蝋花のクウェル

風が吹き、クウェルの長い前髪が流れて、その一瞬だけ片目が覗く。
大きく丸い虹彩が、銀色に発光していることが分かった。

……彼女は、他の二十九官と同様の人間(ミニア)である。少なくとも、外見上と戸籍においてはそうだ。

登場話

第一部

  • 「間章 その1」
  • 「間章 その2」

第二部

  • 「第一試合 その1」
  • 「第一試合 その2」
  • 「第一試合 その4」
  • 「黄都 その12」
  • 「第八試合 その4」
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第三部

  • 「第九試合 その1」
  • 「第九試合 その2」
  • 「第九試合 その3」

略歴

  • 読み:ろうかのクウェル
  • 種族:人間(ミニア)

黄都第十将。勇者候補として無尽無流のサイアノプを擁立した。

その振る舞い・外観からは想像しずらいのだが、黄都二十九官中(ロスクレイ以外では)最高の個人戦力であるという。
黄都二十九官に名を連ねるのも、その傑出した戦闘力(+α、後述)を買われての事である。

特殊な事情(後述)もあって、第七卿先触れのフリンスダの現場補佐という役割も持つ。

人物

内気で、ひたすらオドオドとした性格。
「ずっと強さしかなくて……それ以外は全然駄目で」とは本人の弁。
『蚊の鳴くような、あるいは末期の病人のような、か細い声』『周囲を囲む民と極力視線を合わせぬよう、厚い前髪に隠した瞳を更に伏せ続けて』と、ひたすら自信の無さそうな振る舞いが目立つ。カワイイヤッター!

戦闘力には相応の自信を持っているようで、「純粋な強さ」を信奉する誇り高い精神も持ち合わせる。
下等種族の粘獣(ウーズ)であるサイアノプを擁立したのも、純粋にその強さと気高い精神を買った故の事。
熱のこもった声で「真の強さ」を語ったり、身内に対して「殺されないって思ってます? 困ったな……」など物騒極まりない冗談を言い放ったりと、ほのかに戦闘狂の気すら感じる。
ちなみに上記の言葉を受けたミジアル君は半殺しと言って差し支えない大けがを負った。
ただし、その武を尊ぶ誇り高い性格は転じて、融通が利かず頑固で暴力によって自分の意を通すという選択に走りやすいという、軍集団にとっては地雷にもなりかねない難儀な存在でもある。

外見

“顔の半分が隠れそうな”長い前髪が特徴的。前髪系カワイイヤッタ-!(二度目)
前髪の隙間からは大きな銀色の瞳が覗く。伏せてるかせわしなく動くかの二択。

すらりとした中背の、均整の取れた体つき。なので「小動物系」とはちょっと違う。
年齢は不明ながら、二十九官最年少のミジアルくん(16)に「クウェルちゃん」と呼ばれている。
細かい説明は無いものの、成人には見えづらいちょっと幼い感じの容姿なのだろう。

能力

めっちゃ強い。
その華奢な姿に見合わない『馬ごと切断しかねない』巨大な銀の長柄戦斧を得物とする。
並の女性ではまず取り廻せない長物だが、体つきに似合わぬ 異常膂力 を誇る彼女にとって問題ではない
力だけでなく技量も相当で、敵陣への単身突撃を成功させる武闘派・鉄貫羽影のミジアル(16)を相手に「手加減しながら」馬車も使えない重症を負わせるほど。

『絶対なるロスクレイを除く黄都二十九官の内、最強の個人戦力とされる』とは地の文の言葉。
主君を前にした準修羅級の強者ですら『二人ならば負けはない』という評価をしている。

全般にオドオドとした彼女ではあるが、サイアノプの紹介では『強いですよ。私の全力より、ずっと』という表現を使っている。


+ …もしかして……非公式Wikiだからって、ネタバレないって思ってます? 困ったな……

「第十将……! そんな……血人(ダンピール)までが……」


  • 種族:血人(ダンピール)


