亀山ゼミ個人発表
2011/02/07 小松美由紀
個人の「劣化」と、「危険」を克服する「寛容さ」
~ 香山リカ『日本人はなぜ劣化したのか』を読んで ~
2011/02/07 小松美由紀
個人の「劣化」と、「危険」を克服する「寛容さ」
~ 香山リカ『日本人はなぜ劣化したのか』を読んで ~
1. これまでの経緯
前回の個人発表では、香山リカの『うつ病が日本を滅ぼす!?』を読んだ。心や精神疾患などに関心があったことから偶然手に取ったこの本には、多くの事例が紹介されていた。
ex. うつで休職中なのに旅行に行く「ワガママうつ」の増加(新型うつ、逃避型うつ)
「何に変身したいか」と聞くと、あるクラスでは「深海魚」が一番多かった
生命に関わりたくない新人医師(外科・小児科の減少、麻酔科・皮膚科は増加)
この本を読み、心の問題が社会に大きな影響を及ぼすことを実感した。また、心の病は精神医学的に捉えるだけではなく、社会や人間の在り方といったレベルで考える必要があると改めて認識した。
前回の個人発表では、香山リカの『うつ病が日本を滅ぼす!?』を読んだ。心や精神疾患などに関心があったことから偶然手に取ったこの本には、多くの事例が紹介されていた。
ex. うつで休職中なのに旅行に行く「ワガママうつ」の増加(新型うつ、逃避型うつ)
「何に変身したいか」と聞くと、あるクラスでは「深海魚」が一番多かった
生命に関わりたくない新人医師(外科・小児科の減少、麻酔科・皮膚科は増加)
この本を読み、心の問題が社会に大きな影響を及ぼすことを実感した。また、心の病は精神医学的に捉えるだけではなく、社会や人間の在り方といったレベルで考える必要があると改めて認識した。
2. 香山リカ『日本人はなぜ劣化したのか』(講談社現代新書,2007)について
『うつ病が日本を滅ぼす!?』で筆者に興味を持ったので、タイトルが衝撃的だったこの本を読んでみることにした。まえがきで「日本人は、『劣化』しているのではないか。それも全世代、全階層、全分野にわたって。しかも、急速に。」と述べていることから分かるように、この本ではあらゆる「劣化」について根拠となる事例が挙げられている。
『うつ病が日本を滅ぼす!?』で筆者に興味を持ったので、タイトルが衝撃的だったこの本を読んでみることにした。まえがきで「日本人は、『劣化』しているのではないか。それも全世代、全階層、全分野にわたって。しかも、急速に。」と述べていることから分かるように、この本ではあらゆる「劣化」について根拠となる事例が挙げられている。
■ 内容の一部抜粋 ■
◆本文で「劣化」したとするものを、○○力で表したもの
→「読解力。想像力。公共力。辛抱力。配慮力。謙虚力。寛容力。ゲーム力。アニメ力。フェミニズム力。リベラル力。身体力。生命力……。」
→「読解力。想像力。公共力。辛抱力。配慮力。謙虚力。寛容力。ゲーム力。アニメ力。フェミニズム力。リベラル力。身体力。生命力……。」
◆上記が「劣化」した事例の一部
- 昔は、人が一息に読めるのは800字とされていたが、今は200字が常識
- モンスターペアレント、救急車の不適切利用など
→自分以外の他者の立場に立って考えられないという、恐ろしいほどの想像力の欠如、
あるいは想像の拒否
あるいは想像の拒否
- メンタル系疾患で会社を休む側、休まず働く側の双方が「会社が悪い」
- 売れるゲーム(脳トレや、既存の人気シリーズ)は誕生しても、「名作」が出てこない
→考えなければならないゲームを作っても売れない
- 護憲、フェミニズムの考えを嫌がる人が増えている?
- 「体力・運動能力調査」での低下傾向、疲れるから座り込む「ジベタリアン」の高校生
◆一番深刻なのは、こうした日本の劣化現象に気付いてない人が多いこと、あるいは進化だとさえ思っている人がいること
→まず「劣化」を病識(自分は病気だと自覚すること)すること。短期的には「劣化は損」という考えで対策を講じるのが有効
→まず「劣化」を病識(自分は病気だと自覚すること)すること。短期的には「劣化は損」という考えで対策を講じるのが有効
3. 考えたこと
◆「学力の低下」や「無気力」などを包括して「劣化」と呼ぶ視点が面白かった。分かり易く共感できる内容だったが、少々独善的な気がした。「劣化の有無やその程度についてもう少し検討する必要がありそうだ。
◆「学力の低下」や「無気力」などを包括して「劣化」と呼ぶ視点が面白かった。分かり易く共感できる内容だったが、少々独善的な気がした。「劣化の有無やその程度についてもう少し検討する必要がありそうだ。
◆仮に劣化が起きているとする。
- 果たして、劣化した個人は市民社会・共同体・国家の担い手としてふさわしいのだろうか。
劣化した個人の主観は信用できるのか。
- 本文では多くの劣化が挙げられていた。一体どの劣化がより根本的なものなのか。
→「行動力(エネルギー)」「想像力(柔軟さ)」「制御力(冷静さ)」の3つが重要かも
知れない。
知れない。
◆「寛容さ」という視点から、「危険」について考えてみた。
- 「危険な思想」「危ない人」「異常だ」とは何か?どういう状態だと危険だと言われるのか、どうすれば危険ではなくなるのか。
cf. 仏教、キリスト教信者は受け入れられる、イスラム教、新興宗教信者は危険視され易い
宗教は危険でスピリチュアルは安全?
精神病(患者)と健康な心(を持つ人)の違い
死にたいと思う人と、自殺してしまう人の違い
宗教は危険でスピリチュアルは安全?
精神病(患者)と健康な心(を持つ人)の違い
死にたいと思う人と、自殺してしまう人の違い
- 危険・異常だとレッテルを貼って排除する、見ないふりをするのは本質的な解決とは言えないのでは?
→思想・性的嗜好などでレッテルを貼られた側にとっては、個性・人格の否定≒存在否定
⇒「寛容さ」が1つのポイントではないか(社会の寛容さ、個人の寛容さ)
⇒「寛容さ」が1つのポイントではないか(社会の寛容さ、個人の寛容さ)
◆「身体的能力・体力の劣化」とうつの関係
- 運動と睡眠がうつを治す、早起きするとやる気が出る
→ストレス・孤独云々以前に、運動不足・深夜営業などの都市型ライフスタイルが
精神疾患・新型うつの原因になっているのかも
精神疾患・新型うつの原因になっているのかも
◆共同体の崩壊だけではなく、個人も崩壊しつつある!?
◆次こそは大平健、春日武彦、患者視点など、違う人の本を読みたい。