◆
戦いは、無言だった。
信義を確かめ合う主張も。
精神を高揚させ、または相手の動揺を誘う文句も。
観戦者からの声援を受け、実力以上の結果を発揮する為のパフォーマンスも、こことは無縁だ。
2人は互いを知っている。
相手が何者で、どういう能力を使い、どのように戦うのかを、深く知悉している。
サーヴァントという形態で再会し、敗北と邂逅がもたらした変化も、先の戦いで修正を済ませた。
もはや言葉の意味は不要ず。
時の果てより招かれ集った同種を屠るのに憐憫はまるでなし。
尋常、神妙、前看板は裂かれて砕かれ、真昼の天下で、鬼が狂う。
「ハァァアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
花が舞う。
月が踊る。
叫びは野猿の震え。
獲物を威嚇する獣の本能。そこに人の言葉のような意思の疎通は介在しない。
されど獣が何を思い、何を語っているかは、余すことなく両者に伝わっていることだろう。
「……フ─────!」
殺す。
ただ一点の、曇りなき言霊。
それのみを共有した二匹の鬼は、咲き狂う桜の花弁を蹴散らし凶器を交えるのだ。
眼球に数字は刻まれていない。
序列であり支配の証。長年歴史の影で人々を恐怖させた集団の鬼はもういない。
ここにあるのは狂い鬼。鎖を解かれ日の下を歩く肉なき幽鬼。
名も思い出せぬ主ではない、自ら決めた契約こそが新たな存在理由だ。
桜吹雪を掻き分けて舞い広がる三日月。
夜の風流を表す季語が日照時に降る奇っ怪な光景。
猗窩座にとっては見慣れた牢獄を駆け抜ける。
(刀を伸ばさずとも、型を出すか)
月の呼吸 玖ノ型【降り月・連面】。
一定以降の数の型で、
黒死牟は手に持つ刀を長大化させる。
刃に応じて月輪の力場を発生させる斬撃能力。その効果範囲を広げる為だ。
その刀が、変わっていない。
基本の打刀の形状のままで漆ノ型以降を撃ってきている。
これだけでも、生前とはかけ離れた成長を遂げていると判断するのは明白。
強くなるのは己だけではない。元から小石程度の大きさでしかなかった慢心を噛み砕いた。
(だが───見える)
捌ききれず手足を寸断されていた過去の敗戦の記憶と、眼前の月輪。
密度に切れ味は往時よりも研ぎ澄まされてる筈だが、眼球に映る牙はひどく緩慢だ。
羅針が、視神経が、反射が、筋繊維が、外骨格が。
猗窩座を作る部品、生体が、独立して月を捉えている。
脳天からの飛来をアッパーでかち上げる。
腕を輪切りにする側面は、黒化した腕で掴み、投げつける。地面を這う足払いと衝突し互いに砕け散った。
胴への横薙ぎには助走をつけての飛び蹴り。流線型の真ん中から圧し曲がり力なく墜落した。
大小の肌を触る月輪は全て無視。
攻撃も機動も損ねずに素通りするか、全身から発する剄……覇気が放出が跳ね返す。
檻に閉じ込めた灰色熊(グリズリー)が、天然の獰猛さで鉄格子を引き千切って抜け出す絵図。
月刃の包囲網を突破した猗窩座は黒死牟を『拳』内に捉える。
遠当てではこの男に通じない。相手も鬼、本命を与える布石以外の牽制は無意味。
覇気───人類が潜ませた意志の力。
呪力───負の想念の凝縮。
同一の根源から生じ、相似である異世界の概念は、反発せず混じり合い、猗窩座という無関係の住人の中で精製される。
筋肉を増強し。
皮膚を硬質化し。
覇と呪の異なる層が渦を巻いて拳を巻き込み、破壊力を向上させる「ねじれ」を生む。
鬼嵐。
拳周りの空気をねじ回し実物大よりも大きな気流の拳を作り出して月の破片を圧壊させて猛進する。
【壱ノ型 闇月・宵の宮】
針の穴に糸を通す、極細の一迅だった。
しかし月輪と嵐の大技がぶつかり合う狭間で繰り出された居合は、極限の集中状態の間隙を縫う奇襲として成立した。
乱気を手甲にした突きは手首を断ち切られた事で不発に終わり、反撃の二の太刀を振るおうと──────
「破式 縮円牡丹」
───斬られた断面から新しい拳が射出し、黒死牟の左側頭部を撃ち抜いた。
「…………!」
左上の目玉を潰され頭部から血を流す。
斬られてからゼロ秒で再生を済ます超常の復元速度に虚を突かれ、たたらを踏んで後退する。
一度目の交錯で再生の速さを予測していただけに、さらなる上昇は寝耳に水だったろう。
(───通る)
初めて一本を取った、会心の手応え。
参の字とふたつ先の壱の字を持った鬼に拳が届いた。
この身体は戦える。黒死牟に見劣りせず、今や上回りもしてる。
勝てる───希望的観測でない確信が後押しして、一気呵成に攻め立てる。
やや遅れて眼を直した黒死牟へと、猗窩座の連撃が殺到する。
如何に不意を打たれたとはいえ、それで足運びを乱す上弦の壱ではない。
通過した跡に帯電を残す拳の速度にも適切に対応し、拳打蹴足を止めていく。
受け止める最中に、前方を埋める黒死牟以外の方角、左右上方から月輪が竜の顎めいて猗窩座を噛み砕く。
だというのに、猗窩座は止まらない。
斬られてはいる。長刀で発動されるのと同威力同範囲の剣の林は、一欠片に至るまで猗窩座に突き刺さり、撫で斬りにし、膾切りにしている。
そして次の型が始まる頃には、元の状態に再生して戦闘を継続するのだ。
黒死牟も、月輪で死角外から攻めつつ猗窩座の注意がそちらへ分散したのを見計らって自らも切り込む算段をしていたのだろうが、逆に猗窩座の猛攻を止め続ける羽目になってしまった。
被弾を恐れず、無限高速の再生力を盾に、自らは一方的に質量と物量で押し潰す。
まさにそれは彼らの始祖、■■■■■が用いた戦い方。
膨大な生命力という、技や道具で舗装されない、原始に満ちた荒々しい御霊の発露。
完璧に近い存在にとって凄まじく理に適った、武術家であれば唾棄するような暴力が、今の猗窩座だ。
(構うものか。己の誉れなど)
武芸者の風上にも置けないと自壊するだけの恥はもうない。
臆面もなく力を振り翳す、そこだけはかつての主と変わりないだろう。
だが、この行為が何を目的としたものであるかだけが───彼岸と此岸ほどの違いを生んでいる。
破壊と殺人を犯すのは同じで、罪は罪で、求めるものが異なるだけ。
永遠は少しも欲しくない。
欲しいものは希望。たったひとりの、小さな未来。
稲光が勝機を予期して、脳内を雷速で駆け巡る。
先行を奪取する。
「青銀乱残光」
構えなし、ノーモーションで解放された終式が、取り囲む月輪を粉微塵にする。
砂利に混じった破片が陽光を反射して、綺羅びやかな星屑の運河を生む。
その河を猗窩座は泳ぐ。
全力を投じて打つ終式の直後にも関わらず、二撃目もまた全力。
至近距離での爆裂に少ない傷を負っても、黒死牟の迎撃は正確だ。
【拾伍ノ型 虧月・牙天衝】。武装色に染まる黒刀の唐竹割り。
「黒閃万華鏡」
応じる黒拳。
中途で不発の憂き目は二度もなく、完全解放で相克する。
純粋破壊のみを目的とする怒涛の閃光が、ふたつ。
絶叫の音は黒死牟が歯を食いしばって地に叩き下ろす黒刀である、猗窩座の血管を破裂させる反動を受けて上昇を目指す拳である。
そこに挟み込まれた罪なき大気であり、振り切れた数値を修正する運営する界聖杯である。