彼女は厳密には人間(ミニア)ではない。
血鬼(ヴァンパイア)の変種・血人(ダンピール) という種族にあたる。

通常、血鬼(ヴァンパイア)の病原体を保有した親( 血鬼(ヴァンパイア)屍人/従鬼(ドローン コープス) )から生まれる子は誕生段階で体が作り替えられ血鬼(ヴァンパイア)となる。
しかし稀にこの病原体が『無害化』し、身体構造そのまま『感染力のない血鬼(ヴァンパイア)』が生まれる。これが 血人(ダンピール)
無害なため、血人(ダンピール)は戸籍上では人間(ミニア)として扱われる。

メリットは伝染しない事に留まらない。
無害化した病原すなわちワクチンであるため、血人(ダンピール)血鬼(ヴァンパイア)に対する抗体を持つ事になる。「ものすごく高度な病原体」である血鬼(ヴァンパイア)にとっては、医者と並ぶ天敵である。
結果として、血人(ダンピール)は『高い身体能力』と『相手を魅了する姿形』に加え血鬼(ヴァンパイア)特攻をも持つ事になる。流石は「全員がチート」の小説…。
事実、六合上覧第八試合中に実施された屍鬼(ドローン)従鬼(コープス))の一斉捜査においては、切り札として医療部隊のフリンズダと行動を共にしていた。

一見良い事ばかりに思える血人(ダンピール)だが、常に 体が完璧なバランスに保たれて しまうため、いくら鍛えても筋肉が付かない』という欠点もある。細菌の働き故に融通が利かないらしい。まあ、普通は問題にならないだろうけど。

クウェルは自身の種族を『限界を定める枷』と考えていた。
むしろ天性の能力である故に「自分の力ではない」と感じるらしく、自己評価を下げる一因にすらなっている。
それ故に、肉体的には脆弱な粘獣(ウーズ)でありながら鍛錬によって修羅に至った無尽無流のサイアノプを尊敬しており、またサイアノプ本人も彼女に思う所があるからか自身の技を教えており、微笑ましい師弟関係となっている。
サイアノプから学んだ技は、肉体の強度ではなく技術である為にクウェルも順当に強くなっているようだ。
+ それはっ、Ⅶ巻の重大なネタバレじゃないんですか……
そんな敬愛するサイアノプが全力で戦えるよう、試合会場で事前工作を行おうとする紫紺の泡のツツリを止めるべく独断で交渉に赴く。
正々堂々と戦わせるよう訴えるクウェルとルクノカの討滅を優先するツツリとの交渉は決裂。
実力行使で止めるべくあと一歩の所まで迫るが乱入した星図のロムゾにあえなく敗北し惨殺されてしまう。
本来ならば殺す必要までは無かったものの、六合上覧を取り巻く諸々の理由から「殺して損は無い」というだけの理由で殺されてしまった。
先述の血人(ダンピール)は実の所従鬼(コープス) 治療薬」の貴重な素材であり血人(ダンピール)の骨髄一人分でざっと2000人分の薬が作れるらしい。
この件がなくとも、いずれ人知れず消される計画すらあったのだという、正に非業の最後であった。
+ Ⅸ巻のネタバレじゃないって、知っていたんだね(書籍版Ⅷ巻重大ネタバレ注意)
その躰は後に、とある人物新たな肢体として使用される事となる……。



余談

『相手を魅了する姿形』の例であるリナリスしつこいくらいの美女描写該当項目参照)がなされている事を考えると、同様の変異をしたクウェルも大概に美人さんだと思われる。

また、一問一答によれば婚約者が存在する*1


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最終更新:2025年04月27日 01:22

*1 貴族の格を与えるために政治と家の意向で婚約を決められた貴族の子息。ガチ一目惚れ状態らしいが、クウェル側からはその境遇を不憫に思われている模様。