106 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:19 [ qUq6iUEM ]
「怪我人だ!早く医務室へ!」
何でこんなことになってしまったのか。
俺の手は血で真っ赤に染まっていた。目の前の部下の身体を今さっきまで流れていた血で。
かすかに震えているこの手。
なぜ、あんなことをしたのか。
目の前の船から真っ赤な炎の玉がこちらに飛び込んでくる。
「魔法」
イッタイナンナンダコレハ。
俺は慌てて身を伏せ、甲板で激しい火柱が巻き起こった。
107 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:19 [ qUq6iUEM ]
「つまり、あの船はアジェント王国所有の・・・」
「はい、奴隷商船です。といっても実際はラーヴィナ候が管理されてますが。」
思わず宮野と顔を見合わせる、まさか奴隷を国家が売買しているとは。
確かに木造船などの文明レベルを見れば理性では分からなくも無いのだが。
「どうしました?別に何の変哲も無い奴隷商船です。多少、いや、かなりの武装が施されていますが。」
「いや、そうではなくてね・・・。」
「私達の国では奴隷は認められていないのですよ。」
「え?」
狩野の言葉にセフェティナは目を丸くする。
「じゃあどうやって国家が成り立っているのですか?」
「私達を含め全ての国民が平等に人権を持ち、平等に勤労の義務を負っています。
そして彼らの納める税によって国が運営されているのです。」
108 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:20 [ qUq6iUEM ]
「・・・よく分からないのですが、国民全てが平等なんて・・・きっと素晴らしい王によって治められているのでしょうね。」
「いやいや、我が国の王・・・天皇と言いますが、は政治に関わる事を禁止されているのですよ。」
「は?」
間の抜けた声を出すセフェティナを狩野は娘を見るような目で見つめた。
彼女は元気だろうか、大学生活を謳歌していて最近会う暇も無かったが、もし帰ったらこの話をたっぷりと聞かせてやろう。
そう思う。
「さ、この話は又今度にしましょう。そろそろこちらも交渉の準備に入らなければなりません。
あなたも漂流している時に来ていた服を乾かしておいたので着替えて下さい。」
「あ、はい。わかりました。」
隊員に誘導されていくセフェティナの背中を見ながら狩野は基地と通信をつなげた。
109 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:24 [ qUq6iUEM ]
「・・・今、なんとおっしゃいました?」
「交渉の正使として福地殿を任命する、と言ったのだ。…気持ちは分かる。奴の傲慢さは有名だからな。だが、我慢してくれ。」
狩野は先ほどの暖かい空気から突然氷の張った湖に叩き落された気分であった。
「…はい、それがご命令ならば従います。」
「すまないな、軍人が政治的交渉をするわけにはいかないのだよ、この国ではな・・・。」
狩野が振り返るとやっと健康状態も回復しかと思われる福地が立っていた。
通信を福地に渡す。
「・・・ウム、どうした?・・・ああ、そうか。ああ、任せておけ。」
そう短く済ますと福地は通信を切った。
「狩野君はもう聞いているようだな、まあ、そういうことだ。補佐を頼むよ、…まぁ、いらないとは思うがね。」
いつもの人を見下した、嫌味ったらしい顔でこちらを見る。
もし自衛隊員ならば宮野から鉄拳が飛んでいるところなのだが、そういうわけには行かない。相手は文民様である。
「どうした、不満そうな顔をしているが?・・・軍人などに外交を任せられるわけが無いだろう、少なくとも君よりはこの仕事に精通しているつもりだが?」
「はい。」
狩野は答え、不満を顔にあらわにしていた隊員をチラリと見た。隊員はあわてて顔を取り繕う。狩野は申し訳なさそうに笑った。
「それで、遭遇は何分後だ?」
「はい、早くて5分前後と思われます。」
「そうか、では早めに段取りを決めておくとするかな。」
