418 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:20 [ imAIk9NE ]
「味方が欲しい。」
これが今の日本政府の切実な願いであった。
セフェティナ一人の情報ではアジェントのこと以外はろくな情報は得られない上、
食料、工業の原料の確保においても通商関係を結ぶ必要性があったからだった。
そして今、その事について、何度目かも分からぬ閣議が開かれていた。
そしてその閣議にはセフェティナを管理する人間として、赤羽も招集を受けていた。
「どうも、赤羽海将。わざわざ遠いところ御足労ありがとうございました。」
「いえ、お呼びに預かり恐縮です。袴総理大臣。」
「(これが・・・歴戦の軍人と言う物か・・・。)」
お互いに儀礼的な挨拶を交わす内に、袴は赤羽になにか威圧感のような物を感じていた。
しかしそれは赤羽の柔らかい物腰とあいまってあまり気分の悪い物ではなかった。
むしろ安心感すら覚える物であった。
419 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:21 [ imAIk9NE ]
転移から一週間以上が経って、日本国内は予想に反して落ち着いていた。
武士道、と言うべきか、本当に窮地に追い込まれると逆に冷静になっていくお国柄である。
阪神大震災の時火事場泥棒が一人も出なかったように、この時もパニックになることなく、
むしろ皆が外出を控えたために交通事故などは減ったほどであった。
といっても、限度はある。
現に食料品については米以外のものはかなりの物が品薄となるし、
工業については資源が無く殆んどが日干しとなっていた。
だからこそ、通商関係を結ぶ味方を作るということは急務であった。
しかしセフェティナの言葉はその希望を断つものばかりであった。
420 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:22 [ imAIk9NE ]
「まさか奴隷のための召還とは・・・。」
前に赤羽が言った言葉と同じ言葉を袴は言った。
そして外務大臣のほうに目を向ける。
「これまでの世界史と協力者の言葉を鑑みるに相手・・・アジェント王国、というらしいな、
は最初からこちらを見下してくる、最悪派兵をしてくる可能性が高いということか。」
「はい、残念ながら。しかし協力者・・・セフェティナ嬢の話によるとこの大陸・・・
ユーラシア大陸のような物らしいですが、便宜上新大陸と呼びましょう。
この新大陸に存在する通商関係を結べるだけの力を持つ勢力は4つ。
一つはアジェント、一つはバルト帝国、一つはオズイン王国、最後に小国の集合体が存在します。
小国と言っても・・・自治都市に近いようですが。」
「そうか。ならアジェント以外の勢力との交渉は可能か?」
外務大臣は一度目を瞑り答えた。
「いえ、バルト帝国、オズイン王国に関しては内陸部にあり、交渉ルートすら存在しません。
小国群もアジェントに従属しているため、アジェントと同様の対応をしてくると思われます。」
「そうか・・・。」
421 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:22 [ imAIk9NE ]
二進も三進も行かないではないか。
そう叫びたくなる袴ではあったがそれをぐっと堪えて、誰かこの局面を開く人間は居ないかと辺りを見回した。
そして誰もが俯いてしまう中、赤羽一人だけが立ち上がった。
「発言をお許しいただけますか、袴総理大臣。」
「ああ。」
朗々とした口調に思わず袴は返事をしてしまった。
そしてそれから赤羽の演説が始まった。おそらくこれは歴史に残る演説となっただろう。
なぜならこの演説が後の日本の運命を大きく揺るがす出来事の布石となったのだから。
内容は要約するとこのような物になる。
「アジェントの国土は中国の80%ほどもあり、国力も豊かだ。当然兵も強いだろう。
さらにこの国は我々を奴隷にしようとして呼び出した。攻め込んでくるのも時間の問題だ。
そして通商では食料、資源の問題を先送りするばかり。
ならば今こそ自衛隊に軍としての権限を与え、アジェントへの侵略を許可して欲しい。
現地住民、敵兵をなるべく傷つけずに日本国民を養えるだけの農地と資源を確保してみせよう。
もし逆に今自衛隊をこのままの制度で縛り付けるのならば日本国民一億5千万人強は全員が奴隷となることだろう。」
422 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:23 [ imAIk9NE ]
赤羽の口調はまさに威風堂々、自信に満ちた言葉であり、思わず袴も頷きかけるほどであった。
そして赤羽の自信には裏付けもあった。
彼は独自にこの世界の情報を集めるルートを作り始めていて、
おそらく後一ヶ月もしないうちに正確な地図も手に入る手はずになっていた。
そしてアジェントがこちらを舐めきっている内に勝負をつけようと考えていたのだ。
しかし、この問題は重要な問題であり、そうやすやすと決めるわけには行かない。
袴たちの答えは「自衛隊の束縛はなるべく無くしていく方向で検討する。」
という消極的なものだった。
これに不服ではあったが赤羽は無理強いは危険だと判断し、それ以上の発言はしなかった。
そして誰も喋る事が無くなり、一時の静寂が流れた時、
その静寂を破るように一つの情報が会議室へと飛び込んできた。
