自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 19

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235 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/09(月) 20:45 [ qUq6iUEM ]
    「えーと、ここはデルタでよかったんだよな?」
    「あん?適当でいいだろ。俺達新米に多少のミスで大惨事が起こるような仕事はまわってこねぇよ。」
    「ハハ、それもそうだな。」
    「それにしても変な指令だよな、マナ集積の魔方陣を描いてそこでひたすらマナを集めろなんて、降伏したばっかなのになんかでっかい魔法でもぶっ放すつもりかねぇ。」
    「んー、ま、俺達が気にすることじゃねぇだろ。」
    「それもそうだな。」
    「ハハハハハ。」
    去年魔術学校を卒業した新米魔法使い達は談笑しながら赤黒い液体で魔方陣を描いていた。
    その近くにはその赤黒い液体の供給源だったモノ、奴隷が転がっている。
    「しっかし、驚いたなー。ジファン様が死んじまうなんて。今この船はゼナ様が指揮取ってんだろ?」
    「あー、まぁあんな脂ぎったオヤジよりああいう美人の方が指揮官としては良いよな。」
    「ああ、これが成功したら追加給金を出してくれるって言ってたし。」
    給金と言って魔法使いの一人が顔をしかめたフリをした。
    「金なんて信用のならないもんいくらあっても意味無いわ!・・・なーんてね。」
    「ハハハ、お前何年前の人間だよ。」
    彼らはをまったく知らなかった。自分の今していることの意味を。
    そして自分の命がもう間も無く炎に消えることも。

236 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/09(月) 20:45 [ qUq6iUEM ]
    「フフ・・・。」
    ゼナは紅く光る魔方陣の中心に立って怪しく、かつ妖艶に微笑を浮かべていた。
    控えの魔術師はその姿に見惚れて呆然と立っていた。
    その浅黒い肌は彼女の精神力に反応したマナの光によって照らされ、その桃色の髪もまた
    美しく艶やかに光っていた。
    彼女は馬鹿ではない、アルクアイが自分に下した命令がどういうものかは分かっている。
    しかし死への恐怖を上回る大きな歓喜が彼女を支配していた。
    間も無く自分は死ぬ、しかしそれがアルクアイの危機を救うのだ。これ以上の喜びは彼女にはなかった。

    彼女のこれから使う魔法は自爆の魔法、それは大体においては戦に破れた王家などが使っていた、これまでの歴史でも数える程しか使われていない魔法。
    それが体験できる、という知識的欲望も彼女の歓喜の原因の一つではあったが。
    幾人もの魔法使いがマナを術者の周りに集め、そのマナを熱系呪文の要領で術者の精神力全てを使い灼熱化させる。
    マナへの干渉は自分の身体に近いところであればあるほど強く、そして早く行える。
    だからこそ自爆と言う手段は高い破壊力と高い奇襲性を兼ね備えていた。

237 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/09(月) 20:46 [ qUq6iUEM ]
    「敵の砲撃が止みました。」
    観測員が言った。
    確かに言葉通りさきほどまでひっきりなしに飛んできた炎はまったくこちらに来なくなっていた。
    「むう、こちらの警告を聞いた、ということか?」
    「おそらく。映像によれば後ろの三隻も動きを止め、沈黙しています。」
    あまりにも不自然な攻撃中止には鋭い狩野や青島でなくとも首をかしげた。
    「降伏の合図がなくてはな・・・。」
    狩野は射撃中止を指示しここ数日で少し後退した気がする前髪をかきあげた。
    「すいません、あの人たちの船は青い布をはためかせていませんか?」
    セフェティナが狩野に話しかける。
    「・・・青い布か・・・確認できるか?」
    「はい、あります。先程まではなかったものですが・・・。」
    セフェティナはそれを聞いて安堵の表情を浮かべた。
    「それは降伏の合図なのです。」
    一部を除く全員がその表情を明るくした。自衛隊は守る軍隊なのだ。
    無意味な戦闘は無いに限る。

238 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/08/09(月) 20:47 [ qUq6iUEM ]
    しかしその雰囲気をぶち壊した人物が居た。
    それは先程表情を明るくしなかった一部の人物、レーダー観測員だった。
    「おい!なにが後ろの三隻も動きを止めただ!加速してこの海域から離れようとしているぞ!」
    「な?何かの間違いではないのか?現に映像では未だに停止しているように見えるぞ!」
    「間違いなわけないだろ!でなきゃレーダーが故障しているってことだ。」
    狩野はここでセフェティナに聞いた。
    そしてそこで決定的な間違いを犯してしまった。
    「セフェティナさん、こちらのレーダー・・・まあ緻密なからくりと考えてもらって結構ですが、を狂わせるような魔法・・・はありますか?」
    「・・・え、わ、わかりません。けどもしかしたら今までに放たれた魔法にそう言う作用があったのかもしれません。」
    ここで「幻を見せる魔法はあるのですか?」と聞いておけば狩野はアルクアイの計略を見破れていた。
    しかし、その問いをしなかった今、狩野はこの現象はレーダーの故障だと判断してしまった。
    「とりあえず、先程乗り込んだ船に横付けして制圧しよう。もちろん、この降伏が見せ掛けだった時のために全員武装してだ。」
    何倍も大きさの違う船、圧倒的な人員の差。圧倒的な兵器。
    そこに狩野に油断があったのかもしれない。
    彼はそれらの兵力の差がまったく通用しない戦い方を忘れていた。

     2000年10月12日、世界最強の防御力を誇ると思われていたイージス艦「コール」も沈んだ戦法。

    自爆を。

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