コオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーー
トンネルの中で鳴り続ける風の振動に、
ペッシは耳を傾けていた。
ぼんやりとて頭をポリポリかく仕草が、彼のやる気の減退を示している。
「兄貴ィ……」
また1人仲間が死んだ。それも、自分がもっとも頼りにしていた仲間が死んだ。
親しい人間が死んだとき、多くの人は2つに別れるという。
周りの目を気にせず思いっきり泣くか。
現実を受け入れられず呆然とするか。
ペッシは両方だった。
ギャングでありながら、まだ一度も人殺しをしていない彼にとって、全てが受け入れがたい事実だった。
まだブチャラティたちと遭遇する前の世界から連れてこられた彼には、この事実は重過ぎる。
「畜生! でも! 」
しかし彼をかろうじて支えるのは、
プロシュートへの執着と甘えよりも。
「わかってたことだ……わかっていたんだ……兄貴は……俺たちは……ギャングだ」
リゾットと命がけの戦いをしたことで得た覚悟と誇り。
黄金に輝く精神が彼を助けていた。
「だけど……兄貴ィ……兄貴ィ! 」
怖がっちゃだめだ。
恐れちゃだめだ。
いつかはこうなっていた。
自分はプロシュートの分まで立派にならなければだめだ。
逃げちゃだめなんだ。
「う……う~……う~~~~! 」
皮肉にも、彼の輝ける黄金の精神が、彼の心を脅迫していた。
兄貴に認められる前に、独り立ちを強制されてしまったのだ。
覚悟を持って『殺し』をしていないのに、先輩たちの言葉が大きくのしかかる。
――『ブッ殺す』って心の中で思ったならッ!スデに行動は終わっているんだッ!
――お前の成長には目を見張るものがある。これから先、お前はいい暗殺者になれただろうな…。
いよいよペッシが試される時が来たのだ。
すでに土台は整った。精神も気高い。あとは行動に『移す』だけ。
本当の意味で、プロシュートとリゾットの言葉を実にする。
「俺はこの試練を、乗り越えなきゃいけねぇ。兄貴の敵を……必ず……」
震える手は恐怖か武者ぶるいか。
ペッシは無意識に、ポケットの中にあった紙切れをくしゃりと潰していた。
「!……、これ、まだポケットに入ってたのか」
それはペッシの支給品のひとつ。
ダービーズ・アイランドへのチケット。
彼はそれをバトル・ロワイアル開始時に、バッグから取り出していた。
「そういえば、しばらく旅にも行ってなかった」
ペッシはただの広告としてしか見ていなかった。
「死ぬ前に、こういう島に兄貴たちと行っておきたかったな
カプリ島とかでバカンスって感じで……」
迷える青年、夢の島へご招待。
☆ ☆ ☆
「リゾットッ! 敵襲だッ! 聞こえるかッ! 」
正午を過ぎているため、太陽の恩恵は大分衰えて始めている。
下がり始めた気温がペッシの肌を冷やしていた。
いきなり表れた島の風景に動揺したのか、ペッシはスタンドを構えて戦闘体制に入った。
「そこのてめぇ! もしヤル気じゃないんだったら今すぐこの幻覚を解除しやがれ! 」
「ゲームで私と勝負をしましょう」
いきり立つこの若者の声に、ダービーはため息をついた。
こんなやり取りをあと何回繰り返せばいいのだろう、とでも考えているのだろうか。
悔しいことに、チケットを持つものが島に転送される仕組みは荒木飛呂彦にすべて牛耳っている。
ダービーは荒木の指示に従うだけの執事にすぎない。
「俺たちは遊んでる暇はねーんだよ。早く解除しろッ! 」
「帰りたければ、応じます。また来たいと思ったらそのチケットを使えばいい」
「じゃあとっとと俺を元の場所へ返せよッ! 」
ダービーはわかっている。
「よろしいのですか? ゲームに勝てば、どんな願い事も叶うというのに」
「……!? 」
相手がこの一言で態度を180度変えることも。
「100%ではありませんがね。しかし努力はしましょう。あなたに有益なことは間違いありません」
ダービーはペッシの人物像を完全に知っているわけではない。
