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C-9区域の岩場の陰。
俺はさっきの男の苦痛を再生しながら、奪った名簿を確認していた。

ジョルノ・ジョバァーナ…、ブローノ・ブチャラティ…、グイード・ミスタ……
名前と顔写真が確かにボスから受けた情報と一致している。
この名簿は間違いなく本物ってわけだ。
そして名簿にじっくり目を通すと、ある法則にも気づいた。

この名簿をよく観察すると、
ジョルノ・ジョバァーナからディアボロまでで線引きがされているように見える。
その中の名前をすべて挙げると、
ジョルノ・ジョバァーナ、ブローノ・ブチャラティ、グイード・ミスタ、レオーネ・アバッキオ
パンナコッタ・フーゴトリッシュ・ウナ、サーレー、ホルマジオ、プロシュートペッシ
ギアッチョリゾット・ネエロティッツァーノチョコラータ、ディアボロ
こいつらのほとんどにはパッショーネの構成員という共通点がある。
そしてこいつらは、さらにカテゴリー毎に分けられる。
①【ジョルノ、ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、トリッシュ】、サーレー
②【ホルマジオ、プロシュート、ペッシ、ギアッチョ、リゾット】
③【ティッツァーノ、チョコラータ】、ディアボロ
①は裏切り者のブチャラティのチーム(但しフーゴは、ブチャラティたちを裏切った)
②は同じく裏切り者の暗殺チーム
③はボスの親衛隊たち(俺が親衛隊に含まれているのは心外だがな)

つまり、この名簿は『組織』や『グループ』毎に分類されているというわけだ。
死人が多数含まれているのが気にかかるが、それも荒木の能力だと考えるのが手っ取り早い。
サーレーやディアボロという名には聞き覚えがないが、順番から言っておそらく前者は暗殺チーム。
そういえば脱退前に見せしめが出たと言っていたな。あるいはブチャラティの仲間という線もある。
ディアボロの方は、ティッツァーノと同じ親衛隊といった所か。
俺が名を知らないという事は、こいつがボスの側近という可能性もある。
機会があればこのゲーム中に拷問してボスの情報を吐かせたいものだ。
(案外、コイツがボスだったりしてな。クックック……。)

おそらく名簿の他の名前も同じように『グループ分け』がされているのだろう。
こんなことならさっきのペテン師から色々吐かせるべきだったが、まあいい。奴にはもう飽きた。

ある程度情報をまとめると、俺はその場を離れることを決める。
目指すは内陸部、高さのある所だ。

☆☆☆

海岸沿いを歩きながら僕はこれからの事を考えていた。
この殺人ゲームのこと。死んだはずの暗殺チームのこと。支給されたマスクのこと。ブチャラティのこと。
アバッキオがいきなりティーカップに尿を注ぎだしたこと。
いくら教えてもナランチャが一向に掛け算を覚えなかったこと。
ミスタの腋が妙に臭っていたこと。
………
だあっ!違う!何を考えているんだ僕は。
くそッ!何でアイツらの事ばかり頭に浮かんでくるんだ!
…ひょっとして僕は「彼らの所に戻りたい」とでも考えているのか?


「よう。『裏切り者』のパンナコッタ・フーゴ。」

そんなことを考えていると、突然声をかけられた。
少し丘ばった所に男がいる。僕の知らない男だ。
『パープル・ヘイズ』の射程外だが、かなり近くにまで接近されていた。
考え事をしていたとはいえここまで近づかれるとは…、つくづく自分が嫌になる。

「君は…?」
男は答えない。ただ男は僕を見下ろすだけだ。
そういえばコイツ、相当イカれた格好をしている。…まあ僕も人の事をいえた義理じゃないが。
「質問をしているんだが。答えてくれないか?」
まだ男は答えない。ずっと僕を見下ろしている。いや、これは僕を『見下している』のか?
「おいッッ!! さっさと質問に答えろッ! このド低能がッ!」

「おいおい、お前はこんな所で何をしてるんだ、フーゴ。組織を裏切っておいて。」
やっと男は口を開く。組織…やはりコイツもパッショーネの人間か。
僕の事を知っていたんだ。十中八九そうではないかと思っていたが。

…いや違う。
重要なのは「コイツが組織の人間だ」とか、「質問を質問で返された」とか『そんな事』じゃない!

