さよなら紅焔の夢。こんにちは深淵の現

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽






生きているうちは 死を味わうことが出来ない。
     死は常に生の幻想である。






▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

知識とは即ち、失敗の蓄積である。
誉れの偉人であろうとも、法を司る裁定者であろうとも、その背後には数え切れない程の過ちを積み重ねてきたハズである。
人類は犠牲を糧に成長して来たと言ってもいい。歴史の蓋を紐解けばそういった真実は喝采を受け、教科書にも記されてきた。
失敗は成功の母―――この諺は、当然人間のみに当て嵌まる言葉ではない。
穢れを厭い、地上を飛び出した月の民にも過去、様々な失敗と挫折を繰り返した事実を想像するには難くない。

ましてやここに居る彼女――『八意永琳』は齢数千万を優に超えた頭脳の結晶。この世の誰よりも失敗を繰り返してきた母と言っても過言ではないのだ。
彼女の持つ知識・歴史は、そのまま失敗の歴史となる。永琳が過去、たった一度犯してしまった『大罪』は、彼女自身の歴史に大きな楔となり深く根付いていた。

永琳は敬愛する姫にこう説いたことがある。
『過去を省みることはあっても悔むことは何一つない』

果ての無い贖罪から彼女が学んだことは、“後悔に頭を悩ませるくらいなら堂々と前を向いて歩け”というある種吹っ切れた言だ。
失敗は誰にでもある。大事なのはそれを如何に己の糧とするかだ。
彼女が犯した大罪の深さを思えば、それは軽々と吐き出せるような言葉ではなかったが、八意永琳という女はそれでも足を止めることは決してなかった。
時間を止め、世界を止め、全てが凍りついた永久の居に身を置いても、彼女自身の心までは止められなかった。
月の民は本来、変化の薄い人種だ。それとは対を成す様に、地上の民は変化が早く気楽である。
嫌なことは次から次に“忘れ”、寿命を全うする。『進化』を『変化』と言い換えるなら、地上の人間はまさしく変化の種だ。
ならば永琳のような知識人は、本来なら地上の民の本質に近しいものかもしれない。元より彼女は地上の出身なのだから。


しかし永琳は“忘れる”ことを由とはしない。決して。


過去があるから現在がある。その繋がりを自ら断つなど愚の骨頂。
ここまで気が遠くなるほどの過去を積み重ねてきた。
その中で、計り知れない功績を幾つも上げてきた。
それ以上に、数え切れない数の失敗も犯してきた。
ただひとつの『大罪』は、彼女を文字通り月から地の底に突き落とした。
それでも彼女は贖罪を続けてきた。罪に向き合ってきたのである。


しかし。
しかし今回ばかりは失敗は許されない。



―――己の『死』だけは、決して糧にすることなど出来ないのだから。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『八意永琳』
【昼】F-5 禁止エリア 北西の平原


「ふう……ひとまずは、準備完了かしらね」


誰に向けるでもなく、永琳はこの会場の端……禁止エリアの一角にてそう零した。
ここはF-5、その最西端。現在禁止エリアに設定されているこの場所まで彼女がわざわざ足を運んだのは自殺願望によるものではない。
実験動物であるモルモットを放ち、考察の経過を見るためだ。その制限時間は頭部が爆破されるまでの10分間。
永琳が禁止エリアに侵入して死体を放り、すぐにこの場所を離れまた10分後に戻ってくる。10分では寧ろ長過ぎるくらいの簡単な実験だ。

脳内爆弾の解除実験。
彼女がこの殺し合いにてまず乗り越えるべき壁はこれだ。

『脳の爆発以外の要因で死亡した場合、以降爆発することはない。誘爆もなし』
参加者ルールに記されているこの事項だけが、永琳の思考に引っかかった。
これはつまり『死体』となっている参加者が爆発することは無い。そう考えていい内容だろう。
だから永琳は手頃な参加者を“一旦殺した”。秘匿の薬により、身体機能を完全にストップさせたのだ。
このモルモットが果たして本当に死んでいる扱いとなっているか? それが懸念ではあるが実際、薬で殺した参加者は紙に収納されている。
少なくとも“生きている”と判断されてはいないハズだ。ならば―――

「……彼女たちを禁止エリアに放置しても、爆破されない可能性はある」

草のベッドに2メートル間隔で寝かせた幽谷響子の亡骸と藤原妹紅の仮死体を見下ろしながら、永琳は深く考える。
あくまで可能性だが、失敗してもモルモットを失うだけ。こちら側の致命的なダメージにはならない。
少なくとも響子については完全な死体なので、こっちの方はまず爆破されないだろうが……。

「…………と、いけないいけない。やることやったら早くここから出ないと、死体がもうひとつ増えちゃうわ」

軽い冗談を吐きながら永琳は来た道を戻り始めた。
実際にはどこからどこまでが禁止エリアに線引きされているか正確には分からないので、エリア内奥まで少し入り込んだ場所に死体を置いている。
禁止エリア内ゆえ、彼女らの死体が他の参加者に見つかることはないだろう。寧ろエリア外で待つ間の10分間で、こちらが参加者に見つかる可能性こそ危惧すべきだ。
リスクはなるべく排除したい。永琳は極力、隠密行動に徹することとした。


「……あら?」


ポツ ポツ、と。
そのとき冷たい雫が彼女の麗しい銀髪を伝いだした。
雨だ。少し前から雲行きが怪しくなってきてはいたが、ここにきて天候は雨天へと変遷し始めていた。
自分ら参加者たちが蔓延るこの巨大な箱庭も、天候の移り変わりたる概念は存在するらしい。主催者の格がますます計り知れないことに、永琳は憂慮の息を吐く。
そして慌てず騒がず、念のため永遠亭から持ち出してきた雨傘を開き、冷たい雨水から服と荷を守った。


ふと、後方を振り返る。
そこにあるモノは先と寸分変わらない景色。響子と妹紅の抜け殻だけだ。

せめて木の下にでも寝かせてあげようかしら。
ほんの一瞬、脳裏を過ぎった慈悲のような感情を、永琳はくだらないとすぐに吐き捨てた。
アレはモノだ。殻だ。実験動物だ。感傷など必要ナシ。
機械的な判断に身を任せ、月の賢者は何事も無かったかのようにその場を後にする。

野晒しとなった二つの抜け殻に、雨が沈んでいった。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『藤原妹紅』
【?】?-? ?????


