581 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:26 [ kHqoVL5Q ]
アルヴァールはアルクアイと同意見だった。
元々アジェントにはバルトとニホンを同時に相手取る力は無い。
ならばどちらかと同盟するしかない。
ちなみにオズインと組むと言う手は問題外である。
滅び行く国と組んでは国力を浪費するだけで終わることになるのだから。
だがバルトと組むのには障害が多かった。
理由は二つ。教会と、エルフであった。
教会にことごとく反する国、バルト。これは言うまでも無い。
そしてダークエルフが首脳に居る以上エルフ達の反発も避けられないだろう。
ならばニホンと組む、これはバルト以上に障害が多かった。
召還した島々、そこに住む人々は奴隷として呼び出したものである。
そう言う見方がアジェントでは主流であった。
奴隷達と組むということがどれだけ国家や国民のプライドを傷つけるかは想像に難くない。
さらにニホンも機械を使うと言う。これにも教会は反発するだろう。
そしてよしんば同盟したとしても自分達をアジェントが召還したと知れば、恐らく東の国は敵に回るだろう。
つまり同盟する相手はバルトしかないのだ。
しかしここで自分がその意見を言っては、王家と教会との仲が険悪になる恐れがあった。
だからこそ彼はアルクアイを利用したのだ。
しかしアルクアイがこのことを言うからには、この同盟にアルクアイにとってなんらかの利益があるということである。
そしてアルヴァールはそれを黙って見過ごすわけにも行かなかった。
582 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:26 [ kHqoVL5Q ]
アルクアイの一言は場が凍らせた。
その硬直は何秒か続いた後、破裂した。
「何を考えているのだ貴様ぁ!」
その口火を切ったのは神官の一人であった。
「今の、お前の、一言は、この偉大なるアシェナ教会、いや、数百年にわたる王国の栄光を否定する言葉だ!」
「バルトと組むだと!恥を知れ、売国奴!」
「あのような神に反する者と組めるか!」
様々な罵詈雑言がアルクアイを襲った。
それだけアジェント国内でのバルトへの反発は強かった。
その中でイルマヤ候が叫んだ。
「バルトなど恐れぬに足りぬ、そのような者などオズインと手を組み叩き潰してやろうではないか!」
「そのとおりだ!」
その勇猛な言葉にハルバ候を初めとして何人かの中小諸侯が賛意の声を上げた。
「ならば!」
その言葉にアルクアイは猛然と叫んだ。
583 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:27 [ kHqoVL5Q ]
「ならば攻め入るバルトに対し、貴候らが敗れた時はどうなさるのか!」
アルクアイの叫びに対し、イルマヤ候はそれを上回る声で叫び返した。
「何を言うか、我を侮辱するのか!我々に死を恐れる兵など一人も居ない!
美しい滅びと言う物を見せつけてやろうではないか!」
「そうではない!」
アルクアイは叫んだ。
「極論すれば貴候らが滅ぶことなどどうでもよい!
貴候らが敗れると言うことはバルトの軍勢がこの王都にまで及ぶということ、
そのことに対して貴候らは責任を負えるのか!」
その剣幕にイルマヤ候はたじろいだ。
「だ、だが。東の奴隷島の彼奴らの軍勢を防ぐのは東岸の貴様らの役目であろう!
