~~拾弐の巻 「アタック・オブ・フォー・ヘブンリー・キングス(後編)」~~
燃え盛る夜。日本防衛軍基地に対する化学ニンジャ隊の攻撃はなおも続いている。
基地外部の戦闘はすでに戦闘と呼べるものではなくなっていた。
デッド・イーグルとダブル・トマホークが操る操兵の奇襲によって機動部隊は壊滅状態に。
また迎撃に出た歩兵たちもBUZZ=僧の攻撃で尽く散らされてしまった。
デッド・イーグルとダブル・トマホークが操る操兵の奇襲によって機動部隊は壊滅状態に。
また迎撃に出た歩兵たちもBUZZ=僧の攻撃で尽く散らされてしまった。
基地内では防御機能の回復が進み、各部隊と連絡を取ることで情報の蓄積が行われた。
だが司令室に集められた情報は、その場に詰める将兵を一様に絶望させる深刻なものばかりだった。
だが司令室に集められた情報は、その場に詰める将兵を一様に絶望させる深刻なものばかりだった。
「司令、パワードスーツ試験部隊が通信途絶!」
「基地の数カ所で火災発生! 中央区画付近にまで敵が侵攻!」
「屋外の機動部隊で動けるものはもういません!」
「基地の数カ所で火災発生! 中央区画付近にまで敵が侵攻!」
「屋外の機動部隊で動けるものはもういません!」
司令官の東城は指揮席に力なく座り頭を抱えている。
「わずか20分の攻撃でここまで侵入されるとは……しかも敵は十人ほどしか確認されていないのに……」
まさに悪夢である。
彼らはけして油断などしていなかった。
この基地ならばアムステラの機動大隊が攻めてきても持ちこたえる自信があったのに、
現実には少数の特殊部隊に壊滅させられつつある。
彼らはけして油断などしていなかった。
この基地ならばアムステラの機動大隊が攻めてきても持ちこたえる自信があったのに、
現実には少数の特殊部隊に壊滅させられつつある。
「援軍は来ないのか!? 全国に中継されているんだろう!?」
「ダメだ、アムステラも動いているらしい。俺たちを助けに来てくれる奴はいない!」
「ダメだ、アムステラも動いているらしい。俺たちを助けに来てくれる奴はいない!」
「……基地を放棄する」
東城の言葉に将兵一同の視線が集まった。
「遺憾ながらこの基地を放棄する。白兵戦では明らかに不利だ。
このままなんの策もなしに戦えば戦力を損なうだけである。総員、脱出の用意をせよ!」
「は、はい! わかりました!」
このままなんの策もなしに戦えば戦力を損なうだけである。総員、脱出の用意をせよ!」
「は、はい! わかりました!」
基地内へ一斉に脱出命令が通知された。
「諸君、この司令部は各部隊へ撤退ルートの指示を行わなければならない。
よって我々の脱出は全体の最後となることを覚悟してくれ」
よって我々の脱出は全体の最後となることを覚悟してくれ」
上官の沈痛な言葉に、部下たちは抗弁の一つもせずに悲壮な覚悟を固めた。
不利な状況下にあっても指揮系統が乱れぬ辺り、彼らの能力と信頼関係の高さを伺わせる。
これも日頃の訓練と薫陶によるものだろう。だが現実は無情にも彼らを押し包む。
不利な状況下にあっても指揮系統が乱れぬ辺り、彼らの能力と信頼関係の高さを伺わせる。
これも日頃の訓練と薫陶によるものだろう。だが現実は無情にも彼らを押し包む。
ガスゥンッ!!
突然の破壊音とともに司令室の扉が吹き飛んだ! 鉄の扉に押しつぶされて兵士一人が南無阿弥陀仏!
そんなことはお構いなしに侵入してきたのは、腰の曲がった魔女のような老婆……。
否、これは屈んでいるのではない、そういう体型なのだ。見れば老婆の下半身は無限軌道のキャタピラではないか!
