~~惨の巻 「フォー・ニンジャ・フォー・デス(前編)」~~
日本国、某所。PM3:23。
そこは常人の踏み入ることの叶わぬ深き深淵……。
およそ人界と隔絶した地下深くに、人工的に造られた別世界が広がっていた。
およそ人界と隔絶した地下深くに、人工的に造られた別世界が広がっていた。
その建造物はいつからここにあるのか。
石を積み上げた土台。白塗りの壁に瓦屋根。木造建築風の建物。知る人が見ればそれは、さながら江戸時代の城郭にも見える巨大楼閣。
だが中身は最新素材の建築材、電子機器、セキュリティに防衛機能と見た目に反した技術で構築されている。
通路を行く者は一人ひとりがサイボーグ。そして忍者である。
石を積み上げた土台。白塗りの壁に瓦屋根。木造建築風の建物。知る人が見ればそれは、さながら江戸時代の城郭にも見える巨大楼閣。
だが中身は最新素材の建築材、電子機器、セキュリティに防衛機能と見た目に反した技術で構築されている。
通路を行く者は一人ひとりがサイボーグ。そして忍者である。
ここは化学ニンジャ隊の本拠地、『機岩城』! この世の秩序を破壊しようとする悪魔たちの巣窟なのだ。
この広大な城の中心に位置する天守閣の中、下忍たちでは近づくことも許されないトップシークレット。仄暗い闇の中に、その者はいた。
「……報告を続けい」
「はひっ」と上ずった声を上げる報告官。
「この半年、ブラッククロスと協力組織の任務達成率の推移であります」
「この半年、ブラッククロスと協力組織の任務達成率の推移であります」
報告官が示すと、巨大なスクリーンに色とりどりのグラフが表示される。
「ブラッククロス本部の任務達成率は、ほぼ横ばいであります。
ですが、下部組織の達成率は五ヶ月連続で低下を示しており、組織全体の達成率は低下傾向にあります、はい」
ですが、下部組織の達成率は五ヶ月連続で低下を示しており、組織全体の達成率は低下傾向にあります、はい」
「では、我ら化学ニンジャ隊はいかほどか?」
「はひっ、化学ニンジャ隊は前月比で微増、まずまずと言ったところです、はい」
「フッフッフッフッフ、そうかそうか」
「フッフッフッフッフ、そうかそうか」
床机に肘を置きながら報告を聞く巨大な影。
袴に肩衣という異様な風体をしており、3mはある図体をクックッと震わせ、どうやら笑っているようだ。
だが、表情は何一つ変わっていない。否、彼に表情などというものは無いのだ。
袴に肩衣という異様な風体をしており、3mはある図体をクックッと震わせ、どうやら笑っているようだ。
だが、表情は何一つ変わっていない。否、彼に表情などというものは無いのだ。
……化学ニンジャ隊・首領・機械将軍。
彼は全身をサイボーグ化し、脳すらも電子化した超越者だった。もはや人間だった頃の細胞の片鱗は微塵も残っていない。
その施術とサイボーグ化の技術は、基礎を機械将軍が作り、アムステラの技術で完成したものである。
彼は化学ニンジャ隊全ての生みの親であり、指導者。優れた科学者であり、そして忍者でもあるのだ。
彼は全身をサイボーグ化し、脳すらも電子化した超越者だった。もはや人間だった頃の細胞の片鱗は微塵も残っていない。
その施術とサイボーグ化の技術は、基礎を機械将軍が作り、アムステラの技術で完成したものである。
彼は化学ニンジャ隊全ての生みの親であり、指導者。優れた科学者であり、そして忍者でもあるのだ。
「ですが将軍……。作戦の達成難度と重要度によって四段階評価をしてみますと、甲、乙の作戦達成率は低下し続けております、はい」
「ほぉう? 我らは小間使いの仕事しかこなせていないと、そう申すか」
「はっ、はひぇ!? 決してそのような!!!」
「ほぉう? 我らは小間使いの仕事しかこなせていないと、そう申すか」
「はっ、はひぇ!? 決してそのような!!!」
報告官は失禁した。
「いやぁ、よいよい。今後の方針を定めるには確かに欠かせぬ報告である。大儀じゃ、大儀じゃ」
「ひ……はひぇ……」
「ひ……はひぇ……」
報告官は顔をひきつらせながら、鉄面皮のような将軍の顔色を伺っている。
「我ら化学ニンジャ隊は戦力も充実してきた。ここらで大きな成果を挙げ、世にその存在を知らしめねばならぬ。
誰か、我らとブラッククロスのために骨を折ってくれる者はおらぬか?」
誰か、我らとブラッククロスのために骨を折ってくれる者はおらぬか?」
機械将軍は、化学ニンジャたちと脳内チップで繋がるネットワークに言葉を発した。
「お望みとあらば!」
威勢のいい声と共に、側に控えていた化学ニンジャが四人、進み出てくる。
