10月5日 午前7時 カウェルサント
「ワイバーンロードだ!」
「ワイバーンロードだ!」
それは、突然やって来た。
俺はその時、砦の中でオイルエン大尉と話し合っていた時、突然見張りの叫び声が聞こえてきた。
その時、俺はオイルエン大尉と顔を見合わせた。
俺はその時、砦の中でオイルエン大尉と話し合っていた時、突然見張りの叫び声が聞こえてきた。
その時、俺はオイルエン大尉と顔を見合わせた。
「オイルエン大尉、なんか厄介なものが来たらしいぞ。」
「ええ、空はこんな状態です。航空戦力を動かすには最適な天候ですよ。」
「ええ、空はこんな状態です。航空戦力を動かすには最適な天候ですよ。」
空は青空が広がり、心地の良い天気であるが、それとは裏腹に、彼の表情は曇っている。
ワイバーンロードは一体どれぐらいいるのだろうか?
ワイバーンロードは一体どれぐらいいるのだろうか?
「何体がこっちに向かってるのだろうか。」
「事前情報では、40~60騎以上のワイバーンロードが、飛空挺部隊とは別に用意されています。
もし、継戦派がここを消し炭にしてやろうと考えているのなら、その全力が向かっていると考えたほうが。」
「くそ、とんでもない事になったな。」
「事前情報では、40~60騎以上のワイバーンロードが、飛空挺部隊とは別に用意されています。
もし、継戦派がここを消し炭にしてやろうと考えているのなら、その全力が向かっていると考えたほうが。」
「くそ、とんでもない事になったな。」
敵の航空部隊は多くて60騎か。それに対し、こっちは上空援護のない裸の拠点か。
恐らく、敵ワイバーンロードは暴れ放題に暴れるだろう。ひでえものだ。
恐らく、敵ワイバーンロードは暴れ放題に暴れるだろう。ひでえものだ。
「マッキャンベル中佐、この砦にも対空陣地が設置されています。
ワイバーンロードはここも狙うかもしれませんので、降りて退避所に行きましょう。」
「名案だね。」
ワイバーンロードはここも狙うかもしれませんので、降りて退避所に行きましょう。」
「名案だね。」
俺は頷く。オイルエン大尉の後に付いて、砦を後にした。
地上に降りた時、革命派の兵達が慌しく配置に付こうと、辺りを走り回っている。
地上に降りた時、革命派の兵達が慌しく配置に付こうと、辺りを走り回っている。
「オイルエン大尉、この拠点には、確か対空火器があったはずだが。」
「あるにはあるんですが・・・・・・」
「あるにはあるんですが・・・・・・」
いきなり彼の声が曇る。
「内情は少々、芳しいものではありません。主力の対空火器は、11.2ミリ機銃が9丁しかありません。
高射砲は1門も無く、大砲は全て対地射撃用のものばかりです。」
「それだけしかないのか!?」
「内情は少々、芳しいものではありません。主力の対空火器は、11.2ミリ機銃が9丁しかありません。
高射砲は1門も無く、大砲は全て対地射撃用のものばかりです。」
「それだけしかないのか!?」
俺は思わず声を上げた。ますます酷い状況じゃねえのかこれは?
「いえ、他にも携帯用機銃を対空機銃に仕立てたものが16丁あります。
魔道師も対空用の攻勢魔法で迎撃にあたります。」
「なるほど。」
魔道師も対空用の攻勢魔法で迎撃にあたります。」
「なるほど。」
なんだ、他にもあるんじゃないか。だが、それはあると言うだけの話だ。俺の懸念は他にもある。
それは、初めての対空戦闘を行う彼らが、どれだけ多くのワイバーンロードを仕留められるか、だ。
ワイバーンロードが迫っている以上、対空要員の奮戦に期待するしかないが、初めてとなる対空戦闘で、
訓練どおりに出来るかはかなり怪しい。
人間、初めての事にはかなり動揺する。
俺自身、ギルアルグ上空で、愛機がやられた時にはかなり動揺し、何をすればいいのか分からん時があったからな。
それは、初めての対空戦闘を行う彼らが、どれだけ多くのワイバーンロードを仕留められるか、だ。
ワイバーンロードが迫っている以上、対空要員の奮戦に期待するしかないが、初めてとなる対空戦闘で、
訓練どおりに出来るかはかなり怪しい。
人間、初めての事にはかなり動揺する。
俺自身、ギルアルグ上空で、愛機がやられた時にはかなり動揺し、何をすればいいのか分からん時があったからな。
「敵ワイバーンロード視認!数は42!」
遠くからそんな声が聞こえてきた。
「42か。オイルエン大尉、君は42という数字にどう思うね?」
「多いですね。この状況では、多すぎると言ってもいいでしょう。」
「俺もそう思ったよ。」
「多いですね。この状況では、多すぎると言ってもいいでしょう。」
「俺もそう思ったよ。」
退避所の30メートル右にある11.2ミリ機銃座の横を抜けて、俺とオイルエンは退避所に入る。
退避所は、半地下式になっており、天井には、頑丈な木材が張られている。
外から見ると、地面から盛り上がった形の天井には、周りの土と同じ色をした塗料が塗られている。
敵航空部隊が迫っていると言うのに、いつも体験しているような音は全く聞こえない。
それも当然だろう。敵はエンジンを持たぬドラゴンだ。航空機よりは遥かに小さい羽音しか立てない。
いつも聞き慣れているエンジン特有の音が聞こえない分、かなり不気味に思える。
退避所には、あっという間に20人ぐらいが入ってきて、中が9割方埋まった。
戦いはその時始まった。
機銃が放たれる音が聞こえてきた。
11.2ミリか、携帯用の軽機関銃が撃ちまくっているのだろう。
退避所は、砦の左斜めに位置している。銃声は正面から起きているため、戦闘の様子が見えない。
退避所は、半地下式になっており、天井には、頑丈な木材が張られている。
外から見ると、地面から盛り上がった形の天井には、周りの土と同じ色をした塗料が塗られている。
敵航空部隊が迫っていると言うのに、いつも体験しているような音は全く聞こえない。
