522 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:01 [ imAIk9NE ]
甘かった。
計算も、先読みも、全てにおいて。
アルヴァールをあてにしていれば、奴は計略により不在。
流れを持ってこようと芝居をしようとすればそれの一枚上を行く罠、
そして悪評を逆手に取った問答無用の脅し。
あれを受けてはもはやこの会議で奴に歯向かう物はいまい。
よしんばここで俺が生き残ったとしてももう、意味が無い。
肩の痛みは常に俺の意識を脅かしている。
そして今、俺の前に突きつけられている鋭い剣。
油を垂らしそうな程光沢のあるその刃は間も無く俺の身体を裂くだろう。
イルマヤ候が俺にしか聞こえないような小声で呟いた。
「頭は回るようだが、場数が足りん・・・。覚えておけ、人は恐怖で動くものだ。」
「その言葉は嘘だな、私は今お前に何を命令されても拒否させてもらう。」
俺がそう言うと奴はニヤリと笑い剣を振り上げた。
523 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:01 [ imAIk9NE ]
剣には魔力が宿り俺の命を奪おうと赤く不気味に光っていた。
これを受ければ俺の身体は原形をとどめまい。
もはや制止しようとする貴族の声も無い。
「アルクアイーっ!」
ファンナの泣き叫ぶ様な声もやたらと遠く感じる。
彼女には罪滅ぼしをしてやる事も出来なかった。
いや、そんなこと俺には元々する気などなかったのだろう。
そして・・・気付いた。
今まで積み上げてきた全てを崩すことになる最終手段に。
気付けば何故今まで気が付かなかったのかと可笑しくもある。
俺は自らの懐に手をやった。一本の金属の筒の存在を確かめる。
バルトから仕入れた魔道兵器。これならば一瞬で目の前の男を殺せる。
しかしこれを使えば俺は間違いなく破門になるだろう、そしてそれは全てを失うことを意味する。
だが、死ぬよりはましだった。
全てを失ってもまた今までのようにすれば良いだけなのだから。
十分にマナの補充はしてある、弾も装填している。俺は撃鉄をあげた。
524 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:02 [ imAIk9NE ]
「つまり・・・アジェント国王家は我々とよしみを通じる気はない、そういうことですか。」
「はい、そう言うこととなります。」
九州、佐世保基地。
ここではすでにアルクアイの使い、アルマンと日本の外交官の間での情報交換が行われていた。
といっても積極的には情報交換はしていない、相手の要求と弱点を探る、いわゆる腹の探りあいであった。
特にアルマンはアルクアイに日本の弱点を探れ、との強い命令を受けているため、その傾向は強かった。
「しかし、王家と違い我が候は貴国と友好関係を気付きたいと申しています。
そしてそのためにも何か我々にできることは無いでしょうか。」
日本側も馬鹿ではない。
自分達が欲しい物、つまりは弱点を相手にさらすこと程危険なことは無い、と言うことを十分認識していた。
しかし、絶対しなければならないことは食料と資源の調達。
この命題は日本にだらだらと外交をさせている暇は与えなかった。
「我々は貴殿らと通商関係を結びたいと考えています。」
慎重かつ大胆にという無茶をしなければならない彼らの責務は重かった。
525 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:02 [ imAIk9NE ]
服の下からイルマヤ候を狙う。
暴発が非常に多い代物だが、まさか始めての使用でなるものでもあるまい。
このままほんの少しの魔力を手に宿らせながら引き金を引けば
魔力誘導物質であるアルジェクトで作られたハンマーノーズが俺の魔力を誘導しながら
紋章の刻まれた銀のプライマーを叩き俺の魔力を通じさせる。
そして紋章は俺の魔力を受けてその力を発揮し、小規模な爆発をシリンダー内で起こす。
その衝撃は先のとがった鉛の弾丸を押し出し、敵の命を奪う死神を生み出す。
そしてその死神は目の前の男の命を奪う。
つくづく感心する物だ、これならばどんな魔法下手でも十分に使いこなせる。
そしてそれはバルトの力を証明する物でもあるのだが、しかし今はそんなことを考える暇は無かった。
俺は引き金を引いた。
526 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:03 [ imAIk9NE ]
カキン・・・。
弾は先程の手順を踏んで、目の前の男を貫くはずだった。
しかし、手の中の死神は冷たい金属音を発しただけであった。
慌ててイルマヤ候を見る、すると彼もまた赤い光を失った剣を見て、呆然としているようだった。
マナが・・・無い。
こんな状況マナが存在しない場合しかありえない。
そしてその状況を作り出せる人物を、俺は一人しか知らなかった。
そして、静まり返った部屋に扉の開かれる音が響いた。