局所の衝突点、ほんの僅かな空間だけが、
世界の終わりを現実に先んじて訪れる。
衝突は、互角。
二色の黒は互いの領域を侵食することなく、光の喰らい愛に終始している。
遮二無二
カイドウに放った頃より威力を増した万華鏡も、牙天衝に押し負けはせずとも圧せない。
よしんばどちらかに均衡が傾いても、その頃には向かうべき威力は八割方が削がれ、決着の一撃足り得ない。
「黒閃」
────結果と前提と理屈を纏めて凌辱して、左から追撃。
威力は右と全く同一。強い攻撃ほどかかる『溜め』の間が忘却されている。
初撃で残量を粗方喰われた牙天衝はあっけなく壊れ、柄を握る指まで意趣返しとばかりに吹き飛ぶ。
「黒閃」
理を問うのも馬鹿らしくなってくる、当たり前に三度目にも稲妻。
刀も防護も抜いた黒死牟の腹腔に突き刺さり、内部で暴発。
内臓は炭化し、肉は挽かれ、骨が胸を飛び出た。
呪力の核心。
打と呪の間の微の誤差が弾き出す閃光。
武をやめ呪いを背負った男に齎されるは、呪力からの喜悦の艶笑。
「─────黒閃!!」
腕に乗った稲妻は天にも昇る。
都合四撃。呪いの申し子の称号を得た鬼の王の万雷は、百年の溝を奔り切った。
獲った。
会心の一撃は呪力の芯を捉え、覇気の武装を押し出し月輪を貫き壊し。
とうとう黒死牟の脊椎を折り、頸動脈を破り、僅かな皮を残して頸がぶら下がっている。
人であれば言うまでもなく即死。
鬼ですら必死の傷。
廃れた数字の序列を遂に覆してのけた猗窩座は、ここでも手を緩めない。
黒死牟は倒した。
陽光焼けにはかからずともじきその身は朽ち果てる。
だが敵はこの男のみではない。
律儀に全員回って倒す必要はないとはいえ、優勝候補に居並ぶ龍王は未だ健在。
灰と化す前に───四百年分滞留した血袋を、ここで飲み干す。
鬼は、人間だけでなく鬼も喰らうことができる。
かつての上弦の序列を競う血戦でも、新たな上弦は敗者を喰らいより力を高めてきた。
禁忌とされた『同胞喰い』の縛りも、始祖の枷を解いた猗窩座にはない。
加えて、相手は上弦の壱。
絶命する窮地の土壇場で、猗窩座と同じく頸の截断を乗り越え再起する可能性は無視できない。その芽を確実に詰むべくの吸収。
鮮血を噴き上げる首の跡に手を押し付け吸収を始める。
始祖に一番近い、上弦の濃厚な血を細胞で味わう。
再臨を果たした身が、一回り膨れ上がるのが分かる。
これならば始祖はおろかその血の記憶にある、始祖の頸を斬りかけた鬼狩りをも上回れると─────
「……何を……………………言っている…………」
■
これは総括だ。
黒死牟にとって
幽谷霧子とは、如何なる存在なのか。
剣士の素養のない弱者。数えきれないほど喰らってきた肉の一切れ。
斯様な言い逃れは通じない。ただの要石の一言では短すぎて、鬼に疵を刻み過ぎた。
手に刀を持たず、言葉の刃を、武器も肉も素通りして無い筈の心に振るい続けた。
それほどまでに大きくなっていた。武の道や弟で塗布できなくなるくらいに。そして誇りは遠ざかり、弟もまた去った今、目を逸らす事すら許されない。
窘めても殺気を向けても、性懲りもなく■を与え続けた。
嫌いだと、癇癪じみた感情すら受け入れられ、柔らかな陽の元で微笑まれた。
恐れられて、逃げられるのが当然で摂理たる鬼の傍らで、人のままでいながら寄り添い続けてきた。
そんな主と少なくない遣り取りをして、交換するように感情を吐き出し合って。
黒死牟は霧子に安らぎを覚えただろうか。
鬼畜に堕ちた己を掬い上げる、糸を垂らす天女に見えただろうか。
そんなはずがなかった。
あの指が肌に触れようと近づく度、神経が強張る。
あの口から言葉を投げられる度、臓腑が掻き毟られる。
奈落に突き落とされる、頭の天辺から爪先まで走り抜ける悪寒。
怨嗟を向ける弟との死合、窮地に追いやられた瞬間の恐懼と同様の感情を、銀の少女はもたらしている。
狂ってる。どうかしている。
霧子がではなく、そう感じている自分自身に。
上弦の壱の位を死守し畏れられ続けた男の肝の太さなのか、これが。
愕然と戦慄き、有り得ないと頑として否定しなければならないが、靄を晴らされた頭は粛々とそれを認めるしかない。
緑壱の如き、神に愛されし凄絶なる極まった武力もない。
緑壱の如き、非の打ち所が無い完璧な精神もない。
緑壱の如き、この世の条理を覆す超逸した才能もない。
数百年先に生まれ育った、ただ人間であるだけの小娘が、死してなお消しきれなかった黒死牟の影を灼いた。
今となってはその幻想すら、一部、脳に描いただけの神絵でしかなかったが。
疎ましくない筈がない。
憎らしくない筈がない。
縁壱にすら抱かなかった、太陽に晒される鬼の恥辱。
憤死して然るべき激情が紛れもなき真であると理解しながら、胸元の最も深い箇所は不思議なほど落ち着いていた。
何故か。
「それが、私にとっての罰だからだ」
自分は鬼として生きる道を選び、そして死んだ。そこに悔いはない。
実の弟の鬼才を妬み家を捨て、人すら捨てて求道に費やした。
例え何度生まれ変わろうとも、同じ選択をしていただろう。そうする以外、自分の人生に価値を見出すことなどできなかったと断言できる。
だが、それでも、この道は間違えていたのだ。
実の弟の才のみにしか目が行かず蔑ろにし、代々の武家も娶った妻と子も無価値と断じ、醜い化け物になってみっともなく生にしがみつき人を殺し続けた。
罪を罪と感じる心がないからと、罪が生まれないわけも、罪から逃れられるわけでもないというのに。
悔いているわけではない。
許されたいわけでもない。
ただ、省みてみたのだ。
何も手に入れられない。何も残せない。何者にもなれない。何の為に生まれてきたのか分からない。
その理由は、一度振り返ってみれば、簡単に見つかっていたようだった。
見逃してきた罪であり、見ようとしてこなかった呪い。
幽谷霧子とはつまり、それを丁寧に拾い上げて眼の前に広げて見せる、罰の顕れだ。
一度死に、その残滓として蘇ってもまだ逃さないと追いかけてきた、頸に当てられた日の刃だ。
恐れるのも当然だった。己の死因となったふたつ、そのどちらも携えていたのだから。
優しき陽だまりなど、とんでもない。
柔らかな光は黒死牟の肌をゆっくりと灼き、克明に罪を詳らかに晒す。
いっそ縁壱の時のように、一瞬で目を焦がされる方がまだましだ。
火炙りに気づいた頃には、磔刑の台に諸手を縛られ、身動きが取れなくなっていた。
縁壱でも
光月おでんでも、恐らくはこれは叶わなかった。
だが霧子のみがいれば事足りたかといえば、それもまた否となる。突き立てたとて、否定に走る鬼を振り払える刃を、霧子は持たない。
縁壱なくば、盲いた目を開かせる自覚が足りず。
霧子なくば、がらんどうに埋める心が足りず。
そしておでんなくば、捻れ絡まった因果の糸を力づくで切り落とせなかった。
誰かが欠けていてはこの結末はなかった。黒死牟の罪を認めさせる未来はやって来なかった。
そうまでして、他人に構うことにいったい何の意味がある。
そこまでお膳立てされ後を押されるだけの価値が、果たしてあるのか。縁壱を喰らってまで?
