日本国、◯◯県、X市……
煌々と燃える炎が、真夜中の空を赤く染め上げる。
都市郊外の小さな自動車部品工場。何の変哲も無いその工場は今や、地獄の釜の底のような火炎に焼かれていた。
深夜の作業に従事していた作業員たちが、肩をぶつけ、互いを蹴飛ばしながら逃げ惑う。
そんな中に、やや場違いな白衣の研究員風の男がわずかに混じっていたが、この混乱の中で気にかける者など皆無だった。
まして、煙に紛れて風のように駆け抜けていく黒い影に気づくものなどいやしない……。
深夜の作業に従事していた作業員たちが、肩をぶつけ、互いを蹴飛ばしながら逃げ惑う。
そんな中に、やや場違いな白衣の研究員風の男がわずかに混じっていたが、この混乱の中で気にかける者など皆無だった。
まして、煙に紛れて風のように駆け抜けていく黒い影に気づくものなどいやしない……。
燃える工場を遠くに臨む小高い丘の上。黒い影はその頂上に登った所でぴたりと動きを止めた。
その男は黒い装束に身を包んでいた。つま先から手の先まで黒。首に巻かれたマフラーも黒く、風にたなびいていた。
その男は黒い装束に身を包んでいた。つま先から手の先まで黒。首に巻かれたマフラーも黒く、風にたなびいていた。
「そろそろ姿を見せたらどうだ?」
男が声をかけた方角から、何者かが姿を現す。
「気づいていたか……。この化学ニンジャ隊のサイボーグ、ジ・クレイモアの追跡に気づくとは、貴様もさては忍かエージェントだな?」
「……」
「……」
男は何も答えない。
ジ・クレイモアと名乗ったほうは、初めから返事など期待してなかったようで、すぐに次の言葉を継いだ。
ジ・クレイモアと名乗ったほうは、初めから返事など期待してなかったようで、すぐに次の言葉を継いだ。
「此度はよくもまあ、我らの秘密施設を破壊してくれたな。最近頻発している妨害行為も貴様が関係有るのか?」
「……」
「……」
男は何も答えない。閂をかけたように、その口は閉ざされたままである。
「ハッ、徹底したダンマリか! ならば身体に直接訊くしかないようだな!!!!!!」
ジ・クレイモアが言うと同時に何かが爆ぜて、彼の正面広い空間が激震する。
なんということか……! 彼の身体には至る所に、その名の如くクレイモア対人地雷が備え付けられているではないか!
彼の体内の回路に信号が走ると、数基の地雷が起爆し、ばら撒かれた鉄球の群れが辺り一帯を引き裂く。
彼は今までに幾人もの敵をこの地雷で葬ってきた。哀れ黒装束の男も非情な鉄球の雨に飲み込まれ……てはいなかった!
なんということか……! 彼の身体には至る所に、その名の如くクレイモア対人地雷が備え付けられているではないか!
彼の体内の回路に信号が走ると、数基の地雷が起爆し、ばら撒かれた鉄球の群れが辺り一帯を引き裂く。
彼は今までに幾人もの敵をこの地雷で葬ってきた。哀れ黒装束の男も非情な鉄球の雨に飲み込まれ……てはいなかった!