「待て! 何のことだ!? 僕は組織を裏切っちゃいない!!
 僕はマジョーレ島でブチャラティたちと縁を切ったハズだッ!!」
思わず声を荒げてしまった。何をやってるんだ。僕は。
これじゃあまるで自分が必死に裏切ったことを弁解しているみたいじゃないか。
だが男は構わず話を続ける。

「ああ…確かにな。それは事実だ。俺もお前を始末しろとは言われてねえ。
 しかし…な。重要なのは『そんな事』じゃない。
 重要なのは『お前の仲間が組織を裏切った』って事だ。
 ボスはこれからお前を警戒する。
 これから先ほんの少しのきっかけでもあれば、ボスはすぐにお前が裏切ったと考える。
 いや…ボスの性格からして、もう裏切り者と判断されてるかもな。
 さあフーゴ、よく考えてみろ。お前、何かやらなかったか? ボスが疑いを持つ何かを…」

何を言ってるんだ、こいつは? 一体なんの目的がある?
そもそも彼らの仲間だったというだけで僕は裏切り者扱いされるのか?
それに第一、僕にはボスに疑われるようなことをした覚えは…

…いや、あった。
あの時…、ブチャラティがトリッシュをボスの元に届けたとき、僕はボスの命令を破った。
ボスの「ボートで待機しろ」という言いつけを破って僕はマジョーレ島に上陸したのだ。
だがそんな事で『裏切った』と判断されるのか?いくらなんでも理不尽すぎるだろう!
あの場では仕方なかった!それに僕はその後ちゃんと彼らと決別したはずだッ!

☆☆☆

俺はフーゴの表情を観察していた。
悪戯や隠し事をした子供は、大人から「全部判ってるのよ」と言われると、凄く不安な顔をする。
「あの事がバレたんじゃないか?」「もしかしてそれを怒っているの?」といった勝手な想像を始める。
そして不安になる。罪悪感にさいなまれる。自分で自分を陥れる。
今のフーゴはまさにそんな顔をしていた。

「ははッ、そんな顔をするなよ。フーゴ。お前はもっと幸せそうな顔をすべきだぜ。
 ブチャラティは組織を裏切った。そしてお前はブチャラティを裏切った。
 お前は正しい。奴らは命を狙われるが、お前はのうのうと生きていられる。
 組織を裏切った奴は間違いなく殺される。
 死だけで済めばいいだろう。下手をすれば生きながら拷問って事もありえる。」

フーゴは何も答えない。
だから俺は続けてフーゴに語ってやる。

「だがな、フーゴ。『今』はまだいい。他に裏切り者がいるからな。
 しかし…もし、今の裏切り者が全員始末された時…。お前はどうなるのかな?
 ボスはもうお前を信用していない。次の裏切り者になるのは誰だろうな。」

フーゴの野郎はうつむき加減に黙りこくっている。
いい表情だ。例えるなら『貴方はもう助かりません』と宣告された患者の顔をしている。

「いいかフーゴ、断言してやる。
『もうお前は、この世で誰からも信頼されてない』」

「さあ! どうするフーゴ!?
仲間からもボスからも信頼を失ったお前は!
 お前は一人だ! これから先、誰もお前を信じちゃくれない!!」
フーゴの顔はついに下を向いてしまった。
今の俺の位置からは奴の表情を窺い知ることが出来ないのが残念だ。

「それは…つまり、
 僕にブチャラティたちを始末しろといいたいのか?」

それはやっと搾り出したようなか細い声だった。
コイツは頭のいい男だ。
俺の言葉から自分が何をなすべきかをすぐに読み取りやがった。
ああそうだ。お前はこれから『本当に』ブチャラティたちを裏切るんだ。
さあフーゴ。お前はどんな表情をみせる?
仲間を殺すことへの躊躇いか?それとも自分だけは助かりたいという欲望か?
思わず心が躍る。やはりいい。命にすがる人の表情は何より好奇心をそそられる。
さあ、どっちだフーゴ? お前はどちらの表情を見せてくれるんだ?

だがフーゴが見せたのは、俺の期待した『どちら』でもない表情だった。

「でも残念だが、僕はお前の話に乗るつもりはない。」

奴は突然『パープル・ヘイズ』を発現させる。
まずい。奴の射程は十分考慮している。しかし今は夜だ。
この距離ならば攻撃を喰らうことはないが、奴が我を忘れてウィルスをそこらに撒き散らすのはやばい。
俺は思わず後ずさりした。そしてフーゴを観察する。奴の行動を見極めるためだ。
そのフーゴは俺を見下す表情で話しだした。
「やはり君もスタンド使いか。君の話なんだが…、幾つか腑に落ちない所がある。
 1つは、それが本当に『ボスからの指令』なのかということだ。
 君は先ほどから僕のスタンドを警戒しているね。おそらく君も相当の使い手なんだろう。
 僕の射程を考慮してギリギリの間合いをしっかり守っている。ますそれがおかしい。
 ボスが直接伝言を渡すとしたら、君のような者にはまず頼まない。
 もっと力のない者、そして自分に忠実な者を指名するはずだからね。