仮にも補佐役である自分に相談もせずにさっさと行ってしまう福地を狩野は不安な面持ちで見つめていた。
「怪我人だ!早く医務室へ!」
何でこんなことになってしまったのか。
俺の手は血で真っ赤に染まっていた。目の前の部下の身体を今さっきまで流れていた血で。
かすかに震えているこの手。
なぜ、あんなことをしたのか。
目の前の船から真っ赤な炎の玉がこちらに飛び込んでくる。
「魔法」
イッタイナンナンダコレハ。
俺は慌てて身を伏せ、甲板で激しい火柱が巻き起こった。
107 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:19 [ qUq6iUEM ]
「つまり、あの船はアジェント王国所有の・・・」
「はい、奴隷商船です。といっても実際はラーヴィナ候が管理されてますが。」
思わず宮野と顔を見合わせる、まさか奴隷を国家が売買しているとは。
確かに木造船などの文明レベルを見れば理性では分からなくも無いのだが。
「どうしました?別に何の変哲も無い奴隷商船です。多少、いや、かなりの武装が施されていますが。」
「いや、そうではなくてね・・・。」
「私達の国では奴隷は認められていないのですよ。」
「え?」
狩野の言葉にセフェティナは目を丸くする。
「じゃあどうやって国家が成り立っているのですか?」
「私達を含め全ての国民が平等に人権を持ち、平等に勤労の義務を負っています。
そして彼らの納める税によって国が運営されているのです。」
108 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:20 [ qUq6iUEM ]
「・・・よく分からないのですが、国民全てが平等なんて・・・きっと素晴らしい王によって治められているのでしょうね。」
「いやいや、我が国の王・・・天皇と言いますが、は政治に関わる事を禁止されているのですよ。」
「は?」
間の抜けた声を出すセフェティナを狩野は娘を見るような目で見つめた。
彼女は元気だろうか、大学生活を謳歌していて最近会う暇も無かったが、もし帰ったらこの話をたっぷりと聞かせてやろう。
そう思う。
「さ、この話は又今度にしましょう。そろそろこちらも交渉の準備に入らなければなりません。
あなたも漂流している時に来ていた服を乾かしておいたので着替えて下さい。」
「あ、はい。わかりました。」
隊員に誘導されていくセフェティナの背中を見ながら狩野は基地と通信をつなげた。
109 名前:F猿 投稿日: 2004/07/03(土) 20:24 [ qUq6iUEM ]
「・・・今、なんとおっしゃいました?」
「交渉の正使として福地殿を任命する、と言ったのだ。…気持ちは分かる。奴の傲慢さは有名だからな。だが、我慢してくれ。」
狩野は先ほどの暖かい空気から突然氷の張った湖に叩き落された気分であった。
「…はい、それがご命令ならば従います。」
「すまないな、軍人が政治的交渉をするわけにはいかないのだよ、この国ではな・・・。」
狩野が振り返るとやっと健康状態も回復しかと思われる福地が立っていた。
通信を福地に渡す。
「・・・ウム、どうした?・・・ああ、そうか。ああ、任せておけ。」
そう短く済ますと福地は通信を切った。
「狩野君はもう聞いているようだな、まあ、そういうことだ。補佐を頼むよ、…まぁ、いらないとは思うがね。」
いつもの人を見下した、嫌味ったらしい顔でこちらを見る。
もし自衛隊員ならば宮野から鉄拳が飛んでいるところなのだが、そういうわけには行かない。相手は文民様である。
「どうした、不満そうな顔をしているが?・・・軍人などに外交を任せられるわけが無いだろう、少なくとも君よりはこの仕事に精通しているつもりだが?」
「はい。」
狩野は答え、不満を顔にあらわにしていた隊員をチラリと見た。隊員はあわてて顔を取り繕う。狩野は申し訳なさそうに笑った。
「それで、遭遇は何分後だ?」
「はい、早くて5分前後と思われます。」
「そうか、では早めに段取りを決めておくとするかな。」
仮にも補佐役である自分に相談もせずにさっさと行ってしまう福地を狩野は不安な面持ちで見つめていた。