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夢の世界へ連れていって (2)

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家の近くの公園で、ブランコに腰を下ろす。
家に一旦帰って荷物は置いてきた、でも……。
家には誰もいなかった、今の私には孤独な空間が何よりも辛い。
何をするわけでもない、ただ、向かいをボーっと眺めているだけ。
時々、子連れの夫婦が、カップルが、学校帰りであろう子供たちが公園を素通りしていく。
明日も変わらぬ一日を約束されているであろう、私の前を過ぎ去る通行人達。
変わらない事が、どれ程幸福な事か、彼等は気づいているのだろうか?
「バーカ……」
軽い妬みから思わず出た罵倒、だがそれを聞き止める者など一人としていない、いる訳ない。
「……」
ブランコが揺れる度に、私の中に浮かび上がるお母さんの顔。
そして、そのお母さんと、変わらぬ生活の中で結ばれるという、壮大過ぎる空想。

……ふと、公園から続く丘に目がいき、私の足は惹かれる様に足を動かす。
ガードレールの下、見渡す限りの草原が目につく。
決して煌びやかな綺景も無ければ輝く夜景のような華やかしさも無い、だが、全体に広がる緑一色の群れは、一種の幻想的とも呼べる魅力があった。
思わず私は身を乗り出して下を見る。
その草原に、私とお母さんが二人で戯れている光景を想像しながら……。


そうして再び家に戻ってくると、さっき誰もいなかった静寂の空間が嘘の様に、賑やかな空間を作り上げていた。
「あ、お姉ちゃんお帰りー」
まずはつかさ、そしてかがみ、まつりもリビングに顔を出している。
もちろん、お母さんも―――。
「お帰り」
「ただいま」
突付いたら壊れてしまいそうな笑顔が、そこにあった。




夕食を取り、お父さんもまつり達もリビングを後にする。
私は暫くリビングにいたが、11時を回った頃に椅子を引いた。
「私、明日も早いから、今日も早く寝る事にするわ」
お母さんにそう告げると、昨日と同じ様にお母さんを後ろから抱き寄せて軽くキスをした。
そのまま返事だけ返してくれると思っていたお母さんが、振り向いて私に体を預けてきた。
柔らかな光を含んだ瞳に、いつもよりはっきりとした意思を宿しながら。
そのまま、再び私の唇が塞がれる。
私の首にお母さんの腕がまわる。
私も、お母さんの背中に手を持っていく、お母さんが少し足を崩した。私もそれに合わせて少し腰を低くした。
お母さんより私の方が5cm近く背が高いから、これ位で調度よくなる。
理性が保てる限界まで、お母さんを受け入れた。
……やがて、口を離す。
「おやすみ」
体が離れた瞬間、私は言いようも無い不安と恐怖に包まれる。
つい私は、一旦離れたお母さんの体をもう一度抱き寄せ、再度唇を押し付けた。
「……」
こんなに、こんなに愛してるのに――――。

何で、こんなに苦しいのか。

こんどこそ私はお母さんから離れ、最後に「おやすみ」と告げて部屋に戻った。

部屋に戻った後、私はすぐに自分の体を布団で包む。
寒かったから。
すごく、寒かったから。
今の私には体温の温もりだけでも十分な慰めになる。
もう、今日はこのまま寝てしまおう。
それが、思考から逃れる唯一の手だ。
私は、目を閉じて無理やり意識を眠りへと移行させようとする。
始めこそ、あまり眠気は無かったものの、無理にでもそうしていれば何時かは落ちるものである。
……一体どれくらいそうやっていただろう、ようやく私の意識が落ち始める。
せめて、いい夢を見れる様にと祈りながら……。