罪を見てもそこに救いが降りてきたりはしない。自己の価値をそう易易と見いだせない。
本懐に至ろうとするほど、本当の望みに向き合う度に、過去の罪業が降りかかる。罪とはそういうことだ。
贖罪の気があろうがなかろうが、気づいてしまった限りはもう逃げられない。
罪は示される。
罰は下される。
鬼たる黒死牟は鬼滅を遂げた。
男の罪は数百数千、八熱を巡り責め苦を受け続ける。
ならば濯ぎようのない汚名、とうに灰になった誰かの罪を今になった知った影である、ここにいる己は。
この地に残った、ただひとつの縁に、何をするべきなのか。
『ここ』ではまだ悪行を積んでない、生前の醜さを俯瞰したばかりの『彼』。
ある意味で生まれたばかりの赤ん坊とも言えるような無垢さと、肉体を構成する情報が証明する邪心。
サーヴァントという自身だからこそ獲得できた瞬間(いま)に、男は踵を地面から浮かして離れた。
■
怪奇極まる光景に、猗窩座は拳の圏内から飛び退いた。
頸を断ち、吸収して捕食せんとした寸前に、黒死牟の全身から刃の如き無数の棘が飛び出した。
肋骨が肥大化した突き出たとでもいうような生々しい質感の牙。
鋭利な牙とて今の猗窩座が受けても致命傷にならず、我関せず吸収に専念すべきだった場面でも、猗窩座は己の判断を疑わなかった。
武道家を誇れる体質では既にないにしても積み上げた武練と研がれた直感は、不死の体とて危うしとの信号を奢らず発した。
(既に頸の弱点を克服していたのか?)
消滅を免れた黒死牟の五体はますます変貌を遂げていく。
突き出た棘は数を増やし続け、伸長を止めない。全身に刀が刺さった落ち武者か、埋め込まれた冬虫夏草が一斉に芽吹いて肉を突き破った虫かのようだ。
やがて伸びた刃は黒死牟を見えなくして覆い隠す。町中に建てられた奇抜なオブジェ。猗窩座を映し出す磨かれた鏡面に、楕円形の小屋程度の大きさのドームをしている。
繭───猗窩座はそのように形容する。
刀が擦れ合う金属音を鳴らして、それ以上の変化は起こらない。
頸を落としても死なず、行動を続行した。そこは今更講ずる問題ではない。
自分より上の位階にいた鬼だ、この場で、あるいは生前から克服の術を身に着けていても不思議はない。
だが速度までこちらに匹敵してるわけではない。あそこで即反撃に転じなかった点から、再生力は不完全だと看破する。
ならばあれは生やした武器を即席の壁とし、再生の時間を稼ぐ腹か。
にわか柵の防御なぞ障害にもならぬ。地面を陥没させる踏み込みをかけ、ドームごと粉砕すべく拳を掲げる。
羅針の反応が、中にいるであろう黒死牟の闘気を震えながら示すのを見ても臆することなく、硬化した拳に黒い稲妻が纏わりつき射出を整えたところで。
「……成る程…………醜いな……………」
───鏡面に映る、誰かに向けた怨嗟(こえ)。
細い呟きが漏れたと同時に、一斉にドームが弾け飛ぶ。
高速で一帯に四散する割れた刀身はそれだけで骨まで落とす凶器だが、猗窩座の疾走の妨げにもならない。
不規則に散らばる旋風に指を突き入れ、そこから流し込んだ覇気と呪力の混合色が風圧ごと刀辺をさらに細かい塵に還した。
砂塵に紛れようと標的を見紛しはしない。黒死牟は、猗窩座が拳を入れたままの位置に立っている。
狙いは同じく頸部。未知の防御・反撃を承知の上で再生を頼みに右腕を振り下ろす。
「─────────?」
微小に、戸惑い。
妙な手応えがあった。
抜いた拳の先には何もなく、倒れた体も血肉も飛んでない。
結果だけ見れば、空振りといえるだろう。拳が避けられた。それだけの話。
しかしやはり拳には妙な感触がある。痛覚の反応だ。
生命の危険を知らせる信号の用途は希薄になったために、判断が遅れた。
右腕は、斬られた。
頸に達する交差の間に斬り刻まれ、斬り飛ばされ、血霞と化すまで微塵にされた。
斬撃は瞬間で、再生もまた瞬間に済まされた為、振り抜いた体勢のままで膠着していた。
「黒死牟───────」
食らわせた仕手の名を呼んだところで、重々しい音がした。
空気が粘りつき、肩にへばりついてのしかかってくる、桁違いの重圧が背後───猗窩座が狙いを定めて拳を通過させた場所にいる。
確認より先に殺気が勝った。
その場を動かす軸足を独楽回しにした後ろ回し蹴り。
それだけで小規模な竜巻きを生じさせる気流の嵐が脚に絡みつき破壊力を数段伸ばすが、またしても旋脚は空を切る。
奇術に惑わされてるような寸劇で。
今度は、直に捉えた。
蹴り上げた脚が顎に触れるか否かのタイミングで、数百規模の細かな斬撃が蹴りを勢いごと消し飛ばし、脚を戻る頃には再生して元に戻ったのを。
改めて向き直って目にする黒死牟は変化を遂げていた。
それは魔人。
あるいは、鬼神か。
着物と袴を包む装甲は、肉身から直接生えて硬質化された骨だ。
骸骨を組み直して着込んでるとも見える、真白い鎧。肩当て、手甲、脚甲。
顔にある六眼すら、鎧の意向として塗られた仮面の一部であるかのよう。
死者の国から這い出た冒涜性を孕みながらも、反射する光沢には多くの属性が内包されていた。
気品、荘厳、誇り……人が掲げ鬼が持ち得ない信念が、鬼の鎧を形作っている。
「らしくもないな。術に頼らず技を磨いてきた貴様が、そんなものを使い出すとは」
「そう……思うのか……今までの私は……剣技のみに拘る……侍であったと……」
「そんなはずが、ないだろう」
饒舌になったものだとは以前の相対でも言ったが。
こうも語りを聞かせてくる様を見せつけられるのは、かつての同胞として些か面食らわざるを得ない。
「だが……海の果てには……斬撃を飛ばす侍など……常であるという……。
そこのうつけならば……今の私もまた、侍とのたまうのだろうな……」
くつくつと、笑い声すら漏れ聞こえた。
戦いで相手の武力を称賛する笑みを目にした事はあっても、ここまで可笑しさで笑うというのは一度として見ていない。
(何だ……?)
ぶれる口調といい、冷静と理知を醸し出す常とはまるで異なる雰囲気。
(まさか……高揚しているのか?)
気勢の乱れは集中の乱れと付け入る隙を穿とうにも、威圧感だけはあの頃より遥かに重い。
「─────参る……」
即時、奇妙な感情が吹き飛ぶ。
懐古も困惑も全て忘れ、敵の瞬殺に専心する。
そう、瞬殺だ。一息もつかせぬ間に、殺す。
そうでなくば負けるのは己だと、そんな弱音を飲み干して構えを直す。
鞘から刀は抜かれている。形状は通常の打刀のまま。
放出される力場の発動に全神経を注いで───羅針が振る先に目が流れた。
「……ッ!」
のけぞって下げた頭のあった空が爆ぜた。
真空になって押し寄せる風を顔に受け、視線は既に次撃の方角。
鬼の深化させた猗窩座の反射神経と羅針の合せ技でも見失いかけた黒死牟が逆袈裟に、左の黒閃が応じる。
衝突。電雷。
かち合ったのは1秒の24分割、猗窩座の左肩口から先がこそげ落ちる。
引き換えに作り上げた拮抗で、猗窩座は遂に見えぬ斬撃の正体を見抜いた。
(鎧……! あの甲冑の全てが奴の刀と同じ性質……!
