亀山研文献報告 2012年1月7日
学部3年 新井栞
第6章「異なるあり方への思索」後半
(『社会を変えるには』P386~428)
学部3年 新井栞
第6章「異なるあり方への思索」後半
(『社会を変えるには』P386~428)
◆なぜ左派も右派も行き詰まるのか(P386)
ギデンズによる、従来の左派と右派が行き詰まってしまう理由について
左派 … 主体の理性と、客体の操作可能性を信じる
右派 … 客体の絶対性と、主体の限界を信じる
再帰的近代化の中では、人間の理性も伝統や市場も絶対ではないため
特に、市場万能主義と保守主義が結びつくと、「慣習やルールを重んじ、法や国家を尊重しろ」と主張する新自由主義となる
現実には対立を深めて正当性を下げてしまうが、再帰性の増した社会では人気がある
左派 … 主体の理性と、客体の操作可能性を信じる
右派 … 客体の絶対性と、主体の限界を信じる
再帰的近代化の中では、人間の理性も伝統や市場も絶対ではないため
特に、市場万能主義と保守主義が結びつくと、「慣習やルールを重んじ、法や国家を尊重しろ」と主張する新自由主義となる
現実には対立を深めて正当性を下げてしまうが、再帰性の増した社会では人気がある
◆カテゴリーの限界(P390)
左派と右派が行き詰まるもう一つの理由
一時的な社会状態のもとで形成された、個体論的なカテゴリーに基づいているため
これに対してカテゴリーを増やすことで対処しても、限界がある
一時的な社会状態のもとで形成された、個体論的なカテゴリーに基づいているため
これに対してカテゴリーを増やすことで対処しても、限界がある
◆保守主義の逆機能(P392)
こうした事態に保守主義で対処しようとすると、かえって事態が悪化する
相手には「伝統的」な行動を要求し、自分は「自由」に振舞おうとする保守主義者が多いため
こうした保守主義の逆機能の一つは、少子化
相手には「伝統的」な行動を要求し、自分は「自由」に振舞おうとする保守主義者が多いため
こうした保守主義の逆機能の一つは、少子化
◆原理主義(P394)
ギデンズによると 伝統を不変のものとみなす右派 … 原理主義
(自分が作り作られていることを認めず、おたがいの関係を変える対話に参加しない態度)
原理主義の弊害は、暴力と対話拒否
(自分が作り作られていることを認めず、おたがいの関係を変える対話に参加しない態度)
原理主義の弊害は、暴力と対話拒否
◆対話と公開性(P396)
ギデンズの提案
「再帰性を止めようとするのではなく、再帰性には再帰的に対処しなければならない」
具体的には、対話(問答法、弁証法)を促進すること
「能動的信頼」 … 対話によっておたがいが変化し、作られた関係
「再帰性を止めようとするのではなく、再帰性には再帰的に対処しなければならない」
具体的には、対話(問答法、弁証法)を促進すること
「能動的信頼」 … 対話によっておたがいが変化し、作られた関係
◆エンパワーメント(P399)
では対話がうまくいかないときはどうすればよいのか?
対話がうまくいかない理由は、対話すべき主体の力が弱くなっているため
これを変えるためには、対話主体を元気づけ、力をつけることが必要
ex 家族制作、医療、政治、地方経済
個々の政策では取り入れられている考え方だが、基本の発想が共有されていない
対話がうまくいかない理由は、対話すべき主体の力が弱くなっているため
これを変えるためには、対話主体を元気づけ、力をつけることが必要
ex 家族制作、医療、政治、地方経済
個々の政策では取り入れられている考え方だが、基本の発想が共有されていない
◆厳罰主義は逆効果(P401)
従来の政策は、対処療法的な発想にもとづいている
問題点は、問題が起こってからでは遅すぎること、コストがかかりすぎること
問題が起こる前に対処することが必要
=関係を変えられるように手助けする
≠厳罰主義
問題点は、問題が起こってからでは遅すぎること、コストがかかりすぎること
問題が起こる前に対処することが必要
=関係を変えられるように手助けする
≠厳罰主義
◆フレキシキュリティ(P404)
従来の政策は、カテゴリーの発想にもとづいている
問題点は、不公平や不合理が生まれやすいこと、産業構造の転換ができないこと
それに対し、社会保障論などでは基本保障の発想が提唱されている
問題点は、不公平や不合理が生まれやすいこと、産業構造の転換ができないこと
それに対し、社会保障論などでは基本保障の発想が提唱されている
◆基本保障は効率的(P407)
主体の力が落ちないうちに救うためには、「全員に基本レベルの保障を提供して、そこから落ちないようにすればいい」
コストがかからず、カテゴリーが不要であるというメリットがある
ex アメリカの医療保障制度
コストがかからず、カテゴリーが不要であるというメリットがある
ex アメリカの医療保障制度
◆保護から活性化へ(P409)
従来の政策は、保護の発想にもとづいている
問題点は、「保護する強い者と、保護される弱い者の関係を固定化してしまうこと」
保護する側に圧倒的な力があって、保護される側が不満を持たない場合にしか成立しない
保護されていた側に力をつけ、活性化させることが必要
重要なのは、決定権を分離、もしくは共有すること
問題点は、「保護する強い者と、保護される弱い者の関係を固定化してしまうこと」
保護する側に圧倒的な力があって、保護される側が不満を持たない場合にしか成立しない
保護されていた側に力をつけ、活性化させることが必要
重要なのは、決定権を分離、もしくは共有すること
◆自発的結社の活用(P412)
以上のことを実施するには、自助グループやNPOなどを活用することが効率的
これには以下のような理由がある
