宮田登のケガレ論
▼さまざまな穢れ
「死穢、殺人、改葬、発墓、五体不具、産穢、傷胎、胞衣、妊者、月水、失火、灸治、喫肉、獣死、獣五体不具、獣産、獣傷胎など」(『神』75頁)
「『穢悪』すなわちケガレた状態が発生したことに対して、それを明示して穢れの及ぶ空間を設定する
ために触穢札が立てられるようになったのは、10世紀後半」(234)
ために触穢札が立てられるようになったのは、10世紀後半」(234)
触穢 「火や水、地面というように直接口や肌に触れるところを媒介として、穢れは伝染すると意識されていた」(『神』79頁)
「穢れ」が「汚れ」とはもともと別の観念であり、江戸時代以降に混同
女性の忌みを汚れと混同し、さらに「恥ずかしい」と感じるようになったのはWW2以降(『神』80頁)
女性の忌みを汚れと混同し、さらに「恥ずかしい」と感じるようになったのはWW2以降(『神』80頁)
▼死穢
死体の腐敗(葬地)
「平安初頭以来、死の忌みについて神経質であったのは中央政府の側であり、庶民のほうは死者を家のそばに埋葬しても別段なんとも思わないというのが本来の姿であったらしい」(238、高取正男『神道の成立』)
▼血穢
女性の経血に対する忌避(火を汚す、ヨゴレヤ、山、神事)
奄美や対馬などこの観念が薄い地域もある(神社神道の影響)
死、怪我の連想
奄美や対馬などこの観念が薄い地域もある(神社神道の影響)
死、怪我の連想
「一方で出血に対する畏怖と、他方で子孫の継続という点での出産への期待という二律背反する要素が、血の儀礼には顕著」(136)
「血穢の観念は、前者の出血に対する要素が強調された観念といえるのであって、より古い時代には希薄であり、時代が下るにつれて強調される傾きがあった」(136-137)
「血穢の観念は、前者の出血に対する要素が強調された観念といえるのであって、より古い時代には希薄であり、時代が下るにつれて強調される傾きがあった」(136-137)
▼シラとスジ
白不浄 「子どもを生むということに関する忌みの観念」(194) 血不浄
沖縄・八重山諸島 シラヤ、シラントー、シラ、シラタヌス
沖縄・八重山諸島 シラヤ、シラントー、シラ、シラタヌス
シラヤマ 白山、立山、熊野 修験信仰 ⇒ 平地
死者再生装置
死者再生装置
▼民俗学概念としての「ケガレ」
ケ=気=日常を維持する活力
気止み(病気)、気絶=気涸れ・気離れ・毛枯れ
ケガレ⊂ケ
ケ→ケガレ→(祭りなどの儀礼)→ハレ ケガレ=「境界領域」(227)
気止み(病気)、気絶=気涸れ・気離れ・毛枯れ
ケガレ⊂ケ
ケ→ケガレ→(祭りなどの儀礼)→ハレ ケガレ=「境界領域」(227)
波平恵美子
ハレ=清浄性、神聖性 ケ=日常性、世俗性 ケガレ=不浄性
「ケガレを排除することでハレが成立する」(216)
「ケガレを排除することでハレが成立する」(216)
桜井徳太郎
ハレとケの媒介項としてのケガレ
ケ→ケガレ→ハレ→ケ 三極循環論
ケ=稲を生長させる霊力 ケガレ=ケ枯レ
ケ→ケガレ→ハレ→ケ 三極循環論
ケ=稲を生長させる霊力 ケガレ=ケ枯レ
伊藤幹治
日常的世界から非日常的世界への転換の際に浄と不浄とが分離される
坪井
「ハレは宮廷において形成された文化であり、ケ文化とは民間において形成された文化」(262)
▼差別とケガレ
「ケガレが民族語彙としてとらえられるとするなら、その二次的解釈によって漢字表記の汚穢の意が与えられ、不浄観がいっそう社会化するわけで、不浄を本来のケガレの語義に戻してみる操作をするならば、少なくとも原理面におけるケガレ=不浄観が解消できるのではないか」(302)
参考文献
宮田登『ケガレの民俗誌―差別の文化的要因』ちくま学芸文庫2010
宮田登『神の民俗誌』岩波新書1979
宮田登『神の民俗誌』岩波新書1979