それを手に持った刀に集約させ、一撃に斬撃を重ねがけしている!)
月輪を形成する、黒死牟の鬼としての技。
今の黒死牟が纏う鎧は、その発展形とでもいう能力だった。
猗窩座は目にしてないが、いざとなれば黒死牟は自身の体から刀を生やし、刀の数だけ斬撃を乱射する芸当も可能とする。
全身から生やす刀を箇所によって形と太さを微調整し、生前の、人間時代の甲冑の知識を元に構成。
膨大な骨を材料に生産し分散し、織物を作るかのように丹念に結び合わせて、一式の鎧と成す。
こうして出来たのが、黒死牟の、黒死牟の為の鎧。護りではなく攻めに主眼を置いた、多重斬撃発生器とでも言うべき『斬撃の護り』だ。
……幾ら鬼といえど、ここまで自在な肉体変化を行える個体はほぼ存在しない。
これはひとつの工芸品。臓器をまるごと体内で複製するのと変わらぬ繊細な技工と体力を要求する。
唯一可能としていたのは鬼の始祖である■■のみ。
猗窩座もまた、体内の臓器を消しても生存を可能とする、別系統の離れ業を披露した。
ならば、黒死牟が行ったそれは。
蒼穹の天司、混沌の化身
ベルゼバブとの、生と死の狭間で掴んだ呼吸。
日の呼吸、半身たる
継国縁壱と同化したことによる体力の強化、陽光への耐性。
鬼を自壊に至らせる精神の安定、2人のマスターが取り除いた光の亡者。
齎された複数の要素が、黒死牟を二者と同じ扉を開かせた。
本来、自滅の為だけに用意された宝具は、自ら罪を直面したことで効果を成さず。
形骸化した肉体変化と断首克服の効果のみを抽出され、未知の宝具へと新生した。
月の呼吸・拾捌ノ型。
【月蝕・号哭鎧装】
「づ……!」
───猗窩座は、翻弄されていた。
拳も闘気も、一手足りとも標的に触れられない。空を切るか、空に斬られる。
距離を取ろうと跳んだ次には追いつかれ、一度に繰り出される無数に斬撃の群れにより、体の大部分を一気に削がれる。
再生の速度と抹消の範囲が釣り合ってしまう、届かせられない。
何度かは颶風としか見えない黒死牟に肉薄し拳を届かせる場面もあったが、それらは全て触れる寸前に腕を振った逆方向に弾かれた。
甲冑には現代でいうリアクティブアーマー……爆発反応装甲と同様の仕組みが施されていた。
外部からの衝撃が加わった瞬間、装甲内部に仕込まれた爆薬が炸裂し内部の損壊を防ぐ仕組みだ。
甲冑も同様に攻撃が届くと同時に装甲の表面、即ち刀身が弾け飛び斬撃を自動展開して、威力を相殺するのだ。
鎧を着込んだからといって速力が低下もしていない。むしろ加速する。
足裏に脹脛に、背中の面から力場を発生させ、スラスターの要領で得た加速。
猗窩座の張った羅針を、本体の反射ごと置き去りにするほどの。
縦横無尽。攻守速、三役兼ね備えた黒死牟の軌道は何者も阻めない。
まるで、喜びの舞のようだった。
こだわりを捨て、持てる能力を余すことなく振るう魔人。
我が身を見よ。我が威を見よ。
これは鬼か。侍にあるまじき、鬼に相応しき、暴力に蕩尽する醜き怪物か。
彼の世界に生きた剣士であれば、過半数が是と答えるのだろう。
無辜の命を喰らって得た忌むべき力、風体ばかり侍を気取った愚かな恥知らずと。
浴びせられる無数の正論。それを一喝し呵呵と笑う野卑なる声が、少なくとも1人。
『昔にやった事は、そりゃ褒められたもんじゃねえだろう。許されねえ悪なんだろうよ。
だがおれはそれを見てないし知らん! 何せお尋ね者の海賊だからなぁ!
だから言うぜ! 今のお前の刀には魂がこもってる!! しみったれてコソコソ振るってた前よりも、ずっとなァ!!』
頼んでもない幻聴が、無傷の脳を叩きつける。
妄想のはずが、どうしてこうも苛立たせる文句しか出力されないのか。化けて出たでもあるまいに。
もし出てきたのなら、斬るだけだが。
(縁壱)
(俺はまだ、お前に追いつけるか)
(お前が見たものを見られるか。それともまた遠ざかってるだけなのか)
都合のいい答えは、返ってこない。
心を知る半ばで逝った弟の胸の内を推し量るのは叶わなかったのか。
はたまた。猛る心臓の鼓動が、意味を表しているのか。
構わない。今はただ感じていない。
武士に生まれ、鬼に成って、初めての……この躍動に。
「図に、乗るな……っ!!」
凶鬼が咆哮を上げる。
毎秒を寸刻みに合う、想像を絶する斬烈にも耐え、再生を繰り返す。
痛覚も遮断され、内蔵も抜き取った。霊体でも耐え難い喪失感を凌駕する精神こそ、この鬼の最大の武器だ。
(条件が同格になっただけだ。俺が奴に拳が届かないように、奴も俺を殺し切れない。
上弦であった頃よりもむしろ勝率は上)
遮二無二腕を無意味に振るうだけに見えて、内面は冷静に凪いでいる。
決して、圧倒されてるわけではいない。
黒死牟が一方的に攻め立てていても、猗窩座の体力の残量には余裕がある。決め手を欠いた膠着状態だ。
圧倒的な推力と攻撃力と防御力も、次第に体が覚えてきた。
不死身の鬼ならではの死に覚えは、徐々に、しかし着実に新技に順応しつつある。
対応が可能になれば、後は無骨な体力の削り合い。技も能力も関係ない、泥臭く相手を掴む原始の戦いに逆行すれば、再び勝機は巡ってくる。
必ず勝つ。
勝利を捧げる。
負けられない理由。勝ちに行く執念は誰にも劣らない。
自分でない誰かの為に。鬼である男はただ1人の幸福を握るべく、破壊の腕を駆動し続ける。
身につけた力を、技を磨くことに費やした黒死牟。
体の頑健と再生に全てを捧げた猗窩座。
得手の差はあれど互いの力に優劣はなく、戦いは完全な拮抗に移行しつつあった。
戦う理由。掲げる信念。
思いの強さ、性質が勝敗を左右するとは限らない。
勝者は行いが何もかも正当化されるわけではないし、敗者の思いは弱く間違いだったと責められる謂われもない。
出力が同等であれば決着は運否天賦。些細な偶然で傾く天秤でしかない。
そういう意味でいうのであれば、明暗を分けたのは確かに運であり。
「六つ目の、馬鹿兄貴…………っ!」
味方の数が多かったという、計算の値の差でしかなかった。
回転しながら投げ込まれる得物。
妨げようとする猗窩座もすり抜けて、磁石同士で引き合うかのように手の内に吸い込まれる。
掌握の勢いを殺さずに鯉口に指をかけ弾き、露わにされる抜き身。
揺らめく紫煙の刃紋。黒光りを放つ刀を目にした途端、黒死牟は察する。
(幻聴の割に喧しいかと思えば、そういう訳か)
ひとり得心し、握り締める。
柄はいやに馴染んで指に吸い付いた。刀の方から離すまいと癒着させてくる、生き物の脈動に怖気が走る。
昔語りに聞く、ひとりでに動き、斬り裂いた犠牲者の生き血を啜るまで止まらない伝承を思い出した。
(望むところだ。操れるものならば、操ってみろ)
【月の呼吸 拾漆ノ型】
型を定めれば、全身の精気が抜き取られる虚脱感が襲いかかった。
徴収の源がこの刀だと知るが、中途で止めることもできず、制御する間も惜しい。意のままに解き放つ方を優先。
自分諸共擲つ感覚はこれまでになく疲労を予感させ、それがいっそ爽快ですらあった。
【紫閃雷獄・盈月】
生まれた黒い剣閃はひとつだけだった。
流血に群がる海のピラニアもかくやの数と獰猛さだった先程の輪舞に比べれば、拍子抜けするほどの単調な袈裟斬り。
それだけに軌跡は流麗なまでに疾く、己の胴に弧月が通るのを許してしまった。
苛烈で凄絶な能力の乱舞を散々に食らわされていた落差で、殊更極限に絞られた一本の線に込められた練達の技を実感させられてしまう。
とはいえ芸術点をつけてやる酔狂さはない。まして死合をくれてやる殊勝さなど。
鮮やかな手並みで美しい切り口は、それゆえに鬼の肉体には有り難い。
再生は面制圧よりなお即時。一撃終えた侍が何かするより先に、これより一撃見舞う猗窩座の方が確実に先を行く。
が、しかし。
(傷口が、消えない……?)
