具:基本支給品、ランダム支給品0~1、スレッジハンマー@現実
   博士用ガブリボルバー(ヒグマ細胞破壊プログラム内蔵)
基本思考:この会場にいる自分以外の全ての『ヒグマ』、特に『穴持たず』を全て殺す
1:あの一団(鷹の爪団)と接触してみる予定だったが……。
2:ニンゲンを殺している者は、とりあえず発見し次第殺す
3:会場のニンゲン、引いてはこの国に、生き残ってほしい。
4:なぜか自分にも参加者と同じく支給品が渡されたので、参加者に紛れてみる
5:ボクも結局『ヒグマ』ではあるんだモンなぁ……。どぎゃんしよう……。
6:メロン熊は、本当にゆるキャラを捨て去ってしまったのかモン?
7:とりあえず、別の場所に連れて行ってクマーの話を聞くモン。さっき武器にしたけどヒグマだからあれくらい大丈夫だモン
8:あの少女は無事かな……
9:バーサーカー許さないモン
[備考]
※ヒグマです。

【クマー@穴持たず】
状態:気絶、アンテナ
装備:無し
道具:無し
[備考]
※鳴き声は「クマー」です
※見た目が面白いです(AA参照)
※頭に宝具が刺さりました。
※ペドベアーです
※実はカナヅチでした

【メロン熊】
状態:喜悦
装備:なし
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:ただ獣性に従って生きる
1:悦びに身を任せる
2:くまモン達と接触
[備考]
※鷹取迅に開発されたので、冷静になると牝としての悦びを思い出して無力化します。
※「メロン」「鎧」「ワープ」「獣電池」「ガブリボルバー」の性質を吸収している。
※何かを食べたり融合すると、その性質を吸収する。
※御坂美琴が引っかかっていることに気づいていません。

【御坂美琴@とある科学の超電磁砲】
状態:気絶、ずぶ濡れ、能力低下
装備:なし
道具:なし
[思考・状況]
基本思考:友達を救出する
0:佐天さんと初春さんは無事かな……?
1:なんで津波が島を襲ってるんだろう?
2:あの『何気に宇宙によく来る』らしい相田マナって子も、無事に戻って来てるといいけど。
3:今の私に残った体力で、このまま救出に動けるかしら……?
[備考]
※超出力のレールガン、大気圏突入、津波内での生存、そこからの脱出で、疲労により演算能力が大幅に低下しています。



地面に倒れ伏す騎士を起点に地面に根が張り巡らされている。
最強のアヤカシ、空木が己の半身を削って人間に与えた木刀童子斬りが
寄生主を生かすため地面から養分を吸い出しているのだ。
今の致命傷を負ったサーヴァントを回復させればマスターの雁夜は確実に命を落とすだろう。
だが植物と英霊のハイブリッドと化した今のバーサーカーにそのような心配はない。
植物の根は更なる栄養を求めて地下を深く深く潜り込み、やがて開けた空間に最高の栄養源を見つけ出した。

―――――とある世界で世界のエネルギー問題を解決へ導いたという究極の発電機関、示現エンジンである。


【B-7 更地/午前】

【バーサーカー@Fate/zero】
状態:瀕死、寄生進行中2/3、ヒグマ帝国の示現エンジンからマナを供給中
装備:無毀なる湖光、童子斬り
道具:基本支給品、ランダム支給品1~2
基本思考:バケモノをころす
[備考]
G-5のヒグマドンに向かっています。
※ヒグマ・オブ・オーナーに関する記憶が無くなっています。
※バケモノが周囲にいない間は、バーサーカーとしての理性を保っています。
※バケモノが周囲にいる間は、理性が飛びます。
※童子斬りにより地中よりマナを供給しており、擬似的な単独行動スキルとなっています。
※マスターが死んでも現界し続けるでしょう。


◆  ◆  ◆


「うひょ~~~!!向こうは派手にやってるな~~~!!」
「ああ、向こう側に流されなくて良かったな、流子」

会場の上空。鮮血疾風で空を飛んでいる流子は南西部で立て続けに起こった大爆発を
高みから見物していた。あの攻撃の元凶はヒグマなのか参加者なのか?
いずれにせよとんでもない奴が会場に居ることは間違いないだろう。

「鮮血!あたし達ももっとつよくならなきゃな!」
「ああ流子!……ん?なんだあれは?」

鮮血が下を見ると、何かがこちらに高速で接近してくるのが見えた。

「いかん!よけろ流子!」
「え?がはぁっ!?」

反応が間に合わず飛来した物体にぶつかる流子。それは上空へ向かって投げ飛ばされた穴持たず4であった。
会場の外の海まで投げ飛ばされる筈だったそのヒグマは衝突により軌道を変え地面へ落ちていく。
少しよろめいたものの、なんとか空中で体勢を整え持ち直す流子。

「痛て……なんだったんだあのヒグマ?」
「わからん、だが空を飛ぶヒグマがいてもべつにおかしくないだろうな」
「ははっ確かに――――――――」

ドゴォッ!