そんなことはお構いなしに侵入してきたのは、腰の曲がった魔女のような老婆……。
否、これは屈んでいるのではない、そういう体型なのだ。見れば老婆の下半身は無限軌道のキャタピラではないか!
「なんだこのバアサンは!?」
「焼けた臭いがする……近くで火災が?」
「焼けた臭いがする……近くで火災が?」
「ああ、近い近いぞえ。お主らの目の前じゃ」
――“四天王”ババア・バーニング!!!!
将兵たちは目を疑った。どこからともなく火が燃え上がり、老婆が全身炎に包まれたではないか!
だが老婆、ババア・バーニングはまったく熱さを感じていない。それどころか炎の影響を一切受けていない。
だが老婆、ババア・バーニングはまったく熱さを感じていない。それどころか炎の影響を一切受けていない。
炎の魔術師、あるいは地獄からやってきた火の車のごとく、ババア・バーニングが発進!
まず一番近くにいた兵士が撥ねられて火だるまと化す!
まず一番近くにいた兵士が撥ねられて火だるまと化す!
「グワーッ! あ、熱いいいい!」
「若いもんが大声で騒ぐんじゃないよ!」
「グワーッ!」
「若いもんが大声で騒ぐんじゃないよ!」
「グワーッ!」
次々と兵士たちが轢かれ、撥ねられ傷ついていく。だが止めようにも彼女のまとう炎がそうさせない。
書類や配線の、椅子などのゴム素材が瞬く間に燃えて、司令室内は業火の坩堝となってしまった!
書類や配線の、椅子などのゴム素材が瞬く間に燃えて、司令室内は業火の坩堝となってしまった!
各種機器も破損し司令部は完全に機能停止。
それ以前に、司令室に踏みとどまることすら出来ず、東城以下兵士たちは追われるように外へと逃れた。
それ以前に、司令室に踏みとどまることすら出来ず、東城以下兵士たちは追われるように外へと逃れた。
キン――ッ
ここで異変が起こる。
司令室の出口から雪崩のように飛び出した兵士たち。その首元に引っかかるものがある。
司令室の出口から雪崩のように飛び出した兵士たち。その首元に引っかかるものがある。
(なんだこれ……ワイヤーか?)
なんと通路にはすでにワイヤーのトラップが仕掛けられていたのだ!
そのワイヤーは通行を阻むように横一文字、首ほどの高さに張られている。
ワイヤーは視認できぬほどに細く……そして強靭!
なんとこれはアラミド繊維である。大人数名の体重がかかったても千切れることがない!
そのワイヤーは通行を阻むように横一文字、首ほどの高さに張られている。
ワイヤーは視認できぬほどに細く……そして強靭!
なんとこれはアラミド繊維である。大人数名の体重がかかったても千切れることがない!
そのうちに後ろから新たに別の兵士が押しかけるが、前が詰まって進めない。
彼らの背後からはババア・バーニングが迫っておりすぐにでも逃げ出さねばならないのに。
当然焦る。押す。進めない。さらに押す。
彼らの背後からはババア・バーニングが迫っておりすぐにでも逃げ出さねばならないのに。
当然焦る。押す。進めない。さらに押す。
「や、やめろ押すな! なにかが引っかかって……い、痛い!」
「グワーッ!」
「グワーッ!」
やがて血飛沫が舞った!
味方の体重に押されて最前列の兵士がワイヤーで切り裂かれてしまったのだ!
極度に細い繊維は肉や筋、骨すら切り裂き、悲壮な表情を浮かべた生首が量産された!
味方の体重に押されて最前列の兵士がワイヤーで切り裂かれてしまったのだ!
極度に細い繊維は肉や筋、骨すら切り裂き、悲壮な表情を浮かべた生首が量産された!
「ヒヒヒ、そっちには逃げられないよ」
生き残ったものはそのままババア・バーニングのキャタピラに巻き込まれ、ぐずぐずの焼死体になった。
その頃になって、通路の陰に控えていた忍者が姿を現した。
――“休養四天王”センセイ!!!!