『今日は、いい夜になりそうだわ』

真に照らされた丑三つ時の月明かりというものは、人工の灯火などよりもずっと明るい。
まん丸お月様の下で呟いた姫君は、まさしくその名を体で表す具合で月光を反射していた。

「…そうかもね」

私は輝夜との他愛のない世間話に終止符を打つべく、相槌でも返しながら霊力を高める。

『こんなにいい月だもの』

本当に、綺麗な月夜だ。
これから殺し合いで穢してしまうのが勿体無いと思えるくらいに。

「こんなにいい月なのに」

いつも通りの、いつもの殺し合い。
私と輝夜。永遠に続くような儀式が、今宵も始まる。

ただ、証明する為に。
『生』の実感。『生』の証明。
ただ其れだけの為に。



『本気で殺し合いましょう―――――妹紅』
「言われずとも―――――輝夜」




ああ、生きてるってなんて素晴らしいんだろう。





――――――

―――






……冷たい。


―――『■■■』


どうやら少し、意識を失っていたらしい。
頬の傷口に、雨が染み込んでいく。


―――『■■……っ』


いつの間にか雨が降っている。
このままこんな所で寝たままだと風邪ひいちゃうかも。


―――『■■~?』


……それもいいか。
あんまり気分、よくないし。起き上がる気にはならない。


―――『起■■よ■紅~』


あーあ。今夜は私の負けか。
敗因は……いや、それもどうでもいっか。負けは負け。また次勝てばいいしね。


―――『ちょっと妹紅! 起きなさいってば!』


うるさいな。聞こえてるって。


『あ、やっと目を覚ましたわね』


憎々しい宿敵の声が頭上から落ちてくる。
大の字で倒れたままの私を上から見下すように、輝夜は腰を折って私の瞳を覗き込んだ。

瞳と瞳が交叉する。
ああ、やっぱりコイツの目は何というか、能天気とでも言うのか、何も考えてなさそうだ。人形みたいに。
私と似てるかもしれない。でも私とは違ってコイツのは、なんか綺麗だ。

『調子はどうかしら? 生きてる? まとも?』

蓬莱人である私には愚問でしょ、その質問は。
それともアレ? 敗者である私への皮肉ってワケ? ぶっ殺すわよ。

『あはは。殺してみなさい。殺し返してあげるわ』

あはは…………と、まあこんな具合に私と輝夜は常日頃から殺し合っている。

コイツはさっき私の「私達って本当に“生きてる”のかな?」という質問にこう返してくれた。
『私は妹紅を見ている。貴女は私を見ている。生の証明なんてそれで十分よ』
なるほど的を射ている。今、こうやって二人して見つめ合ってるのも間違いなく、生の証明となるワケだ。

『……ねえ妹紅。傷、痛む?』

痛いに決まってんでしょーが。アンタがやったんだろ。

『痛いわよねえ。そりゃそうか。うんうん、妹紅はやっぱり生きてるし、まともだわ』

はいはい、ありがとさん。
ところでいつまで私を見下ろしてるつもり? 髪がほっぺにかかってくすぐったいんだけど。




『じゃあ難題その一。“まとも”って、何かしら?』




覗き込む輝夜の右半分の顔が、ドロリと溶けて私の顔に落ちた。



『まともよまとも。貴方にとっての“まとも”って、どういう状態を指すのかしらね?
 いや、難題というほどでもないわねえコレは。……易題? まあどっちでもいいか』

「か、輝夜……? どうしたんだ、その顔……っ」

私の動揺を意にも介さず、輝夜の奴はいつものペースで淡々と会話を続けている。
でもその顔は、溶岩でも押し付けられたかのように沸騰し、ドロドロに溶けていた。

『……うん? この顔? どうした、って……貴方が焼いてくれたんじゃない。殺し合いで』

焼け崩れた頬を何でもないことのようにペタペタ弄くる輝夜の姿は、どこかまともには見えなかった。

『私がまともに見えないと言うのなら、貴方はまともね妹紅。
 傷を痛いと感じたり、まともじゃない人に恐怖したり、そういった“正常”は何より生きている証。
 要するに“まとも”っていうのは、主観から見た“異常”な他者に恐怖できる“正常”な自分を認識できること。難題その一おしまい』

言い終えて輝夜は不気味に微笑んだ。
グシャグシャになったその右眼球が眼孔から溶け落ち、ぷらんと糸を伸ばして垂れ下がる。

『心配しなくても私は全然痛くないし平気よ。つまりは私の主観からすれば、私はこの上なく“正常”ね。
 そして私から見れば、逆に貴方の方が“異常”に見える。私をまともじゃないと思っている貴方自身こそが、その実まともではなかったってオチよ』

なんだ何が言いたい。さっきから、この謎かけには何の意味がある?