それも当然だろう。敵はエンジンを持たぬドラゴンだ。航空機よりは遥かに小さい羽音しか立てない。
いつも聞き慣れているエンジン特有の音が聞こえない分、かなり不気味に思える。
退避所には、あっという間に20人ぐらいが入ってきて、中が9割方埋まった。
戦いはその時始まった。
機銃が放たれる音が聞こえてきた。
11.2ミリか、携帯用の軽機関銃が撃ちまくっているのだろう。
退避所は、砦の左斜めに位置している。銃声は正面から起きているため、戦闘の様子が見えない。
「マッキャンベル中佐!入り口に立たないで下さい。流れ弾にやられちまいますよ。」
後ろから声がしているが、俺は無視した。
前から30メートルにいる機銃座では、要員が機銃を構えている。
炎が一気に噴出されるような音が聞こえた。その時、前を向いている機銃座も射撃を開始する。
上空を影が通り過ぎていく、影とはもちろんワイバーンロードだ。
羽音を立てながら、飛び去っていくワイバーンに向けて、機銃が追いかけ射撃をしている。
ワイバーンロードに視線を向ける。ワイバーンロードは右旋回で機銃の曳光弾を避けている。
それ以前に、やや狙いが甘すぎるような感がある。
「ああいう時は、旋回している目標の前方を狙うものなのだが。」
冷静な口調でそう呟くが、まあ、最初はこういうものである。
ワイバーンは一旦、砦から離れていく。機銃の火箭は、前の銃座からのみではない。別の所からも放たれている。
前から30メートルにいる機銃座では、要員が機銃を構えている。
炎が一気に噴出されるような音が聞こえた。その時、前を向いている機銃座も射撃を開始する。
上空を影が通り過ぎていく、影とはもちろんワイバーンロードだ。
羽音を立てながら、飛び去っていくワイバーンに向けて、機銃が追いかけ射撃をしている。
ワイバーンロードに視線を向ける。ワイバーンロードは右旋回で機銃の曳光弾を避けている。
それ以前に、やや狙いが甘すぎるような感がある。
「ああいう時は、旋回している目標の前方を狙うものなのだが。」
冷静な口調でそう呟くが、まあ、最初はこういうものである。
ワイバーンは一旦、砦から離れていく。機銃の火箭は、前の銃座からのみではない。別の所からも放たれている。
「中佐。ここは対空要員に任せましょう。」
「ああ、分かってるよ。」
「ああ、分かってるよ。」
ふと、俺はあるものが見えた。それは、遠くからこちらに向かってくるワイバーンの姿だ。
距離はざっと1000メートルと言う所だ。
だが、前の機銃座は先ほど通り過ぎて言ったワイバーンロードに夢中で、背後の敵に気が付いていない。
その背後の敵は、機銃座を指向している。狙いは明白だった。
距離はざっと1000メートルと言う所だ。
だが、前の機銃座は先ほど通り過ぎて言ったワイバーンロードに夢中で、背後の敵に気が付いていない。
その背後の敵は、機銃座を指向している。狙いは明白だった。
「タリホー!」
なぜか、反射的に叫んでいた。体中から何か熱いものが沸き立つような感じがした。
俺は退避所から半ば飛び出し、機銃座に向けて声を放っていた。
俺は退避所から半ば飛び出し、機銃座に向けて声を放っていた。
「後ろだ!後ろに敵機がいるぞ!!」
いきなり、機銃の操作要員達が俺を見て唖然としている。
「ボサッとするな!ここは戦場だ!いいから後ろを見ろ!」
向こうの彼らが後ろを振り向く。ワイバーンに気が付いたのだろう、機銃手が慌てて銃身を向けた。
給弾係が慌てて弾を込める。弾が込められ、射手が銃弾を撃ち出した。
今度の狙いはなかなかよかった。曳光弾が敵のワイバーンに注がれている。
だが、なかなかワイバーンロードは落ちない。
射手の顔は見えないが、恐らく、いくら撃ちこんでも落ちない敵に、焦燥の念を浮かべている違いない。
距離が600ぐらいになってようやく、ワイバーンはよろめき、右側の砦の外の森に落ちていった。
俺は左右、後方も見てみる。不気味な事に、ちらほらとワイバーンロードの姿がある。
まるで拠点を取り囲むかのように。
給弾係が慌てて弾を込める。弾が込められ、射手が銃弾を撃ち出した。
今度の狙いはなかなかよかった。曳光弾が敵のワイバーンに注がれている。
だが、なかなかワイバーンロードは落ちない。
射手の顔は見えないが、恐らく、いくら撃ちこんでも落ちない敵に、焦燥の念を浮かべている違いない。
距離が600ぐらいになってようやく、ワイバーンはよろめき、右側の砦の外の森に落ちていった。
俺は左右、後方も見てみる。不気味な事に、ちらほらとワイバーンロードの姿がある。
まるで拠点を取り囲むかのように。
「奴ら、どこの防備が薄いのか見極めようとしているのか。」
そのうちの1騎がこっち側に向きを変えた。今度は機銃側も見張りを怠っていなかったらしい。
機銃弾がそのワイバーンロードに注がれていく。
今度のワイバーンは、右に左にと、機銃弾を交わしていく。
今度のワイバーンは、右に左にと、機銃弾を交わしていく。
「今度の敵はうまいぞ!」
思わず俺もそう言ったほど、動きが鮮やかだった。
そのワイバーンにさらなる攻撃が襲い掛かる。黄色の光の線のようなものが、ワイバーンの右方向を掠める。
銃座に魔法使いがいたのだろう。
だが、銃座側の防戦も空しく、ワイバーンロードが400メートルまで距離を詰めてきた。
ワイバーンの顎が開かれる。俺は炎を噴き出すと思ったが、そのワイバーンは無数の小さな光のようなものを出してきた。
それは、機銃弾のようにブスブスと着弾し、銃座の周りに土を跳ね上げる。
2人がその小さな光に貫かれのか、腕や腹を押さえて倒れ付してしまった。
ワイバーンロードはそれだけではなく、なんと、爆弾らしきものを投下してきた。
いや、爆弾であった。
俺はすかさず伏せた。次の瞬間、轟音が当たりに響き渡って、地面が揺れた。