皆の注目を一身に浴び、立っている男。
アルヴァール魔術大臣その人であった。
甘かった。
計算も、先読みも、全てにおいて。
アルヴァールをあてにしていれば、奴は計略により不在。
流れを持ってこようと芝居をしようとすればそれの一枚上を行く罠、
そして悪評を逆手に取った問答無用の脅し。
あれを受けてはもはやこの会議で奴に歯向かう物はいまい。
よしんばここで俺が生き残ったとしてももう、意味が無い。
肩の痛みは常に俺の意識を脅かしている。
そして今、俺の前に突きつけられている鋭い剣。
油を垂らしそうな程光沢のあるその刃は間も無く俺の身体を裂くだろう。
イルマヤ候が俺にしか聞こえないような小声で呟いた。
「頭は回るようだが、場数が足りん・・・。覚えておけ、人は恐怖で動くものだ。」
「その言葉は嘘だな、私は今お前に何を命令されても拒否させてもらう。」
俺がそう言うと奴はニヤリと笑い剣を振り上げた。
523 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:01 [ imAIk9NE ]
剣には魔力が宿り俺の命を奪おうと赤く不気味に光っていた。
これを受ければ俺の身体は原形をとどめまい。
もはや制止しようとする貴族の声も無い。
「アルクアイーっ!」
ファンナの泣き叫ぶ様な声もやたらと遠く感じる。
彼女には罪滅ぼしをしてやる事も出来なかった。
いや、そんなこと俺には元々する気などなかったのだろう。
そして・・・気付いた。
今まで積み上げてきた全てを崩すことになる最終手段に。
気付けば何故今まで気が付かなかったのかと可笑しくもある。
俺は自らの懐に手をやった。一本の金属の筒の存在を確かめる。
バルトから仕入れた魔道兵器。これならば一瞬で目の前の男を殺せる。
しかしこれを使えば俺は間違いなく破門になるだろう、そしてそれは全てを失うことを意味する。
だが、死ぬよりはましだった。
全てを失ってもまた今までのようにすれば良いだけなのだから。
十分にマナの補充はしてある、弾も装填している。俺は撃鉄をあげた。
524 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:02 [ imAIk9NE ]
「つまり・・・アジェント国王家は我々とよしみを通じる気はない、そういうことですか。」
「はい、そう言うこととなります。」
九州、佐世保基地。
ここではすでにアルクアイの使い、アルマンと日本の外交官の間での情報交換が行われていた。
といっても積極的には情報交換はしていない、相手の要求と弱点を探る、いわゆる腹の探りあいであった。
特にアルマンはアルクアイに日本の弱点を探れ、との強い命令を受けているため、その傾向は強かった。
「しかし、王家と違い我が候は貴国と友好関係を気付きたいと申しています。
そしてそのためにも何か我々にできることは無いでしょうか。」
日本側も馬鹿ではない。
自分達が欲しい物、つまりは弱点を相手にさらすこと程危険なことは無い、と言うことを十分認識していた。
しかし、絶対しなければならないことは食料と資源の調達。
この命題は日本にだらだらと外交をさせている暇は与えなかった。
「我々は貴殿らと通商関係を結びたいと考えています。」
慎重かつ大胆にという無茶をしなければならない彼らの責務は重かった。
525 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:02 [ imAIk9NE ]
服の下からイルマヤ候を狙う。
暴発が非常に多い代物だが、まさか始めての使用でなるものでもあるまい。
このままほんの少しの魔力を手に宿らせながら引き金を引けば
魔力誘導物質であるアルジェクトで作られたハンマーノーズが俺の魔力を誘導しながら
紋章の刻まれた銀のプライマーを叩き俺の魔力を通じさせる。
そして紋章は俺の魔力を受けてその力を発揮し、小規模な爆発をシリンダー内で起こす。
その衝撃は先のとがった鉛の弾丸を押し出し、敵の命を奪う死神を生み出す。
そしてその死神は目の前の男の命を奪う。
つくづく感心する物だ、これならばどんな魔法下手でも十分に使いこなせる。
そしてそれはバルトの力を証明する物でもあるのだが、しかし今はそんなことを考える暇は無かった。
俺は引き金を引いた。
526 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/03(日) 22:03 [ imAIk9NE ]
カキン・・・。
弾は先程の手順を踏んで、目の前の男を貫くはずだった。
しかし、手の中の死神は冷たい金属音を発しただけであった。
慌ててイルマヤ候を見る、すると彼もまた赤い光を失った剣を見て、呆然としているようだった。
マナが・・・無い。
こんな状況マナが存在しない場合しかありえない。
そしてその状況を作り出せる人物を、俺は一人しか知らなかった。
そして、静まり返った部屋に扉の開かれる音が響いた。
皆の注目を一身に浴び、立っている男。
アルヴァール魔術大臣その人であった。