夜空を舞う黒い影有り。彼は一瞬早く空中へ飛び、クレイモアの攻撃を回避していたのだ。
だがしかし、その選択は間違っていた。少なくともジ・クレイモアはそうほくそ笑んでいた。
相手が忍である以上、一撃目の攻撃が躱されることは予想していた。そのため、彼は地雷を横に広く攻撃するように構えて、左右どちらに逃げても捉えられるようにしていたのだ。
故に、躱すとすれば空中しか無い。だが空中へ飛べば、その後は着地するまで無防備となる。
だがしかし、その選択は間違っていた。少なくともジ・クレイモアはそうほくそ笑んでいた。
相手が忍である以上、一撃目の攻撃が躱されることは予想していた。そのため、彼は地雷を横に広く攻撃するように構えて、左右どちらに逃げても捉えられるようにしていたのだ。
故に、躱すとすれば空中しか無い。だが空中へ飛べば、その後は着地するまで無防備となる。
「悪手なり! 喰らえっ、オーバーラップ・クレイモア・シャワー!!!!!!」
ジ・クレイモアの両腕に備わったクレイモア地雷が上方へ火を噴く。
これぞ彼の十八番二段構え。今度こそ黒装束の男は三途の川を渡るだろう。……そう思われた刹那。
これぞ彼の十八番二段構え。今度こそ黒装束の男は三途の川を渡るだろう。……そう思われた刹那。
「ぶるぁぁぁぁぁ!!!」
男は奇声を発すると、空中で身体を捻り、激しく躍動! すると、あなや! その反動で空を疾駆したではないか。
二弾跳びと呼ばれる人外の技術である。
二弾跳びと呼ばれる人外の技術である。
「此奴、ただの工作員ではないな!?」
ジ・クレイモアが驚愕するコンマ数秒の間に、男はジ・クレイモアの背後に降り立った。
「こいつめ!!!」
ジ・クレイモアの背中でまたも地雷が炸裂!
男も再び跳躍。彼はジ・クレイモアの肩に手を乗せ、倒立するようにしてこれを回避して見せた。
男も再び跳躍。彼はジ・クレイモアの肩に手を乗せ、倒立するようにしてこれを回避して見せた。
「しぇああぁぁぁぁっ!!!」
またも男の奇声。振り下ろされた両の膝がジ・クレイモアの頭部を強打する。
「グワーッ!!!」
激しい衝撃がジ・クレイモアの脳を揺さぶる。
化学ニンジャのサイボーグである彼の肉体は、頭部から脊椎までセラミックプレートやショック吸収材で補強しているにも関わらず、瞬間意識が飛んでいた。
ジ・クレイモアの視界が回復した時、彼は地面に膝を付く自分を認め愕然。
化学ニンジャのサイボーグである彼の肉体は、頭部から脊椎までセラミックプレートやショック吸収材で補強しているにも関わらず、瞬間意識が飛んでいた。
ジ・クレイモアの視界が回復した時、彼は地面に膝を付く自分を認め愕然。
黒装束の男が冷たい目で彼を睥睨している。
「き、貴様は……」
男の身動ぎする気配がした。これよりジ・クレイモアに無慈悲な止めを刺すつもりだろう。
無念なことに、この時のジ・クレイモアには手頃なクレイモア地雷のストックが無かった。
唯一、先に打ち込めそうなのは、両の拳に仕掛けられた爆薬のみである。パンチを打ち込むと同時に起爆するナックルダスター型の爆弾だ。
ジ・クレイモアは拳の仕掛けを確認するように握りしめた。――チャンスは一瞬。
無念なことに、この時のジ・クレイモアには手頃なクレイモア地雷のストックが無かった。
唯一、先に打ち込めそうなのは、両の拳に仕掛けられた爆薬のみである。パンチを打ち込むと同時に起爆するナックルダスター型の爆弾だ。
ジ・クレイモアは拳の仕掛けを確認するように握りしめた。――チャンスは一瞬。
「つぁっ!」
「っっっすあぁぁぁぁ!!!」
「っっっすあぁぁぁぁ!!!」
二つの影が交錯っ。同時に腕が一本宙を舞った。
「あ……っあわわあああああ!?」
ジ・クレイモアの腕が肩から切り飛ばされていた。サイボーグ化した機械の断面から火花が飛び、夜の闇に消えていく。
対する黒装束の男の手に刃物は無い。彼は手刀によってジ・クレイモアの腕を切り落としたのだ。
対する黒装束の男の手に刃物は無い。彼は手刀によってジ・クレイモアの腕を切り落としたのだ。
「貴様いったい何者なんだ!?」
「お喋りは不要だ」
「お喋りは不要だ」
黒装束の男がようやく発した言葉は、彼の瞳と同様冷たかった。
男はジ・クレイモアの身体を掴むと、空中高く放り投げ、それを追うように自身も飛び上がった。
人形のように宙を舞うジ・クレイモアの肉体に男の黒い影が迫ると、手を絡ませていきある形を取っていく。
男はジ・クレイモアの身体を掴むと、空中高く放り投げ、それを追うように自身も飛び上がった。
人形のように宙を舞うジ・クレイモアの肉体に男の黒い影が迫ると、手を絡ませていきある形を取っていく。
大日本帝國忍術・百の技の一つ……五所蹂躙絡み!!!