そのワイバーンにさらなる攻撃が襲い掛かる。黄色の光の線のようなものが、ワイバーンの右方向を掠める。
銃座に魔法使いがいたのだろう。
だが、銃座側の防戦も空しく、ワイバーンロードが400メートルまで距離を詰めてきた。
ワイバーンの顎が開かれる。俺は炎を噴き出すと思ったが、そのワイバーンは無数の小さな光のようなものを出してきた。
それは、機銃弾のようにブスブスと着弾し、銃座の周りに土を跳ね上げる。
2人がその小さな光に貫かれのか、腕や腹を押さえて倒れ付してしまった。
ワイバーンロードはそれだけではなく、なんと、爆弾らしきものを投下してきた。
いや、爆弾であった。
俺はすかさず伏せた。次の瞬間、轟音が当たりに響き渡って、地面が揺れた。
「これで、銃座は吹っ飛んじまっただろうな。」
そう呟いて、俺は退避所の入り口から中に入ろうとした。不思議にも、射撃音が再び鳴った。
銃座は生きていたのだ。
銃座は生きていたのだ。
「爆弾は外れたのか。」
あの操作要員達は運がいい。俺はそう思った。
「マッキャンベル中佐、大丈夫ですか!」
「ああ、大丈夫だ。」
オイルエン大尉が心配そうに尋ねてきたが、俺はなんともない。
「ああ、大丈夫だ。」
オイルエン大尉が心配そうに尋ねてきたが、俺はなんともない。
外はかなりの激戦のようだ。機銃の射撃音と共に、炎を吐く音や爆弾が炸裂する音が混じってくる。
「せめて、俺に飛行機があれば・・・・・あんな奴らの5機や6機、振り回してやれるのに。」
全く、愛機を失ったパイロットはなんと惨めなものか。
時間が経つにつれて、対空機銃の発射音が減ってきた。対空機銃はかなり健闘しているようだが、敵もプロだ。
連携プレーで次々に潰しまくっているのだろう。
突然、爆発音が上から轟いた。
時間が経つにつれて、対空機銃の発射音が減ってきた。対空機銃はかなり健闘しているようだが、敵もプロだ。
連携プレーで次々に潰しまくっているのだろう。
突然、爆発音が上から轟いた。
「砦の屋上がやられたみたいですね。」
オイルエン大尉が険しい表情で言う。
「この分だと、敵がポイントを稼いでいるようだな。その証拠に、機銃の発射音が少なくなっている。」
俺は再び、入り口に視線を向ける。何度か見た前方の銃座に、今度は2騎のワイバーンロードが襲い掛かっている。
機銃座が懸命に撃ちまくるが、ひらりとかわす。
かなわぬと思ったのだろうか、生き残っていた5人の操作要員が機銃座から逃げ始めた。
要員達は二手に分かれて逃げる。3人は砦の中のほうへ。2人はここ、退避所に逃げてくる。
すると、ワイバーンも二手に分かれた。砦に逃げた3人が建物に影に隠れて見えなくなる。
そのすぐ後に1騎のワイバーンが付いていく。
隠れる瞬間、ワイバーンの口から炎を吐いていた。
機銃座が懸命に撃ちまくるが、ひらりとかわす。
かなわぬと思ったのだろうか、生き残っていた5人の操作要員が機銃座から逃げ始めた。
要員達は二手に分かれて逃げる。3人は砦の中のほうへ。2人はここ、退避所に逃げてくる。
すると、ワイバーンも二手に分かれた。砦に逃げた3人が建物に影に隠れて見えなくなる。
そのすぐ後に1騎のワイバーンが付いていく。
隠れる瞬間、ワイバーンの口から炎を吐いていた。
「急げ!早く走れ!」
視線を逃げてくる2人に移した俺は、退避所の他の連中と一緒に、彼らを手招きする。
ワイバーンのほうが早かった。
ワイバーンのほうが早かった。
このワイバーンは、ブレスではなく、光の弾丸のようなものを吐き出した。
光の弾丸は1人の体を、胴体真っ二つにちぎり飛ばし、もう1人の体も貫いた。
もう1人が倒れる。その上をワイバーンロードが通り過ぎていく。
光の弾丸は1人の体を、胴体真っ二つにちぎり飛ばし、もう1人の体も貫いた。
もう1人が倒れる。その上をワイバーンロードが通り過ぎていく。
「やられたか!」
だが、俺は目を見張った。もう1人の兵士は生きていた。
口から血を吐き、苦痛に顔を歪めながらも、這ってここに戻ろうとしている。
「頑張れ!もう少しだ!」
皆が声援を送る。
深手を負いつつも、その男性兵は必死に生きようとしていた。じりじりと、しかし確実に、退避所に近づいていた。
口から血を吐き、苦痛に顔を歪めながらも、這ってここに戻ろうとしている。
「頑張れ!もう少しだ!」
皆が声援を送る。
深手を負いつつも、その男性兵は必死に生きようとしていた。じりじりと、しかし確実に、退避所に近づいていた。
「俺が連れてくる!」
退避所にいた、別の兵士が2人、入り口から飛び出した。彼らは瀕死の兵士を担ぎ、退避所に戻ろうとする。
1人が顔を向け、一瞬絶望したような表情になる。その直後、無数の光の弾丸が3人を隠した。
1人が顔を向け、一瞬絶望したような表情になる。その直後、無数の光の弾丸が3人を隠した。
「あっ!」
思わず、声にならぬ叫びを発した。ワイバーンの影が通り過ぎていき、3人がいた辺りには、もはや立っている人はいなかった。
そこには、生きていたモノが横たわっているだけだった。
そこには、生きていたモノが横たわっているだけだった。
「・・・・・・なんてこった・・・・・・・」
愕然とし、一瞬目の前が暗くなる。
ふと、何かが目に入る。それは、あの操作要員達が捨てた銃座。その中に、11.2ミリ機銃が残っている。
ふと、何かが目に入る。それは、あの操作要員達が捨てた銃座。その中に、11.2ミリ機銃が残っている。
それを見た瞬間、思わず俺は退避所から飛び出していた。
後ろから何かの叫び声が聞こえたが、不思議に遠くから聞こえるように思える。
心の中にあるのは、革命派の兵士を殺したワイバーンロードを撃ち落すと言う激情のみ。
30メートルの距離を走りきって、俺は11.2ミリ機銃に取り付いた。
引き金がしっかりある。弾帯に繋げられている機銃弾はまだかなり残っている。
試しに、空に向けて撃って見る。
ドドド!
