自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 40

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634 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:49 [ kHqoVL5Q ]
    王都の冬はひどく冷える。
    雪を踏みながらアルクアイは裏庭へと急いだ。
    奇襲を警戒し辺りを見回す、が誰も居ない。何の気配もしない。
    そして裏庭へとついた時、そこに居たのは二人の仮面をつけた男であった。
    その手に持つ槍は「光の槍」、魔法の道具の一種で巨大な槍でありながら棒切れを振り回すような
    攻撃が可能であり、任意に一瞬で気絶するほどの雷を帯びるというシロモノであった。
    そしてこれを持つという事は教会の特別兵、合法的に殺人をする権利を教会から下された人間達であった。
    「来たか・・・。」
    仮面の一人、こちらが上司なのだが、が言う。
    「こちらの要求は唯一つ、貴様の死だ。」
    「ファンナ様はどこだ。」
    「貴様はこれから我々の攻撃を避ける権利は無い、我々に敵意を向ける権利も無い、
    これらをした場合はその瞬間に仲間に娘を殺させる。
    そして一時間以内に我々が戻らない場合も殺すように言ってある。」
    アルクアイの言葉を無視し仮面は淡々と続けた。
    もう一人の仮面が槍を構え、嘲笑うような調子で言った。
    「忠実なアルクアイ殿なら死んでくれるだろう?」
    アルクアイはニヤリ、と笑った。

635 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:49 [ kHqoVL5Q ]
    「神の為なら人質をとって邪魔者を暗殺せよ、そんなことが経典に書いてあった覚えは無いが。」
    「なにっ!?」
    槍を構えた仮面が怒った様な声を出した。
    それをもう一人が黙って手で制す。
    「悪いが魔術院を主席で出たような人間を暗殺する自身は無いのでな、
    念には念をと言う奴だ。さて、もうおしゃべりは終わりだな、やれ。」
    「はっ!」
    槍を構えた仮面が嬉しそうに返事をし、槍を振りかざした。
    「!?」
    その瞬間、殺意を感じ冷静なほうの仮面はいきなり後ろを振り返った。
    ギョポッ。ゴトッ。
    何か液体が溢れるような音と重い物が落ちるような音がした。
    血が雪の上に舞い散り、その白い絨毯を赤く染めた。
    「は・・・。」
    後ろを振り返った仮面は共振通信を繋ごうとした、
    しかし彼の首はもうすでに大きな口を開け血を吐き出し続けていた。

636 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:50 [ kHqoVL5Q ]
    仮面は確実に殺したと思っていた、
    相手は避けることが出来ない。
    この美しい銀色の槍が相手の心臓を一突きにし、自分は暖かい鮮血に濡れる、
    そして自分は教会で神の栄誉と大量の富を受ける。
    そのはずだった。
    しかし何かがおかしい。
    自分はただ、アルクアイに軽く体当たりするだけに終わっていたのだ。
    それどころか、槍を持っている感触が無い。
    慌てて手を見て、仮面は叫んだ。
    「ああああああああああっ!?腕がっ、腕がないいいいいっ!?」
    共振通信を繋ごうとする、が、それをする篭手はもうすでに自分の腕と同じく地に横たわっていた。

    「痛みは無いだろう、そのようにやらせたのだから。
    それともなんだ、まさか暗殺者が待つ場所に一人で来るとでも思ったのか?」

    アルクアイは薄い笑みを浮べ、地面でもがき苦しむ仮面を見、そして視線を上げた。
    「ご苦労だったな、ゼナ、ロア。」
    アルクアイの視線の先には美しい女性、そして白髪の痩せた男が立っていた。

637 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:51 [ kHqoVL5Q ]
    「お怪我はありませんか?」
    「いや、服が汚れただけだ、だが殺すなと言ったはずだが、ゼナ。」
    「一人はこちらに寸前で気が付いたようだったので・・・申し訳ありません。」
    「まあ、良い。だが死体の処分をしておけ。・・・ロア。」
    「はっ。」
    白髪の男がアルクアイを見る。
    この男、元々はアルクアイの命を狙った狂犬であった。
    しかしこの男の腕に目をつけたアルクアイはこの男を殺さず、薬抜きをして自らの部下としたのである。
    その為、ロアのアルクアイへの感謝は大きく、同じ命を顧みない者でも、
    表向きの部下も勤めるゼナとは違い完全な闇の仕事を行う男であった。
    「この男からファンナの居場所を聞きだせ。」
    「手段は?」
    「選ぶな。」
    「了解しました。」
    ロアが地面でのた打ち回る仮面を軽く持ち上げた。仮面が小さくうめき声を上げる。
    ちなみにこの仮面、この「手段」によって、次の日の朝には人かどうかも判別できぬ
    肉の塊になり王都の教会の前に転がることとなる。
    「アルクアイ様はどうなさるので?」
    ゼナがアルクアイに聞いた。
    「先にファンナを探す。・・・三十分以内にこちらにファンナの居場所を連絡しろ。」
    「・・・。」
    ゼナは黙り込んだ。普段の返事が無いのをアルクアイは不審に思った。
    「どうした?」
    「・・・この際、ラーヴィナ候の血筋は全て絶っておいたほうが良いのでは?」
    ゼナからはアルクアイの表情は暗くて見ることは出来なかった。