反応装甲も考慮に入れた最大威力の貫手を構えた直前の猗窩座に残る傷。
斬られた箇所、袈裟に綺麗に入った跡は、たちどころに消える再生力を無視して残ったままでいる。
そして体内の異物感が堰を切って、中から裂け割れ出した。
「ガ──────!?」
存在を撹拌する衝撃に悶える猗窩座。
急所を狙われても即死しない特性を得た以上、斬られただけで攻撃を緩める選択肢は絶対に取らない。
にも関わらず庇うようにして体を抱えるのは、我が身に起きた異常への対処に全霊を傾けねばならなくなったからだ。
黒い亀裂が、猗窩座の胴体に生まれている。
黒死牟が入れた線を境界にして孔が空き、広がり続けていく。
チャックから裏返すリバーシブルのぬいぐるみ。呑んだ毒物を出す為に胃自体を裏返して吐き出すカエル。
それと同じ現象が、鬼の体内で無理やり起こされようとしていた。
(斬撃が俺の体内で留まり、成長してる、だと……!)
胸を走る亀裂は稲妻の形状に似ていた。放電を枝葉として手足に染みを移していく。
版図が広がる度に亀裂は開き、斬撃は肥大化。やがては猗窩座の全てを塗り潰す。
傷口に残置して、永遠に同じ箇所を斬り続ける過重月光(オーバーロード)。再生殺しの斬撃。
鬼によって振るわれるは、陽の光ならず、別種の鬼を滅ぼす月の刃。
「ガッッッガガ、が、ガァァアアアアアアアアアアアア!!」
力を全て再生に回して、侵食に抗う。
細胞単位で呼びかけて、外からは両腕で力づくで傷口を押さえて塞ごうと足掻くも、切開は止まらない。
それどころか触れた腕に稲妻が乗り移り亀裂が感染する始末。
そう。これはもう攻撃というよりも病だ。かかれば最後、宿主が死ぬまで増殖する、悪質な腫瘍───。
多層化した斬撃にも拮抗してきた再生力も、新たに加わった力によって崩された。
光月おでんの愛用品、閻魔。地獄の鬼も斬り伏せる大業物。
縁が巡り手に渡った、妖刀の側面も持つ禍々しき刀は黒死牟の血肉で出来た魔技にも馴染み、一閃ごとの威力を跳ね上げさせた。
新たな型、新たな武器。
併せて放たれた威力、推して知るべし。
地獄の王の試し切りは、鬼の王さえも地に伏した。
「……………………っっっ!」
顎まで達したことで、叫びすら上げられなくなる。
まだ用を成す瞳だけが、まだだと終わらぬ不屈を訴えている。敗北を受け入れない目。負けるわけにはいかない者を突き動かされた目。
その信念の価値も正しさとも無関係に、鬼は身を喰らい続ける稲妻を甘んじて受け、膝をつくしか他になかった。
抵抗の手段を奪い縫い付けにした猗窩座に、黒死牟は止めを刺しはしなかった。
封殺を決めた時点でどちらに勝者の軍配が上がるかに異論を挟む余地はないにしても。
頸を落とし、血肉を取り込んで消滅させる、殺す終わりを選ばず生殺しで放置するというのは、らしくもない。
当然、そこには理由がある。鎧を脱ぎ捨て身の着に戻った黒死牟は、我が手をじっと見つめた。
刀を握るに相応しい筋を纏った右腕が、末期の老人も同然に痩せ細っていた。根が死んだ枯れ木の幹と大差ない。
意思を込めて気合を入れるとすぐに膨れ上がり事なきを得たが、今までなかった消耗の仕方だった。
腕のみならず、全身に気怠さがつきまとう。呼吸が深くなり、腹の底に鉛が溜まる。
鬼には滅多に訪れない、燃料切れの兆候だ。
鞘に収めた刀に目を移す。過剰かつ急激な生命の及奪。妖刀に相応しい暴食ぶり。
こんなじゃじゃ馬を苦もなく使いこなしていた大侍に、今になって鬱陶しさ以外の念を抱いてしまうくらいには。
新たに開帳した型も楽な運用ではない。
鎧という形で固定化し、連続で使用するのは、効果は大でも燃費の面でもまた大だった。
陽の残り火の心臓がなければ長く続けられるものではない。以前なら、使おうともしなかったろうが。
新型の能力と武器の併用は、初手故の見誤りで調整を余儀なくされた。
無計画に濫用しては途中で息切れしかねない。力の激増が判断にブレを生んでいる。猗窩座を仕留める絶好の機会の見送りは、自戒の時間も込めていた。
「それで……今の呼び名は……何だ……」
「済まない。こう呼んだ方がすぐ何なのか気づきそうだと思って、ついな」
「助けが要るよう……見えていたか……」
「お前のマスターが言ってきてくれたんだ。おでんさんが渡すよう預けたなら、きっと必要になるって」
「初めまして、だな。幽谷さんから話は聞いてるかか?」
「聞かされてる……。同盟……方舟……私の預かり知らぬ場で……下らぬ企みを立てているのだろう……」
重厚な声。威厳すらある様。
アシュレイの想像より二段増しに強壮な佇まいで、血の匂いの染み付いた恐るべき人外の様相だった。
人食いの鬼。強さを求める剣鬼。マスターの霧子以外に先んじて接触していたセイバー・武蔵とアーチャー・メロウリンクの見立て通り。
にちかが見れば『完全に敵のボスキャラの顔じゃないですかー!』と、アシュレイの知識から外れた例えを持ち出していたかもしれない。
ただアシュレイ個人の所感で言わせれば、今こうして対面しても、そこまで悪印象を受ける感じはしない。
面持ちこそ異形で、消し切れない血臭を漂わせているが。
軍人時代から外交官までの遍歴で見てきた殺人者、破綻者と同じ目は、していなかったから。
他の面々はともかく、霧子が頑張って擁護しようと言葉を尽くしてくれたのも大きかった。
人じゃなくて、悪いことをしてきたけど、ここではそうしないで、これから生きようと頑張ってる、誰かの兄だと。
そも、主従仲が悪い組み合わせがこの局面まで生きていられる道理もない。
見込み違いではなく、僅かな期間で人が変わるほど大きな交流があったのだろうと。
そしてその一角を占めるのが、彼女であるのなら。
生前の所業という色眼鏡をかけなければ、2人には独特ながら信頼が紡がれているとアシュレイは判断した。
「アイさん……!」
「霧子さん……あのね、あのねっ……!」
その霧子は桜並木の下で、小さな友人と再会を噛み締めていたところだ。
粛清を恐れて鬼ヶ島に隠れ潜み、半死半生だった皮下を見逃して、唯一知る相手の武蔵に保護されていた葉桜の最後の生き残り、アイ。
犬の耳と尾を生やした黒毛の幼子は、それこそ本当の犬の仕草で霧子の胸で丸くなり、霧子も躊躇なく受け入れ寂しさを和らげようと肩を擦っていた。
「………………」
霧子へと見やる黒死牟。
抱擁し合う子女の睦ましさに六の視線を細めるのは、微笑ましさの為ではない。
足音にどこか苛立ちも含ませて歩き、2人の間に不躾に割って入った。
「あ……セイバーさん……」
近づいた黒死牟に気づいて霧子が振り返り、いつものように視線を合わす。
鬼の形相に怯えたアイは霧子の背中を盾にした。
「……………決めたぞ」
唐突な、謎の決意。
要領を得ない端的な言葉。相手に理解してもらわず、思ったことだけを思わずに言う子供の仕草。
霧子は待った。疑問を浮かべず、彼が次の言葉を発するのを、静かに。
「今以て……幸福の意味も、己が生まれた価値も解せぬ……。
罪を見たところで……今更贖えるはずもなし……奪った命が還るわけでもない……。
彼奴らが掲げる航海に手を貸すことが清算になるとは……とても思えぬ……」
空は青く。
鳥は歌う。
陽は高い。
澄み渡る清浄な世界は、鬼という生き物を受け入れず否定する。
「心臓を差し出して、勝手に逝った縁壱も……。