弾はしっかりと込められている。これなら、敵と撃ち合える。
俺は戦闘機に乗っていたように、前後左右、上方に顔を振り回す。いた。
敵ワイバーンロードが砦の左側から迫りつつある。撃つ前に、左右も改めて見る。
今のところ、ワイバーンロードは先ほど見かけたのしかいない。
距離は、目測で900ぐらいに迫っている。
公式には、11.2ミリ機銃の射程距離は1000メートル以上はある。あのワイバーンロードは射程距離に入っている。
後ろから何かの叫び声が聞こえたが、不思議に遠くから聞こえるように思える。
心の中にあるのは、革命派の兵士を殺したワイバーンロードを撃ち落すと言う激情のみ。
30メートルの距離を走りきって、俺は11.2ミリ機銃に取り付いた。
引き金がしっかりある。弾帯に繋げられている機銃弾はまだかなり残っている。
試しに、空に向けて撃って見る。
ドドド!
弾はしっかりと込められている。これなら、敵と撃ち合える。
俺は戦闘機に乗っていたように、前後左右、上方に顔を振り回す。いた。
敵ワイバーンロードが砦の左側から迫りつつある。撃つ前に、左右も改めて見る。
今のところ、ワイバーンロードは先ほど見かけたのしかいない。
距離は、目測で900ぐらいに迫っている。
公式には、11.2ミリ機銃の射程距離は1000メートル以上はある。あのワイバーンロードは射程距離に入っている。
「食らえ!」
そう言って、引き金に力を込めた。
銃身が衝撃で揺られる。その揺れを両腕でなんとか抑えようとする。
曳光弾は敵ワイバーンのやや下に逸れている。
一旦射撃をやめて瞬時に狙いを修正し、再び撃ちまくる。今度は過たず敵ワイバーンロードに向かっていった。
命中弾があったのだろう、ワイバーンの体に煙が湧き上がる。しかし、なかなか落ちない。
機銃弾が命中するたびに、微かながら、青白い色が混ざっているような気もするが、ともかく、弾が無くなるまで撃ち続ける。
くそ、馬鹿に硬い!これでは、ヘルキャットの12.7ミリでも、なかなか倒せないのではないか?
そうこうしている内に、敵ワイバーンロードが口を開き、いきなり光の束を吐き出した!
銃身が衝撃で揺られる。その揺れを両腕でなんとか抑えようとする。
曳光弾は敵ワイバーンのやや下に逸れている。
一旦射撃をやめて瞬時に狙いを修正し、再び撃ちまくる。今度は過たず敵ワイバーンロードに向かっていった。
命中弾があったのだろう、ワイバーンの体に煙が湧き上がる。しかし、なかなか落ちない。
機銃弾が命中するたびに、微かながら、青白い色が混ざっているような気もするが、ともかく、弾が無くなるまで撃ち続ける。
くそ、馬鹿に硬い!これでは、ヘルキャットの12.7ミリでも、なかなか倒せないのではないか?
そうこうしている内に、敵ワイバーンロードが口を開き、いきなり光の束を吐き出した!
「やばい!」
俺は射撃をやめ、咄嗟に防壁の中に伏せる。
ババババババ!!という弾丸が着弾するような音が鳴り、小さな振動が連続する。
真上を、ワイバーンの羽音が通り過ぎていく。いつものと比べて、間近だ。
ババババババ!!という弾丸が着弾するような音が鳴り、小さな振動が連続する。
真上を、ワイバーンの羽音が通り過ぎていく。いつものと比べて、間近だ。
「かなりの低空だな。」
そう言った刹那、防壁にドスン!という大きな衝撃が伝わった。面食らった俺は、慌てて機銃座から出る。
機銃座の防壁に、背中を叩きつけられ、横向けに倒れた甲冑姿の敵がいる。
そして、その敵兵は、いきなり起き上がり、俺に襲い掛かってきた。
機銃座の防壁に、背中を叩きつけられ、横向けに倒れた甲冑姿の敵がいる。
そして、その敵兵は、いきなり起き上がり、俺に襲い掛かってきた。
「嘘!?死んでない!?」
あの高さから落ちたら、普通死ぬはずなのに。
咄嗟に、体を逸らせて長剣の一閃を避けた。避けた際に、頭のすぐ上を剣が通り過ぎ、髪が何本か切られた。
俺は懐にあるガバメントを取り出し、その甲冑姿の敵に2発撃ち込んだ。
甲冑の腹や胸のブ無人に穴が開き、敵は仰向けに倒れた。
咄嗟に、体を逸らせて長剣の一閃を避けた。避けた際に、頭のすぐ上を剣が通り過ぎ、髪が何本か切られた。
俺は懐にあるガバメントを取り出し、その甲冑姿の敵に2発撃ち込んだ。
甲冑の腹や胸のブ無人に穴が開き、敵は仰向けに倒れた。
「なんて奴だ。まるで化け物じゃないか。」
砦のほうを見ると、そこには壁に突っ込み、無残な姿を晒すワイバーンロードがあった。
そのワイバーンロードの体にはいくつもの穴が開いている。
ふと、背後に殺気を感じた。後ろを振り向くと、別のワイバーンが口を開いていた。
そのワイバーンロードの体にはいくつもの穴が開いている。
ふと、背後に殺気を感じた。後ろを振り向くと、別のワイバーンが口を開いていた。
「やべ」
横合いから何かに突っ込まれ、吹き飛ばされる。倒れた俺の側を、物凄い温度の輻射熱が舐めていった。
辺り一面が火の海になり、銃座や戦死した敵味方の死体が、たちまち火達磨になる。
辺り一面が火の海になり、銃座や戦死した敵味方の死体が、たちまち火達磨になる。
倒れた俺を何者かが引き起こし、強引にどこかに連れて行く。
そこは、先いた退避所ではなく、完全に地下式になっている倉庫だった。
俺を連れてきた人物が、壁に背を押し付けるなり、いきなり殴りつけるような怒声を吐いた。
そこは、先いた退避所ではなく、完全に地下式になっている倉庫だった。
俺を連れてきた人物が、壁に背を押し付けるなり、いきなり殴りつけるような怒声を吐いた。
「あんた、正気ですか!?」
鋭い声音が響く。その声は、聞きなれた者の声。オイルエン大尉の者だ。
「なぜ、自分の静止を振り切って飛び出したんですか!?」
「・・・・い、いや。つい、カッとなっちまって」
「カッとなっちまってではありません!」
「・・・・い、いや。つい、カッとなっちまって」
「カッとなっちまってではありません!」
オイルエン大尉の双眸は、いままで見たものより鋭く、怒気に満ちていた。
「対空要員に任せておけと、私はあれほどいったではありませんか!