とはいえダービーにはわかる。彼が立派なカモになるという直感が動いていた。
「お前、なんなんだよ」
「テレンス・T・ダービーと申します。ディーラーでありギャンブラー。それが私の仕事」
「……」
ペッシはダービーから目をそらすと、島の土や海水をおもむろに触り始めた。
目の前にある自然の質感のリアルさに驚いたのか、彼の顔はますます汗を出した。
「あんたの話、仲間にチクるぜ。俺は。だから元の場所に返してくれ」
「どうぞご自由に。私の目的はゲームで勝負すること。それだけなのです」
「もし返さなかったら、こ、こ、殺してやるからなッ! 」
こうして、精一杯の勇気で虚勢を搾り出した青年は元の場所へ還った。
ダービーは新たな戦いが近いことに興奮しながら、島の片隅にある収納棚へ移動した。
「彼も、私のコレクションになってくれるといいですね」
ガチャと開いた扉の先には、人形が入っていた。
「寂しいでしょう? ご安心ください。もうすぐ仲間が増えますよ。MR.ジョージ、MR.シーザー」
ダービーに話しかけられた人形たちは、ゆっくりと頭をあげた。
『あ……あ……ジョナ、サン。ジョナ、サン』
『負け……負け……はい、ぼく、敗、北……』
「私の精神も万全ではない。疲労がたまれば、ミスをするかもしれません。
だからこそ負けるわけにはいかない。どんな相手であろうとも」
敗北者たちの末路。
リゾットのもとへ急ぎ走るペッシも、人形になってしまうのだろうか。
【G-10 北西部 小島(ダービーズアイランド)/1日目 午後】
【テレンス・T・ダービー】
[時間軸]:承太郎に敗北した後
[状態]:健康 精神疲労(小)
[装備]:人形のコレクション
[道具]: 世界中のゲーム
[思考・状況]
1.参加者ではなく、基本はG-10にある島でしか行動できない。
2.荒木に逆らえば殺される。
3.参加者たちとゲームをし、勝敗によっては何らかの報酬を与える(ように荒木に命令されている)。
4.露伴と決着をつける(勝負もあるが、足首は回収したい)
※ダービーは全参加者の情報について、名前しか知りません(原作3部キャラの情報は大まかに知ってます)。
※ダービーズ・アイランドにも放送は流れるようです。
※アトゥム伸の右足首から先を露伴の体内に食い込ませています。(原作を見る限り)ダービー本体の足首はちゃんと存在しています。
※第二放送を聞き逃しました
【
ジョージ・ジョースター1世】
[時間軸]:ジョナサン少年編終了後
[状態]:【肉体】右わき腹に剣による大怪我(貫通しています)、大量失血で血はほとんど抜けました
【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備][道具]: なし
[思考・状況]
基本行動方針:ジョナサンとディオの保護
1.むう、なんということだ……!
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はジョージの死。
※肉体を治療しないと魂を解放しても失血死する可能性大
※ジョージの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[時間軸]:
ワムウから解毒剤入りピアスを奪った直後。
[状態]:【肉体】疲労(大)、ダメージ(大)、ヘブンズ・ドアーの洗脳
【魂】テレンスの作った人形の中。禁止エリアに反応して爆破する首輪つき。
[装備]:スピードワゴンの帽子。
[道具]:支給品一式、エリナの人形、中性洗剤。
[思考・状況] 基本行動方針:ゲームには乗らない。リサリサ先生やJOJOと合流し、
エシディシ、ワムウ、
カーズを殺害する。
0.…………………精神的敗北。
1.荒木や
ホル・ホースの能力について知っている人物を探す。
2.スピードワゴン、スージーQ、
ストレイツォ、女の子はできれば助けたい。
[備考]
※テレンスに一回勝利しないとジョージの魂は開放されない。 ただしテレンスの死はシーザーの死。