この天守閣の中に踏み入れるのは一定以上の地位にある化学ニンジャだけである。そこで機械将軍の間近に侍る彼らの正体とは……。
この天守閣の中に踏み入れるのは一定以上の地位にある化学ニンジャだけである。そこで機械将軍の間近に侍る彼らの正体とは……。
「ほほぅ、“四天王”か。なんとそなたらが行ってくれると申すか」
“四天王”。彼らは化学ニンジャ隊の最高幹部四人組だ。組織内で彼らの上に位置する者は、もはや機械将軍以外に存在しない、江戸幕府で言えば老中のような存在である。
「我らも些か技が鈍ってきたところ……、ここは一つ大命をお与えください」
「しばし待たれませい!」
突如、別方向から進み出てくる者達あり。
「おぉぅ、そなたらは“シルバー四天王”か」
“シルバー四天王”と呼ばれた彼らは、四天王の下に位置する実力者たちで、言わば四天王候補である。
四人は機械将軍の前で膝を付き、意見具申を始める。
四人は機械将軍の前で膝を付き、意見具申を始める。
「化学ニンジャ隊の最高幹部たる方々が、わざわざ出向くこともありますまい。どうか我らに役目をお命じください」
「しばし待たれませい!」
突如、別方向から進み出てくる者達あり。
「むむっ、そなたらは“休養四天王”か」
“休養四天王”と呼ばれた彼らは、“四天王”とほぼ変わらぬオーラを放ちながら現れた。
何を隠そう、彼らは本来四天王の地位にあった幹部たちだ。だが、怪我、病気療養、或いは家庭の事情などにより、四天王の務めを果たせなくなった。
そんな場合に用意されているのが休養四天王の座である。彼らは傷が癒え、職務に復帰できるようになる時まで、その座に留まることとなっていた。
何を隠そう、彼らは本来四天王の地位にあった幹部たちだ。だが、怪我、病気療養、或いは家庭の事情などにより、四天王の務めを果たせなくなった。
そんな場合に用意されているのが休養四天王の座である。彼らは傷が癒え、職務に復帰できるようになる時まで、その座に留まることとなっていた。
「機械将軍。我らは既に任務につける状態にあります。ここは我らに返り咲きの機会をお与えください」
「しばし待たれませい!」
突如、別方向から進み出てくる者達あり。
「おや、そなたらは“暫定四天王”か」
“暫定四天王”……それは“四天王”が“休養四天王”になった時、代わりに四天王の役目を果たす者の称号だ。
基本的に“シルバー四天王”から選出され、休養者が復帰すれば再びシルバーの位に戻ることとなっている。
基本的に“シルバー四天王”から選出され、休養者が復帰すれば再びシルバーの位に戻ることとなっている。
「将軍、我らが暫定の役目に就いている間に、新たなシルバーを選出なさるとは、口惜しい。
我らに戦果を挙げさせてください。誰が四天王に相応しいかご覧に入れましょう」
我らに戦果を挙げさせてください。誰が四天王に相応しいかご覧に入れましょう」
「しばし待たれませい!」
突如、別方向から進み出てくる者達あり。
「おおぉぉ! そなたらは“スーパー四天王”ではないか!」
一際存在感のある忍者が四人、進み出てくる。
彼らこそ、四天王中の四天王“スーパー四天王”である。
優れたものが長く四天王の席にいると、人事が硬直化する場合がある。そんな時、四天王の上に特別に設けられる地位が“スーパー四天王”だ。
これは半ば名誉職に近く、後進に地位を開ける目的で実施されるが、組織内での発言力は極めて高い。
彼らこそ、四天王中の四天王“スーパー四天王”である。
優れたものが長く四天王の席にいると、人事が硬直化する場合がある。そんな時、四天王の上に特別に設けられる地位が“スーパー四天王”だ。
これは半ば名誉職に近く、後進に地位を開ける目的で実施されるが、組織内での発言力は極めて高い。
「我ら“スーパー四天王”は現場を離れて久しくなっております。久々に我らの勇姿を、将軍にお見せしたく思います、どうか」
「ハッハッハッハッ頼もしきかな皆の衆!」
「ハッハッハッハッ頼もしきかな皆の衆!」
世にも珍しき瞬間であった。
“四天王”
“シルバー四天王”
“休養四天王”
“暫定四天王”
“スーパー四天王”
これら四天王たちが一箇所に揃い踏みするなど、新年会でもありえなかった事態である。
天守閣内に充満した彼らのサイボーグ忍者オーラはもはやケミカル反応寸前。
平の内勤忍者でしかない報告官などは、失禁を通り越し、泡を吹いて気絶してしまっていた。
“四天王”
“シルバー四天王”
“休養四天王”
“暫定四天王”
“スーパー四天王”
これら四天王たちが一箇所に揃い踏みするなど、新年会でもありえなかった事態である。
天守閣内に充満した彼らのサイボーグ忍者オーラはもはやケミカル反応寸前。