『矛盾してるって思うでしょ? でもね妹紅……この世界ではそんな“正常”と“異常”が、簡単に反転してしまうものなの。
 日常の中で安穏としている正常者は誰から見たってまともだけど、この殺し合いみたいな非日常の中では、正常こそが異常と見られることもある。
 逆に非日常の中での異常者は、時たま正常者のように讃えられる。まるで兵隊ね、ふふ』



『さて、そこで難題その二よ』



『改めて妹紅。貴方は果たして“まとも”かしら?』



カチャリ。

私のトラウマとも言える音。鉄の響き。

一体いつの間に握っていたのか。輝夜は私を覗き込んだままの姿勢で『ソレ』を取り出し、私の鼻先に突きつけた。


『一八七四年製コルト回転式拳銃……忘れようがないわね? だって貴方を六回も“殺した”武器ですもの。彼のリンゴォ・ロードアゲインの手によって、ね』

リンゴォ。その名は聞き覚えがある……!
そして次の瞬間、脳裏に蘇ってしまった『あの時』の恐ろしい記憶。
あのゴミに埋もれた世界で、私を、六回も、撃ち殺した―――!


「い、いやだッ! やめ、やめろ輝夜……っ!」


全身に寒気が走った。
それを私に見せるな。
それを私に向けるな。


『うーん成る程ね。確かに貴方はまともだわ妹紅。迫り来る“死”の恐怖に怯えられるなんてまともな人間の証。私から見ればやっぱりまともじゃないけど』

半分だけになった顔でケラケラ笑う輝夜は、面白そうに銃口の先で私の額を小突いている。
私はといえば怖くて動くどころじゃない。もとよりコイツとの殺し合いを終えたばかりの身体だ、力が全然入らない。



『じゃ、ガンガン行くわね。銃だけに。難題その三』



『銃で頭を撃たれたら、普通の人間は果たしてどうなるかしら?』



コツン。

額に伝わる、冷えた鉄の感触。

輝夜はその引き金に、しっかりと指を掛けた。

ゴクリと喉を鳴らすだけで、私は二の句が告げられずにいる。


『蓬莱人だから死にはしない? どうしてそんなことが言えるの? 六回も死を視た人間が。いえ、今は七回目の死だっけ?』

そうだ、私は不死人。だから何をどうしようが死ぬことはない。
でも。

『でも、今の貴方は“人間”よ。盛者必衰の故事が示すとおり、いつかは滅ぶ存在に成り下がった。それが現在の藤原妹紅』

それはつまり、

『それはつまり……』



銃で撃たれたら、私は――――――死ぬ。



『はい。よく出来ました』


ポンと手を叩き、またも輝夜は朗らかに笑った。
そして何を思ったか、持っていた銃を私の右手に添え、コイツは次に言い放った。


『殺しなさい、妹紅。貴方には、生きる権利がある』


生きる権利。
生きる為に、敵を殺していい権利。その称号。

『このバトルロワイヤルの中では貴方は“まともな人間”よ。
 痛いのが嫌。死ぬのは怖い。正常な人間なら当然持ち得る考え。結末』

……あぁ。そう、だったね。
あの『虚無』には、もう戻りたくない。

『貴方から見て周りは全員“異常者”よ。そんな怪物たちを殺せるのは、人間に与えられた権利であり、試練でもあるの』

渡された拳銃を持ち上げてみる。雨穿つ月夜に反射された、歪に黒光りする殺しの道具だ。

『他者を屠って己の正当性を証明しなさい妹紅。でも気をつけて? 今はまともな貴方でも、ひとたび“日常”へ帰れば“異常者”は貴方になる』

正常と異常は簡単に反転してしまう、か。
でも構わないさ。

『そう。構わないの。だって貴方が優勝してしまえば、望み通りの報酬を貰えるもの』

全てを無かったことに出来る。
平穏な日常に戻れる。



『戻りなさい妹紅。殺しなさい妹紅。怯えなさい妹紅。抗いなさい妹紅。生きなさい妹紅。妹紅。妹紅。もこう。モコウ』


「黙れ“異常者”」



ダ ン ッ !!



けたたましく囁く女の顔面を吹き飛ばしてやった。
銃で撃つという行為。殺すという行為。
動かなかった身体に力が漲り、私はゆっくりと立ち上がって目の前の女を見下ろす。


『―――忘れなさい妹紅』


額に空けてやった弾痕からドロドロと流れる血の色は、私と同じドス黒い赤。
それでもこの女は生きて囁き続ける。仰向けに転がって、空から滴る雨に身を穿たれながらも喋りを止めようとしなかった。


「―――アンタは、誰なんだ?」


私は訊いてやった。コイツは輝夜の殻を被ったナニカ。

『“私”は“わたし”だ。アンタもとっくに気づいてるんでしょ? だったら躊躇するなよ』

焼け燻った右半分の顔が完全に溶け崩れ、その中から現れた『別の顔』。
コイツの顔を私は知っている。少しだけ違うのは、現れたコイツの髪は『黒髪』だった。私が知ってる銀ではなく、輝夜みたいな黒だった。