「……え?」
「りゅ……流子ぉぉぉぉ!!??」

突然、背後から襲われた流子の胸から腕が貫通して飛び出し、心臓を掴み出された。

「あはっ!おお~キミのハート、すっごく綺麗だねぇ~キラキラしてるよぉ~!」
「な、なんだコレ?誰だてめぇはぁ!?」

後ろを振り向くと、天使の翼を背中から生やした金髪の美少女が笑っていた。
生命繊維でできた心臓を掴み出してキュアハートは耳元で流子に囁く。

「あなたのプシュケー、宝石みたいだね。私に頂戴!」



【I-7上空/午前】

【纏流子@キルラキル】
[状態]:健康、鮮血疾風使用中、心臓を掴み出されている
[装備]:片太刀バサミ@キルラキル、鮮血@キルラキル
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いに対する抵抗
1:智子を探す
2:痴漢(鷹取迅)を警戒
3:キュアハートから逃げる

【相田マナ@ドキドキ!プリキュア、ヒグマ・ロワイアル、ニンジャスレイヤー】
状態:健康、変身(キュアハートエンジェルモード)、ニンジャソウル・ヒグマの魂と融合、
   纏流子にハートブレイクショット
装備:ラブリーコミューン
道具:不明
[思考・状況]
基本思考:食べて一つになるという愛を、みんなに教える
0:そうか、ヒグマさんはもともと、愛の化身だったんだね!
1:任務の遂行も大事だけど、やっぱり愛だよね?
2:次は『美琴サン』に、愛を教えてあげようかな?
3:流子ちゃんに愛を教えてあげる
[備考]
※バンディットのニンジャソウルを吸収したヒグマ7、及び穴持たず14の魂に侵食されました。
※ニンジャソウルが憑依し、ニンジャとなりました。
※ジツやニンジャネームが存在するかどうかは不明です。
※山岡銀四郎を捕食しました

【穴持たず4】
状態:軽傷、疲労、地面に落下中
装備:無し
道具:無し
[思考・状況]
基本思考:強者と闘う
0:なんだあの人間は!?


「グルルルル~~~」

南東部のとあるビルの屋上。SCP-777-J・ダークブレイドから奪い取った正宗で
爪を研ぎながらヒグマン子爵は先ほどの放送を思い出す。
呼ばれた名前が余りにも多すぎて聞き流してしまいそうになるが、
違和感を感じ、その正体を突き詰めることに成功した。

巴マミ。

確実に殺して捕食した筈の少女の名前が呼ばれていないのだ。
まさかあの状態から回復したというのだろうか?だとすれば深刻な問題である。
餌の喰い残しは我がポリシーに大きく反するのだ。

そう思っていると、空中から飛来した物体が甲高い音をあげながら屋上の床に突き刺さった。

「グルル?」

それは刀であった。遥か遠くから次の使い手を探すように飛んできた呪われし最強の宝具。
ヒグマン子爵はその刀を迷わず手に取り、床から抜き取った。
両手に二本の刀を装備するその姿はまるで剣豪、宮本武蔵のようである。

「グルルルルル!!!!」

もう一度巴マミを喰らう為、羆殺しを入手したヒグマン子爵は雄たけびを上げながらビルの上から飛び出した。


【E-6・街/午前】

【ヒグマン子爵(穴持たず13)】
状態:健康、それなりに満腹だがそろそろ喰いたくなってきた
装備:羆殺し、正宗@ファイナルファンタジーⅦ
道具:無し
基本:獲物を探す
0:巴マミを捜して喰らう
※細身で白眼の凶暴なヒグマです
※宝具「羆殺し」の切っ先は全てを喰らう


No.114:SURVIVE 本編SS目次・投下順 No.116:水嶋水獣
本編SS目次・時系列順
No.069:命名 高橋幸児 死亡
No.104:鷹の爪外伝 北海道周辺より愛をこめて 接触編 鷹の爪団
くまモン No.125:おてもやん
クマー
No.105:Sister's noise 御坂美琴
No.109:Tide メロン熊
No.084:傍迷惑 バーサーカー No.131:Licorice Leaf
No.103:不明領域 司波達也 No.122:帝都燃えゆ
No.102:海上の戦い 纏流子 No.130:アイデンティティ・クライシス研ぎ澄ました刃を鞘からゆっくり引き出す
No.108:老兵の挽歌 相田マナ
No.100死のない男 ヒグマン子爵 No.119:Hidden protocol

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最終更新:2015年12月13日 17:39