434 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:04 [ imAIk9NE ]
時間は少し前に戻る
「よしっ、こんなものかな。」
もう傾き始めている日を眺めながら青島は言った。
朝からこの情報交換をしているのだからおよそ8時間喋り続けていた事になる。
いくら鍛えこんでいる彼でも喋る訓練はなされていない。さすがにもう疲れてしまった。
「ねぇ、セフェティナさん。」
「・・・・。」
セフェティナの返事が無い、青島がパソコンから顔を挙げた。首を垂れ、全く動かない。
「セフェティナさん?」
青島が顔を覗き込む。
「すー・・・すー・・・。」
セフェティナは寝息を立てていた、それと同時に肩が僅かに上下する。
「眠っちゃったか・・・そりゃ疲れるよな。・・・そうだ。」
監視役の女性の方を見る。彼女など昼食時以外はずっと立ちっぱなしなのだ、
疲れでは自分など問題ではないだろう。
「何?」
しかし彼女の言葉はつっけんどんであった。
435 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:05 [ imAIk9NE ]
「あ・・・おつかれさまでした。」
とりあえずねぎらいの言葉をかける
「いえ、これくらいたいしたこと無いわ。」
「え、ああ・・・。」
完全にペースを乱され、青島は少し動揺した。
「あの人のお気に入りだからもっと逞しいのかと思ったけど・・・。」
「あの人?」
「そんなことはどうでも良いの。」
すさまじい科白に青島はあっけに取られ、ふと彼女の顔を見た。
はっきり言って・・・可愛い。歳は自分と同じか少し下ぐらいか。青島はそう思った。
小柄なせいで気の強そうな目が強がっているようにしか見えないところがまた可愛らしかった。
「なに笑っているの?」
「あ、いや。」
青島が首を振ると彼女は少し不審そうな目をした後、軽く首を回し再び青島を見据えた。
「青島二尉・・・よね。」
「ああ。君は・・・。」
「加藤結衣三尉よ。結衣でいいわ。それで青島二尉、あなたに上からの辞令が来てるわ。」
436 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:07 [ imAIk9NE ]
「辞令?」
青島が聞き返すと一枚の紙が目の前に差し出された。受け取りそれをしげしげと眺める。
「赤羽海将からよ。あと、これ。」
紙の内容を見る暇も無く小さな金属片のような物を手渡される。
「赤い・・・バッチ?」
青島が手渡されたそれはバッチであった。赤い四角いバッチに金で翼をあしらってあった。
そして気が付かなかったが結衣も同じバッチを襟元につけている。
「これは・・・?」
尋ねる青島の言葉をまるっきり無視して結衣は青島を見上げ、睨みつけた。
「悪いけどいくら赤羽海将のお気に入りだからといってあなたを認めているわけじゃない、
特別なのはあなただけじゃないということを覚えておきなさい。」
そう言うと結衣は呆気にとられた青島を尻目に部屋から出て行ってしまった。
「わけがわからない・・・。・・・ん?」
その後姿を見送った青島は床に茶色い何かが落ちているのを見つけた。
拾い上げるとそれは名刺入れであった。結衣のイメージに合わずかわいらしいデザインであった。
「名刺入れ・・・結衣さんの私物かな?あれ?」
青島はその名刺入れに写真が入っているのを見つけた。
そしてその写真に写っていたのは赤羽佐世保地方隊司令であった。
「わけがわからない・・・。」
青島は先程と同じ科白を繰り返した。
437 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:09 [ imAIk9NE ]
辞令の内容はさして驚く物でもなかった。
むしろ青島も薄々感づいていた物であった。
「特殊高級幹部候補ニ任命スル。」
という簡単な内容だったが、青島がいまままでの不可解な点を解消するのには十分だった。
なぜ数多くの任務に優先的に就けられたのか、
なぜ天野という貴重な人材が自分一人のためのボディーガードとして付いているのか。
そしてこの赤いバッジはその幹部候補の証、らしい。
「つけたくはないな・・・。」
それが率直な感想だった。これ以上の特別扱いは御免である。
「ん・・・。」
突然人の声が聞こえて、後ろを振り返る、するとセフェティナが目を覚ましていた。
「あ、起きたのかい?」
「ええ・・・すいません、眠っちゃって。」
「いやいや」
「・・・今の女の方・・・お友達ですか?仲が良さそうでしたけど。」
青島は苦笑いをした。今の何を見たら仲がよさそうに見えると言うのか。
「ううん、初対面だよ。少し仕事の話をしていたんだ。さ、そろそろ部屋に戻ろう。」
「はい。」