それなのに、あなたは勝手に飛び出して行った。あなたは、自分に起ころうとしていた事をおわかりですか!?」
それなのに、あなたは勝手に飛び出して行った。あなたは、自分に起ころうとしていた事をおわかりですか!?」
- 言葉を返せなかった。
あの時、俺は危うく、ワイバーンロードの炎に焼き殺されかけた。そこを救ったのが、オイルエン大尉だった。
「マッキャンベル中佐。戦いたいのはわかります。ですが、戦っても絶対的に不利な状況もあるんです。あの時がそうです。」
「ああいう場合、君はどうするんだね?」
「逃げます。戦う条件が良くなるまで、逃げて、そして耐え忍びます。」
「逃げて、耐え忍ぶ・・・・・か。」
「ああいう場合、君はどうするんだね?」
「逃げます。戦う条件が良くなるまで、逃げて、そして耐え忍びます。」
「逃げて、耐え忍ぶ・・・・・か。」
俺は、今さっき行った、自分の行動が浅はかだった事を思い知らされた。
「中佐。今は、耐えましょう。」
「・・・・・そう・・・だな。」
「・・・・・そう・・・だな。」
オイルエン大尉の話を聞いたお陰か、段々と冷静さを取り戻してきた。しかし、今度は内心に後悔の念が起こってきた。
「マッキャンベル中佐、さっきは」
「いや、いいんだよ。」
「マッキャンベル中佐、さっきは」
「いや、いいんだよ。」
謝ろうとするオイルエンを、俺は制した。
「頭に血が上ってる奴をおとなしくさせるには、有効な手だよ。」
そう言ってニヤリと笑う。オイルエンも、表情を和らげる。
外から聞こえる喧騒は、依然として続いていた。
外から聞こえる喧騒は、依然として続いていた。
午前7時40分、カウェルサントに対する攻撃を終えた。
今、カウェルサントの革命軍の砦周辺が、所々炎上している。
今、カウェルサントの革命軍の砦周辺が、所々炎上している。
「これで、地上部隊も攻撃がやりやすくなっただろう。」
攻撃隊の隊長であるクランベリン少佐は満足したような表情を浮かべた。
クランベリン少佐は、42騎のワイバーンロードを率いてカウェルサントに襲い掛かった。
結果、砦周辺の対空陣地全てを叩き潰し、敵の防壁にも少なからぬ損害を与えた。
しかし、クランベリン隊も無傷とは言えず、反撃で4騎失っている。だが、これで第77歩兵師団は後々の作戦が非常にやり易くなった。
クランベリン隊が潰した対空火器も、もし地上軍に向けられれば、侮れない威力を発揮する。
攻撃隊の隊長であるクランベリン少佐は満足したような表情を浮かべた。
クランベリン少佐は、42騎のワイバーンロードを率いてカウェルサントに襲い掛かった。
結果、砦周辺の対空陣地全てを叩き潰し、敵の防壁にも少なからぬ損害を与えた。
しかし、クランベリン隊も無傷とは言えず、反撃で4騎失っている。だが、これで第77歩兵師団は後々の作戦が非常にやり易くなった。
クランベリン隊が潰した対空火器も、もし地上軍に向けられれば、侮れない威力を発揮する。
「ひとまずは、基地に帰って補給だ。またお呼びがかかるかもしれないからな。」
こうして、凱歌をあげたクランベリン隊は悠々と基地に帰っていった。
午前7時50分
継戦軍総司令部のある、ヴァルケリン公爵の邸宅の1室では、7人の男達が、困惑したような表情で地図を眺めている。
継戦軍総司令部のある、ヴァルケリン公爵の邸宅の1室では、7人の男達が、困惑したような表情で地図を眺めている。
「ミルクリンスの補給施設と、駐屯地が爆撃を受けたのか・・・・・・
ミルクリンスは、ここマリアナより更に内陸にある。」
ミルクリンスは、ここマリアナより更に内陸にある。」
ヴァルケリン大将が地図を指でトントン叩く。
「敵飛空挺部隊は北から飛んで来たと言われております。」
作戦参謀が、しわがれた声で説明する。
「数は150~200。補給施設と駐屯地はこの飛空挺部隊の攻撃で大損害を被ったと言われております。」
「ギルアルグの北北西には発見済みのアメリカ機動部隊がいる。最初、我々はアメリカ側の空母部隊がこの1個部隊のみと思っていた。」
ヴァルケリンはそこで言葉を区切り、大きくため息をつく。
「ギルアルグの北北西には発見済みのアメリカ機動部隊がいる。最初、我々はアメリカ側の空母部隊がこの1個部隊のみと思っていた。」
ヴァルケリンはそこで言葉を区切り、大きくため息をつく。
「だが、敵機動部隊は2個部隊いた。」
ヴァルケリンは、ラグナ岬の北方海域にあたる部分を指でなぞった。
「海竜部隊は向かっているのか?」
「はい。海竜部隊のグッツラ中佐によりますと、現在14匹の海竜が現場海域に急行中であるとの事です。」
「はい。海竜部隊のグッツラ中佐によりますと、現在14匹の海竜が現場海域に急行中であるとの事です。」
室内の空気は、とてつもなく重い。
本当ならば、彼らが相手にするものは、革命派の部隊のみであった。
本国に降伏したところで、待っているのは死刑か、監獄の中だ。
そして、刑を免れたにしても、今のような生活は絶対に望めない。
本当ならば、彼らが相手にするものは、革命派の部隊のみであった。
本国に降伏したところで、待っているのは死刑か、監獄の中だ。
そして、刑を免れたにしても、今のような生活は絶対に望めない。
