776 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 20:59 [ kHqoVL5Q ]
三介島、カリヴァン軍拠点上空。
そこには人類の知恵と技術の結晶である鉄の塊が風を砕き戦慄いていた。
自衛隊最強たる戦闘機、F-15。エンジン出力10万馬力、これは自衛隊の艦船でもそうは無い程の出力である。
これだけでも、戦闘機という物がどれほどの物であるかが分かるであろう。
「まさか実戦を経験することになるとはなぁっ!」
そのパイロットの一人春間は興奮を抑えきれないでいた。
風が、スピードが、全てが彼を酔わせていた。
アドレナリンが分泌されている、と言うのはこういう状態を言うのだろうか、
春間は段々と五感が覚醒していく感覚に陶酔し始めていた。
「落ち着け春間ぁっ!俺達の任務はF-1、F-2達の護衛だろうがっ!」
「分かってるよ隊長!」
二機編隊ではあるが隊長の梶野に春野は叫んだ。
「後三分で目標上空に着く!我々の任務は敵竜騎士の撃破だ!」
「ははは竜騎士っすか!前は味元の持ってるゲームを『こんなもん』で済ませてたくせに!」
「はん!実物が目の前にいる以上は仕方が無いだろう!」
春間は梶野に軽口を叩くとレーダーを見た。反応は、無い。
「・・・確か偵察では拠点に竜騎士はいなかったんだよな?ちっ・・・臆病もん共が。」
春野はまだ見ぬ敵を思って舌なめずりをした。
777 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 20:59 [ kHqoVL5Q ]
「爆撃、開始します。」
F-2の操縦士の無機質な言葉の後、バラバラと爆弾が地上に向かってばら撒かれる。
そしてそれらは地上に落ちるか落ちないか、炎の花を咲かせた。
偵察の報告ではここに兵力はいない、つまりこれはただ後の拠点制圧を楽にするためだけの任務である。
「つまんねえっ!」
春間は無線を塞いで言った。こんなことを梶野に聞かれれば八つ裂きでは済まない。
するとその春間の悪態を聞いたかのように下方レーダーが反応を示した。
「さすがF-15、下方レーダーには自信ありってか?思ったより役に立つじゃねえか。」
どんどん高度を上げている以上、相手は竜騎士である。
「春間ぁ!あんな垂直上昇が出来るのは竜騎士しかいない、気をつけろっ!」
「わかってらぁ!けっ、偵察の野郎共、いい加減な報告しやがって、だが…そう来なくっちゃなぁ!」
春間は身震いした。
相手竜騎士は5騎。たった五機で何をしようというのか、だが春間にとってそんなことは関係なかった。
「俺の機が一番近い・・・!よぉし、世界で一番最初に竜騎士と戦った男はこの俺だっ!」
「春間っ!」
春間は一気に高度を落とした、梶野も慌ててそれに合わせる。
その他の機も、竜騎士を確認し、急速に迎撃に向かった。
778 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 20:59 [ kHqoVL5Q ]
「くっ!異邦人共め!好き放題やってくれおって。」
この五機の竜騎士、元より勝てる見込みで隠れるのを止め離陸したのではない。
病人、怪我人、何も知らされていない、拠点で使用している奴隷など、
拠点に残らざるを得なかった人間達へのカリヴァン騎士としてのせめてもの誠意であった。
つまり、無駄死にを最初から予定された男達であった。
「一機でも多く、道連れにしてやろう!」
竜騎士は竜を飛び立たせた。
上空の鉄の鳥を見る。何故鉄が飛ぶのかは分からない。だが、彼に分かるのはそれが敵だと言うことだけであった。
そして彼は春間の乗る鉄の鳥に向け炎を吐かせ、自分もまた呪文を唱え始めた。
「ハハハハハハァっ!」
こんなもの相手にミサイルなど必要ない。俺は竜騎士に突進するかのように機体を動かした。
視認距離に入ると同時に竜から炎が放たれる、それを見て俺は何故か口許が歪んだ。