 そしてもう1つ。さっき僕は名簿を確認させてもらった。
 知らない名も多いが、『共通点』があった。グループで名前が固まっているんだ。 
 そして名簿の並びから推察すると、パッショーネの関係者は15名。
 そのうちブチャラティ達が5名。暗殺チームが5名。そして僕ともう1人(サーレー)で2名。
 (死者がなぜ存在しているかは知らないが)君のような純粋な組織の人間は多くて3名といった所だろう。
 つまり君達は3人で、(トリッシュを除く)9人の裏切り者を相手にする必要がある。

 君が僕を唆してブチャラティたちと戦わせようとしている。
 その可能性も十分に考えられるんじゃないのかい?」

…なるほど。やはりコイツは頭がいい。
俺のように名簿の規則にとっくに気づいていたというわけだ。
そしてコイツの考察はほとんど当たっている。ただ1つ、俺がお前に接触した理由以外はだ。

「…というわけで、僕は君の指図に従うわけにはいかない。 
 僕は僕の意思と決断にしたがって行動する。」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

奴はそう宣言して『パープル・ヘイズ』を俺に向ける。


そして―――

☆☆☆

僕は一人道を歩いていた。
そしてこれからの事を考えていた。

僕は卑怯者だ。彼に対して言ったこと…。あれは屁理屈だ。
さっきの言葉は覚悟や決意で言ったんじゃない。
僕はただブチャラティたちと会うのが怖かっただけだ。
そして、この手で彼らを始末することが…。

彼の話を全て信じることはできないが、もっともだと思う部分も沢山あった。
ボスは裏切り者を許さない。わずかな疑いでも許さない。
そして僕は疑いを持たれているのかもしれない。「疑わしきは罰する」のだ。
僕がボスの立場だったら、僕だってそーする。
ならどうすればいい?
彼の言う通り、僕がブチャラティたちを始末して組織への忠誠を示すしかないのか?


「『もうお前は、この世で誰からも信頼されてない』」

そうだ。僕はブチャラティを裏切った。
そして僕のいたチームはパッショーネを裏切った。
男の言った言葉が、何度も何度も僕の頭の中をぐるぐる回っていた。

☆☆☆

俺はフーゴを見逃した。

俺は今まで医者として多くの患者の『表情』を観察してきた。
多くは、絶望や恐怖、嘆き、苦痛、後悔、空虚、孤独…といった自分の好奇心を沸き立たせる表情だった。
しかし中には、何かをなすという決意、生きることへの希望…そんな反吐が出る表情の奴もいた。

だ・が・な、フーゴ。
お前の顔はそんな決意や希望に満ちた顔じゃねえ。

今のお前の表情は「何をしていいか判らない」顔だ。
そう例えるなら、「末期ガンを宣告されどうしていいか判らない」患者のような顔だ。
アイツは結局組織を裏切ることはできないだろう。
末期ガンの患者が最後には俺に縋りついてきたように、奴は組織に縋りつくしかないのだ。
アイツの選択は、「ブチャラティたちから逃げ続ける」か「奴らを始末する」しかない。

だから俺はフーゴを見逃した。
あの表情を観察しながら殺してやるのも良かったが、俺も流石に奴のウィルスは怖い。
下手に手を出して道連れにされるのは御免だからな。
奴の表情をビデオに収められなかったのは残念だが、それは荒木にでも見せてもらえばいい。
さあフーゴ、これから楽しませてくれよ。お前の苦痛の表情を俺に観察させてくれ・・・。

【C-9 /1日目 黎明】

【パンナコッタ・フーゴ】
[時間軸]:ブチャラティチームとの離別後(56巻)
[状態]:苦悩と不安、軽い鬱状態
[装備]:なし
[道具]:ディアボロのデスマスク、支給品一式
[思考・状況]
1.ブチャラティたちを始末する……のか?
2.ティッツァーノ、チョコラータ、ディアボロは組織の人間だろう
3.2に挙げた人物とは出来るだけ敵対したくない
[備考]
※結局フーゴはチョコラータの名前を聞いていません
※チョコラータとは別の方角に進んでいます

【チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:ハイ
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ(テープは原作になし)
    支給品一式(ランダム支給品はなし)×2
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しむ
1. 内陸部(高い所)を目指す
2. 優勝して荒木にロワの記録をもらう
3. ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
[備考]
※グリーンディの制限はまだ不明
※参加者が荒木に監視されている事に気づいています(ただし推測)
※思考3については、「できれば」程度に思っています


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07:ノーモア!絆なき人生 パンナコッタ・フーゴ 66:Pipistrello(ピピストレロ)
14:ゆるぎないものひとつ チョコラータ 91:線路は続くよ、どこまでも

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最終更新:2009年05月06日 17:27