そうなるよりは、最後まで猛々しく戦い、キメラを放って少なからぬ損害を与えようと決めていた。
キメラとは、継戦側が密かに作り出した生態兵器であり、現在司令部より3キロ北の川沿いにある、
偽装された中央研究所と呼ばれる施設で開発されている。
素材には、志願した兵士が使われている。
キメラになることを志願した兵は200名。そのうち、50名が手術の後に発狂して死んだが、150名が無事に生き延びた。
キメラは魔獣並みの怪力と、並みの魔道師をしのぐ魔法技術を持っており、姿形も化け物そのものである。
2日後には1個小隊が編成を終え、すぐに革命側の地域に送り込まれる予定である。
その地域はリエリンズと呼ばれる東部の都市であり、人口は50万を超える。今は革命側の支配地域だが、ここで実地テストを行うのである。
しかし、状況は大きく変化した。
当初、帰還して行ったと思われるアメリカ艦隊だが、現実には2個の機動部隊が分散しており、
その内の1個が遂に牙を剥き始めた。
ギルアルグ北方に展開していると思われる米機動部隊は、未だに鳴りを潜めているが、それがかえって不気味である。
この時点で、アメリカ機動部隊という存在は、継戦軍にとって悪魔と同義語的な物になっていた。
キメラとは、継戦側が密かに作り出した生態兵器であり、現在司令部より3キロ北の川沿いにある、
偽装された中央研究所と呼ばれる施設で開発されている。
素材には、志願した兵士が使われている。
キメラになることを志願した兵は200名。そのうち、50名が手術の後に発狂して死んだが、150名が無事に生き延びた。
キメラは魔獣並みの怪力と、並みの魔道師をしのぐ魔法技術を持っており、姿形も化け物そのものである。
2日後には1個小隊が編成を終え、すぐに革命側の地域に送り込まれる予定である。
その地域はリエリンズと呼ばれる東部の都市であり、人口は50万を超える。今は革命側の支配地域だが、ここで実地テストを行うのである。
しかし、状況は大きく変化した。
当初、帰還して行ったと思われるアメリカ艦隊だが、現実には2個の機動部隊が分散しており、
その内の1個が遂に牙を剥き始めた。
ギルアルグ北方に展開していると思われる米機動部隊は、未だに鳴りを潜めているが、それがかえって不気味である。
この時点で、アメリカ機動部隊という存在は、継戦軍にとって悪魔と同義語的な物になっていた。
「厄介な置き土産を、アメリカ野朗は残してくれたものだ。前には革命軍がいて、後ろにはアメリカの空母部隊か。」
ヴァルケリンは頭を振った。
ヴァルケリンは頭を振った。
「ですが、その敵も、万能ではありませぬ。」
作戦参謀が窓の外を見た。今、司令部周辺には黒い雨雲が広がっている。
「彼らにも敵がいます。」
「それは、天候だな。」
「そうです。気象班の予測によると、ギルアルグでは雨が降ると報告されています。
ちなみに、アメリカ機動部隊の飛空挺は、雨の時には活動していません。」
「と、言うと。敵の航空部隊は悪天候時の攻撃には向いていない、という事だな。」
「その通りです。現に、これまで敵飛空挺に攻撃を受けた時間は、いずれも晴れか、やや曇っている程度の天候です。」
「と、なると。ギルアルグの敵機動部隊は、雨が止むまでは飛空挺をこちらに向けられないという事だな。」
「それは、天候だな。」
「そうです。気象班の予測によると、ギルアルグでは雨が降ると報告されています。
ちなみに、アメリカ機動部隊の飛空挺は、雨の時には活動していません。」
「と、言うと。敵の航空部隊は悪天候時の攻撃には向いていない、という事だな。」
「その通りです。現に、これまで敵飛空挺に攻撃を受けた時間は、いずれも晴れか、やや曇っている程度の天候です。」
「と、なると。ギルアルグの敵機動部隊は、雨が止むまでは飛空挺をこちらに向けられないという事だな。」
「そうです。その間に、各拠点の対空火器を増やすべきでしょう。」
「その間と言っても、短い時間だが・・・・・・・・・やらないよりはましであろうな。
よし、やれ。準備に当たる将兵にはきつい仕事になるが、それも仕方が無いだろう。」
「その間と言っても、短い時間だが・・・・・・・・・やらないよりはましであろうな。
よし、やれ。準備に当たる将兵にはきつい仕事になるが、それも仕方が無いだろう。」
午前9時 ギルアルグ北西76マイル沖
輪形陣の外輪部で、対潜警戒にあたっていた駆逐艦のケイスは、パッシブソナーを使って海竜の捜索に当たっていた。
上空では、3機のアベンジャーが対潜爆弾を腹に収めて艦隊の上空を旋回している。
その一方で、1機のヘルキャットがエセックスから発艦した。
輪形陣の外輪部で、対潜警戒にあたっていた駆逐艦のケイスは、パッシブソナーを使って海竜の捜索に当たっていた。
上空では、3機のアベンジャーが対潜爆弾を腹に収めて艦隊の上空を旋回している。
その一方で、1機のヘルキャットがエセックスから発艦した。
「こちらクロウ。これより標的に向かう。」
「了解、クロウ。後方のサンディエゴに向かえ。」
「了解、クロウ。後方のサンディエゴに向かえ。」
無線がそこで切れた。ヘルキャットを操縦するバリー・ベニントン中尉は、機首をサンディエゴに向ける。
サンディエゴは、艦隊の最後尾で標的を曳いている。今回、ベニントン中尉が発艦したのは、ある兵器のテストをするためであった。