荒らすだけ荒らし、刀だけ置いて行った光月も……。
こうして今も、私に罪を突きつける……お前も……。
変わらず忌々しく……憎らしい……」
託されて。
任せられて。
委ねられて。
奪い取るのではなく他者から多くを授けられるようになっても、自身を肯定できない。
目指した存在になれなかった彼は、価値のない自分が生き続ける事に耐えられない。
ただ、それでも。
意味も価値も使命もないとしても、やりたい事だけは、芽生えるらしい。
「私を、見ていろ」
霧子の瞳が、虹彩に揺れた。
「これより始まる戦い……私の劫を、私の流す血を、私の齎す勝利を、その瞳に焼き付けろ。
一時の胡蝶の夢に過ぎない我が生涯を……その魂に刻み込め。
出来ないというのであれば……その首を貰い受ける」
それは侍が戦う理由にするには、余りにも矮小過ぎるが。
一騎のサーヴァントとしても、マスターを貶める悪意を含んですらいて。
鬼の心を知りたいと迫る愚かな娘に。
怪物の幸福を願う哀れな娘に。
血に濡れた我が生、死を撒き散らす無様な道程を。
忘れがたい記憶として、望み通りに見せてやると。
悪魔の取引にしか思えないのに、罵りに続いた声は何故か穏やかですらあった。
斬首の末路は訪れないと。最後まで、お前は変わらぬ目と顔で見続けていると、信じているように。
「その儀を以て……我らの契約を満了とする。
さすれば我が名に懸け……誓いを受けるものとしよう」
──────そう。
自分に価値がないのなら。
誰かの為に、剣を取ればいい。
「─────はい。わたしは、見ています。
最後におやすみするまで一緒に……セイバーさんのこと……これからも見ています……!」
花咲く笑顔。
目尻に涙を滲ませすらして霧子は応える。
その顔に、やはり胸を掻き毟られる煩わしさを確かに懐きつつ、黒死牟は無言で頷いた。
──────こうして、誓いは結ばれた。
終幕まで残りながら、比翼を受け入れずに足並みの揃わなかったマスターとサーヴァントが、漸く互いの合意と契約を交わし合う。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯を巡る戦いに、いま最後の一組が真の意味で参戦を果たした瞬間だった。
■
「黒死、牟……!」
奈落の壁をよじ登って這い上がった鬼のような、怨嗟と執念に満ちた声だった。
傷口から絶えず斬撃を放出される紫閃に晒され屈していた猗窩座が、二の足で身を起こす。
胸の亀裂は消えていた。
傷跡の完治が不可能と見た猗窩座は、塞ぐのではなく移し替える方法に転換した。
起点になる胸に入った痕を、細胞を震わせた覇気で強引に自切し捨てるという、鬼の特性を最大限に活かした生存戦略。
根本が途切れれば、細かな枝葉は自然に再生された。
呼吸の機能は必要ないのに、途絶えぬ筈の命脈が断たれかけた焦りが息を荒げさせる。
斬撃に全身が呑まれ、一瞬で細胞を残らず斬り裂かれていれば、無尽の肉体とて潰されてたやもしれぬ。
「……まだだ……………」
憔悴に掠れた喉から漏れる、修羅の声。
「まだ、終わらない……」
掲げた拳に、呪力が纏う。
屈んだ半身に、覇気が集う。
数を数えるのも馬鹿らしい数の刃に刻まれ続け、なおも萎えぬ闘志。
勝利───聖杯の獲得のみが、マスターとサーヴァントを止められる。
分不相応な奇跡を遂げる為。無様な男に餞の徒花を手向ける為。
始祖すら超越した不死の体、心が折れぬ限り滅びの摂理は弾かれる。
千度万回倒れようが億回の先に立ってさえいれば勝者なのだと、特権を恥じず行使しようとして……前に出した足が力なく折れ曲がった。
「─────────?」
よもやここで足を踏み外すとは想定すらしていなかったのか。
傾いた猗窩座の体は呆気なく重力に負け、両手で地面を着いた。
異常はそれだけに留まらない。体の至る箇所に罅が入り、肉体の構成を解いていく。
人間を想起させる黒髪は上弦の朱に、そこからやせ衰えた老人の白へと脱色した。
外見のみならず、内部の変化もまた凄まじかった。腕が上がらない。足に力を込められない。
鬼の時代、人間の時代でも味わった事のない、強烈な疲労感に止めようもなく縛り付けられた。
不滅の化け物など存在しない。形あるものは必ず死ぬ。
そう下される、神託のように。
「何だこれは……っまさか……!」
急激な能力減衰。
機能しない再生。
原因を察した猗窩座は蹲る五体に活を入れ、不可視の鎖を引きちぎって跳躍。戦場を離脱しようとする。
「───行かせはしない」
太陽を背に飛来した、銀炎を纏った刀に弾き返される。
アシュレイの剣閃によって、元いた位置に落とされる猗窩座。
即ち───アシュレイが追いつき、勢いで押し勝てるほど、猗窩座の身体能力が低下しているのを意味する。
「横合いから掻っ攫う真似をして悪いな。因縁ある間柄だと見受けるが」
「既に……格付けは済ませてある……。何をする気か知らぬが……用向きがあるのなら……急ぐことだ」
「ああ……分かってる」
同じ世界の同胞だからと引導を渡すだけのこだわりは持たないのか、関心を持たず黒死牟は顔を背けた。
次いで視線は、黒死牟の傍の霧子に移った。
「これで、いいのか? 君もまだ彼と……」
「はい……ちゃんと話し合いましたから……。
摩美々ちゃんとにちかちゃんに……先にお話させてあげたいって……」
憂慮するアシュレイにも、霧子は迷わず。前もって決めた役割に準ずると言う。
「セイバーさん……わたしを、梨花ちゃんのところに……お願いします」
念話で粗方の内容は伝えていたのか。顔を顰めながらも黒死牟は霧子の意に従った。
しがみついたままのアイもついでに脇に抱えて跳躍。ビルとビルの間を抜けて妖気漂う品川区の方角へ消えて行った。
2人が増え2人が去り、残るも2人。
遅れに遅れて契約を交わした主従を見送って、アシュレイは漸く男と相対した。
「来るなら受けて立つが、もう少し待つつもりはないか。すぐ近くにいるんだろう、彼」
「退け……!」
心臓への正拳突き。
問答無用、語らず殺すの初撃を刀の腹でなんとか受ける。
やはり、出力が落ちている。
ここまで来る途中で感じた、アシュレイの知る強者に負けず劣らずの、大気を揺るがす覇気は見る影もなく萎んでいる。
自慢にもならないが直接戦闘に長けたサーヴァントじゃないのだ。完全に優位とは言い難いが、いつぞやのように防戦一方とはいかないだろう。
五連の拳打を刀、炎、フェイントを織り交ぜて凌ぎ、六撃目を止めた威力を利用して間合いを図る。
必殺の距離を狙ってではなく、言葉を尽くす余裕が欲しかった。
「マスターからの魔力供給は距離によっても増減する場合があるらしい。近ければ増え、遠ければ減る。
彼は既に供給は愚か契約すら切れかねない状態の筈だ。そして場所が特定できるなら、都市で隠れ住む場所を見つけるのにあいつほど適した英霊はいない」
肯定も否定も返ってこないが、誤ってるとは思わない。
現に猗窩座は異常を察知した時すぐに離脱しようとした。遠方で視界を共有せず、直に届く距離で見届けている。それ以外の余裕がないのだ。
彼本人にとっても、彼女達にとっても、悲しい姿には違いない。
故にこそと躊躇う必要がなくなったのなら、この時こそが、千載一遇の機会(アピール)。道端の脇で始まる舞台(ステージ)。
「人質とか、本丸狙いとか、そういうつもりがないのは知ってるだろ。
