自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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大陸暦1098年5月 ヴァルレキュア王国首都ロイレル
ロイレルはヴァルレキュア王国の首都で人口が100万人の大都市である。
しかし、ここ数年続いていた戦争で、人口は150万に増えていた。
街には戦争で家を無くした者や、孤児などが溢れ返っていた。それでも、中世風の
美しい町並みは損なわれていない。そんな街中を、一台の馬車が音を立てて走り去っていた。
「そこどけ!ぶつかるぞ!!」
人ごみの中を分け入るようにして馬車が進んで行き、御者が声を枯らして通行人に注意を
繰り返した。
馬車は人ごみを抜け、街の中心部から郊外にむけて走り去った。

夕方、馬車は郊外のとある田舎町に到着した。
「着きました。」
御者が後ろを振り返ってそう言うと、中から野太い返事が返ってきた。
「うむ。ご苦労だった。」
中から現れたのは、腰に剣を吊った初老の騎士だった。顔はいかめしく、顔の下半分が
髭に覆われている。体格はがっしりとした感じでいかにも歴戦の戦士といった風貌である。
彼は早歩きで小川の橋を渡った。橋の側では老人が釣り糸をたらして釣りに興じていた。
戦なんてどこ吹く風。老人の表情はそういっているかのようだった。
(釣りか・・・・そういえば戦争が始まって以来は一回もやってないな。戦争が終わったら
また釣りをしてみたいものだ)
彼は感慨深げに沿う思いながら歩き続けた。
2分もしないうちに小さな木造の小屋が目に入った。見た目的には質素な感じだ。
ドアを蹴破ればたちどころに崩れ落ちるのではないか、そう思うほどひどいオンボロ
部屋だった。
そのボロ部屋から一人の若い男が出てきた。メガネをかけた痩せた男性である。
「フランクス将軍閣下、よく参られましたな。ささ、こちらに。」
若い男に誘われ、フランクスはふとさきほどの老人に振り向いた。
「あのお方なら大丈夫です。あの人は見張り役ですよ。ああ見えても昔は騎士旅団
を率いていたそうです。」
「そうか。」
彼は無表情でそう頷くと納屋に入った。若い男が床下に手を伸ばし、板を取った。地下室の階段が
現れた。
若い男が先に入り、次にフランクスが入った。会談を下り終えると、そこには
魔方陣のような紋章を囲み、何かをやっている男女5人がいた。彼が入ったことに気付いた
彼らは何かをやめた。
「ようこそ。フランクス将軍閣下。」
一人の女性が笑顔を浮かべながら彼に声をかけた。
「私はリーダーのレイム・リーソンです。」
彼女がそう言うと、彼はあることを思い出した。

(ほほう。こいつがあのリーソン魔道師か)
リーソン魔道師は、ヴァルレキュア王国の中でも五本の指の中に入ると言われた
優秀な魔道師で、若い魔道師(彼女も27歳なのだが)からは羨望の眼差しで見つめられている。
彼女を一躍有名にしたのが、1年前の7月に起きた首都のバーマント軍スパイとの
死闘で、彼女を命を狙った屈強な敵スパイ7人があっという間に彼女に叩きのめされたのだ。
このことから、リーソンは近接格闘も出来る魔道師ということで広く知られた。
「君の勇名はかねがね聞いてるよ。なんだって正規兵が手こずる敵特殊兵をぶちのめしたんだからな。」
「あの時は必死でしたからあまり覚えていないんです。まあ、昔から続けていた格闘術が役に立ったのが
嬉しいですけど。」
彼女はそれよりもと言って残るメンバーを紹介した。
「私の側にいるこのメガネの女の子がリリア・フレイド、隣の男の子がローグ・リンデル
で次がフレイヤ・アーバイン、その次にナスカ・ランドルフ。であなたを案内したこの
男の子がマイント・ターナーです。いずれも優秀な魔道師です。」
紹介を受けたメンバーが頷く。彼はうむ、というだけだった。
「この計画についてはご存知ですね?」
「ああ、市街地から出るときに聞かされたが、君たちは魔法で何かを召喚するようだな。
私は国王からその瞬間を見て来いと、ここに派遣されてきたのだ。」
「ええ、その通りです。」
「で、そこで聞きたいのことがある。何を召喚するんだね?」
「それは、勇敢な戦士がいる島を、この世界に呼び出すのです。」
「そうか。」
彼は頷き、質問を続けた。
「それで、召喚された島はどこに出る?」
「予定としては、ここです。」
彼女は地図を取り出して予定地点を指した。その地点はヴァルレキュア王国の
ロタ半島からやや離れた所だった。
「この地点から南に2日。さらに船で4日か・・・・・大分遠いな。」
「現状ではこれで限界です。」
「そうか、なら仕方ないな。重ねてすまないがもう一度質問がある。召喚時期は
いつになる?」
彼が聞いたとき、納屋がガタガタと風で揺れ始めた。その跡にポタッポタッと何かが
屋根に何かが滴り落ちる音がした。
「2日以内です。」

