自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

SS 001-020 12

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だれでも歓迎! 編集
142 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:10 [ qUq6iUEM ]
    天使を信じていた。いや、今も信じている。
    アシェナの神は言った。「世が乱れ、罪無き者が死に、罪深き者が生きる世となった時、私は我が僕を遣わし、罪深きものを滅し罪無き者を救うだろう。」と。
    今がその時ではないのか、罪の無い異世界人が無理やり呼び出され、虐待される。
    アシェナの神に仕えるはずの我々はそうして暴利をむさぼる。
    私は天使が来る、来てくれると信じていた。

143 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:10 [ qUq6iUEM ]
    「どうぞ、こちらへ。」
    幾つもの脇道を持つ少々長い廊下を通り、通された先は船長室であった。
    日本側全員は息を飲んだ、床一面に張られた金で縁取りされた紅い絨毯、壁に張られている白く美しい模様を持つ壁紙、棚にはおそらく酒と思われるボトルが所狭しと置かれていて、その棚の上には美しい女神像がおかれていた。まるで王侯貴族の部屋である。
    「見事な絵だ・・・。」
    そして狩野の目を一番引いたのは美しく巨大な油絵だった。この世界の宗教画だろうか、神聖な雰囲気の漂う男性(神だろうか?)が幾人もの光を放つ槍を持った騎士達(天使?)を従えていた。しかし、これだけの部屋をなぜ一船の船長程度が持てるのだろうか。なにか財源があるのだろうか?
    「どうしました?お座り下さい。」
    「あ、ああ。」
    ジファン殿と机をはさんで福地と共に豪華な細工のされた椅子に座る。
    座り心地はあまり良くは無かった。
    まあ、中世レベルの技術をこちらの技術と比べても仕方ないが。

144 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:10 [ qUq6iUEM ]
    「どうぞ。」
    「あ、結構です。」
    「うむ、頂こうか。」
    美しい女性が先ほどの棚から酒のボトルを取り出し、こちらに酒を勧める。
    福地は受けたようだが、こちらは万一に備えて断った。
    しかしこの女性、確かに美しいことは美しいのだが、どこか悲しげで、・・・体中に痛々しい赤い傷跡がある。これはなにかで叩かれた跡・・・。鞭、だろうか。
    「どうしました、その女が気に入りましたかな?よろしかったら差し上げてもかまいませんが。」
    「いえいえ、まさか。」
    「ほう、随分と太っ腹な船長様のようだ。」
    福地の言葉でハッハッハとジファンと彼が笑い出す。しかし、ジファンは目が笑ってはいかった。

145 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:11 [ qUq6iUEM ]
    まず行われた事は情報交換であった。
    当然である。日本側の至上命題は情報収集なのだから。
    ジファンは少々焦っていた。
    まず一つにセフェティナが生き延びたこと。これで奴は相当警戒するようになるだろう。
    元々この船で一番の魔法の使い手なのだからあまり暴れさせることは出来ない。
    そしてさらに大きな理由として、目の前の異世界人共の予想以上の文明レベルの高さであった、どうやっているのかは知らないが、やたらパリッとしている、黒い服(背広)
    物腰の丁寧さ、キチンとした上下関係から言って教育も相当行き届いている。
    そして何よりもあの魔法を使っているとしか思えない空を飛ぶ鉄の箱と巨大な船、いくらなんでも魔法を使って沈められないことは無いだろうが―――後に彼はこれが大きな誤算だったことを思い知る―――船員達が皆萎縮してしまっている。

146 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:13 [ qUq6iUEM ]
    「(私の使命は3つある、セフェティナの抹殺と、こやつらの言う「ニホン」の情報の収集及び奴らの船の奪取、そしてこの人間達の抹殺。そのためにはまずは快く迎えるフリをしなくてはならない。まあ所詮は魔法も使えぬ野蛮人、騙す事くらいわけも無いが)
    それではお聞きしたいのだが、ニホン、と言う国は何処にあるのですかな?」
    「はい、ユーラシア大陸の東の島国です。」
    「ユーラシア大陸?どこでしょうか、そこは」
    「・・・やはりお知りになりませんか。」
    福地はため息をついた。
    「実は我々はこの世界のものではないようなのです。」
    「・・・やはり、そうですか。」
    ジファンの「やはり」と言う言葉に福地は意外そうな顔をした。
    「何か知っておられるので?」
    「ええ、我が国、アジェント王国、と言いますが、は年に一度昼に出た月が黄金に輝く時に召還の儀式を行います。そして異世界の島々を呼び出すのです。」
    「では!あなた達が我々を呼び出した!そういうことですか!」
    福地が顔を真っ赤にしてガタンと立ち上がった。グラスが倒れ酒がこぼれる。
    「はい、・・・遺憾ながらそういうことになりますな。」
    「いったいなぜ・・・!そしてどうやって・・・!っ・・・ゴホゴホ!」
    目の前の男達が魔法について知らないことを確認できた、ジファンはほくそえんだ。
    「それではお話しましょう。」

147 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:13 [ qUq6iUEM ]
    ジファンはそれから一呼吸した。
    「その前に一つ質問させてください。あなた達の乗る巨大な船と空を飛ぶ箱、あれらはどうやって動いているのですか?」
    「あれは機械で動いているのですよ。」
    咳き込む福地の変わりに狩野が答える。
    「!」
    「!」
    ジファンの顔色が変わり青島と天野は64式自動小銃に手をやった。と同時にセフェティナも息を呑む、アシェナ教が禁止する機械に今まで乗っていたのだ。
    「機械・・・ですか。つまりあなた方は帝国の仲間、ということですか?」
    「帝国、とは?」
    唇をふるわせながらジファンは首を横に振った。
    「ご存知ありませんか、バルト帝国。機械文明を推進し、今我が国と対立している国です。
    そして我が国アジェントの国教、アシェナ聖教は機械を禁止しているのですよ。」
    「・・・そうですか。」
    福地と狩野は思わず顔を見合わせた、国と深く結びついている宗教が機械を禁じていると言うことは完全な機械文明である日本とはあまり親密な関係は結べないと言うことなのだ。

148 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/07/13(火) 23:13 [ qUq6iUEM ]
    「・・・おっと、といっても我々はあなた達と敵対するつもりはありませんよ。」
    ジファンはニコリと笑い立ち上がって右手を差し出し握手を求めた。
    福地と狩野も笑ってそれに答えようとする。
    「司令、福地さん!危ない!」
    猛烈に嫌な予感がしてセフェティナが叫んだ時、彼女の目の前を何かが通り過ぎた。
    次の瞬間、船長室に血飛沫が舞った。

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