俺はマスターの願いに沿うだけだ。
彼女達にできること、まだだと諦めず狂い哭く、彼の教え子の歌を届けるのをな」
◆
路地裏の光の届かない地面にボロ屑が転がっていた。
いや、そのようにしか見えない人間大の物体が、投棄された人形さながらに地面に横たえられていた。
血の通ってない蒼白の肌は、生きた人間と見なすには「生物」の区分を広げすぎだ。
「───────……………」
虫の息、だった。
虫の呼吸音が外で聞こえてくる筈がない。それと同じだ。
冷たいアスファルトに仰臥しても、自分の心音をはっきりと聞き取れない。
脈も鼓動も遠い。生きてるという実感が持てない。幽霊と言われれば、そうかと納得してしまうかもしれない。
あの日からの自分は、死んだことに気づかず生前の行為を繰り返す、ホラーに出てきそうな幽霊そのものだったから。
「───────……………」
───サーヴァントは契約したマスターからの魔力供給で実体を保つ。
天下無双だろうと一騎当千だろうと、魔力に滞りが出れば能力は一律下降する。
それを補う手段が魂喰いであり、
プロデューサーも猗窩座に指示を与え、戦闘の備蓄を貯めさせていった。
逆に、如何に潤沢な魔力を蓄えようとも、マスターなきサーヴァントは現界を保てないのだ。
マスターは要石。幽体に過ぎないサーヴァントを現世に留める。
魔力の不足は後天的に補充の目処が立つのに比べれば、要石を定めるのはマスターの最も重視すべき役割だ。
然るに。
プロデューサーのマスターとしての役割は、失効を迫られていた。
魂の9割を捧げた捨身は、マスターに必要となる生者の判定すら曖昧にさせた。
令呪の存在もあって今まではだましだましで通過できていたのが、ある時を境にしてバランスを欠いた。
令呪の喪失。猗窩座の新生。プロデューサーの魂の損耗の進行。
ひとつでは誤魔化せても、ふたつみっつと重ねればもはや逃れる術はない。
情なぞ一切斟酌しない、情報の計算によって、界聖杯はプロデューサーにマスターの資格なしの判決を下そうとしていた。
「───────……………」
そっと息を吸い、吐くだけのことでも、じわじわと身体が消耗していくのが、擦り減りきった精神でもはっきりと実感できる。
プロデューサーは以上の事実を知らない。
知識もなく、正確に我が身を顧みれるだけの状況にない。
分かるのは、自分のせいでランサーが負けてしまうという事のみだ。
勝利を誓った筈だった。
やすやすと勝てるとは一片足りとも思わない。
生き残った相手は、才能も運も、戦いに求められるものはどれも自分を上回る傑物ばかり。
半ばで潰えて何の意味もなく死ぬのを覚悟した。
諦観。自虐。欺瞞。
何度も何度も、本当に何度も、自分の愚かさを叩きつけて、それでも勝ちたいと願った。幸福を願った。
台無しだった。
勝つ為ならどれほど搾り取っても構わない。枯れ死にしてしまっても本望だ。
唯一の仲間、道化に勝利を捧げると手を取ってくれたサーヴァントにそう言っておいて、自分のした事が巡り巡って彼の首を締めている。
自分でなければ見込みのあった勝利を、取り零した。
足を引っ張るだけの、どこまでいっても役立たず。
「───────……………でも、まだ」
終わりに等しくても。
終わりにはなっていない。
まだランサーは戦っている。
諦めず、勝利を得ようと狂い吼えている。
自分のせいでやせ細り、あれほど圧倒していた戦いぶりが、素人目ですら翳りが見えるぐらい衰弱していても、拳を振るい続けている。
相手は、自分が最期に戦う相手と見定めたライダーらしい。
なるほど、こんなところだけはよく当たる。終わらせられる話をつけてくれる相手が来てくれるとは。
「なら、やらないと」
横たえた上半身を持ち上げて、壁に手をついて立ち上がる。
ただそれだけのことに小一時間もかけたと勘違いするほど曖昧な頭で、のろのろと身を起こす。
さっきまでは首を回すこともできない、糸の切れた人形だったのに、不思議と力が戻っていた。
時間が体力を僅かにくれたのか、僥倖の所以を考える間もなく動き出す。
立っているのもおぼつかない身体を壁にもたれながら、よろめく足取りで外を目指す。
「うわ、ひっっっどい顔」
声を、聞いた。
懐かしい声。
望んでた声。
いや、声自体はもう聞いてる。電話越しに、ランサーの感覚越しに。
だがこの子が『そう』ではないと考えていても、やはり直接目の当たりにするのとは、衝撃の度合いが、違うのだ。
「休憩とか顔色とかさんざ私に言っといたあなたが、何でそんなボロボロになってるんですか。
そんなになるぐらい大事だったんですかね、そっちの私。実は同姓同名他人だったりしませんー?」
通ろうとしていた路地の外。
眩いライトを逆行に浴びて、影になった輪郭が、記憶の残日と一致する。
隣には、あとふたつの影が立っている。
ひとつは男の
シルエットをしてるらしいが、際立った特徴が見当たらず印象に乏しい。
反してもう一方は───暗がりでも、後ろ姿だけでも、すぐに判別がつく色と髪型の象徴(アイコン)で。
紫の影は近づかない。
今はまだ、先に行くべきは彼女だと、逸る気を押さえるように肩を抱いて。
先を行く翠の少女は、甲高い音を鳴らすガラスの靴じゃない、なんてこのないスニーカーで歩いてきて、彼の前で止まった。
「どうもです。久しぶり……じゃないか。あーもーややこし。
あえてですけど、ここじゃは会ってないんだし、まずは自己紹介しちゃいますね。
──────初めまして、プロデューサーさん。七草にちかです」
奈落。
ステージの下。スポットライトの届かぬ地の底。壇上に出る時を待つ場所。
ここを上がるために、ふたりがいる。
◆
【渋谷区・路地裏(アシュレイ達とさほど離れてない)/二日目・午前】
【
七草にちか(騎)@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:精神的負担(大/ちょっとずつ持ち直してる)、決意、全身に軽度の打撲と擦過傷、『ありったけの輝きで』
[令呪]:残り二画
[装備]:
[道具]:
[所持金]:高校生程度
[思考・状況]基本方針:283プロに帰ってアイドルの夢の続きを追う。
0:───どうもです。
1:アイドルに、なります。……だから、まずはあの人に会って、それを伝えて、止めます。
2:殺したり戦ったりは、したくないなぁ……
3:ライダーの案は良いと思う。
4:梨花ちゃん達、無事……って思っていいのかな。
[備考]聖杯戦争におけるロールは七草はづきの妹であり、彼女とは同居している設定となります。
【
田中摩美々@アイドルマスター シャイニーカラーズ】
[状態]:疲労(中)、ところどころ服が焦げてる、過労、メンタル減少(回復傾向)、『バベルシティ・グレイス』
[令呪]:残り一画
[装備]:なし
[道具]:白瀬咲耶の遺言(コピー)
[所持金]:現代の東京を散財しても不自由しない程度(拠出金:田中家の財力)
[思考・状況]基本方針:叶わないのなら、せめて、共犯者に。
0:まずはにちかの順番。───今は、まだ。
1:悲しみを増やさないよう、気を付ける。
2:プロデューサーと改めて話がしたい。
3:アサシンさんの方針を支持する。
4:咲耶を殺した人達を許したくない。でも、本当に許せないのはこの世界。
[備考]プロデューサー@アイドルマスターシャイニーカラーズ と同じ世界から参戦しています