1944年5月2日 マーシャル諸島メジュロ環礁
あたりはすっかり暗くなっていた。時間は8時を過ぎ、将兵は当直を残して
今日の業務を終えていた。
「スプルーアンス長官。」
長官室で休憩を取っていたスプルーアンスに、通信参謀のジュスタス・アームストロング
中佐が電報を持って来た。
「空母ランドルフから入電です。」
「読め。」
「我、間もなくメジュロに到着す、であります。」
「分かった。ランドルフは当初の通り、ハリルの部隊に預けよう。他にはないか?」
「気象班から南30マイルにハリケーンがあり、マーシャルに迫っているようです。」
それを聞くと、彼は眉をひそめた。
「弱ったな。明日、2個空母郡をハルゼーの元に貸す予定だったのだが。」
彼はコーヒーカップに注がれているコーヒーを見つめた。コーヒーが揺れている。
実は接近するハリケーンのせいで、環礁内の波も少しずつ荒れ始めてきた。
環礁に囲まれているから波の荒れは抑えられているほうだが、それでも波はやや
高くなり始めている。
外海ではもっと波が高い。外洋訓練に出ていた軽巡ビロキシの艦長がこの波では
大型艦でも操艦は難しいとこぼしたほどだった。
「仕方ない。派遣部隊は一旦出港を中止だ。空母や艦艇が傷ついたら困るからな。」
「分かりました。派遣部隊にそのように伝えます。」
アームストロング中佐は敬礼をして長官室を出て行った。

「空がだいぶ荒れてきたな。こいつは出港できんかもしれんな。」
第58任務部隊司令官マーク・ミッチャー中将は陰鬱そうな表情でそう呟いた。
「マーシャル諸島近海に大型のハリケーンが接近しているようです。聞いた話によれば
かなりでかいとのことです。観測史上最大とも。」
参謀長のアーレイ・バークがそう言うと、ミッチャーは、
「ハリケーンの時には航海しないに限るよ。」
とため息混じりに言った。
「昔、候補生の時に軍艦に乗ったんだ。ある日、ハリケーンに突っ込んで乗っていた
軍艦はもみくちゃに揺られたよ。私の友人がゲエゲエ吐いてな、思わずつられて床に
嘔吐したものだ。あれから何十年と経ったが今でもハリケーンの中は入りたくないな。
このレキシントンだってハリケーンの前には無力だろう。」
「しかし、これでホーランジアの支援は遅れてしまいますな。」
「ホーランジアは陸軍機もいるからいい。問題はトラックだ。あそこにはまだ日本海軍
の航空隊が多数居座っている。アレを叩き潰さん限り、基地航空隊に側面を衝かれる恐れがある。」
ミッチャーはそう言うと、外に視線を移した。夜空はどんより曇っていた。その時、艦橋のスリットガラス
に水滴がついた。