……ん。
私は、急に目が覚めた。
時間は……深夜2時、ちょっと前。
何故、こんな時間に目が覚めたのだろう。

……不意に、ガタ……という音が聞こえた。
……。


急に、言い知れぬ不安を覚え、ベッドからはね起きる。
自室のドアを静かに開け、ゆっくりと廊下に出た。
そして……。
聞こえた。
話し声が、いや……。
一方は……怒鳴り声に近い。
どちらの声も、私のよく聞き知っているものだった……。
普段は温厚なお父さんが、あんな声を上げているのを聞いたのは、一体どれ位ぶりだ……。
それに対応するお母さんは口調こそいつものままではあるものの、何処か固さの混じった声……。
私は、心臓を鷲掴みにされたような恐怖を覚えた。
まさか……。
そうだ、私が覚悟を決め、今まさに決断を出さんという所まで来たのを考えれば……。
お母さんとて、同じ風に思っていたとしても、まるでおかしくない。
私は胸を必死でおさえ、会話が聞こえる所まで歩み寄る。
「何を、何を馬鹿げた事を言っているんだ、お前は」
「ええ、馬鹿げた事を言ってるのはわかるわ、でも、本当の事なの」
「本当の事?わかっているのかい、自分の娘に――」
「ええ、百も承知です、でも、事実です」
鼓動が、止まらない。
吹き出た汗が、しみを作っていく。
「だから、私はいつか言わなきゃいけないって思ってたの」
お母さん、その先は、言ったら……。
一度間を置いたお母さんの次の言葉は、まるで、スローモーションの様に、響いた。


「許してください、あなた、私はいのりと浮気をしています―――――」


お母さんの頬を打つ、平手の音が響いた。
そして、私も黙って聞いているのはそこまでが限界だった。
「お父さん、待って」
「いのり―――」
「いのり……」
もう、これ以上お母さんに自分の罪を担がせる訳にはいかなかった。
全て、自分の責任。
家庭崩壊の序曲である根源、つまり自分の責任。
「お母さんじゃないの、全ての原因の発端は、私――」
「待って、いのり」
「私が無理やりお母さんに迫ったの、勿論その後も無理やり浮気させてたのも私、お母さんは被害者よ、加害者は私一人―――」
それは、かばいだてでも何でもなく、決して嘘偽りない言葉だった。


「いのり、お前は……」
「被害者のお母さんが殴られる理由は無いわ、殴るなら私、お父さんからお母さんを奪おうとしてる私」
お父さんは、一度あげた手を、力無く下げ……。
「わかっているのか……お前たちは……」
「お父さん、私、本当はイカレてるの、だからわかってるわ、わかってるから狂ってるのよ」
後には引けず、正直な想いを吐露し、結果は、これか。
結局私は、こういう結末を招いた。
どれだけ考えても、都合のいい法案なんて浮かぶ事は無かった。
まつりの援護も無駄に帰してしまった。
最早、誰にも合わせる顔が無い。
私が名実共に、この家の疫病神になった瞬間だった。
「少し……一人にしてくれ」
お父さんはがっくりと項垂れるように座り、私たちに背を向けた。
「……」
一体、何?この疎外感は。
私は今、堂々と宣言したのだ、お母さんを手に入れると。
これは、ベストエンドではないのか?
家族は壊したかもしれないけど、私は欲しい物を手にいれた。
やっぱり、どっちも守りたいなんて、欲張りはいけないものね。
じゃあ、少しは嬉しがりなさいよ。
どうしたの私、笑わないからお母さんがあんなに悲しそうにこっち見てるじゃない。
わらえ私の口。
あ……。
あーーー……。
あーーjk―――y-s-……。

おめddでhdとkdうmkmわたsssし
「ああ……あ?違う、私、あー、あれ……」
「いの、り……?」
よshswかっsjた めsjsasでjjkjkiたkkhuiし meめsjでkkkkksたswsし
「違う……」
「いのり……?」
「……?」
めswでswたswし めswでswたswし
「違う……」
「ねぇ、いのり」
めsでsたsし めsでsたsし
「違う……」
「いのりっ!」

めでたし めでたし
「違う」

『め で た し  め で た し』


「あ、ぁ……」
「ねぇ、いのりっ!!」
「ごめんなさい、お母さん、私、全然、違う……」
「何を言ってるの?ねぇっ」
一歩。
また、一歩。
ゆっくり、後ろに下がる私の体。
ドアの所まで下がり……。
私の足は、体は、勢い良く玄関から外へ飛び出していた。
「いのりっ!」
「何処にいくんだ、いのりっ!?」


「……」
深夜の公園。
私は何をするでもなく、ただ、立ち尽くす。
「私の欲しかった結末……こんなのだったっけ……」
あまりにも無残な結果を導いたこの行動。
全然、違う。
何で、こうなったんだっけ、あ……そうそう、私がお母さんを好きで、それを怒られたんだ、そうかぁ……。
「じゃあ、これって、私の思った通りの結末だぁ」
わかってて、行動に移して、そして思った通りの結果を招いた。
じゃあ、私の望み通りって事に、なっちゃうね、今の、この時が。
私、こんな結末欲しかったんだ、今まで全然気付かなかった。
まつり、姉さん願い事叶えたみたい、自分の力で。
もしかしたら、ようやく神様も私の味方する気になってくれたりとか、したのかな。
じゃあ今、遅れてやってきたこの涙も、嬉し涙なんだ、これ。
何かよくわからないなぁ、もう。
「嬉しい」
試しに、言ってみる。
嬉しいのイメージって、こんなのだったっけ。