438 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:09 [ imAIk9NE ]
アルクアイ(建前はウェルズ侯)の使者、アルマンは戸惑っていた。
ニホンとやらまでたどり着いたのはいいのだ。
そして自分は王下部隊ではないものの竜騎士である。随分とたくさん修羅場を潜り抜け、
また秘境や珍しい物も見てきた。異世界から呼ばれた島にも何度も言ったことがある。
しかしこの光景だけは信じ難かった。
上空遠くから見ても分かる。あんな高い建物見たことが無い。鉄の船など見たことが無い。
あんなガラスを大量に使った建物を見たことが無い、空を飛ぶ鉄の鳥などなおさらだ。
これが魔法を持たない人間達が築いた物だと言うのか。
「アルマン様~!これ・・・でっかい鉄の鳥が飛んでいます~!」
「ええい、取り乱すな!私達はラーヴィナ候の使いであることを忘れたか!」
「は、はい~。」
そんな彼らが空港ではなく佐世保の自衛隊基地に降りた事は幸運としか言いようが無かっただろう。
そんな訳で、今手紙のファックスが袴の手元にあるのであった。
439 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:10 [ imAIk9NE ]
手紙の中身は袴たちの予想と大きく異なっていた。
どうせ自分達に降伏しろ、とかそういう内容だと思っていた袴達は
アルクアイのよこした手紙が非常に友好的なのにひどく驚いた。
手紙の内容は要約するとこのようなものであった。
「一戦交えてしまったことは申し訳なかった、しかしそれで貴国の富強さがよくわかった。
アジェント王家の勝手な都合により突然呼び出されてしまった貴国に王家に代わり深く謝罪したい。
私ラーヴィナ候ウェルズはニホン国とその国王に尊敬と親愛の念を持っている。
しかしアジェントという国としてはそう言うわけではない、むしろ逆である。
だが我々ラーヴィナは貴国と友好関係を結びたいと思っている。
ついてはまだニホン国がこの世界でうまくやっていくための手伝いをさせて欲しい。
もし信じられないのならば言って欲しい。すぐにでも人質を送る。
また近い内に使者を送りたい。 ラーヴィナ候ウェルズ=ラーバス」
袴達政府関係者は喜んだ。まさに地獄に仏である。
しかもさらに嬉しいことにこの手紙にはおそらく非常に正確だと思われる、
各国の領土区分まで載っている地図が添えられていたのだった。
これを閣議の面々は信頼できる証拠と考えていた。
赤羽以外は、だったが。
時間は少し前に戻る
「よしっ、こんなものかな。」
もう傾き始めている日を眺めながら青島は言った。
朝からこの情報交換をしているのだからおよそ8時間喋り続けていた事になる。
いくら鍛えこんでいる彼でも喋る訓練はなされていない。さすがにもう疲れてしまった。
「ねぇ、セフェティナさん。」
「・・・・。」
セフェティナの返事が無い、青島がパソコンから顔を挙げた。首を垂れ、全く動かない。
「セフェティナさん?」
青島が顔を覗き込む。
「すー・・・すー・・・。」
セフェティナは寝息を立てていた、それと同時に肩が僅かに上下する。
「眠っちゃったか・・・そりゃ疲れるよな。・・・そうだ。」
監視役の女性の方を見る。彼女など昼食時以外はずっと立ちっぱなしなのだ、
疲れでは自分など問題ではないだろう。
「何?」
しかし彼女の言葉はつっけんどんであった。
435 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:05 [ imAIk9NE ]
「あ・・・おつかれさまでした。」
とりあえずねぎらいの言葉をかける
「いえ、これくらいたいしたこと無いわ。」
「え、ああ・・・。」
完全にペースを乱され、青島は少し動揺した。
「あの人のお気に入りだからもっと逞しいのかと思ったけど・・・。」
「あの人?」
「そんなことはどうでも良いの。」
すさまじい科白に青島はあっけに取られ、ふと彼女の顔を見た。
はっきり言って・・・可愛い。歳は自分と同じか少し下ぐらいか。青島はそう思った。
小柄なせいで気の強そうな目が強がっているようにしか見えないところがまた可愛らしかった。
「なに笑っているの?」
「あ、いや。」
青島が首を振ると彼女は少し不審そうな目をした後、軽く首を回し再び青島を見据えた。
「青島二尉・・・よね。」
「ああ。君は・・・。」
「加藤結衣三尉よ。結衣でいいわ。それで青島二尉、あなたに上からの辞令が来てるわ。」
436 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:07 [ imAIk9NE ]
「辞令?」
青島が聞き返すと一枚の紙が目の前に差し出された。受け取りそれをしげしげと眺める。
「赤羽海将からよ。あと、これ。」
紙の内容を見る暇も無く小さな金属片のような物を手渡される。