※さらにテレンスに一回勝利しないとシーザーの魂は解放されない。
※シーザーの人形がどこまでちゃんと喋れるのか不明(話相手ぐらいにはなる?)。
※第一放送を聞き逃しました。
※第二放送を聞いてはいましたがメモ等は出来ていません。記憶しているかも不明です。
※ヘブンズ・ドアーの命令は以下の1つだけです。
1.『
岸辺露伴の身を守る』
☆ ☆ ☆
「ねーよ」
「ないな」
彼らの会話は、筆談で進んでいる。
「何でだよッ! 」
しかし3人の議論は白熱している。
この上ない緊急事態を伝えるために、全力で走ってきた青年の好意を、2人の男は真っ向から否定した。
「悪いけどよ、俺はアンタ……ペッシだっけ? ペッシよぉ、俺はそれ罠だと思うわ」
まず意見をあげたのは
音石明だった。
ダービーズ・アイランドそのものがスタンドの幻覚である可能性。
ダービーという男の言葉すべてが嘘である可能性。
わざわざペッシを無事に元の場所へ帰したのは、新しい餌を口コミで広げさせる可能性。
「そのチケットを持って、“島に行きたい”と願った。これはもうスタンドの条件に他ならねーぜ。
勝負して勝ったらたら願いを叶えるとか、これも何かを発動させる条件かもしれねーよ。
相手にケンカ売るやつは、大抵ほかの目的があると思うぜ~~俺は~~……」
「本当に俺が餌だったら無事に返そうなんて考えないだろーがよッ! 」
音石明は、自分があらゆる悪事をしてきたからこそ、悪党の気持ちがよくわかる、と思っていた。
ダービーの真実に目を向けようとせず、“ああ、この手の輩はたいていゲスだな”と決め付けているのだ。
「待てペッシ。誰も奴に会うなとは言ってない」
次に意見をあげたのは
リゾット・ネエロだ。
ペッシがダービーの名前を正確に覚えていなかったため、彼は勘違いを起こしていた。
即ち、テレンス・T・ダービーを
ダニエル・J・ダービーであると思い違いをしていたのである。
放送で死を告げられたはずのダービーが生きている? だとすれば、ペッシが会ったダービーは何者なのか?
「万が一、奴が死んだフリに成功して生きているのならば、首輪の問題を何らかの問題で解決したということだ。
しかし、どうしてペッシにチケットを渡せたのかが不明だ。本来は、この場で俺たちの目の前で証明すればいいはずなんだ。
ペッシに口止めもさせず返したんだ、辻褄が合わない。つまり俺たちが壮大な勘違いをしているかもしれない」
「リゾット、あいつは……たぶん、首輪をつけてたと思ったんだけど。俺の勘違いだったのかな」
リゾットは持ち前の用心深さゆえ、迂闊にダービーと接触する危険性を回避するという九死に一生を得ていた。
しかしそれゆえに、取るに足らないテレンスの真実から遠ざかりつつあった。
「会ってもいいが、もう少し落ち着くべきだ」
「だいたいな、そうまでして叶えてほしい願い事があるのかよ」
彼らは、やはり動かなかった。
「……兄貴だよ。兄貴を見たかったんだ」
「プロシュートを蘇らせようとしたのか」
「馬鹿馬鹿しいぜ、死人が生き返るもんか」
彼のこころは
「違うッ! 見たかっただけなんだッ!
兄貴の姿をッ 兄貴の最後の生き様をッ
この目に見せてほしかったんだッ!
兄貴を殺した奴の姿とッ 兄貴の勇姿をッ! 」
こんなにも熱く燃えているというのに。
「――ひとまず情報を整理し直そう。
サンドマンの情報も含めてな」
【F-2 ナチス研究所 研究室/1日目 午後】
【暗殺チーム(現在メンバー募集中)】
【ペッシ】
[時間軸]:ブチャラティたちと遭遇前
[状態]:頭、腹にダメージ(小)、喉・右肘に裂傷、強い悲しみ、硬い決意
[装備]:リゾットにタメ口の許可認証 、ダービーズ・チケット
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、重ちーが爆殺された100円玉
[思考・状況] 基本行動方針:『荒木』をぶっ殺したなら『
マンモーニ』を卒業してもいいッ!