『わたしはお前だ。この世界にお前以外の人間がいるもんか』

目の前の“わたし”がそう言った瞬間、空にヒビが入った。

『さ、終わり終わり! 夢を見るのはもうおしまい! そろそろ起きようよ!』

あぁ……お前の言うとおりだね。
でも、不安はまだあるんだ。

『そうね。それはよくわかってるよ。お前はこの期に及んで未だに恐怖しているんだから』

空から落ちてくる瓦礫が私たちを取り囲む。
それに呼応するかのように“わたし”の身体は、雨に溶け込むようにドロドロに溶けていく。

「そう……だな。私はまだ、怖い。死にたくないのよ」

『その恐怖が、迷いが、お前を躊躇させてしまう』

「だったら」



『全てを忘れなさい……“私”』

「あるいはそれもいいかもね。サヨナラ……“わたし”」



記憶なんてものは、時には自分を苦しめる呪いにしかならない。

いらない記憶なんてものは消せばいい。

これからを生き残るのに必要な記憶さえあればいい。

人間は忘れることが出来るから、生きていけるんだ。


「……七度目の『死』ともこれでサヨナラかあ。七転び八起き……って言うからね」



―――でも、悪夢はもう見ない。
―――死の幻想<ネクロファンタジア>を捨てた時、私にとって初めての『生』が始まる。



そして私は、握っていた銃で自らのこめかみを撃ち抜いた。

崩れゆく紅焔色の世界が、意識と共に深淵に包まれた。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
『八意永琳』
【昼】F-5 禁止エリア 北西の平原


予定通り10分経ってこの場に戻ってきた永琳が『彼女』を見て、最初に感じたことは『実験の失敗』であった。
とかく人体とは摩訶不思議。天才たる八意永琳という医者をして、目の前の光景には理解が及ばずにいるのだから。


(……確かに彼女の肉体は『仮死状態』に陥っていた。だのに何の外的刺激も介せず、自らを覚醒させるなんて……)


私もまだまだ青かったということかしらね。永琳は自嘲するように吐き棄て、結論に手を伸ばした。
普通では考えられないハプニングが起こってしまった。それへの対応は一体どう行動すればいいのか。

少なくとも正午を過ぎるまでは復活しないはずだった藤原妹紅の肉体が、戻ってきたら何故か立ち上がっている。

まずひとつ。
もう一度、薬で仮死させるべきか。
いや、それはもはや現実的な案ではない。薬は残り少ないし、彼女が再び復活しない保証はどこにも無くなったのだから。

となると、残された選択肢はひとつしかない。


「―――残念だけど妹紅。貴方を排除するしかなくなった。悪いわね」


彼女は今や、行動が予測不能の危険人物と化した。
所詮はモルモット。廃棄すればいい。“代わり”はあの亡霊で補えば済む話だ。
しかし妹紅は輝夜のお気に入りだ。さて、どう申し開いたものか―――


「――――――ゅう」

「……ん?」


雨の中、背を向けて棒立ちになっていた妹紅が何か言葉のようなものを発した。
同時に、ゆらりとこちらを振り向いた彼女を見て―――永琳は言葉を失った。



「じゅうをおお 銃 銃 じゅうでうたう撃たれたるるァ ら ら ヒトは はアア どうな なる うら なるゥのかな?」



涎を撒き散らし、骨など元から無いように体をブラブラと揺らし、黒に染まった髪が雨を弾き飛ばしていた。
漆黒を映したその瞳に永琳の姿は見えているのか。言葉にならない言葉を、かつて妹紅だった女は喚きまわすだけ。


「生まれ生まれ生まれ生まれて て て 生の始めに暗く 死に 死に死に 死んで死んで 殺して 殺す 殺さないと」


―――人間としての機能は完全に破壊された。狂い悶える妹紅への、永琳の下した評価はそれだ。

それも仕方のない話かもしれない、と言うのはあまりに他人事だろうか。少なくともその理由の一端は自分にもある。
永琳は確かに妹紅を殺した。それはヒトとして最後の一線上に立つ彼女への背中押しになってしまったのかもしれない。
妹紅はボーダーラインの上から堕ち転げてしまったのだ。それは底が見えない奈落の深淵とも言える。
とにかくこの殺し合いで起こった度重なる『不幸』は、妹紅の人間だった部分を滅茶苦茶に引き千切った。

妹紅は蓬莱人。あらゆるダメージを再生させる不死人ではある。
それでも精神は。心だけは、『癒える傷』と『癒えない傷』があるのだ。医者を担う永琳もそれはよく理解している。
彼女が負った傷は……恐らく二度と癒えることは無い。


「あーあーあー あんたは確か永遠亭のぉ……どちら様? わたしはどちら様? でもでもわたしはまともよね??」

「……いいえ。貴方はもう“まとも”じゃないわね。誰から見ても“異常者”の類よ」

「えー? 違うよわたしは正常よぉ。人をいジョー者呼ばわりするあんたこそがいジョー者だろう う? 輝夜が言ってたし、わたしも言ってた」


ここまで来れば会話すら成立しない。
妹紅から見れば正常なのは妹紅自身で、永琳こそが異常なのだと。

『怪物と戦う者は自らも怪物とならないように気を付けねばならない。汝が深淵を覗き込むとき、深淵もまた汝を覗き込んでいるのだ』

こんな言葉が地上の外界にあるのだという。
殺し合いが始まった当初こそゲーム打破と息巻いていただろう妹紅は今―――怪物に成った。
彼女は狂気に呑まれてしまったのだ。

“まとも”とは何か?
主観から見た“異常”な他者に恐怖できる“正常”な自分を認識できること。
永琳が恐怖しているかはともかく、彼女にとって妹紅は充分すぎる程に異常だ。ここでいう“まともでない者”とは、間違いなく妹紅なのだ。
即ち異常者。妹紅は他者から見れば堕ちた怪物でしかない。

彼女は深淵――死を覗き込みすぎた。

「今の貴方の醜態はとても輝夜に見せられる代物じゃないわね。“銃で撃たれたら人はどうなるか”ですって? 教えてあげるわ」

妹紅に幾度もの死を与えたリンゴォ。その男から頂戴した、妹紅にとってはトラウマの鉄塊である拳銃を突き出す。
対して相手の攻撃方法は妖術……弾幕のみのハズ。であるなら有利なのは永琳だ。
互いの力量の差を除外しても、弾丸と弾幕では圧倒的に威力・速度共に弾丸が上。
単純な正面からの撃ち合いならば、銃に勝てるわけがない。かつてリンゴォが妹紅を瞬殺せしめたのも、それが最も大きな要因だろう。