「赤い・・・バッチ?」
青島が手渡されたそれはバッチであった。赤い四角いバッチに金で翼をあしらってあった。
そして気が付かなかったが結衣も同じバッチを襟元につけている。
「これは・・・?」
尋ねる青島の言葉をまるっきり無視して結衣は青島を見上げ、睨みつけた。
「悪いけどいくら赤羽海将のお気に入りだからといってあなたを認めているわけじゃない、
特別なのはあなただけじゃないということを覚えておきなさい。」
そう言うと結衣は呆気にとられた青島を尻目に部屋から出て行ってしまった。
「わけがわからない・・・。・・・ん?」
その後姿を見送った青島は床に茶色い何かが落ちているのを見つけた。
拾い上げるとそれは名刺入れであった。結衣のイメージに合わずかわいらしいデザインであった。
「名刺入れ・・・結衣さんの私物かな?あれ?」
青島はその名刺入れに写真が入っているのを見つけた。
そしてその写真に写っていたのは赤羽佐世保地方隊司令であった。
「わけがわからない・・・。」
青島は先程と同じ科白を繰り返した。
437 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:09 [ imAIk9NE ]
辞令の内容はさして驚く物でもなかった。
むしろ青島も薄々感づいていた物であった。
「特殊高級幹部候補ニ任命スル。」
という簡単な内容だったが、青島がいまままでの不可解な点を解消するのには十分だった。
なぜ数多くの任務に優先的に就けられたのか、
なぜ天野という貴重な人材が自分一人のためのボディーガードとして付いているのか。
そしてこの赤いバッジはその幹部候補の証、らしい。
「つけたくはないな・・・。」
それが率直な感想だった。これ以上の特別扱いは御免である。
「ん・・・。」
突然人の声が聞こえて、後ろを振り返る、するとセフェティナが目を覚ましていた。
「あ、起きたのかい?」
「ええ・・・すいません、眠っちゃって。」
「いやいや」
「・・・今の女の方・・・お友達ですか?仲が良さそうでしたけど。」
青島は苦笑いをした。今の何を見たら仲がよさそうに見えると言うのか。
「ううん、初対面だよ。少し仕事の話をしていたんだ。さ、そろそろ部屋に戻ろう。」
「はい。」
438 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:09 [ imAIk9NE ]
アルクアイ(建前はウェルズ侯)の使者、アルマンは戸惑っていた。
ニホンとやらまでたどり着いたのはいいのだ。
そして自分は王下部隊ではないものの竜騎士である。随分とたくさん修羅場を潜り抜け、
また秘境や珍しい物も見てきた。異世界から呼ばれた島にも何度も言ったことがある。
しかしこの光景だけは信じ難かった。
上空遠くから見ても分かる。あんな高い建物見たことが無い。鉄の船など見たことが無い。
あんなガラスを大量に使った建物を見たことが無い、空を飛ぶ鉄の鳥などなおさらだ。
これが魔法を持たない人間達が築いた物だと言うのか。
「アルマン様~!これ・・・でっかい鉄の鳥が飛んでいます~!」
「ええい、取り乱すな!私達はラーヴィナ候の使いであることを忘れたか!」
「は、はい~。」
そんな彼らが空港ではなく佐世保の自衛隊基地に降りた事は幸運としか言いようが無かっただろう。
そんな訳で、今手紙のファックスが袴の手元にあるのであった。
439 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/17(金) 19:10 [ imAIk9NE ]
手紙の中身は袴たちの予想と大きく異なっていた。
どうせ自分達に降伏しろ、とかそういう内容だと思っていた袴達は
アルクアイのよこした手紙が非常に友好的なのにひどく驚いた。
手紙の内容は要約するとこのようなものであった。
「一戦交えてしまったことは申し訳なかった、しかしそれで貴国の富強さがよくわかった。
アジェント王家の勝手な都合により突然呼び出されてしまった貴国に王家に代わり深く謝罪したい。
私ラーヴィナ候ウェルズはニホン国とその国王に尊敬と親愛の念を持っている。
しかしアジェントという国としてはそう言うわけではない、むしろ逆である。
だが我々ラーヴィナは貴国と友好関係を結びたいと思っている。
ついてはまだニホン国がこの世界でうまくやっていくための手伝いをさせて欲しい。
もし信じられないのならば言って欲しい。すぐにでも人質を送る。
また近い内に使者を送りたい。 ラーヴィナ候ウェルズ=ラーバス」
袴達政府関係者は喜んだ。まさに地獄に仏である。
しかもさらに嬉しいことにこの手紙にはおそらく非常に正確だと思われる、
各国の領土区分まで載っている地図が添えられていたのだった。
これを閣議の面々は信頼できる証拠と考えていた。
赤羽以外は、だったが。