ヘルキャットの両翼には、新兵器の5インチロケット弾が4発搭載されている。
この5インチロケット弾は、補給されてきた弾薬の中に混じっていた。
ロケット弾の使用は、既に欧州戦線で行われており、ドイツ軍のタイガー戦車も一撃で破壊できたと言われている。
本来ならば、今年の6月に行う予定であったマリアナ侵攻作戦で使用されるはずだったが、
この異世界に召喚されてから、ロケット弾は輸送船の船倉に置かれたままであった。
保有数も少なく、せいぜい正規空母1隻分の艦載機に積める量しかなかった。
それが、前回の補給時に、エセックスに保有数の80発全てが届けられたのである。
サンディエゴは、艦隊の最後尾で標的を曳いている。今回、ベニントン中尉が発艦したのは、ある兵器のテストをするためであった。
ヘルキャットの両翼には、新兵器の5インチロケット弾が4発搭載されている。
この5インチロケット弾は、補給されてきた弾薬の中に混じっていた。
ロケット弾の使用は、既に欧州戦線で行われており、ドイツ軍のタイガー戦車も一撃で破壊できたと言われている。
本来ならば、今年の6月に行う予定であったマリアナ侵攻作戦で使用されるはずだったが、
この異世界に召喚されてから、ロケット弾は輸送船の船倉に置かれたままであった。
保有数も少なく、せいぜい正規空母1隻分の艦載機に積める量しかなかった。
それが、前回の補給時に、エセックスに保有数の80発全てが届けられたのである。
「ちゃんと作動するかな?整備の奴らが発射装置の設定に手間取っていたようだが。」
まあ、あれこれ言うのは後だ。そう思って、彼は操縦に専念する。
軽巡洋艦のサンディゴの上空をフライパスし、彼は機体を右旋回させた。
機体が、サンディエゴの後方500メートルに曳かれている標的に向けられた。
軽巡洋艦のサンディゴの上空をフライパスし、彼は機体を右旋回させた。
機体が、サンディエゴの後方500メートルに曳かれている標的に向けられた。
高度を徐々に落としていき、時速500キロで標的に向かう。
サンディエゴの右舷側が次第に大きくなり、艦上には観測班らしき人影が、こちらを見ている。
標的がはっきりと形になってくる。標的まで2000メートルを切った時、突然無線が入った。
サンディエゴの右舷側が次第に大きくなり、艦上には観測班らしき人影が、こちらを見ている。
標的がはっきりと形になってくる。標的まで2000メートルを切った時、突然無線が入った。
「駆逐艦ケイスより、旗艦に報告!敵海竜を発見せり。これより爆雷攻撃に移る。」
海竜は、ケイスの左舷に抜けた。
「いました!やはり海竜です!」
「よし、全速前進!海竜狩りを始めるぞ!」
「よし、全速前進!海竜狩りを始めるぞ!」
ケイス艦長はすぐさま命令を伝える。24ノットで航行していたケイスが、機関の唸りと共にスピードを増していく。
24から26.26から29ノットと、速度計の針はどんどん上がっていく。
24から26.26から29ノットと、速度計の針はどんどん上がっていく。
「海竜の音信が途絶えました。水中騒音で聞き取れません。」
「OK、そのままスピードを上げろ。」
「OK、そのままスピードを上げろ。」
ケイスはスピードを上げ続ける。
「よし、パッシブソナーを入れろ。出力全開だ。」
「アイアイサー!」
「アイアイサー!」
ソナー手が命令に従い、パッシブソナーのスイッチをつける。次に、出力を最大に上げた。
「副長、今回は仕留められると思うか?」
「まあ、どうなるかは分かりませんが、敵さんが近くにいるよう祈るのみですな。」
パッシブソナーの出力を全開にして3分ほどが経った時、
「まあ、どうなるかは分かりませんが、敵さんが近くにいるよう祈るのみですな。」
パッシブソナーの出力を全開にして3分ほどが経った時、
「左舷300メートルに海竜発見!」
ケイスの左舷側海面から、海竜が勢いよく飛び出してきた。
飛び出した海竜は、そのまま海に突っ込んで、海中に潜ろうとする。
しかし、先は30ノット出せた海竜のスピードは、驚くほど低下していた。
飛び出した海竜は、そのまま海に突っ込んで、海中に潜ろうとする。
しかし、先は30ノット出せた海竜のスピードは、驚くほど低下していた。
「スピード落とせ!18ノット!」
34ノットで航行していたケイスが、今度はスピードを落とし始める。
やがて、ケイスは18ノットまでスピードを落とした。
やがて、ケイスは18ノットまでスピードを落とした。
「ソナー室より報告。海竜、本艦の右舷200メートル。深度30メートル」
「了解。面舵一杯。爆雷投下用意!」
「了解。面舵一杯。爆雷投下用意!」
ケイスの艦首が右に振られる。艦尾では、爆雷投下要員が、爆雷を投下する準備を整えていた。
3分後にケイスは、海中の海竜を追い越した。
3分後にケイスは、海中の海竜を追い越した。
「爆雷投下!」
艦尾から爆雷が2個投下された。投下要員が続けて爆雷を載せ、再び投射器に転がして、海中に放り込む。
都合12個が投下された。爆雷が投下された20秒後に、いきなりケイスの後方の海面から水柱が立ち上がった。
その水柱が崩れ落ちる暇も無く、2個目の水柱が吹き上がる。