「……銃? 待って待てったらぁ。アンタってば確か永遠亭のお医者さんでしょ? 輝夜がよく話してたから ね」

「…………?」

意味も成さない言葉の羅列にふと耳を傾けていると、何かおかしい。
おかしいと言えば今の妹紅は全てがおかしくなっているワケだが、そうではない。
そういえばさっきも……と、永琳は『ある疑惑』が頭に浮かび上がった。


「妹紅……まさか貴方、『記憶』が……?」


狂ってしまっただけではない。妹紅はとうとう『記憶』すら失ったとでもいうのか。
ありえない話ではない。劣悪な環境が脳の許容量をパンクさせ、自己保身の為に記憶を捨て去ってしまう事例は多く存在する。
彼女にとって銃とは死の象徴ともいえる鉄塊。それを見ても逃げるどころか怯えることすらしないとは。

「記憶……? うーーん、きおく……きおく……。そういえばなァんにも思い出せない。
 でもそうだ、ひとつ思い出した。わたし、輝夜を探そうとしてたんだった。さっきまで殺し合いしてたのに急に居なくなっちゃって」

輝夜を探している?
ふざけるなと、永琳は銃のトリガーに掛けた指に思わず力が入った。

まだ彼女がここまで壊れてしまう前、この会場で妹紅と会った時。コイツはその口で確かに高々と叫んだ。
「輝夜を殺した」と。さも己にはなんの非も無かったとでも言わんばかりに。
輝夜を殺害したと思い込んでいた妹紅が、記憶を失っても再び彼女を探している理由とは。
答え如何によっては、この女はこの場で必ず殺さなければいけない。

「うー でもまあアンタでもいっか。輝夜が言ってた……えーりん? 永琳ってのはアンタのこと? アナタにお願いがあるの」

「私に?」

かろうじてではあるが、何とか会話を続けることは出来ている。
それ故にわからない。壊れた人の形をした彼女が、医者である自分に今更何のお願いがあるというのか。
「記憶を戻してほしい」という類のモノならば、その返事は言葉ではなく弾丸で返してやる。


しかし次に妹紅が放った『お願い』は、永琳を硬直させるに充分な内容だった。






「―――わたしにも『蓬莱の薬』をちょうだい」






時間が止まった。
響き続ける雨音だけが、この世界の流れを象徴していた。



「――――――ぃ」



その凍りついた時間を最初に破ったのは、永琳。



「―――もう一度、言ってみなさい」



聞き間違いであってほしい。
今、この女は何を要求した? 何を言い放った?

よりにもよって、この私に。


「蓬莱のお薬よ。飲むと蓬莱人ってのになれる魔法のクスリ。アレさえあればぁ あ ぁ 死ななくなるらしいじゃない?」


ヘラヘラと笑いながら、その女は吐き出した。


「輝夜と一緒の、ほうらいにーん。アナタがその薬を作れるって、聞いたんだ。だから だからネ?」


口遊むかのように、吐き出した。“一番言ってはならない言葉”を、“一番言ってはならない人物”に。


「―――ねえ永琳、お願い。わたしを『死なない身体』にして。お願い。おねがい」


呪言にも聞こえる妹紅の呻きは、正しく呪言であった。
犯した大罪に苛まれ、永遠とも思える月日を苦しんできた永琳にとっては、今妹紅が降り掛けた言葉は呪い以外の何物でもない。


「―――今の言葉……取り消せ」


自分でも驚くほどに冷静は保てていた。
しかしその内面では、かつてない怒りが永琳を逆立てている。暴力的な口調も彼女にはそぐわない。

「えーりん……? どうしたの? なぜ怒ってるんだ? わたしはただ」

「取り消せと……言っているのよ」

本音では今すぐに目の前の女を殺したい衝動に駆られている。
それでも永琳が一線を越えずにいられるのは、『否定』して欲しかったからに他ならない。

現在の藤原妹紅は完全に壊れてしまった。それは見れば分かるし、理解できている。
そしてどうやらあらゆる記憶が混濁し、欠如もしているらしい。そこまでも、理解に至れる。
それでも八意永琳は、否定の言葉を欲した。先ほどの妹紅の言葉は、到底聞き流せる内容ではない。

『死なない身体』にして欲しい? それは違う。絶望的な間違いだ。
『死ねない身体』となってしまうのだ。あの呪われた薬は。
それを理解できない妹紅ではなかったろう……! 決して解けない呪いに苦しんできたのは私や輝夜だけではなかったハズだ……!


「なのに! 貴方は“再び”間違いを犯そうとしているッ! それは私と輝夜への侮辱よッ!!」


ダンッ!