向こうはこちらよりも目が良い。炎もこちらの20mmバルカン砲よりは射程があるらしい、だが。
「そんなんマッハの速度相手に効くかよぉっ!」
バルカン砲の雨を浴びせかけながら急速に機体を曲げた。
竜も距離が遠かったせいか弾の雨をかわす。スピードはこちらの方が遥かに速い。
しかしどうやら小回りならばこちらと互角かそれ以上のものは持っているらしい。
と同時に「レーダーに映らない何か」がこちらに向かってきているのを感じ、俺は慌てて機体を傾けた。
黒い塊。機体を破壊する威力があるかどうかは分からないが受けないに越したことは無い。
避けきった直後別の竜がこちらに炎を浴びせかけてくる。
779 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 21:00 [ kHqoVL5Q ]
「どうせくるんなら同時に撃ちなっ!後ろを見てみろ!」
俺がそう言うと同時に竜は梶野のバルカンを真後ろから受け、吹き飛んだ。
レーダーが無いって言うのは不便なことだな、と同情する。
「春間ぁっ!油断せんことだな!」
「隊長!今のは計算済みの行動だっつの!」
今のを含めればもうすでに三機、こちらが向こうを屠っている。だが、まだ俺は撃墜ゼロ。
俺は迷わず先程の竜に狙いを定めた。向こうは小回りを生かしグニャグニャと飛行しながら炎と魔法を浴びせかけてくる。
「教導隊の鬼どもに比べればてめえらなんて屁でもねえんだよ!」
俺はそれを紙一重で避け、20ミリバルカン砲を叩き込んだ。
弾はワイバーンの頭と騎士を砕き、俺に勝利を確信させた。
「スプラアァッシュ!一機撃墜!」
春間は同時に次の獲物を求めレーダーを見た、しかしそれはもう敵機は存在しないことを示していた。
780 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 21:00 [ kHqoVL5Q ]
東部隊が上陸して送れること数時間、俺達南部上陸隊も上陸した。
なんでも空自を使った支援爆撃が行われたらしいが、詳しい状況は分からなかった。
まあ、こちら側に怪我人は出ていない、というのだから良いのだろう。
そして現在俺達は平野部の南部に陣を設営している。
なんと言ったら良いのか、近くの村の人々は俺達を出迎えるでもなく、敵意を見せるでもなく淡々としていたのだ。
もはや外から蹂躙されるのに慣れてしまったのかもしれない。
ともかく、村の人々の中に魔道士がいないかどうか(篭手を装備していないかどうか)を調べ、
その後すぐに陣地設営の片手間に食料の配給、怪我人の治療が始まった。
そもそも俺達自衛隊はそちらのほうが得意なのである。随分変わった軍隊だと我ながら思うが。
「村田さん。」
「どうした、隊長。」
それらを指揮していると、まだ若いうちの隊長がこちらに声をかけた。
「少し、会議があるようなので、こちらの指揮をお願いします。」
「ああ、わかった。」
我が隊長、青島二尉。若い、と言ったが彼はなかなかの男である。
最初はなよなよしているかとも思ったが、こちらの世界に来てからというもの、随分と風格が出てきたようにさえ見える。
クイ、クイ。
そんなことを考えていると誰かが服のすそを引っ張っていた。
見下ろすと、そこにはまだ6,7歳くらいの少女が居た。ボロボロの服を着ている、現地の子供だろう。
「ありがとお。」
たどたどしい言葉で彼女は礼を言い、頭をペコリと下げた。
どうやら召還された者同士でも言葉は通じるらしい。
「どういたしまして。」
俺はしゃがみ少女と目線を合わせると言って、飴玉を一個彼女にやった。
本当ならば頭の一つでも撫でてやりたい所であったが、どんな宗教があるか分からない、それは自粛した。
なんでも子供の頭の上には神が宿るとか考えている宗教もあるらしい、要人に越したことは無い。
彼女は最初は何か判らないようではあったが、飴玉を舐めるとニコリと笑い、再びペコリと頭を下げ、走っていった。
「…血に汚れちまったこの手でも、人を喜ばせることは出来るのかもナァ?真由美?」