その見た目は体格のいいサラリーマンそのもの……だがしかし、彼こそ通路に辛辣なアラミド繊維の罠を張った張本人である。
サラリーマン風の忍者・センセイは司令室に入ると、そこは延焼が激しく近づきがたい光景である。
だがしかし、ババア・バーニングに追われるのとは反対方向へ逃れた者達がいる。
彼らを追うにはこの炎をどうにかしなければならない。
だがしかし、ババア・バーニングに追われるのとは反対方向へ逃れた者達がいる。
彼らを追うにはこの炎をどうにかしなければならない。
「フゥー……ヒュッ!」
センセイがひとっ飛び!
炎を飛び越えて反対側の通路に無事たどり着くと、そのままダッシュで突き進む!
ほどなく逃亡する兵士たちの背中が見えると、追いつきざまに殴る! 蹴る! 壁に叩きつける!
極めつけに取り出したのは先程のアラミド繊維のワイヤーだ。
これを敵の首に絡ませると、一息に引き絞るだけでチーズでも切るように首が落ちた。
炎を飛び越えて反対側の通路に無事たどり着くと、そのままダッシュで突き進む!
ほどなく逃亡する兵士たちの背中が見えると、追いつきざまに殴る! 蹴る! 壁に叩きつける!
極めつけに取り出したのは先程のアラミド繊維のワイヤーだ。
これを敵の首に絡ませると、一息に引き絞るだけでチーズでも切るように首が落ちた。
「これで一通り殺しましたか……司令官には逃げられてしまったようですね、残念です」
センセイは、サラリーマンがビジネスの首尾を確認するような平静さで状況確認した。
外見に反して彼は冷酷な、そして古式ゆかしいストロングスタイルの忍者なのだ。
外見に反して彼は冷酷な、そして古式ゆかしいストロングスタイルの忍者なのだ。
だが驚くべきは、センセイの肉体はサイボーグ手術を受けていないという事実!
実際彼の身体には老化抑制のための外科的な処置しか施されていない。
彼の技の数々は厳しい修練によって身につけたものであり、一般人と見分けがつきにくいため暗殺も容易に行えるというわけだ。
彼の技の数々は厳しい修練によって身につけたものであり、一般人と見分けがつきにくいため暗殺も容易に行えるというわけだ。
その後、センセイとババア・バーニングは司令官を追って通路を進んだ。
すると曲がり角から飛び出す小さい影。センセイと衝突して尻餅をついたその姿は少年であった。
すると曲がり角から飛び出す小さい影。センセイと衝突して尻餅をついたその姿は少年であった。
「いったぁぃ!」
「おや、ザ・ラッキー君ではありませんか。大丈夫ですか?」
「おや、ザ・ラッキー君ではありませんか。大丈夫ですか?」
――“休養四天王”ザ・ラッキー!!!!
「なんじゃ、お主のことだまた迷子にでもなっていたのだろう」
「だってばあちゃん、基地の中ってゴチャゴチャしていてわかりにくいんだもの」
「その癖を直さんでどうする!
お前は任務中に道に迷って行方不明になってるうちに、休養四天王に移されたのじゃろうが」
「だってばあちゃん、基地の中ってゴチャゴチャしていてわかりにくいんだもの」
「その癖を直さんでどうする!
お前は任務中に道に迷って行方不明になってるうちに、休養四天王に移されたのじゃろうが」
後からやってきたババア・バーニングが叱責を与えた。
彼、ザ・ラッキーは最年少の四天王でありながら、多くの重要な暗殺をこなすことで四天王の地位を手に入れたのである。
だが欠点として、かなりののんびり屋でいくつも抜けている部分が多いことが玉に瑕であった。
彼、ザ・ラッキーは最年少の四天王でありながら、多くの重要な暗殺をこなすことで四天王の地位を手に入れたのである。
だが欠点として、かなりののんびり屋でいくつも抜けている部分が多いことが玉に瑕であった。
「やれやれですね……。
ところでラッキー君、こちらにこの基地の司令官らしき人物が逃げてきませんでしたか?」
ところでラッキー君、こちらにこの基地の司令官らしき人物が逃げてきませんでしたか?」
センセイが尋ねた。
「あ~あ、なんだか偉そうなオジサンがいましたよ、たぶんその人じゃあないですかね」
「なんじゃ、見つけておったのか! すぐに追わぬか!」
「落ち着いてよばあちゃん! その人ならさっきバッタリ会ったときに」
「なんじゃ、見つけておったのか! すぐに追わぬか!」
「落ち着いてよばあちゃん! その人ならさっきバッタリ会ったときに」
「殺しておいたから」
その間わずか数秒!