煮え滾る怒りと共に撃った弾丸が、妹紅の頬を掠めた。
ともすれば一瞬で命を奪う鉄の塊。妹紅はしかし、向けられた殺意にも恐怖することすらしない。
其処にあるのは疑問の気持ちだけだ。自分が今どうして怒られているかが分からない。幼子と何ら変わらない呆けた姿だった。
それが余計に永琳の怒りを逆撫でした。妹紅は本当に自分が『何を』言ってしまったのか分かってないのだ。
壊れているからとか、記憶を失ったからなどというふざけた理由で納得できるほど、永琳の歩んだ歴史は綺麗じゃない。

お互い千を超える年月を苦しんだハズだ。『罪』のベクトルは双方違えど、流した後悔の涙の源流は同じ。
苦しんで苦しんで、果て無き永久の痛みを経験し、いつしか苦しみは反転した。
『だったら精一杯生きてやろう』と。永琳も妹紅も最終的には前を向けたハズだった。


そんな妹紅の出した答えがコレか。


「死を恐れるあまり、とうとう『過去』を無かったことにした。……不死の痛みを忘れ、もう一度『不死』を得る為に」


単なる死のショックで記憶が破壊されたわけではない。
妹紅は死という闇の中で自発的に手段を欲した。結果を得ようと近道をしたがった。
どれだけ死を恐れようが、身体に刻まれた不死の痛みはそれ以上の恐怖を与える。それは『迷い』となり、生の足枷にしかならない。
だから『忘れた』。己が不死であった過去を忘れ、迷いを払拭し、再び『蓬莱人』への手段に手を伸ばそうと。


「……お前は救いようのない馬鹿ね」


永琳は“忘れる”ことを由とはしない。決して。
それは大罪を犯しながらも葛藤の末、壮絶な覚悟で月の民を裏切った彼女だけでなく、敬愛する輝夜への侮辱にもなるからだ。
生への糧になれるのはその者が歩んできた『過去』のみだ。失敗しようが後悔しようが、結局は前へ歩もうとする精神こそがヒトを成長させる。
この妹紅はしかし、過去を拒み、あろうことか断ち切った。だから永琳の逆鱗に触れてしまったのだ。


「馬鹿、だって? それは違うよえーりん。わたぁしは『人間』。人間なんだよ、アンタや輝夜とは違ってさ」

「己が狂った人の形であると認識できない人間を、人は『怪物』と呼ぶのよ」


死は誰にでも平等に訪れるだなんて誰が言ったのだろう? 少なくとも人間は生き方次第で別の生き物になる気がする。

妹紅は成った。人間ではなく、別の生き物……既知の言葉に当て嵌めるのなら『怪物』に。
コレはもはやこの世に居ていい生物ではない。直ぐに始末すべきだ。
先の侮辱の言葉への謝罪や否定も、この様子では貰えそうにない。

死なない生き物は存在し得ない。生きていなければ死ねないし、死なない生き物は生きてもいない。
生命の実態とは、この厚さ0の生死の境。
少なくとも妹紅は、永琳にとって数少ない『同種』だった。
自分や輝夜と同じに『罪』を背負いし不届き者。そこに月の民だとか人間だとかの境は関係ない。
だからこそ、こうなってしまったことは残念で仕方ないとも思う。

ただただ、歯痒さのみが募るだけだった。


「怪物は必ず退治されるものよ」


ダンッ!


今度こそ永琳は排除にかかる。先のような牽制ではなく、命を刈る為の一撃。何もかも忘れ呆けた妹紅に期待できるモノは、もう無い。
風と雨とを切り裂きながら突き進む弾丸は、狙い済ました急所を少しずれ、妹紅の左肩を貫通するのみに終わった。

「―――ぁア!?」

突発的に発生した痛みと熱に耐えかね、悲鳴をあげてよろける妹紅。
壊れてはいてもやはりその身体には、痛覚の伝達回路までは焼き切れていない。
しかし腐っても蓬莱人であるハズの彼女だ。こんなダメージなどすぐに治癒せしめてしまう。
ならば追撃。トドメの一撃を以って妹紅には『最後の死』を与える。
今までに散々悪夢は見てきただろう。それもオシマイにしてやる。
死は悪夢には成り得ない。死とは単なる『終点』だ。
正直を言って、永琳はもう二度と妹紅の姿など見たくはない。終わりにしたかったし、終わらせてあげたかった。

結局のところ永琳は、最後の最後に優しさ――感傷のような心を覗かせた。
こんな妹紅はあまりにも……不憫だ。
そしてかつて己が作り上げた蓬莱の薬という呪いは、我々をどこまでも蝕み纏わり尽くす『断ち切れない罪』という事実を再認識する。
どこまでもどこまでも追いかけて来て、気付かぬ内に取り囲んでもたげてくる。罪とはそういうモノだ。


―――本当の『怪物』とは妹紅などではなく、他の誰でもない……この私かもしれない。


殺しにかかる刹那、心の深淵から湧いたその『答え』が、僅か一瞬だけ永琳の足を躊躇させてしまった。


「……っ! ぁ、あぁ、あああぁ……ああああぁぁああアアぁぁァァアアアアアああぁあああッッ!!!!」

「ッ!!」


長い黒髪を体ごと翻し、絶叫を上げながら妹紅は逃走を選んだ。まさに一目散という言葉通りに、背を向けてあっさりと走り出した。
何を戸惑っている永琳。そんな自己嫌悪も振り払い、逃げ出す妹紅の背に照準を向ける。
だが……。


「……少し遠い。それにそろそろタイムリミット、ね」


拳銃の扱いに慣れているわけでもない永琳には、この距離から獲物を一発で仕留める自信は無い。
そして現在この場所は『禁止エリア内』。妹紅はエリア外から来た永琳とは逆方向に走っていったのだ。つまり彼女を追いかけるということは禁止エリア内奥に入り込んでいくということ。
流石にリスクが高い。永琳の目的はあくまで『実験』を進めることなのだから。

……本当にそうか?
今、妹紅を追いかけて仕留めなかったのは、本当にそれだけが理由か?
呆れ、失望、軽蔑……それらの感情が重い倦怠感となって、殺す気すら失せたのではないのか?

