自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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5月16日、午前5時30分 第58任務部隊第4任務郡旗艦エセックス
エセックスの飛行甲板上には、16機のF6F,20機のSB2C、14機のTBFが並べられ、
轟々とエンジンの唸りを上げていた。
エセックスの左舷1000メートルを航行する空母ランドルフも同様に、飛行甲板に艦載機を
並べ、艦載機がエンジン音を上げていた。
「久しぶり、いや、この世界に来ては初めて、と言うべきか。」
エセックスの艦橋から攻撃隊を見つめている士官、ウイリアム・ハリル少将はそう呟いた。
「司令、間もなく発艦準備が終わります。」
艦長のオフスティー大佐が言うと、彼は頷いた。
「通信士官、各艦に連絡。準備でき次第発艦せよ。」
通信士官は命令を復唱し、艦橋から飛び出していった。やがて、命令が各母艦に伝えられた。
5分後、先に空母ランドルフから艦載機が発艦し始めた。朝焼けのオレンジ色の光が、周りを
幻想的な色に彩っていく。
「綺麗だな・・・・・朝日というものは。どんな異世界にも、太陽はあるのだな。」
ハリルは感動したように朝日を眺めた。
「発艦準備OK!」
甲板士官がそう叫ぶと、オフスティー大佐は、
「発艦はじめ!!」
と、大声で叫んだ。
甲板要員がフラッグを振った。F6Fの1番機、デイビット・マッキャンベル中佐の機が発艦を開始した。
手空き乗員が、帽子や手を振って発艦を見送った。様々な声援に後押しされるかのように、滑走速度を早めていく。
F6Fは先端を蹴ると、大空に舞い上がっていった。それを皮切りに、次々と艦載機が発艦してい
いった。発艦は25分ほどで終わった。
既にランドルフ隊の攻撃隊は編隊を組み終えていた。エセックス隊は上空で編隊を組むと、ランドルフ
隊と共に一路北東に進んでいった。第58任務部隊は第3郡と第4郡から合計で200機の第1次攻撃隊
を発艦させた後、第1、第2郡から第2次攻撃隊を発艦させようとしていた。
目標はロタ半島の付け根に当たる町、ララスクリスと、その北40キロにあるクロイッチであった。

話は5月11日に遡る。その日、ヴァイアン号はロタ半島の港町、シュングリルに戻った。シュングリルの住人は
ヴァイアン号と共にいる見たこともない船に仰天した。
平べったい甲板を持つ船、明らかに大きい船体の上に大砲をこれでもかと積んだ大型船。小さいながらも、速度が
でそうなスマートな小型船。どれもこれもが彼らの考えを超越していた。
ヴァイアン号を護衛していた船は、シュングリルまでは入ってこず、やや離れた沖合いで錨を下ろした。
港町は騒然となった。その騒ぎを聞きつけたトラビレス協会の会長であるバベルは、急いで港に飛んできた。
午前10時にヴァイアン号は港に戻った。桟橋にはバベルが出迎えに来ていた。
「よお、フランクス。変わったものを連れて来たな。」
「ああ。最初はかなり罵声を浴びせられたよ。馬鹿野郎って怒鳴られてな。俺達はその場で殺されるかも知れんと
覚悟したよ。」
「本当か?」
「本当だ。あちらさんは、最初そっちの都合だけで呼び出すとは考えが甘すぎる。相手を選んでから召喚しろと言われた。」
「散々だな。しかしそんな相手と話してよく、ああいうのを連れて来たな。」
「こっちの状況をこと細かく話したら、協力を引き受けてくれたんだ。最初の雰囲気で断られるなと確信していたが、
レイムの体験談を聞かせたら、情に打たれたのか引き受けてくれた。」
彼はレイムに顔を向けた。
「君のお陰だよ。」
「いえ、それほどでもありません。私はただ、バーマントの蛮行を知って貰いたくてやったまでです。別に大したほどでは。」
彼女は謙遜して首を振った。