俺はふと郷愁に駆られ、恋人の名を口にした。
三介島、カリヴァン軍拠点上空。
そこには人類の知恵と技術の結晶である鉄の塊が風を砕き戦慄いていた。
自衛隊最強たる戦闘機、F-15。エンジン出力10万馬力、これは自衛隊の艦船でもそうは無い程の出力である。
これだけでも、戦闘機という物がどれほどの物であるかが分かるであろう。
「まさか実戦を経験することになるとはなぁっ!」
そのパイロットの一人春間は興奮を抑えきれないでいた。
風が、スピードが、全てが彼を酔わせていた。
アドレナリンが分泌されている、と言うのはこういう状態を言うのだろうか、
春間は段々と五感が覚醒していく感覚に陶酔し始めていた。
「落ち着け春間ぁっ!俺達の任務はF-1、F-2達の護衛だろうがっ!」
「分かってるよ隊長!」
二機編隊ではあるが隊長の梶野に春野は叫んだ。
「後三分で目標上空に着く!我々の任務は敵竜騎士の撃破だ!」
「ははは竜騎士っすか!前は味元の持ってるゲームを『こんなもん』で済ませてたくせに!」
「はん!実物が目の前にいる以上は仕方が無いだろう!」
春間は梶野に軽口を叩くとレーダーを見た。反応は、無い。
「・・・確か偵察では拠点に竜騎士はいなかったんだよな?ちっ・・・臆病もん共が。」
春野はまだ見ぬ敵を思って舌なめずりをした。
777 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 20:59 [ kHqoVL5Q ]
「爆撃、開始します。」
F-2の操縦士の無機質な言葉の後、バラバラと爆弾が地上に向かってばら撒かれる。
そしてそれらは地上に落ちるか落ちないか、炎の花を咲かせた。
偵察の報告ではここに兵力はいない、つまりこれはただ後の拠点制圧を楽にするためだけの任務である。
「つまんねえっ!」
春間は無線を塞いで言った。こんなことを梶野に聞かれれば八つ裂きでは済まない。
するとその春間の悪態を聞いたかのように下方レーダーが反応を示した。
「さすがF-15、下方レーダーには自信ありってか?思ったより役に立つじゃねえか。」
どんどん高度を上げている以上、相手は竜騎士である。
「春間ぁ!あんな垂直上昇が出来るのは竜騎士しかいない、気をつけろっ!」
「わかってらぁ!けっ、偵察の野郎共、いい加減な報告しやがって、だが…そう来なくっちゃなぁ!」
春間は身震いした。
相手竜騎士は5騎。たった五機で何をしようというのか、だが春間にとってそんなことは関係なかった。
「俺の機が一番近い・・・!よぉし、世界で一番最初に竜騎士と戦った男はこの俺だっ!」
「春間っ!」
春間は一気に高度を落とした、梶野も慌ててそれに合わせる。
その他の機も、竜騎士を確認し、急速に迎撃に向かった。
778 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 20:59 [ kHqoVL5Q ]
「くっ!異邦人共め!好き放題やってくれおって。」
この五機の竜騎士、元より勝てる見込みで隠れるのを止め離陸したのではない。
病人、怪我人、何も知らされていない、拠点で使用している奴隷など、
拠点に残らざるを得なかった人間達へのカリヴァン騎士としてのせめてもの誠意であった。
つまり、無駄死にを最初から予定された男達であった。
「一機でも多く、道連れにしてやろう!」
竜騎士は竜を飛び立たせた。
上空の鉄の鳥を見る。何故鉄が飛ぶのかは分からない。だが、彼に分かるのはそれが敵だと言うことだけであった。
そして彼は春間の乗る鉄の鳥に向け炎を吐かせ、自分もまた呪文を唱え始めた。
「ハハハハハハァっ!」
こんなもの相手にミサイルなど必要ない。俺は竜騎士に突進するかのように機体を動かした。
視認距離に入ると同時に竜から炎が放たれる、それを見て俺は何故か口許が歪んだ。
向こうはこちらよりも目が良い。炎もこちらの20mmバルカン砲よりは射程があるらしい、だが。