「……運が良ければ勝手に自滅してくれるでしょ。いえ、悪ければかしら」

残された永琳は独りごちるように唱えて得物を仕舞い、落とした傘を拾う。どちらにせよ今更追うことなど出来ない。
馬鹿なことに時間を浪費した上に体まで濡らしてしまった。実験体までひとつ失う始末だ。
大きく溜息を吐きながら、雨風に晒された響子の亡骸をチラと見る。
見るに耐えない遺体だが、その頭部は無事首の下まで繋がっていた。
予想通りではあるが、10分経っても頭部の爆破は免れている。やはり肉体の死は、イコール爆弾解除と考えても良さそうだ。
だが肝心の仮死体における実験は、情けないことに実験体に逃げられる結果を以って失敗に終わった。これではあまり意味が無い。

「予備の実験体はまだあるし……もう一度、ね。たかだか10分のロス……めげちゃ駄目よ永琳」

失敗には慣れている。転んでも前を向くことが大切なのだ。
あの愚かな怪物はそこから逃げ出した。だから怒りを買ったのだ。

響子の亡骸を手際よく再び紙に戻し、今度は西行寺幽々子の体を取り出して足元に寝かせる。実験のやり直しだ。
その寝顔たるや、まさしく亡霊の姫君と称するにふさわしく、美しい。もっとも彼女は寝ているのではなく、仮死状態。
妹紅のように幽々子まで復活したりはしないだろうか? その懸念もあったが、他に手段も時間も無い。
そもそも妹紅の場合だってごく稀な事例だろう。そうそう起き上がられては、製薬者である自分の誇りもそれこそ過去に消える。

いち早く決断し、永琳は幽々子に背を向け駆け出した。これは実験の第一段階。その成功を胸に祈りながら。

そして今この場で起こったことをもう一度、想起する。
妹紅は蓬莱の薬を欲していた。この会場においては支給品となり、『ある人物』に配られていることを永琳は知っている。
もしも妹紅が生きてこの先、あの呪われた薬を狙い続けるというのなら……


(……輝夜、あるいはシュトロハイムが危ない)


妹紅を逃がしてしまったことは、永琳にとって致命的な『失敗』になりかねないのかもしれない。
こんな結果に陥ったのは、ひとえに永琳自身の心の隙……同種であった妹紅に少しでも向けてしまった『感傷』のせいでもあった。

走りながら永琳は、懐に手を入れ『ある物』を眺める。


―――妹紅と、見知らぬ少女が写った一組の写真。


暗く、情けなさすら窺える妹紅の姿とは裏腹に、隣に写る少女のなんと笑顔なことだろう。
恐らく会場内で撮ったにもかかわらず、まるでこの場が殺し合いの盤上であることを理解してもいなさそうな、そんな満面の笑顔。
本当に、本当に対称的な二人であった。
妹紅と一緒に行動していただろうこの彼女は、今どこに居るのだろう?
その答えを予想するのは、永琳でなくとも容易かった。


「…………残念。とても残念だったわね……妹紅」


このゲームでは遅かれ早かれ誰しもに降りかかる苦難の可能性。
彼女たちにとっては手に余る逆境が、降り注いだだけ。
写真を見た永琳の感想は、ただのそれだけだ。

そんな矮小な感傷すら切り裂くように。
自分の中に眠る甘さに唾でも吐き棄てるように。


永琳はなんの躊躇もなく、写真を破り捨てた。


風に吹かれ、どこへ飛び去るとも分からない一対の写真には興味など失ったかのように。
彼女は足を速めた。



【F-5 北西の平原/昼】

【八意永琳@東方永夜抄】
[状態]:精神的疲労(小)、少し濡れている
[装備]:白楼剣@東方妖々夢、ミスタの拳銃(4/6)@ジョジョ第5部、携帯電話、雨傘
[道具]:ミスタの拳銃予備弾薬(15発)、DIOのノート@ジョジョ第6部、永琳の実験メモ、幽谷響子とアリス・マーガトロイドの死体、永遠亭で回収した医療道具、基本支給品×3(永琳、芳香、幽々子)、カメラの予備フィルム5パック
[思考・状況]
基本行動方針:輝夜、ウドンゲ、てゐと一応自分自身の生還と、主催の能力の奪取。
       他参加者の生命やゲームの早期破壊は優先しない。
       表面上は穏健な対主催を装う。
1:爆弾解除実験。10分後に再び幽々子の肉体を回収。
2:輝夜、てゐと一応ジョセフ、リサリサ捜索。
3:しばらく経ったら、ウドンゲに謝る。
4:基本方針に支障が無い範囲でシュトロハイムに協力する。
5:柱の男や未知の能力、特にスタンドを警戒。八雲紫八雲藍、橙、藤原妹紅に警戒。
6:情報収集、およびアイテム収集をする。
7:第二回放送直前になったらレストラン・トラサルディーに移動。ただしあまり期待はしない。
8:リンゴォへの嫌悪感。
[備考]
※参戦時期は永夜異変中、自機組対面前です。
ジョセフ・ジョースター、シーザー・A・ツェペリ、リサリサ、スピードワゴン、柱の男達の情報を得ました。
※『現在の』幻想郷の仕組みについて、鈴仙から大まかな説明を受けました。鈴仙との時間軸のズレを把握しました。
※制限は掛けられていますが、その度合いは不明です。
※『広瀬康一の家』の電話番号を知りました。
※DIOのノートにより、DIOの人柄、目的、能力などを大まかに知りました。現在読み進めている途中です。