ジ・クレイモアは逆さに股を開いた体勢で捕まり、そのまま落着!
なんたることか……!
その構えは正に、古の相撲が相手を戦闘不能にするまで戦っていた頃、危険過ぎるため使用が禁じられた奥義と瓜二つではないか!
哀れジ・クレイモアは、首・背骨・股を同時に粉砕され、二度と立てぬ身体に成り果てた。
なんたることか……!
その構えは正に、古の相撲が相手を戦闘不能にするまで戦っていた頃、危険過ぎるため使用が禁じられた奥義と瓜二つではないか!
哀れジ・クレイモアは、首・背骨・股を同時に粉砕され、二度と立てぬ身体に成り果てた。
仰向けになって最早動けぬジ・クレイモアを、黒装束の男が見下ろしている。
サイボーグ化されたジ・クレイモアの身体は、痛覚を鈍らせてあるため苦痛は少ない。だが、眼前に迫る死の恐怖に、彼の身体は硬直していた。
サイボーグ化されたジ・クレイモアの身体は、痛覚を鈍らせてあるため苦痛は少ない。だが、眼前に迫る死の恐怖に、彼の身体は硬直していた。
「ま、待て……今の技……もしや……」
「お喋りは不要だと言ったはずだ」
「お喋りは不要だと言ったはずだ」
黒装束の男は冷たい言葉と共に、振り上げた拳をジ・クレイモアの胸に叩き込んだ。
飛び散る金属片。血飛沫。男は相手の絶命を確認することもなく、すぐさま飛び退る。
数瞬後、ジ・クレイモアの身体は爆発し、この世から消滅した。
飛び散る金属片。血飛沫。男は相手の絶命を確認することもなく、すぐさま飛び退る。
数瞬後、ジ・クレイモアの身体は爆発し、この世から消滅した。
……爆発の炎に照らされながら、黒装束の男はその場を後にする。
彼らの争う音を聞き、近くの住民の通報で警察官が駆けつけたが、後にはジ・クレイモアだった僅かな機械の破片が残るのみだった……。
彼らの争う音を聞き、近くの住民の通報で警察官が駆けつけたが、後にはジ・クレイモアだった僅かな機械の破片が残るのみだった……。
翌朝、テレビのニュースは自動車部品工場の火災事故を淡々と報じていた。
その報道は、工場の地下に非合法の研究施設が発見されたことでにわかに色めき立ち、マスコミの取材が慌ただしくなる。
やがて調べが進むと、事件の裏にある組織の名前が浮上した。
その報道は、工場の地下に非合法の研究施設が発見されたことでにわかに色めき立ち、マスコミの取材が慌ただしくなる。
やがて調べが進むと、事件の裏にある組織の名前が浮上した。
その名は『ブラック・クロス』……。
時は近未来
地球は宇宙からの侵略者と遭遇していた
侵略者の名は『アムステラ神聖帝国』
そして地球人の中には、彼らアムステラの傘下に加わり、その侵略を手助けしようとする者達が存在した
『ブラック・クロス』はその中でも最大規模の組織であり、数多くの非合法活動を展開していた
だがしかし
地球人も、多くの国が、軍部から、民間から、様々な形で侵略者に抵抗を続けているのだ
これはそんな、抗う人々の影で行われる暗闘、その一幕である