「楽しい」
楽しいのイメージを頭の中で浮かべ……。
楽しいのか、楽しくないのか、わからない。
もう……しっかりしてよ私の頭。
「お母さん」
こんな、こんな状態でも、その名を呟けば、今までと同じ想いが内から湧き出てくる。
「お母さぁん……」
呼ぶ事に、呼ぶ事に呼応する私の体。
好き。
私の麻痺した頭が、それだけを訴える。
慕情だけ、訴える。
まるで、人間の理性を放置した様に。
それが「答え」だと、体が、想い人を求めて泣いている。
答え?
「答え」?


あ……。

私……。

答え、見つけた……

「お母さん、好き……」
何度も口にしたようで、今初めて呟いたような……。
こんな単純な答え、忘れてた。
私、お母さんが好き。
それだけは、本物―――――。

「いのり」
息を切らせてお母さんが私に追いついた。
「いのり、私ね―――――」
「お母さん、お父さんの所に行ってあげて」
「……」


「私、今ようやっと答え、出したの」
「……何?」
「私、お母さんが好き」
「……」
「壊した私がこんな事言うのおかしいけど、お父さんのとこに行ってあげて」
それが、私の答えだった。
「一緒に、帰りましょう?」
「ううん」
私は静かに首を横にふった。
「資格が無いとか、そういうのは、もう関係ないんだ、私わかった、まだずっと弱いままだったの」
もし私が強ければ、もしくは、弱くないなら、今のお母さんの言葉通り、一緒に手を繋いで家に帰れたのかもしれない。
もう一度、受け入れて貰おうと思えるだけの強さがあったなら。
静かに公園の丘を歩く。
「自惚れるわけじゃないけど、私がやった事、いつかはまつり達にきっと許して貰えると思う」
確信を込めて言った。
だって、家族だもん。
その家族を壊した私を、許せる筈の無い所業をしでかした私を、柊家は、いつか許してくれる。
都合が良すぎる位に、暖かい家族だから……。
お父さんも、時間差はあれど……結局、優しい事に変わりは無いものね。
「だから、駄目なんだ」
弱い私は、結局答えを出せたのに、最後の最後まで、逃げる結末を選んでしまったんだから。
最後の最後まで、親不孝娘……。
なのに果報者で、滅茶苦茶やらかして、世の中って不公平よね。
まるで、ワルツを踊る様に私の足は軽やかに、ゆっくりと丘を上がっていく。
「ねぇ、いのり?帰りましょう……」
「本当に、自分勝手でごめんなさい、お母さん」
最後まで、周りの事をまるで考えない選択ばっかり選んじゃって、バカだなぁ、私。
でも、足は止まらない。
せっかく、許して貰えるかもしれないのに、もう、戻る元気すら残ってないなんて、ね。
丘の一番上までたどり着く。
崖の下には、早朝でも見晴らしのいい草原が、盛大に目に写った。
夕方に眺めた、あの草原が。
「ねぇ、お母さん、こんなバカ娘で良かったら」
「いのり?こっちに来て……そんな所にいないで、お願いだから……」
私は自分でも驚く程の朗らかな笑顔を浮かべ……。
最後の、お願いを、口にした。


「また、私の事、産んでください、お母さん」


私の足が、丘から離れた――――――。

まるで、風にくるまれているような、そんな錯覚に陥り……。
どんどんと遠くなっていく光景で、私が最後に目にしたものは……。
ずっと上で、私の名前を呼んでくれた、お母さんの顔―――――――。