貴様は彼奴らの軍勢を防げるのか!?」
「策が無くては提案しない!」
「ほう、ならば言ってもらおうか。」
アルヴァールはあくまでも傍観者の立場で先を促した。
アルクアイも当然アルヴァールの意図には気が付いていた。
584 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:29 [ kHqoVL5Q ]
「そもそもどうやってバルトと手を組むのか。そこに全ては終始します。」
アルクアイはまた世界地図の幻を参加者達の目の前に出し、話を始めた。
「彼らと我々は遠く離れていますが、思想が大きく違い、対立してきました。
しかし多彩な思想と違い彼らの目的は一つ、肥沃な土地の確保です。
これを与えてやると言えばすぐに彼らはこの同盟に飛びつくでしょう。」
「与える土地、というのは?まさか我が領を与えるわけには行くまい。」
アルヴァールは無表情で聞いた。
すでに答えは分かりきっているだろうに、アルクアイはその余りな態度に苦笑した。
「それでは地図を見ていただきたい。
ハルバ候領の南、大森林を越えたところに肥沃、かつ広大な土地が存在します。
ここは南東の小国のために我が領土にすることが出来ない土地。ならば外交に利用するのが一番かと。」
「バカな!」
ハルバ候は叫んだ、すぐ近くにバルトが存在することになる、それだけでも怖くてたまらないのに、
今度は長年の悲願だった空白地を敵にくれてやれ、というのだ。
臆病なハルバ候でもここでは叫んだ。
「そんなもの敵を強くするのと同じことではないか!」
585 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:30 [ kHqoVL5Q ]
「話しは最後まで聞いていただきたい。」
アルクアイはそれを静かに制した。
「バルトと同盟する、その理由は別に攻められないためではありません。
敵同士を戦わせる。つまりバルトとニホンを戦わせるためです。」
「何をバカな。」
それをすぐに否定する人間がいた。
神官達に、イルマヤ候であった。
「空白地をバルトにくれてやったとしても、奴隷島は島だ。
空白地が東岸に接しない以上この二つを戦わせることは出来ないだろう。」
アルクアイはそれを黙って聞き、一言呪文を唱えた。
すると地図の一部が光りだした。
空白地の東、東岸にも接する小国群であった。
「彼らは最近我々に対する反発を増しています。もはや属国としておくメリットはありません。
ならば、この小国群の地域をバルト、もしくはニホンがとれば、この二国は国境を接します。」
ほお・・・。貴族達の間でため息がつかれた。
その雰囲気を感じ取って神官の一人が発言した。
「ニホンが小国群ではなくその北の我々の領土に攻め込んだ場合はどうするつもりだ?」
「外交によって誘導します。それに向こうも馬鹿ではない。
守りを固めた我々と、自分の国を防衛することも出来ず、我々に頼る小国群、攻め込むならどちらなら選ぶでしょう。
それに我が領とて多少の防備の備えはある、その間にバルトと共同戦線を結べばよい。」
アルクアイは答え、続けた。
「そしてバルトとニホンがぶつかった時に、我々はバルトと共にニホンを撃破し、
その後連戦に次ぐ連戦で疲弊したバルトをたいらげれば良いでしょう。
そうすればこの地域は全てがアジェントのものになります。
目障りな小国群が消え、バルト、オズイン地域が全て手に入る。どうでしょうか!」
参加者の一部が立ち上がり、拍手をした。その拍手は広がり、参加者の半分以上が拍手をし、
広間は拍手に包まれた。
その中でアルクアイはアルヴァールをはっきり見据えた。
彼を、議論の場に引きずり出そうとしたのだった。
参加者達はそれに気付き拍手を止め、皆アルクアイを見つめた。
立場を曖昧にしておきたい彼も、自身がアルクアイに意見を求めた以上、
その意見に対し答えざるを得なかった。
586 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:30 [ kHqoVL5Q ]
「・・・私は・・・。」
皆が固唾を呑んで見守る。
彼の言葉は王家の言葉。王家の言葉はアジェントの方針なのだ。
特に教会の人間の目線は刺すようだった。
「私はアルクアイ殿の方針・・・やむを得ないと思っている。」
会議場に激震が走った、そして事前に話を聞いていたアルジェン13世はギリ、と奥歯を噛みしめた。
教会の神官、教皇は目を剥き、上唇はめくれ上がり、怒りをあらわにしていた。
「このアジェントは強い!東西の二国を相手にしてもアシェナの加護を受けている我々なら勝てる!