行政では、現場の状況を全て把握することができない
従来の地元結社が本来の機能を果たさなくなったため、新しいグループが必要とされている
自発結社だけでなく、参加の機会が得られやすくなると、力をつける人々が増える
(分権化を進めて参加を促進したほうが、正統性を増し、中枢の権威が強まることもある)
これには以下のような理由がある
行政では、現場の状況を全て把握することができない
従来の地元結社が本来の機能を果たさなくなったため、新しいグループが必要とされている
自発結社だけでなく、参加の機会が得られやすくなると、力をつける人々が増える
(分権化を進めて参加を促進したほうが、正統性を増し、中枢の権威が強まることもある)
◆ブーメラン効果(P418)
ウルリッヒ・ベックによると 「現代社会では『ブーメラン効果』が起こってしまう」
ブーメラン効果 … 「自分には関係ないと思っていたところから、自分に危害がはねかえってくる」こと
ベックのいう「リスク社会」は、「再帰性が高まって、不安定感が高まった社会だと言ってよい」
ブーメラン効果も再帰的なもの
主体と客体は作り作られる関係であり、一方的に操作することも無関係でいることもできない
ブーメラン効果 … 「自分には関係ないと思っていたところから、自分に危害がはねかえってくる」こと
ベックのいう「リスク社会」は、「再帰性が高まって、不安定感が高まった社会だと言ってよい」
ブーメラン効果も再帰的なもの
主体と客体は作り作られる関係であり、一方的に操作することも無関係でいることもできない
◆「リスク」というもの(P420)
「リスク」 … 「『安全』と『危険』の明確な線引きができない、確立でしかいえない」こと
リスクは人間が作り出し、働きかけによって減少させられるものである
「リスクとの関係によって、人間や社会が作り作られてくる」
人々はリスクによって行動を駆り立てられ、対話型民主主義が必要となってくる
リスクは人間が作り出し、働きかけによって減少させられるものである
「リスクとの関係によって、人間や社会が作り作られてくる」
人々はリスクによって行動を駆り立てられ、対話型民主主義が必要となってくる
◆やらないよりまし(P422)
以上をまとめると
「旧来の『われわれ』にもとづいた政治が(中略)崩れているならば、新しい「われわれ」を作るように努力する。公開と対話によって人びとの参加をうながし、そのための場を作って決定権を持たせ、エンパワーメントするのが政府や専門家の役割だ」
というおおまかなコンセプトが明らかになる
こうした発想は、西欧諸国での失業に対処する政策に広く取り入れられている
劇的な効果が見えない、手間がかかるなどの批判もなされている
ギデンズやベックがカテゴリーの政治は成り立たない、と主張したことも批判された
しかし、こうした思想は正統性の低下と不安の増大が起こっている事態をみきわめたもの
各国で取り入れられているのも、ほかに優れたコンセプトがないため
「旧来の『われわれ』にもとづいた政治が(中略)崩れているならば、新しい「われわれ」を作るように努力する。公開と対話によって人びとの参加をうながし、そのための場を作って決定権を持たせ、エンパワーメントするのが政府や専門家の役割だ」
というおおまかなコンセプトが明らかになる
こうした発想は、西欧諸国での失業に対処する政策に広く取り入れられている
劇的な効果が見えない、手間がかかるなどの批判もなされている
ギデンズやベックがカテゴリーの政治は成り立たない、と主張したことも批判された
しかし、こうした思想は正統性の低下と不安の増大が起こっている事態をみきわめたもの
各国で取り入れられているのも、ほかに優れたコンセプトがないため
◆根底から社会を変える(P424)
以上のような思想は、「近代科学や近代民主主義の再活性化」をめざしたもの
= 「近代の中から近代をこえる」ことをめざしたもの
代議制の自由民主主義を活かし直すために、直接民主主義の要素を取り入れることでもある
現代社会には、社会を劇的に変化させる方法が存在しない
「すぐに効果が出ないようでも、(中略)あらゆるところで発想や行動や関係を変えていき、それが連動していって社会を変えるしか」ない
これからの日本は「ふつうの先進国」になっていく
他の先進国が現代の問題にどう対応し、それをふまえどうすべきかを考えていくことが必要
= 「近代の中から近代をこえる」ことをめざしたもの
代議制の自由民主主義を活かし直すために、直接民主主義の要素を取り入れることでもある
現代社会には、社会を劇的に変化させる方法が存在しない
「すぐに効果が出ないようでも、(中略)あらゆるところで発想や行動や関係を変えていき、それが連動していって社会を変えるしか」ない
これからの日本は「ふつうの先進国」になっていく
他の先進国が現代の問題にどう対応し、それをふまえどうすべきかを考えていくことが必要
感想・論点
小熊さんが一方的に大衆を啓蒙しているように見えるのは、それこそが「専門家による、力が弱くなってしまった人びとへのエンパワーメント」であるからなのではないかと思った。
現代社会に社会全体を劇的に変える方法が存在しなくなってしまったのはその通りだと思う。その中でも社会をより良くするためにどう行動すればいいか、が問題となるが、果たして本当に私たち個人が考え方や行動を変えるだけで社会が変わるのか、どうしても自信が持てない。
現代社会に社会全体を劇的に変える方法が存在しなくなってしまったのはその通りだと思う。その中でも社会をより良くするためにどう行動すればいいか、が問題となるが、果たして本当に私たち個人が考え方や行動を変えるだけで社会が変わるのか、どうしても自信が持てない。