- 社会契約論の必要性--ピューリタン革命、王政復古、名誉革命
社会契約論の主題は「政治権力,あるいは国家とは何か」という問いにまとめられる。特に「なぜ政治権力がわれわれを統治しうるのか」ということに答えるのが目的といってよい。
では、なぜこういう問題が17世紀のイギリスで必要になったのか。その政治史をたどろう。
イギリスは17世紀に入ってまずテューダー朝からステュアート朝に変わった。そのステュアート朝と議会との関係が悪くなって、1642年にはピューリタン革命が起こる。その中で国王チャールズ1世は処刑され、イギリス史上唯一の共和政が現出する。しかし、1660年には王政が復古し、88年から89年には名誉革命が起こって議会主権が確立する。
ヨーロッパ大陸に比べて比較的安定しているとはいえ、この時期のイギリスでは、政権交代が連続して起こっている。こういう状況に遭遇したイギリス人は何と思ったか? 確かに政権を持つものは目まぐるしく変転するが、その各々の時期において政治権力による統治はちゃんと成立している。「いったいなぜ、われわれはそれらの政権の統治に服されなければならないのか?」、「統治の正統性の根拠はどこにあるのか?」。
そこで出てきた議論が社会契約論だった。
では、なぜこういう問題が17世紀のイギリスで必要になったのか。その政治史をたどろう。
イギリスは17世紀に入ってまずテューダー朝からステュアート朝に変わった。そのステュアート朝と議会との関係が悪くなって、1642年にはピューリタン革命が起こる。その中で国王チャールズ1世は処刑され、イギリス史上唯一の共和政が現出する。しかし、1660年には王政が復古し、88年から89年には名誉革命が起こって議会主権が確立する。
ヨーロッパ大陸に比べて比較的安定しているとはいえ、この時期のイギリスでは、政権交代が連続して起こっている。こういう状況に遭遇したイギリス人は何と思ったか? 確かに政権を持つものは目まぐるしく変転するが、その各々の時期において政治権力による統治はちゃんと成立している。「いったいなぜ、われわれはそれらの政権の統治に服されなければならないのか?」、「統治の正統性の根拠はどこにあるのか?」。
そこで出てきた議論が社会契約論だった。
この問題に対して最初に答えを出したのが、ホッブズ(1588-1679;彼は91歳と長生きしている分だけ、さまざまな政権交代の変遷に立ち会った。生年の1588年は、アルマダ海戦によって、イギリスが16世紀の強国であったスペインを粉砕し、興隆期を迎えた年。ピューリタン革命の混乱、そして王政復古を見て、名誉革命の10年ほど前に死ぬ。)。
主著『リヴァイアサン』では、社会契約論が以下のように展開されている。
まず人間は「自然権」を有している。これは要するに、人間であるならば持っていてしかるべき権利、基本的人権に相当する。彼の言う自然権は、具体的には「生存権(生命保存権)」を指す。これは私たちから見れば当たり前の権利なのだが、ホッブズは三十年戦争などで、その当たり前であるはずの権利がないがしろにされていることを目の当たりにする。では、なぜそうなるのか。
導かれた答えは、人間の欲望に限りがないからだ!ということだった。全員が自然権=生存権の充足を無制限に主張したため、限られた生活資源を奪い合うことになり、「万人の万人に対する闘争」に陥った(ホッブズはこれを「自然状態」という。ほうっておくと喧嘩ばかりする生き物としての人間)。
そうならないようにするためにはどうすればいいか?
ホッブズは、まず各自の持っている自然権を、平和を維持できるような有力者あるいは有力な組織に対し、「契約」を通じて譲渡する。そしてその有力者の力によって、平和を確保する。それが結局は人々が「生存権(生命保存権)」を全うする一番の近道なのだ。そう結論する。
『リヴァイアサン』が発刊されたのは1651年。ということは、三十年戦争が終わってまだ3年。イギリスでは,ピューリタン革命後、国王チ
ャールズ1世の処刑(1649)が行われた2年後。また、王党派の拠点であったアイルランドやスコットランドへの侵攻も行われた。
“混乱したイギリスを鎮めることができるのは、結局のところ国王しかいないんのではないか、というわけで、ホッブズの議論は王政復古体制を擁護することになる。
主著『リヴァイアサン』では、社会契約論が以下のように展開されている。
まず人間は「自然権」を有している。これは要するに、人間であるならば持っていてしかるべき権利、基本的人権に相当する。彼の言う自然権は、具体的には「生存権(生命保存権)」を指す。これは私たちから見れば当たり前の権利なのだが、ホッブズは三十年戦争などで、その当たり前であるはずの権利がないがしろにされていることを目の当たりにする。では、なぜそうなるのか。
導かれた答えは、人間の欲望に限りがないからだ!ということだった。全員が自然権=生存権の充足を無制限に主張したため、限られた生活資源を奪い合うことになり、「万人の万人に対する闘争」に陥った(ホッブズはこれを「自然状態」という。ほうっておくと喧嘩ばかりする生き物としての人間)。
そうならないようにするためにはどうすればいいか?
ホッブズは、まず各自の持っている自然権を、平和を維持できるような有力者あるいは有力な組織に対し、「契約」を通じて譲渡する。そしてその有力者の力によって、平和を確保する。それが結局は人々が「生存権(生命保存権)」を全うする一番の近道なのだ。そう結論する。
『リヴァイアサン』が発刊されたのは1651年。ということは、三十年戦争が終わってまだ3年。イギリスでは,ピューリタン革命後、国王チ
ャールズ1世の処刑(1649)が行われた2年後。また、王党派の拠点であったアイルランドやスコットランドへの侵攻も行われた。
“混乱したイギリスを鎮めることができるのは、結局のところ国王しかいないんのではないか、というわけで、ホッブズの議論は王政復古体制を擁護することになる。