平の内勤忍者でしかない報告官などは、失禁を通り越し、泡を吹いて気絶してしまっていた。
居並ぶ忍者たちに向け、機械将軍は両手を広げ、撫でるように中空を横切らす。
「皆の衆、その鋭気、忠誠、嬉しく思うぞ。これより作戦を討議し、それぞれに相応しき任務を与えよう。さあ、分かったなら今日のところは下がるが良い」
「ハハッ!」
「機械将軍とブラッククロスのために……」
「化学ニンジャ隊のために……」
「機械将軍とブラッククロスのために……」
「化学ニンジャ隊のために……」
思い思いの掛け声と共に、忍者たちが影の中へ溶け込んで消えた。あとには機械将軍の巨体が残されるのみである。
「ククククク。化学ニンジャ……ブラッククロスか……」
天守閣の扉にロックが掛けられ、何重にも隔壁が降ろされると、何者も侵入できなくなったことを確認。
機械将軍はその巨体からログアウトし、意識を遥か地上へ飛ばす。
機械将軍はその巨体からログアウトし、意識を遥か地上へ飛ばす。
日本国、東京都、X区。
そこはオフィス街の中心部、高層ビルの最上階に大柄な男の姿。
機械将軍の意識がログインすると、それまでのオートモードから切り替わり、明確な意志のもと活動を始める。
これは機械将軍の造ったバイオパーツ100%ボディ、将軍のもう一つの姿だった。
機械将軍の意識がログインすると、それまでのオートモードから切り替わり、明確な意志のもと活動を始める。
これは機械将軍の造ったバイオパーツ100%ボディ、将軍のもう一つの姿だった。
「ドーゾ、お入りなさい」
合図をすると、アポイントを取って待たされていた男が二人、部屋に入ってきた。
二人ともピシっと背広を着たエリート風の男だが、明らかに緊張して、既に汗で背広が湿っていた。
二人ともピシっと背広を着たエリート風の男だが、明らかに緊張して、既に汗で背広が湿っていた。
「本日はお顔を拝見させていただき誠に感謝申し上げます。お陰様を持ちまして、我らの先生方は衆議院の議席を獲得することができ……」
男たちは国会議員の私設秘書だった。彼らの雇用主である議員たちは目の前の男――機械将軍の支援によって国会議員となり得たのだ。
彼の支援で国会に送り込まれた議員の数は十を超え、そのいずれもが、ブラッククロス親派の政治家たちだった。
このように機械将軍は、裏では化学ニンジャの首領、そして表では政財界の実力者として君臨し、徐々にその勢力を浸透させている。
彼の支援で国会に送り込まれた議員の数は十を超え、そのいずれもが、ブラッククロス親派の政治家たちだった。
このように機械将軍は、裏では化学ニンジャの首領、そして表では政財界の実力者として君臨し、徐々にその勢力を浸透させている。
「ところで、我々の先生方にかねてより妨害を行っている団体のことですが……」
秘書たちは一つ懸案を切り出した。
「日に日に妨害活動かエスカレートしています。先生方は常に法律に則って行動し、地道な努力と清き支援によりまして、選挙に勝ちましたのに。
やれ裏金だ、やれ暗い交友関係だと騒ぎたて、これはもう名誉毀損です!」
やれ裏金だ、やれ暗い交友関係だと騒ぎたて、これはもう名誉毀損です!」
嘘である。かの議員たちは、ブラッククロスを含む複数の如何わしい団体から金を受け取っている。
いつの時代も政治と金は切り離せないのだ。
いつの時代も政治と金は切り離せないのだ。
「ええ、ええ、よく分かっておりますとも。誠に遺憾です。後援している私までもが批難されているようではありませんか」
機械将軍――表では『平生院義朝』と名乗っている――はさも心外であるような表情で答え、
「そこで考えましたが、法的手段に訴えることも念頭に彼らにメッセージを送ろうかと検討中でして……」
そう続けた。機械将軍のこの言葉に秘書たちは、卑屈な喜色を隠さない。
彼らは理解している。機械将軍の言うメッセージとは、血と暴力による脅迫であると。
彼らは将軍のそういった力を当てにしてこの場に来ているのだ。
彼らは理解している。機械将軍の言うメッセージとは、血と暴力による脅迫であると。
彼らは将軍のそういった力を当てにしてこの場に来ているのだ。
「さすが平生院様です! 既に対策を練っておられましたか!!
どうかよろしくお願いします!!」
「先生方にはどうか安心して、これからの政治活動に精を出すようにとお伝え願います」
どうかよろしくお願いします!!」
「先生方にはどうか安心して、これからの政治活動に精を出すようにとお伝え願います」
かくして、化学ニンジャ隊の新たな策謀が始動した。その企みや、標的や、如何に?