そうではないのか、諸君!」
教皇は叫び、参加者達を見回した。
しかし参加者、特に中小諸侯達は彼と目が合うと慌てて目をそらした。
いくら国教にアシェナ聖教がされているとしても彼らは狂信者ではない。
自らの領土に戦乱が及ばないことが最優先なのである。
教皇は怒りに肩を震わせた。
しかし会議はそのまま終わりを迎えようとしていた。
アルヴァールはアルクアイと同意見だった。
元々アジェントにはバルトとニホンを同時に相手取る力は無い。
ならばどちらかと同盟するしかない。
ちなみにオズインと組むと言う手は問題外である。
滅び行く国と組んでは国力を浪費するだけで終わることになるのだから。
だがバルトと組むのには障害が多かった。
理由は二つ。教会と、エルフであった。
教会にことごとく反する国、バルト。これは言うまでも無い。
そしてダークエルフが首脳に居る以上エルフ達の反発も避けられないだろう。
ならばニホンと組む、これはバルト以上に障害が多かった。
召還した島々、そこに住む人々は奴隷として呼び出したものである。
そう言う見方がアジェントでは主流であった。
奴隷達と組むということがどれだけ国家や国民のプライドを傷つけるかは想像に難くない。
さらにニホンも機械を使うと言う。これにも教会は反発するだろう。
そしてよしんば同盟したとしても自分達をアジェントが召還したと知れば、恐らく東の国は敵に回るだろう。
つまり同盟する相手はバルトしかないのだ。
しかしここで自分がその意見を言っては、王家と教会との仲が険悪になる恐れがあった。
だからこそ彼はアルクアイを利用したのだ。
しかしアルクアイがこのことを言うからには、この同盟にアルクアイにとってなんらかの利益があるということである。
そしてアルヴァールはそれを黙って見過ごすわけにも行かなかった。
582 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:26 [ kHqoVL5Q ]
アルクアイの一言は場が凍らせた。
その硬直は何秒か続いた後、破裂した。
「何を考えているのだ貴様ぁ!」
その口火を切ったのは神官の一人であった。
「今の、お前の、一言は、この偉大なるアシェナ教会、いや、数百年にわたる王国の栄光を否定する言葉だ!」
「バルトと組むだと!恥を知れ、売国奴!」
「あのような神に反する者と組めるか!」
様々な罵詈雑言がアルクアイを襲った。
それだけアジェント国内でのバルトへの反発は強かった。
その中でイルマヤ候が叫んだ。
「バルトなど恐れぬに足りぬ、そのような者などオズインと手を組み叩き潰してやろうではないか!」
「そのとおりだ!」
その勇猛な言葉にハルバ候を初めとして何人かの中小諸侯が賛意の声を上げた。
「ならば!」
その言葉にアルクアイは猛然と叫んだ。
583 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:27 [ kHqoVL5Q ]
「ならば攻め入るバルトに対し、貴候らが敗れた時はどうなさるのか!」
アルクアイの叫びに対し、イルマヤ候はそれを上回る声で叫び返した。
「何を言うか、我を侮辱するのか!我々に死を恐れる兵など一人も居ない!
美しい滅びと言う物を見せつけてやろうではないか!」
「そうではない!」
アルクアイは叫んだ。
「極論すれば貴候らが滅ぶことなどどうでもよい!
貴候らが敗れると言うことはバルトの軍勢がこの王都にまで及ぶということ、
そのことに対して貴候らは責任を負えるのか!」
その剣幕にイルマヤ候はたじろいだ。
「だ、だが。東の奴隷島の彼奴らの軍勢を防ぐのは東岸の貴様らの役目であろう!