……。
……。
白い。
ここは……。
ゆっくりと、起き上がる。
ここは、家、そう……。
柊家、私の、家。
とても、白がかっている。
私の目が、まだ慣れてないからかな。
廊下に出る。
『おはよー』
つかさがドタドタとリビングに向かう。
私の声は、出ない、そしてつかさも、私に見向きもしない。
『あれ?つかさ、今日はめずらしく早いじゃない』
『えへへー、だって今日はお祭りだし』
学園祭の事かしら?本当に嬉しそうね。
『ほら、二人とも、せっかく時間があるんだからゆっくり食べなさい』
お母さん……。
嬉しそうなかがみとつかさの顔を交互に見て、優しく微笑んでいる。
私の大好きな、あの笑顔だ。
『うわおーー!!!』
ドタンバタンという音をたてながらまつりがリビングに突っ込んでくる。
『ちょっとお、もっと静かに入れないワケ?』
『しょーがないでしょ!?このままだと遅刻スレスレよ!!』
『スレスレっていうかもう間に合わないんじゃ……』
つかさの言う通りね、この時間でまだ家にいれば向こうに着く頃にはチャイムが鳴ってる時間帯だ。
『お母さん!食べながら行くからトーストちょうだい!!』
『はいはい』
全く……今時そんな食べ方する子なんてまつり位じゃない?
『普通食パンくわえながら行こうとする?まつり姉さんさぁ、みっともなさすぎ!長女としての自覚ってもんが無いのかしらね』
『うっさいわよかがみ、朝食取らずに行くなんて、そっちの方がよっぽど非常識なのよ、昼休みまで持つわけないじゃない』
『はーいはい』
『何だ、皆してここにいたのか、お早う』
お父さんも、いつもの穏やかな表情で椅子に座り、新聞を広げる。
『今、朝ご飯食べます?』
『ああ、よろしく頼むよ』
『んじゃいってきまーーす!!』
『気をつけるのよー』
まつりが家を出る。
そして……。


ピンポーン
『はーい?』
『お早うございまーす、泉ですけどーー!』
『あっ、こなちゃんだ!』
『何か今日はこなたといいつかさといいめずらしいわねー、やっぱり今日みたいな日は違うわねー』
何もかもが、いつも通りの日常……。

私が存在しない事を除けば……。

私は、いない。
私は、入れない……。
これが、家族を壊した私への、罰?
痛い。
すごく、痛い。
もう私は、この中にはいない。
この光景は、天国のような、地獄。
そう、地獄、私への制裁。
最後の最後までお母さんを、家族を傷付け抜いた私への。
寺の掛け軸に書かれているような地獄ではない、ひょっとして、これが本当の「地獄」なのかもしれない。
『お邪魔しまーす』
『あ、こなちゃん、もうちょっとで用意できるから待ってて』
ここにいる。
『早く準備しちゃいなさいよー?』
私はここにいる。
『つかさのハミパン萌えー』
『親父かお前は!』
私は、ここにいるのに。
『じゃお母さんいってきまーす!』
『いってきまーす』
『おっ邪魔しましたーー!』
『はい、行ってらっしゃい』
お母さん、私は――――。
『さて……どうだい、今日は久しぶりに』
『あら、何処か行きたい所でもあるの?』
『知人から貰ったんだよ、映画のチケット、最近二人で出かける機会も殆ど無かったし、久しぶりにどうだい?』
『ふふ、今時の映画なんてわかるんですか?……でも、そうね、たまにはいいかもね』
『うん、じゃあ着替えてくるから、出かける準備をしておいてくれ』
『わかりましたよ』
待って、私はここに―――――。
『じゃ、行こうか』
『ええ、あなた』
待って―――――――


お母さん達が、家から出て行く。
私も後を追いかけようとするけど、家から、出られない……。
まるで、この白がかった柊家の中に、飼われている様に。
本当に私は、もう……。
このまま、この覚めない夢を延々と見続けなければならないのだろうか。
それが、罰なの?
ずっと、私だけがいない柊家の日常を……見続けなければならないのか。
……どうにか、なっちゃいそう。
寒い。
こんなに寒い。
恋しい。
でも、涙も流れない、今の私では。
だから、その分苦しさも流せない。
お願い、だったら早く、早く何かに生まれ変わらせて。
出来れば今度は普通の女の子に生まれたい。
それで、一般幼稚園に通って、小中学校も公立でそれなりに楽しい学園生活送って。
高校に進学して、初めて男と付き合う。
でも所詮、ガキんちょのお付き合いで、高校を卒業する頃には終わってしまい、
就職して、同僚の男性と知り合い、いい感じになって恋に落ち、職場結婚、寿退社。
子供に恵まれ、年を取り、孫も出来、寿命をまっとうして命を終える。
そんな風に生を受けたい。
それが贅沢なら、生まれ変わらせてくれるだけでいい。
早く、この地獄から私を解放して。
それさえ許されないのだったら、このままこの地獄に縛り付けられたままの日々を送らなければならないのなら。


お願い、最後に、最後に一回だけ、お母さんを抱っこさせて。


私が、そう願った瞬間、再び周りが真っ白になった。
























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