※アーチャー(
メロウリンク=アリティ)と再契約を結びました。
【アーチャー(メロウリンク・アリティ)@機甲猟兵メロウリンク】
[状態]:全身にダメージ(中・ただし致命傷は一切ない)、疲労(中)、アルターエゴ・リンボへの復讐心(了)
[装備]:対ATライフル(パイルバンカーカスタム)、照準スコープなど周辺装備
[道具]:圧力鍋爆弾(数個)、火炎瓶(数個)、ワイヤー、スモーク花火、工具、ウィリアムの懐中時計(破損)
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターの意志を尊重しつつ、生き残らせる。
0:復讐は果たした。が……
1:田中摩美々は任された。
2:武装が心もとない。手榴弾や対AT地雷が欲しい。ハイペリオン、使えそうだな……
[備考]※圧力鍋爆弾、火炎瓶などは現地のホームセンターなどで入手できる材料を使用したものですが、アーチャーのスキル『機甲猟兵』により、サーヴァントにも普通の人間と同様に通用します。また、アーチャーが持ち運ぶことができる分量に限り、霊体化で隠すことができます。アシュレイ・ホライゾンの宝具(ハイペリオン)を利用した罠や武装を勘案しています。
※田中摩美々と再契約を結びました。
【プロデューサー@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:覚悟、魂への言葉による魂喪失、魔力消費(大)、疲労(大)、幻覚(一時的に収まった)、マスター権喪失の兆し。
[令呪]:全損
[装備]:なし
[道具]:リンボの護符×8枚、連絡用のガラケー(グラス・チルドレンからの支給)
[所持金]:そこそこ
[思考・状況]基本方針:"七草にちか"だけのプロデューサーとして動く。だが―――。
0:……。
1:………きっと最期に戦うのは、『彼』だ
2:次の戦いへ。どうあれ、闘わなければ。
3:もしも"七草にちか"なら、聖杯を獲ってにちかの幸せを願う。
[備考]
※プロデューサーが見ている幻覚は、GRADにおけるにちかが見たルカの幻覚と同等のものです。あくまでプロデューサーが精神的に追い詰められた産物であり、魔術的関与はありません。(現在はなりをひそめています。一時的なものかは不明)
※魂の九割を失い、令呪を全損したのが併さり、要石としてのマスターの資格を失いつつあります。
【渋谷区(中心部)/二日目・午前】
【ライダー(アシュレイ・ホライゾン)@シルヴァリオトリニティ】
[状態]:全身にダメージ(大)、疲労(大)
[装備]:アダマンタイト製の刀@シルヴァリオトリニティ
[道具]:七草にちかのスマートフォン(プロデューサーの誘拐現場および自宅を撮影したデータを保存)、ウィリアムの予備端末(Mとの連絡先、風野灯織&八宮めぐるの連絡先)、WとMとの通話録音記録、『天羽々斬』、Wの報告書(途中経過)
[所持金]:
[思考・状況]基本方針:にちかを元の居場所に戻す。
0:アイドルの願いを彼へと届かせる。今こそ。
1:今度こそ、P、梨花の元へ向かう。梨花ちゃんのセイバーを治療できるか試みたい
2:界奏での解決が見込めない場合、全員の合意の元優勝者を決め、生きている全てのマスターを生還させる。
願いを諦めきれない者には、その世界に移動し可能な限りの問題解決に尽力する。
3:界奏による界聖杯改変に必要な情報(場所及びそれを可能とする能力の情報)を得る。
4:情報収集のため他主従とは積極的に接触したい。が、危険と隣り合わせのため慎重に行動する。
5:大和とはどうにか再接触をはかりたい
6:もし、マスターが考察通りの存在だとしたら……。検証の為にも機械のアーチャー(シュヴィ)と接触したい。
[備考]
宝具『天地宇宙の航海記、描かれるは灰と光の境界線(Calling Sphere Bringer)』は、にちかがマスターの場合令呪三画を使用することでようやく短時間の行使が可能と推測しています。
アルターエゴ(
蘆屋道満)の式神と接触、その存在を知りました。
割れた子供達(グラス・チルドレン)の概要について聞きました。
七草にちか(騎)に対して、彼女の原型は
NPCなのではないかという仮説を立てました。真実については後続にお任せします。
星辰光「月照恋歌、渚に雨の降る如く・銀奏之型(Mk-Rain Artemis)」を発現しました。
宝具『初歩的なことだ、友よ』について聞きました。他にもWから情報を得ているかどうかは後続に任せます。
ヘリオスの現界及び再度の表出化は不可能です。奇跡はもう二度と起こりません。
【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:新生、覇気による残留ダメージ(程度不明)、消耗(大)、全能力低下、再生力低下、白髪化
[装備]:なし
[道具]:なし
[所持金]:なし
[思考・状況]基本方針:マスターを聖杯戦争に優勝させる。自分達の勝利は――――。
0:殺す
[備考]
※武装色の覇気に覚醒しました。呪力に合わせて纏うことも可能となっています
※頸の弱点を克服し、新生しました。今の猗窩座はより
鬼舞辻無惨に近い存在です。
※プロデューサーとの契約のパスが不全になったことで各能力が大幅に低下しています。
【幽谷霧子@アイドルマスターシャイニーカラーズ】
[状態]:健康、お日さま、『バベルシティ・グレイス』、アイさんといっしょ
[令呪]:残り二画
[装備]:包帯
[道具]:咲耶の遺書、携帯(破損)、包帯・医薬品(おでん縁壱から分けて貰った)、手作りの笛、恋鐘印のおにぎりとお茶(方舟メンバー分)
[所持金]:アイドルとしての蓄えあり。TVにも出る機会の多い売れっ子なのでそこそこある。
[思考・状況]基本方針:もういない人と、まだ生きている人と、『生きたい人』の願いに向き合いながら、生き残る。
0:梨花ちゃんに、会いに行きます。
1:プロデューサーさんの、お祈りを……聞きたい……
2:セイバーさんのこと……見ています……。
3:界聖杯さんの……願いは……。
[備考]※皮下医院の病院寮で暮らしています。
※"SHHisがW.I.N.G.に優勝した世界"からの参戦です。いわゆる公式に近い。
はづきさんは健在ですし、プロデューサーも現役です。
※メロウリンクが把握している限りの本戦一日目から二日目朝までの話を聞きました。
【セイバー(黒死牟)@鬼滅の刃】
[状態]:武装色習得、融陽、陽光克服、疲労(大)、誓い
[装備]:虚哭神去、『閻魔』@ONE PIECE
[道具]:
[所持金]:なし
[思考・状況]
基本方針:勝利を、見せる。
0:罪は見据えた。然らば戦うのみ。
1:お前達が嫌いだ。それは変わらぬ。
2:死んだ後になって……余計な世話を……。
[備考]
※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。
記憶・精神の共有は黒死牟の方から拒否しています。
※武装色の覇気を習得しました。
※陽光を克服しました。感覚器が常態より鋭敏になっています。他にも変化が現れている可能性があります。
※宝具『月蝕日焦』が使用不可能になりました。
時系列順
投下順
最終更新:2023年08月31日 00:14