貴様は彼奴らの軍勢を防げるのか!?」
「策が無くては提案しない!」
「ほう、ならば言ってもらおうか。」
アルヴァールはあくまでも傍観者の立場で先を促した。
アルクアイも当然アルヴァールの意図には気が付いていた。
584 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:29 [ kHqoVL5Q ]
「そもそもどうやってバルトと手を組むのか。そこに全ては終始します。」
アルクアイはまた世界地図の幻を参加者達の目の前に出し、話を始めた。
「彼らと我々は遠く離れていますが、思想が大きく違い、対立してきました。
しかし多彩な思想と違い彼らの目的は一つ、肥沃な土地の確保です。
これを与えてやると言えばすぐに彼らはこの同盟に飛びつくでしょう。」
「与える土地、というのは?まさか我が領を与えるわけには行くまい。」
アルヴァールは無表情で聞いた。
すでに答えは分かりきっているだろうに、アルクアイはその余りな態度に苦笑した。
「それでは地図を見ていただきたい。
ハルバ候領の南、大森林を越えたところに肥沃、かつ広大な土地が存在します。
ここは南東の小国のために我が領土にすることが出来ない土地。ならば外交に利用するのが一番かと。」
「バカな!」
ハルバ候は叫んだ、すぐ近くにバルトが存在することになる、それだけでも怖くてたまらないのに、
今度は長年の悲願だった空白地を敵にくれてやれ、というのだ。
臆病なハルバ候でもここでは叫んだ。
「そんなもの敵を強くするのと同じことではないか!」
585 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:30 [ kHqoVL5Q ]
「話しは最後まで聞いていただきたい。」
アルクアイはそれを静かに制した。
「バルトと同盟する、その理由は別に攻められないためではありません。
敵同士を戦わせる。つまりバルトとニホンを戦わせるためです。」
「何をバカな。」
それをすぐに否定する人間がいた。
神官達に、イルマヤ候であった。
「空白地をバルトにくれてやったとしても、奴隷島は島だ。
空白地が東岸に接しない以上この二つを戦わせることは出来ないだろう。」
アルクアイはそれを黙って聞き、一言呪文を唱えた。
すると地図の一部が光りだした。
空白地の東、東岸にも接する小国群であった。
「彼らは最近我々に対する反発を増しています。もはや属国としておくメリットはありません。
ならば、この小国群の地域をバルト、もしくはニホンがとれば、この二国は国境を接します。」
ほお・・・。貴族達の間でため息がつかれた。
その雰囲気を感じ取って神官の一人が発言した。
「ニホンが小国群ではなくその北の我々の領土に攻め込んだ場合はどうするつもりだ?」
「外交によって誘導します。それに向こうも馬鹿ではない。
守りを固めた我々と、自分の国を防衛することも出来ず、我々に頼る小国群、攻め込むならどちらなら選ぶでしょう。
それに我が領とて多少の防備の備えはある、その間にバルトと共同戦線を結べばよい。」
アルクアイは答え、続けた。
「そしてバルトとニホンがぶつかった時に、我々はバルトと共にニホンを撃破し、
その後連戦に次ぐ連戦で疲弊したバルトをたいらげれば良いでしょう。
そうすればこの地域は全てがアジェントのものになります。
目障りな小国群が消え、バルト、オズイン地域が全て手に入る。どうでしょうか!」
参加者の一部が立ち上がり、拍手をした。その拍手は広がり、参加者の半分以上が拍手をし、
広間は拍手に包まれた。
その中でアルクアイはアルヴァールをはっきり見据えた。
彼を、議論の場に引きずり出そうとしたのだった。
参加者達はそれに気付き拍手を止め、皆アルクアイを見つめた。
立場を曖昧にしておきたい彼も、自身がアルクアイに意見を求めた以上、
その意見に対し答えざるを得なかった。
586 名前:F猿 (BfxcIQ32) 投稿日: 2004/10/07(木) 20:30 [ kHqoVL5Q ]
「・・・私は・・・。」
皆が固唾を呑んで見守る。
彼の言葉は王家の言葉。王家の言葉はアジェントの方針なのだ。
特に教会の人間の目線は刺すようだった。
「私はアルクアイ殿の方針・・・やむを得ないと思っている。」
会議場に激震が走った、そして事前に話を聞いていたアルジェン13世はギリ、と奥歯を噛みしめた。
教会の神官、教皇は目を剥き、上唇はめくれ上がり、怒りをあらわにしていた。
「このアジェントは強い!東西の二国を相手にしてもアシェナの加護を受けている我々なら勝てる!
そうではないのか、諸君!」
教皇は叫び、参加者達を見回した。
しかし参加者、特に中小諸侯達は彼と目が合うと慌てて目をそらした。
いくら国教にアシェナ聖教がされているとしても彼らは狂信者ではない。
自らの領土に戦乱が及ばないことが最優先なのである。
教皇は怒りに肩を震わせた。
しかし会議はそのまま終わりを迎えようとしていた。