0.リゾットはダービーをどうするんだろう。
1.兄貴ィ……最後の姿を見たかった…
2.誰も殺させない。殺しの罪を被るなら暗殺チームの自分が被る。
4.チームの仲間と合流する
[備考]
※ペッシの信頼度
ホル・ホース>ミューミュー>(よくわからないの壁)>音石、サンドマン、ブチャラティチーム
※100円玉が爆弾化しているかは不明。とりあえずは爆発しないようです。
※音石の経歴や、サウンドマンとリゾットが交換した情報の内容を知りました。
※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
→ 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない
※荒木に協力者がいる可能性有り
【リゾット・ネエロ】
[スタンド]:メタリカ
[時間軸]:サルディニア上陸前
[状態]:頭巾の玉の一つに傷、左肩に裂傷、銃創(『メタリカ』による応急処置済み)
[装備]:フーゴのフォーク 、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)
[道具]:支給品一式
[思考・状況] 基本行動方針:荒木を殺害し自由を手にする
1.…………ダービーか。
2.首輪を外すor首輪解除に役立ちそうな人物を味方に引き込む。
カタギ(首輪解除に有益な人材)には素性を伏せてでも接触してみる(バレた後はケースバイケース)。
3.暗殺チームの合流と拡大。人数が多くなったら拠点待機、資材確保、参加者討伐と別れて行動する。
4.荒木に関する情報を集める。他の施設で使えるもの(者・物)がないか、興味。
[備考]
※盗聴の可能性に気が付いています。
※フーゴの辞書(重量4kg)、ウェッジウッドのティーセット一式が【F-2 ナチス研究所】に放置。
※リゾットの信頼度(味方にしたい度)
ホル・ホース>サンドマン>(メッセンジャー頼むぞの壁)>音石>(監視は頼りにしてる壁)>ミューミュー>(皆殺しにするぞの壁)>ブチャラティチー
ム、プッチ一味
※リゾットの情報把握
承太郎、ジョセフ、花京院、ポルナレフ、
イギー、F・Fの知るホワイトスネイク、
ケンゾー(ここまでは能力も把握)
F・F(能力は磁力操作と勘違いしている)、 徐倫(名前のみ)、サウンドマン
※サウンドマンに伝えた情報↓
[主催者:荒木飛呂彦について] のメモ、盗聴の可能性、電気伝達の謎、
スピードワゴン、ツェペリ、
タルカス、ディオ、ワムウ、ポルナレフ、
ラバーソール、
エンヤ婆、ンドゥール、康一、億泰、トニオ、由花子、吉良、
ジョルノ、マックイィーン、プッチ、リンゴォのおおまかな人相、名前、能力、危険度。
※リゾット、及びペッシのメモには以下のことが書かれています。
[主催者:荒木飛呂彦について]
荒木のスタンド → 人間ワープ…見せしめの女の空中浮遊、参加者の時間軸の違い(並行世界まで干渉可能)
→ 精密機動性・射程距離 ともに計り知れない
開催目的 → 不明:『参加者の死』が目的ならば首輪は外れない
『その他』(娯楽?)が目的ならば首輪は外れるかもしれない
荒木に協力者がいる可能性有り
【音石明】
[時間軸]:チリ・ペッパーが海に落ちた直後
[スタンド]:レッド・ホット・チリペッパー(黄色)
[状態]:体中に打撲の跡(中)、『レッド・ホット・チリ・ペッパー』をスピットファイヤーに乗せて飛行中
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、不明支給品×1、ノートパソコンの幽霊、首輪の設計図(ジョセフが念写したもの)、スピットファイヤーのコントローラ、バッテリ
ー充電器
[思考・状況]基本行動方針:優勝狙い
0.……ダービーねぇ。
1.ナチス研究所周辺を監視中(しばらくは研究所に待機)。チャンスがあれば攻撃を仕掛ける
2.首輪解除なんて出来んのか?
3.
サンタナ怖いよサンタナ
4.電線が所々繋がっていないのに電気が流れているこの町は何なんだッ!? あやしすぎて怖えー!
[備考]
※バトルロワイアルの会場には電気は通っているようです。
しかし様々な時代の土地が無理やり合体しているために、電線がつながっていなかったりと不思議な状態になっているようです。
スタンドが電線に潜ったら、どうなるかわかりません。(音石は電線から放電された電気を吸収しただけです)
※音石の情報把握
ブチャラティチーム、ホル・ホース、ミューミュー(ここまでは能力も把握)
ミセス・ロビンスン(スタンド使いと勘違い)、
ホルマジオ(容姿のみ)
※早人とジョセフと
ディアボロが駅を出た理由を知りません。
※盗聴の可能性に気がつきました
※スピットファイヤーを【F-2 ナチス研究所】付近に旋回させています。
少なくともブチャラティチームやプッチ一味(と判断できた場合)、
虹村億泰が近づいてきたら攻撃を仕掛けるつもりです。
※暗殺チーム全体の行動方針は以下のとおりです。
基本行動方針:首輪を解除する
1.首輪解除のためナチス研究所を拠点として確保する。
2.首輪を分析・解除できる参加者を暗殺チームに引き込む。
3.1・2のために協力者を集める。
4.荒木飛呂彦について情報収集
5.人数が多くなれば拠点待機組、資材確保組、参加者討伐組と別れて行動する
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最終更新:2010年05月27日 20:28