自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 34

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507 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 12:54 [ imAIk9NE ]
    アジェント、いやこの世界には狂犬と呼ばれる存在がいる。
    魔法というものは多少の金がある、もしくは才能があれば簡単に学べる物である。
    それは簡単に個人がこちらの世界における銃や手榴弾程の暴力を手に出来るということでもある。
    そして力を持てば人間はその力に酔う、試したくなる。
    教育が十分には成されないこの世界では余計であった。
    そして魔術で強盗や大量殺人に走る、そういった人物が狂犬と呼ばれていた。
    しかし今となっては一時期横行した狂犬も厳しい取締りによりその多くが捕まっていた。
    しかし狂犬の数は全く減ってはいなかった。何故か。
    それは新たな種類の狂犬が現れた為であった。
    新たな種類の狂犬、それは文字通りの貴族、金持ちの犬であった。
    ただの無差別殺人に見せかけて、邪魔な人物を暗殺する。
    そして捕まってもただの無差別殺人として処刑され、
    たとえ自分の名を言ったとしても狂言として済まされる狂犬は貴族達には非常に都合の良い存在であった。

508 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 12:57 [ imAIk9NE ]
    この決闘、アルクアイは数号打ち合ったら他の貴族達の制止に応じてすぐに止める気であった。
    そもそも音に聞こえた剣豪であるイルマヤ候に魔術に没頭してきた彼が勝てるわけが無い。
    しかし、彼がこの後の会議を有利に進めるためには他の貴族達に
    この決闘は「主君を侮辱され怒りに燃える忠実な好青年」
    と「権威を傘に着た傲慢な貴族」の戦いである。
    というイメージを植えつける必要があった。
    そのために彼は危険を冒してでも積極的に攻める必要があった。

    口火を切ったのはアルクアイ殿の一撃だった。
    横一文字の鋭い一撃をイルマヤ候は容易く受け止める。
    「筋はいいようだが、甘いな小僧。」
    そしてその剣を弾くとイルマヤ候は思い切り立て一文字に切りかかる。
    一撃必殺を狙った剛剣である。
    アルクアイはそれを剣の腹で辛うじて受け止め、その代償に剣に小さなヒビが入る
    彼は剣の勢いに数歩後ろに下がると慌ててイルマヤ候と距離をとった。
    「(予想以上だったか・・・?)」
    アルクアイの頬に一筋の冷や汗が流れた。

509 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 12:57 [ imAIk9NE ]
    距離をとったアルクアイに勝算があるやり方とすれば一つであった。
    それは魔法戦に持ち込むこと、しかしこれはできることではない。
    この戦いは良いイメージを勝ち取るための勝負。
    卑怯などというイメージを持たれるのは言語道断であった。
    ならば守りの剣でしばらく耐え忍ぶしかない。
    アルクアイはイルマヤ候を見た。何をしているのか、左手から小石のような物を上に投げている。
    しかし、これはチャンスである。アルクアイは再びイルマヤ候に向かい走った。
    そして観客達も息を呑む。
    そしてその一人が何者かに突き飛ばされた。
    「な、なんだ・・・?」
    座り込んだ彼が見たのは観客の間をすり抜け、決闘する二人に向かう一つの影であった。
    そして一瞬の間、彼は事が起こった瞬間を見ることが出来なかった。
    「があああっ!」
    「狂犬だっ!」「狂犬だ!」
    そしてそれから間も無くその耳に届いたのは叫び声と観客の叫び声。
    飛び起きた彼が見たのは肩を撃ち抜かれ、膝をつくアルクアイであった。

510 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 12:59 [ imAIk9NE ]
    同時刻、バルト、オズイン国境。

    ここでもまた鮮血が舞っていた。
    三国に名高いオズイン重装歩兵が長槍を突き、
    手にリボルバーのような形をした魔道兵器を持つバルト騎鉄団が駆ける。
    そしてその騎鉄団の先頭に立って長い黒髪を揺らし駆ける一人の少女がいた。
    手に持つ特別なフォルムの銃を持ち、華やかな鎧に身を包んだ彼女は
    その銃口から放たれる黒い閃光が次々と兵を打ち倒していった。

    彼女の名はエグベルト8世
    神帝を親に持つバルト帝国の皇帝であった。
    そして魔道兵器の不足によって下がった士気を引き上げるため、
    女神とまで呼ばれ兵達の人気も非常に高い彼女が最前線へと出てきているのであった。

511 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 12:59 [ imAIk9NE ]
    士気の上昇に、兵器の相性もあり、戦局は圧倒的にバルトの有利であった。
    「帝、あまり前に出過ぎないで下さい。」
    しかし、その中で余りに前進しすぎるエグベルトを見かねた将の一人が声をかける。
    「ええ、有難う。だけど父と違って私にはこれくらいしかできないから・・・。あっ、そこっ!」
    他の兵器と違い、機械が魔法をサポートするタイプの彼女の銃が将の後ろに立つ兵を撃ち抜いた。
    「あ、ありがとうございます。けれど私が今言ったことを覚えておいてください。」
    「ええ、もちろん。有難う。」

    「くれぐれもご無理をなさらぬように・・・。」
    駆けていく彼女の後姿を見て、将は言い知れぬ不安を覚え、呟いた。

512 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/02(土) 13:01 [ imAIk9NE ]
    「キヒヒ・・・。」
    狂犬は比較的綺麗な身なりをしていた、その狂気を映した顔をのぞけば貴族と言っても通用するだろう。
    そしてその服装こそがこの狂犬を何者かがこの城に招きいれたことを示していた。
    「狂犬とは運が悪い・・・、番兵はどうしたのですかな?」
    狂犬とお互い剣も魔法も届く場所に立っているにも関わらず、
    ユラユラと揺れながら立っている狂犬を見ながらイルマヤ候はしらじらしく呟いた。
    「狂犬・・・だと?ふざけるな・・・!」
    アルクアイは肩を押さえイルマヤ候を睨んだ。
    その言葉に他の貴族達もようやく狂犬とイルマヤ候の関係に気がつく。
    そしてまたこの目の前の男は、自分と反対意見を出す者を始末するつもりであったことに気が付き、戦慄した。
    「イルマヤ候、どういうことです!?」
    貴族の一人が叫ぶ、するとイルマヤ候は穏やかな笑みを浮かべながら言った。
    「どういうこと、とはどういうことです?まさかこの狂犬を私が雇ったとでも言うのですか?」
    「っ!?」
    貴族は慌てて狂犬のほうを見た、しかしもはやその姿はない。
    狂犬を捕まえれば証拠も出る可能性がある。だが、もはや証拠の出る可能性は無い。
    「決闘、続行ですかな。」
    イルマヤ候はアルクアイの鼻先に剣を突きつけた。

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