アジェントの一諸侯から手紙が来たと言うのである。
「味方が欲しい。」
これが今の日本政府の切実な願いであった。
セフェティナ一人の情報ではアジェントのこと以外はろくな情報は得られない上、
食料、工業の原料の確保においても通商関係を結ぶ必要性があったからだった。
そして今、その事について、何度目かも分からぬ閣議が開かれていた。
そしてその閣議にはセフェティナを管理する人間として、赤羽も招集を受けていた。
「どうも、赤羽海将。わざわざ遠いところ御足労ありがとうございました。」
「いえ、お呼びに預かり恐縮です。袴総理大臣。」
「(これが・・・歴戦の軍人と言う物か・・・。)」
お互いに儀礼的な挨拶を交わす内に、袴は赤羽になにか威圧感のような物を感じていた。
しかしそれは赤羽の柔らかい物腰とあいまってあまり気分の悪い物ではなかった。
むしろ安心感すら覚える物であった。
419 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:21 [ imAIk9NE ]
転移から一週間以上が経って、日本国内は予想に反して落ち着いていた。
武士道、と言うべきか、本当に窮地に追い込まれると逆に冷静になっていくお国柄である。
阪神大震災の時火事場泥棒が一人も出なかったように、この時もパニックになることなく、
むしろ皆が外出を控えたために交通事故などは減ったほどであった。
といっても、限度はある。
現に食料品については米以外のものはかなりの物が品薄となるし、
工業については資源が無く殆んどが日干しとなっていた。
だからこそ、通商関係を結ぶ味方を作るということは急務であった。
しかしセフェティナの言葉はその希望を断つものばかりであった。
420 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:22 [ imAIk9NE ]
「まさか奴隷のための召還とは・・・。」
前に赤羽が言った言葉と同じ言葉を袴は言った。
そして外務大臣のほうに目を向ける。
「これまでの世界史と協力者の言葉を鑑みるに相手・・・アジェント王国、というらしいな、
は最初からこちらを見下してくる、最悪派兵をしてくる可能性が高いということか。」
「はい、残念ながら。しかし協力者・・・セフェティナ嬢の話によるとこの大陸・・・
ユーラシア大陸のような物らしいですが、便宜上新大陸と呼びましょう。
この新大陸に存在する通商関係を結べるだけの力を持つ勢力は4つ。
一つはアジェント、一つはバルト帝国、一つはオズイン王国、最後に小国の集合体が存在します。
小国と言っても・・・自治都市に近いようですが。」
「そうか。ならアジェント以外の勢力との交渉は可能か?」
外務大臣は一度目を瞑り答えた。
「いえ、バルト帝国、オズイン王国に関しては内陸部にあり、交渉ルートすら存在しません。
小国群もアジェントに従属しているため、アジェントと同様の対応をしてくると思われます。」
「そうか・・・。」
421 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:22 [ imAIk9NE ]
二進も三進も行かないではないか。
そう叫びたくなる袴ではあったがそれをぐっと堪えて、誰かこの局面を開く人間は居ないかと辺りを見回した。
そして誰もが俯いてしまう中、赤羽一人だけが立ち上がった。
「発言をお許しいただけますか、袴総理大臣。」
「ああ。」
朗々とした口調に思わず袴は返事をしてしまった。
そしてそれから赤羽の演説が始まった。おそらくこれは歴史に残る演説となっただろう。
なぜならこの演説が後の日本の運命を大きく揺るがす出来事の布石となったのだから。
内容は要約するとこのような物になる。
「アジェントの国土は中国の80%ほどもあり、国力も豊かだ。当然兵も強いだろう。
さらにこの国は我々を奴隷にしようとして呼び出した。攻め込んでくるのも時間の問題だ。
そして通商では食料、資源の問題を先送りするばかり。
ならば今こそ自衛隊に軍としての権限を与え、アジェントへの侵略を許可して欲しい。
現地住民、敵兵をなるべく傷つけずに日本国民を養えるだけの農地と資源を確保してみせよう。
もし逆に今自衛隊をこのままの制度で縛り付けるのならば日本国民一億5千万人強は全員が奴隷となることだろう。」
422 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/09/13(月) 22:23 [ imAIk9NE ]
赤羽の口調はまさに威風堂々、自信に満ちた言葉であり、思わず袴も頷きかけるほどであった。
そして赤羽の自信には裏付けもあった。
彼は独自にこの世界の情報を集めるルートを作り始めていて、
おそらく後一ヶ月もしないうちに正確な地図も手に入る手はずになっていた。
そしてアジェントがこちらを舐めきっている内に勝負をつけようと考えていたのだ。
しかし、この問題は重要な問題であり、そうやすやすと決めるわけには行かない。
袴たちの答えは「自衛隊の束縛はなるべく無くしていく方向で検討する。」
という消極的なものだった。
これに不服ではあったが赤羽は無理強いは危険だと判断し、それ以上の発言はしなかった。
そして誰も喋る事が無くなり、一時の静寂が流れた時、
その静寂を破るように一つの情報が会議室へと飛び込んできた。
アジェントの一諸侯から手紙が来たと言うのである。