※『妹紅と芳香の写真』が、『妹紅の写真』、『芳香の写真』の二組に破かれ会場のどこかに飛んでいきました。


○永琳の実験メモ
 禁止エリアに赴き、実験動物(モルモット)を放置。
 →その後、モルモットは回収。レストラン・トラサルディーへ向かう。
 →放送を迎えた後、その内容に応じてその後の対応を考える。
 →仲間と今後の行動を話し合い、問題が出たらその都度、適応に処理していく。
 →はたてへの連絡。主催者と通じているかどうかを何とか聞き出す。
 →主催が参加者の動向を見張る方法を見極めても見極めなくても、それに応じてこちらも細心の注意を払いながら行動。
 →『魂を取り出す方法』の調査(DIOへと接触?)
 →爆弾の無効化。


【西行寺幽々子@東方妖々夢】
[状態]:仮死
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:…
1:…
※参戦時期は神霊廟以降です。
※『死を操る程度の能力』について彼女なりに調べていました。
※波紋の力が継承されたかどうかは後の書き手の方に任せます。
※左腕に負った傷は治りましたが、何らかの後遺症が残るかもしれません。
※現在仮死状態です。少なくとも正午を過ぎるまで目覚めませんが、外的要因があれば唐突に復活するかもしれません。


『藤原妹紅』
【昼】F-4 南西の草原


星々の光を失った大宇宙の漆黒を想像できる者は居るだろうか。
太陽の光も届かない深海の漆黒を想像できる者は居るだろうか。
人の想像など所詮、空想の域を出ない不完全な虚像。
本物の『闇』とは、光を失った盲目の死者にしか想像出来得ない深淵の底に存在する。


「痛い 痛い 痛いよ くそォ、アイツ許さない……! わたしは何もしてないのに。くそ 痛い……っ」


銃で撃たれたのは『初めて』だ。こんなに痛いだなんて。
銃弾の貫通した左肩を抑えながら、堕ちた怪物・藤原妹紅は徘徊る。
よろよろ、ゆらゆらと危なげに、見えるはずのない光へ向かって、雨に濡れながら。

彼女は記憶を破壊することで痛みから逃げようとした。
呪いから、死から、運命から、必死に逃げようとした。
遂には全てを拒絶した。襲い来る恐怖も、敵も、何もかもを。
自身が現在、醜悪なゲームに巻き込まれていることすら認識していない。
更には自身が蓬莱人であることも忘却し、ただの人間なのだと思い込んでいる。

残った僅かな記憶には、まず輝夜の存在があった。
宿敵・蓬莱山輝夜。つい数時間前、出会い頭に焼き尽くした友の顔。
そんな邂逅も記憶から抹消された。あるのは、ただ彼女が生涯唯一の稀有なる理解者であるという曖昧な記憶だけ。

そして、妹紅が知った顔といえば輝夜と先ほど襲われた永琳のみだった。後はよく憶えていない。
だが身体に刻まれた記憶の楔はそう簡単に消せるモノではない。
妹紅は何となく、この世界に居る者、その殆ど全てが自分の敵であると理解した。
ここには恐ろしい“異常者”が多く跋扈している。
身を守る“術”が必要だ。
死なない“方法”を探さなくては。


「……蓬莱。ほーらいのクスリを、探しにいこう。邪魔する敵は 燃やして 殺して 生きなきゃ」


そこは既に禁止エリアから北上の場。生への本能なのか、妹紅はタイムリミット直前にエリアからの脱出に成功していた。
髪に滴る雨が鬱陶しいとも感じていたが、雨具など持っていない。
ただひとつ、あるのは―――


「………ナンダロ これ? えっと、『カメラ』……写真? ふーん」


唯一永琳の手から取り上げられずにいた支給品『インスタントカメラ』の説明を見て、興味薄く納得する妹紅。
こんな物では到底、自分の身を守ることなど出来そうにない。
必要なのは、やはり蓬莱の薬。
『人間』でしかない自分が『不死人』になる為の、最も近い方法。
探そう。誰かがきっと持っている。輝夜に会えれば快く渡してくれるかもしれない。
あの医者は渡してくれなかった。輝夜から聞いた話とは違って、とても意地悪な女だ。次に遭ったら骨まで燃やしてやろう。

目的が出来た。早速探しに行こう。
役に立たないカメラなど仕舞って、まずは適当にでも歩いていこう。
そう思い、覚束ない足取りを多少まっすぐに動かして。



「――――――ヨシカ?」



ふと頭に浮かんだ『彼女の名前』が、思わず声に出た。
ヨシカ。
はて、誰の名前だっただろう。

脳の片隅に残った記憶の一欠片が、どうしてか忘れられなかった。



【F-4 南西の草原/昼】

【藤原妹紅@東方永夜抄】
[状態]:発狂、記憶喪失、体力消費(中)、霊力消費(小)、両手の甲に刺し傷(ほぼ完治)、左肩に銃創、黒髪黒焔、再生中、濡れている
[装備]:火鼠の皮衣、インスタントカメラ(フィルム残り8枚)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:生きる。殺す。化け物はみんな殺す。殺す。死にたくない。生きたい。私はあ あ あ あァ?
1:蓬莱の薬を探そう。殺してでも奪い取ろう。
2:―――ヨシカ? うーん……。
[備考]
※全てを忘れました。












136:白兎巧師よ潮流に躍れ ――『絆』は『相棒』―― 投下順 138:侵略者DIO
136:白兎巧師よ潮流に躍れ ――『絆』は『相棒』―― 時系列順 138:侵略者DIO
135:亡我郷 -自尽 八意永琳 146:迷いを断て!白楼剣!
135:亡我郷 -自尽 藤原妹紅 141:偽装×錯綜×アンノウンX
135:亡我郷 -自尽 西行寺幽々子 146:迷いを断て!白楼剣!

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2016年10月25日 19:59