午前3時、マーシャル諸島
ザアアアアーーーー!という音と共に金切音のような風のカン高い音が、インディアナポリス
に鳴り響いた。
当直将校であるカイル・ロック中尉は艦橋でその音を忌々しそうに聞いていた。
「ロック中尉、今度のハリケーンはやたらにでかいようですね!」
部下の下士官であるアーバイン・エミリアン兵曹長が聞いてきた。体ががっしりした偉丈夫である。
「ああ、そのようだな。お前が自慢しとるイチモツより遥かにでかいぞ。」
「なあにいってるんすか。ハリケーンには負けるに決まってるでしょうに。」
「おやあ?貴様はこの前言ってなかったか?俺のアレは何にも負けん!と酒を飲みながら
言ってたじゃないか。」
「人間限定ですよ。」
彼がそう言うと、艦橋に爆笑が広がった。
「そらあ、無理も無いですな。先任。」
「なにを貴様。馬鹿にすると貴様の睾丸を引き抜くぞ!」
冷やかしに入ったアーウィン・スタンス1等水兵の股間を握ろうとする。もちろん
悪ふざけである。
そこへ一人の将校が入ってきた。
「あ、フラック大尉。」
艦橋にいた5人の将兵は彼に向かって一斉に敬礼した。口ひげを生やした中肉中背の仕官である。
「おう、任務ご苦労。ほれ、コーヒーを持って来たぞ。」
フラック大尉自ら皆に手渡した。
「しかし酷い嵐だな。外海は大荒れだぞ。」
フラック大尉はロック中尉に話しかけた。
「ええ、おかげで機動部隊はホーランジア出港を見送ったそうですよ。」
「まあな。この嵐じゃ仕方ない。」
ロック中尉は窓の外を見つめた。外は大粒の雨が降り注ぎ、暴風が吹き荒れていた。
「そんな事より、東京ローズでも聞かんか?電波状況が悪くて聞き取れにくいが。」
彼がそう言うと、5人はおっ!と声を上げた。この時間、彼らが楽しみにしているのは
東京から発信される東京ローズと呼ばれるラジオ番組だ。
この敵国のラジオの人気の訳は、アナウンサーにあった。
フラック大尉が持って来たラジオにスイッチを入れた。ガガガー、ピーという嫌な音が鳴った。

最初は途切れ途切れにしか来なかったが、やがてまとまった声が聞こえた。
「ハロー、アメリカ兵の皆さん。東京ローズです。マーシャルなんかで日光浴
なんかしてる場合かな~?そんなとこでブラブラしてると、愛する彼女が他の
人にとられてるかもよ?」
美麗な声が聞こえると、皆がニンマリした。
「ローズちゃんよ。生憎だが、俺はまだ彼女無しなんだよな。」
エミリアン兵曹長が皮肉ったようにラジオに向かって言う。
「まっ、日本に着いたら、俺が君の彼氏になってやるからよ!」
彼がそう言うと、他の水兵がヒューヒュー!と口笛を鳴らした。人気のわけは
アナウンサーの美しい声にあった。太平洋戦域に進出しているアメリカ軍将兵は
敵国人ながらも、その美しい声がするラジオ放送を聞きながら、任務で荒んだ
心を癒しているのだ。
ラジオからは音楽が流れ始めた。嵐のせいで明瞭ではないが、それでも彼らには
心地よく聞こえた。

その時、目の前が一瞬真っ白になった。
(ん?なんだ?)
ロック中尉はそう思ったが、真っ白な視界が元の暗い艦橋に戻った。
周りは何の変わりも無い。疲れたのだろう。彼はそう思った。
「あれ?ラジオがまたおかしくなったぞ。」
フラック大尉がそう言った。ラジオからはガーーー!という雑音しか聞こえない。
「おかしいなあ。」
彼はつまみを回すが、一向に戻らない。いろいろ試してみたが、結局元に戻らなかった。

大陸暦1098年5月 マーシャル諸島メジュロ環礁

コンコン コンコン コンコンコン
ドアをノックする音が聞こえる。眠っていたスプルーアンスは安眠から現実に戻された。
まぶたが重い。眠気がする。スプルーアンスは時計を見てみた。まだ4時近くである。
「何だ?」
彼は不機嫌そうな口調でそう言った。いや、実際不機嫌だ。彼は夜中に起こされることが大っ嫌い
であった。
失礼します、と聞きなれた声が聞こえ、ドアが開かれた。そこには参謀長のデイビス少将がやや緊張した
表情で長官室に入ってきた。
「長官、報告したいことがあるのですが。」
「どうした、何があった?」
彼はそのまま寝そべったまま顔を向け、聞いた。彼はたいした報告ではなければもう一度寝ると決めた。
「実は、本国との通信がまったく入らなくなりました。」
「この艦の通信装置の故障か?それなら早く直したまえ。」
スプルーアンスはインディアナポリスの通信装置が故障したと思った。だが、デイビスは首を振った。
「味方艦隊からの通信は入ります。クェゼリン、エニウェトク等の各基地への通信も可能」
「何?」
スプルーアンスはこの時疑問に思った。本国との通信は不能でマーシャルだけが可能・・・・
どういうことだ?
「ハワイは?ミッドウェーは?」
「駄目です。日本の謀略放送も聞けません。」
「東京ローズもだめなのか。」
彼は思案した。そして何かを思い立ち、ベッドから姿勢を起こした。
「参謀長、嵐がやみ次第、各任務部隊の司令官を集めろ。」
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