3個目、4個目と、海中が盛り上がり、海水を周囲に撒き散らす。
8個目の水柱が立ち上がった時、海竜の胴体と思わしきものが空中に吹き飛ばされた。
12回、似たような水柱が立ち上がったのを確認したケイスは、艦を反転させて、爆雷投下地点に戻った。
都合12個が投下された。爆雷が投下された20秒後に、いきなりケイスの後方の海面から水柱が立ち上がった。
その水柱が崩れ落ちる暇も無く、2個目の水柱が吹き上がる。
3個目、4個目と、海中が盛り上がり、海水を周囲に撒き散らす。
8個目の水柱が立ち上がった時、海竜の胴体と思わしきものが空中に吹き飛ばされた。
12回、似たような水柱が立ち上がったのを確認したケイスは、艦を反転させて、爆雷投下地点に戻った。
「艦長、海竜のものと思わしき肉片を確認しました。ソナー室からは、海竜の高速推進音は探知されていません。」
副長からの報告に、艦長は頷いた。
「よし。これで2匹目だな。」
「やっと2匹目ですね。これまでに6回も逃げられましたからな。」
「海竜は生き物だからね。頭がいいんだよ。よし、報告だ。こう送れ。我、敵海竜1匹を撃沈せり。これより隊列に戻る」
「やっと2匹目ですね。これまでに6回も逃げられましたからな。」
「海竜は生き物だからね。頭がいいんだよ。よし、報告だ。こう送れ。我、敵海竜1匹を撃沈せり。これより隊列に戻る」
その時、後方から航空機のエンジン音が聞こえてきた。
「後方からヘルキャットです。」
「ヘルキャット?アベンジャーじゃないのか?」
「いいえ、ヘルキャットです。」
「ヘルキャット?アベンジャーじゃないのか?」
「いいえ、ヘルキャットです。」
その報告に、艦長は首を捻った。
その刹那、
その刹那、
「左舷に高速推進音接近!」
ソナー室から緊急の連絡が入った。
「高速推進音だと!?」
「海竜です!もう1匹いました!距離800!」
「海竜です!もう1匹いました!距離800!」
艦長は慌てて左舷側海面を見てみる。魚雷のような小さな水しぶきが、航跡を引いてケイスに向かいつつある。
「いかん!突っ込むつもりだ!!」
艦長は表情を歪めた。稀に、逃げ切れぬと察知した海竜は、米艦に突っ込んでくる事がある。
サイフェルバン戦時には、海竜が哨戒艇の1隻に体当たりして爆発、哨戒艇を危うく沈没寸前まで追い込んだ事がある。
また、ここマリアナに来る前にも、第2任務群の駆逐艦が、自棄になった海竜に襲われ、若干の損傷を受けている。
海竜には、自爆魔法を身につけているものも混じっており、米艦に突入した瞬間に、自爆魔法を作動させているのだ。
この魔法を装備している海竜は少ないが、海竜の散開線には必ず2匹は混じっていると言われている。
いきなり、後方からやってきたヘルキャットが、スピードを上げた。
ケイスの見張り員が驚いて、ヘルキャット見つめる。そのヘルキャットは、ケイスの左舷側海面に向けて、翼から何かを撃ちだした。
長い棒状の物体が、火を吹きながらケイスまで500メートル迫った海竜の前面に着弾した。
ドーン!という爆発音が鳴り、3本の水柱が立ち上がった。
水柱の中には、海竜のバラバラになった惨死体が混じっており、一瞬だけ見えると、水柱の中に消えていった。
サイフェルバン戦時には、海竜が哨戒艇の1隻に体当たりして爆発、哨戒艇を危うく沈没寸前まで追い込んだ事がある。
また、ここマリアナに来る前にも、第2任務群の駆逐艦が、自棄になった海竜に襲われ、若干の損傷を受けている。
海竜には、自爆魔法を身につけているものも混じっており、米艦に突入した瞬間に、自爆魔法を作動させているのだ。
この魔法を装備している海竜は少ないが、海竜の散開線には必ず2匹は混じっていると言われている。
いきなり、後方からやってきたヘルキャットが、スピードを上げた。
ケイスの見張り員が驚いて、ヘルキャット見つめる。そのヘルキャットは、ケイスの左舷側海面に向けて、翼から何かを撃ちだした。
長い棒状の物体が、火を吹きながらケイスまで500メートル迫った海竜の前面に着弾した。
ドーン!という爆発音が鳴り、3本の水柱が立ち上がった。
水柱の中には、海竜のバラバラになった惨死体が混じっており、一瞬だけ見えると、水柱の中に消えていった。
「こちらクロウ。海竜を撃沈したぞ。」
「クロウ、勝手な真似はするな!君の任務はロケット弾のテストだ。」
「クロウ、勝手な真似はするな!君の任務はロケット弾のテストだ。」
管制官が怒りを含んだ声音でベニントン中尉に言う。
「こちらは駆逐艦ケイス。そこのヘルキャットのパイロット、海竜を吹っ飛ばしてくれて礼を言うぞ。」
「OK。自分はエセックス戦闘機隊所属のベニントン中尉だ。お礼にコーラを一本くれ。」
「上陸したらやるよ。とにかく、ありがとう。」
「OK。自分はエセックス戦闘機隊所属のベニントン中尉だ。お礼にコーラを一本くれ。」
「上陸したらやるよ。とにかく、ありがとう。」
それで会話は切れた。ベニントン中尉は、管制官の説教を聞き流しながら、機体を母艦の方向に誘導していった。
後々、ベニントン中尉は上官にきついお灸を据えられたものの、この実地テストで5インチロケット弾の威力は実証され、
のちにエセックス戦闘機隊の武器となった。
のちにエセックス戦闘機隊の武器となった。