「しかし、お前達も大変な時に来たな。」
バベルはそう言うと、深くため息をついた。表情が暗い。フランクスはどうしたのだ、と聞いた。
「バーマント公国が、このシュングリルを攻略するために進撃を始めた。昨日、敵の根拠地と化したクロイッチから20万の
兵力が南下して3日前にララスクリスを襲ったんだ。防衛軍は6万ほどいたがほとんどが壊滅した。敵は機動式飛空挺をフル
に投入して味方を襲っている。防衛軍の大半はこの空からの爆弾攻撃で戦意を喪失したところに敵に突っ込まれた。6万の防
衛軍は必死に戦ったが、数に飲まれた。ほとんどが殺されたらしいぞ。幸いなのは住民は逃げ出していた事だな。だが、この
シュングリルが襲われるのも時間の問題だ。防衛軍がこの町の郊外に布陣しているが、数はたったの5万だ。敵はまだまだ強大
だから前線から逃亡する兵士もいる。この町から逃げ出す住民も増え始めた。」
バベルはそう言うと、頭を抱えた。
「この状態じゃ、この故郷も、家も、全て失うだろう。状況は最悪だ。」
「そんなに情勢は悪化していたのか・・・・・」
フランクスは、あまりにも情勢が変わりすぎることに絶句した。彼もまさか、ここまで酷くなるとは思わなかったのである。
だが、フランクスは表情を変えた。
「バベル、この町はなんとか救われるかもしれないぞ。」
「なんだと?本当か?」
「ああ、本当だ。」
「もしや、君が連れてきたあの5隻の船が何かしてくれるのか?」
「してくれるが、あれだけでは数は足りないな。」
そう言うと、フランクスは人の悪そうな笑みを浮かべた。
「そのうち、やってくるさ。俺がこう言う証拠がな。」

午後4時、日がようやく傾いたところに、シュングリルの沖合いに見慣れぬ大船団が姿を現した。それは20隻前後の集団を組んだ
大小の船が、整然と航行してくる姿だった。それだけでも凄いのに、それと同様な集団が、なんと4つもある!
シュングリルの町が見渡せる高台から、この船団を見たバベルは再び驚いた。
「すごい・・・・・すごいぞこれは。」
彼はその後の言葉が思い浮かべられなかった。ただ凄いという言葉をおうむのように繰り返すだけだった。高台には彼の他にもいつもの
4人や、町の人が数十人ほどいた。
「フランクス、本当に彼らは敵ではないのだな?」
「ああ。そうだ。」
フランクスは即答した。バベルが初めて目にしたこの大船団こそ、アメリカ海軍の空母機動部隊、第58任務部隊に他ならなかった。
「住民はきっとあの船団を見て不安に思っているだろう。彼らは敵ではないと伝えねば。」
そう言うと、彼は急いで町に戻って行った。

インディアナポリスは、機動部隊と共にシュングリルにやってきた。スプルーアンスは早速、
第5艦隊の司令部幕僚を連れてシュングリルの要人と会談を行った。
当初は誰もがスプルーアンスら異世界から来た人間に驚いていた。
だが、話すうちに互いが打ち解けあい、会談は長時間にわたって続けられた。
この時、スプルーアンスらに防衛軍の司令官が、侵攻してくるだろうバーマント軍の主力がいる
ララスクリスとクロイッチの攻撃を要請された。
スプルーアンスは二つ返事で受け入れた。彼が即答した理由は。バーマント軍にヴァルレキュア側に
強力な助っ人がいること、またその助っ人が膨大な破壊力を持つと言うことを思い知らせることが出来る、
と言うことである。
スプルーアンスらにはロタ半島の地図が渡された。それは距離などが正確に記されていたが、
書かれていた文字はあまり分からなかった。
しかし、大事な資料であることには変わりなく、彼はありがたく頂戴することにした。スプルーアンスは
インディアナポリスに帰ってすぐにミッチャーの第58任務部隊に、このララスクリスとクロイッチを攻撃するように命じた。
ミッチャー中将の司令部は、スプルーアンスの副官が渡した地図を元に作戦計画を練った。文字の通訳として、ターナー魔道師
も交えて、解読しながら作戦の開始時刻などを話し合った。
そして15日の夕方に機動部隊はシュングリル沖から出航。目的地であるララスクリスと、クロイッチ空襲に向かった。

ララスクリスとクロイッチは、シュングリルから北400キロの所にある。機動部隊はまず、陸地から100マイル地点まで接近してから艦載機
を発艦させることにした。
その間、敵の襲撃船や巨大生物に襲われる可能性もあるため、上空直掩機を飛ばし、周囲の警戒に当たった。そして5月16日午前5時30分。
機動部隊は、まずララスクリスで戦力を再編中のバーマント軍に対して、第1次攻撃隊200機を差し向けた。
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