「そんなんマッハの速度相手に効くかよぉっ!」
バルカン砲の雨を浴びせかけながら急速に機体を曲げた。
竜も距離が遠かったせいか弾の雨をかわす。スピードはこちらの方が遥かに速い。
しかしどうやら小回りならばこちらと互角かそれ以上のものは持っているらしい。
と同時に「レーダーに映らない何か」がこちらに向かってきているのを感じ、俺は慌てて機体を傾けた。
黒い塊。機体を破壊する威力があるかどうかは分からないが受けないに越したことは無い。
避けきった直後別の竜がこちらに炎を浴びせかけてくる。
779 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 21:00 [ kHqoVL5Q ]
「どうせくるんなら同時に撃ちなっ!後ろを見てみろ!」
俺がそう言うと同時に竜は梶野のバルカンを真後ろから受け、吹き飛んだ。
レーダーが無いって言うのは不便なことだな、と同情する。
「春間ぁっ!油断せんことだな!」
「隊長!今のは計算済みの行動だっつの!」
今のを含めればもうすでに三機、こちらが向こうを屠っている。だが、まだ俺は撃墜ゼロ。
俺は迷わず先程の竜に狙いを定めた。向こうは小回りを生かしグニャグニャと飛行しながら炎と魔法を浴びせかけてくる。
「教導隊の鬼どもに比べればてめえらなんて屁でもねえんだよ!」
俺はそれを紙一重で避け、20ミリバルカン砲を叩き込んだ。
弾はワイバーンの頭と騎士を砕き、俺に勝利を確信させた。
「スプラアァッシュ!一機撃墜!」
春間は同時に次の獲物を求めレーダーを見た、しかしそれはもう敵機は存在しないことを示していた。
780 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/11/10(水) 21:00 [ kHqoVL5Q ]
東部隊が上陸して送れること数時間、俺達南部上陸隊も上陸した。
なんでも空自を使った支援爆撃が行われたらしいが、詳しい状況は分からなかった。
まあ、こちら側に怪我人は出ていない、というのだから良いのだろう。
そして現在俺達は平野部の南部に陣を設営している。
なんと言ったら良いのか、近くの村の人々は俺達を出迎えるでもなく、敵意を見せるでもなく淡々としていたのだ。
もはや外から蹂躙されるのに慣れてしまったのかもしれない。
ともかく、村の人々の中に魔道士がいないかどうか(篭手を装備していないかどうか)を調べ、
その後すぐに陣地設営の片手間に食料の配給、怪我人の治療が始まった。
そもそも俺達自衛隊はそちらのほうが得意なのである。随分変わった軍隊だと我ながら思うが。
「村田さん。」
「どうした、隊長。」
それらを指揮していると、まだ若いうちの隊長がこちらに声をかけた。
「少し、会議があるようなので、こちらの指揮をお願いします。」
「ああ、わかった。」
我が隊長、青島二尉。若い、と言ったが彼はなかなかの男である。
最初はなよなよしているかとも思ったが、こちらの世界に来てからというもの、随分と風格が出てきたようにさえ見える。
クイ、クイ。
そんなことを考えていると誰かが服のすそを引っ張っていた。
見下ろすと、そこにはまだ6,7歳くらいの少女が居た。ボロボロの服を着ている、現地の子供だろう。
「ありがとお。」
たどたどしい言葉で彼女は礼を言い、頭をペコリと下げた。
どうやら召還された者同士でも言葉は通じるらしい。
「どういたしまして。」
俺はしゃがみ少女と目線を合わせると言って、飴玉を一個彼女にやった。
本当ならば頭の一つでも撫でてやりたい所であったが、どんな宗教があるか分からない、それは自粛した。
なんでも子供の頭の上には神が宿るとか考えている宗教もあるらしい、要人に越したことは無い。
彼女は最初は何か判らないようではあったが、飴玉を舐めるとニコリと笑い、再びペコリと頭を下げ、走っていった。
「…血に汚れちまったこの手でも、人を喜ばせることは出来るのかもナァ?真由美?」
俺はふと郷愁に駆られ、恋人の名を口にした。