638 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:53 [ kHqoVL5Q ]
    赤羽の説はこうであった。
    軽空母を用意し上陸戦力、迎撃戦力を整える。
    アジェントに近い奴隷島に基地を作り、そこに戦力を結集。
    敵の先行部隊を発見し次第殲滅し、同時に軽空母を中心とした上陸戦力をもって、
    ラーヴィナの北、前の世界で言う満州地域に侵攻。
    そこを足がかりとして、敵が日本の近代兵器に対する対策を編み出さない、
    そして防衛準備を固めない内に王都まで一気に攻め込み、制圧。
    これが彼の考えた計画であった。

    「ちょっと待ってくれたまえ。」
    赤羽のを説を聞き終わり、酒井外務大臣が発言した。
    「こんなこと、世論が許すはずは無いだろう。
    それにこの資源の乏しい状況下で空母を運用する力がどこにある?」
    この発言は面々の中でも特に穏健派たちの心を捉えた。
    どれだけ良い戦略であっても長い平和の中に居た戦争を知らない人間にとっては
    戦争に日本が突入する、それだけでも恐怖なのだ。
    この発言を皮切りに次々と穏健派たちから反対意見が上がった。
    「ちょっと待ってください。」
    それを袴は制し、外務大臣の方へ目を向けた。
    「それでは二つ目の案を。」
    「はい。」
    酒井外務大臣が立ち上がった。

639 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:53 [ kHqoVL5Q ]
    「皆様、地図をご覧下さい。」
    酒井は皆の見える位置にある巨大な世界地図の前に立ち、小国群地域を指差した。
    「ここが小国群地域となっていることはご存知でしょうか。」
    面々はうなずく。
    酒井は指をつつと地図上で西に動かし、空白地へと持ってきた。
    「では、ここが誰も支配していない空白地域になっている、ということもご存知でしょうか。」
    面々は再びうなずいた。
    「セフェティナ嬢、相手外交官によるとここは肥沃な土地だそうです。
    ならば何故ここがだれにも支配されなかったか。その原因が、この小国群とアジェントにあります。
    皆様、お手元の資料をご覧下さい。」
    面々がその資料に目を通したことを確認すると、酒井は続けた。
    「この資料に記載したとおり、アジェント王国とこの小国群、これらは盟主と属国の関係にあります。
    しかし、この二つの間の関係は宗教問題、この空白地の問題などにより険悪となっており、
    我々はここを切り崩すことが可能と見ています。」
    アジェントと小国間は今、アシェナ聖教を国教化するのを強制したり、
    空白地の問題で小競り合いが起こるほど険悪になってきている。
    だからこそ、日本が狙うのはこの小国群の日本の属国化、
    つまりはアジェントから日本へと盟主を鞍替えさせることを狙うべきである。
    こうすることによって戦争を起こさずに大陸に足がかりが出来、
    そして小国群に何らかの見返りを与えることでその西にある空白地を手に入れることが出来る、
    そして更にその後のアジェントとの戦闘では大陸での戦闘となり、本土への被害もほとんど無くて済む。
    というのがこの説であった。

640 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/10(日) 15:55 [ kHqoVL5Q ]
    この説には自衛隊を除く閣議のほぼ全員が賛意を示した。
    「少々待っていただきたい。」
    その劣勢の雰囲気に赤羽は言った。
    「もし、空白地や小国群で戦闘が起こった場合、
    先程の案では海上支援が受けられない状態で戦うことになる。
    あなた方は我々に部下を殺せとおっしゃっているのですか?」
    赤羽の言葉に酒井は少々ムッとして言った。
    「何をおっしゃる、そちらの説のほうがより好戦的ではないのか。」
    「いや、我々の説は最終的な戦闘量は少なくて済む。
    それに空白地の位置からして、森の為北からの攻撃は無いとしてももし西からの攻撃を受ければ、
    北東からのアジェントと挟み撃ちにあう可能性があるではないか。」
    「それはありえないだろう。」
    酒井は笑った。
    「もし、空白地の西から攻撃してくるようなことがあったらそれはバルト帝国だ。
    バルトとアジェントが同盟するなどありえないということはセフェティナ嬢の態度を見てもよくわかるだろう?」
    赤羽は言葉に詰まった。
    もはや二つの説のうちどちらが選ばれるかは明白な状況であった。

    「な、ならばせめて空母の運営が可能になるまで待って欲しい。
    海上からの威圧が無い状態で、内陸に孤立した拠点を作るのは危険すぎる。」
    赤羽の孤軍奮闘を助けようと海上幕僚長は言った。
    「空母が運用可能となるまでどんなに早くてもおよそ半年、そんなに待っていては機を逃しかねない。」
    しかしその言葉もいとも容易く撥ね付けられ、赤羽は奥歯をギリと噛みしめた。
    そして軽空母案は宙ぶらりんとなったままその会議は終わりを迎えた。

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