司令官東城も空手五段にして軍隊式抜刀術の手練であったが、この少年忍者は出会い頭に殺害してのけたのだ!
司令官東城も空手五段にして軍隊式抜刀術の手練であったが、この少年忍者は出会い頭に殺害してのけたのだ!
「司令官の首を獲る競争は俺の勝ちですね~」
果たして彼はどのような技巧を以って東城を殺害したのか。カメラはそれを捉えることができなかった……。
◆◆◆◆◆
屋外では、BUZZ=僧が倉庫の屋根から辺りを睥睨していた。
彼は防衛軍兵士を殺すだけ殺すと、それに飽きて高みの見物に回ってしまっていた。
実際彼の任務は終ったも同然だった。敵の火力、人員に多大な被害を与え、屋外の抵抗は沈黙している。
今はバスター・アーセナルが残敵掃討に当っているが、点数稼ぎにもなりはしない。
彼は防衛軍兵士を殺すだけ殺すと、それに飽きて高みの見物に回ってしまっていた。
実際彼の任務は終ったも同然だった。敵の火力、人員に多大な被害を与え、屋外の抵抗は沈黙している。
今はバスター・アーセナルが残敵掃討に当っているが、点数稼ぎにもなりはしない。
やがて空戦型羅甲が一機現れ、両手に抱えたコンテナを空きスペースに降下させた。
それをダブル・トマホークの羅甲・双武が受け取り、コンテナハッチを開く。
物々しい様子にマスコミも望遠カメラで様子を伺っていたが、中から出てきたのは見慣れない装置だった。
それをダブル・トマホークの羅甲・双武が受け取り、コンテナハッチを開く。
物々しい様子にマスコミも望遠カメラで様子を伺っていたが、中から出てきたのは見慣れない装置だった。
「こちらダブル・トマホーク、将軍の用意はよろしいでしょうか?」
『いつでもよいぞ。始めよ』
『いつでもよいぞ。始めよ』
ダブル・トマホークが装置を作動させると、夜空にホログラムが浮かび上がった。
運び込まれたのは巨大なホログラム投影装置だったのだ。
運び込まれたのは巨大なホログラム投影装置だったのだ。
『お集まりの諸君。この映像を見ている諸君。日本の、全世界のものたちよ』
映しだされたのは機械の身体を衣に包んだ巨躯の男。
『ワシの名は機械将軍。今宵の宴を主催した化学ニンジャ隊の首領である。
本日は諸君らに挨拶するためにこうして場を借りておる』
本日は諸君らに挨拶するためにこうして場を借りておる』
◆◆◆◆◆
テレビの映像を見て首相官邸や各大臣の周辺は慌ただしくなっていた。
こんな時に防衛副大臣が避暑地へ行っていて連絡がつかない。
ともかく臨時で閣僚と軍関係者を招集して、テレビから流れるテロリストの声明に耳を傾けた。
こんな時に防衛副大臣が避暑地へ行っていて連絡がつかない。
ともかく臨時で閣僚と軍関係者を招集して、テレビから流れるテロリストの声明に耳を傾けた。
『化学ニンジャ隊とは、諸君らも知っているだろうブラッククロスと志を共にする集団である。
ワシらがこのような挙に出たのは理由がある。憤りがある。憂いがある。
今日の日本の堕落、腐敗に対し怒りの鉄槌を下すためである!』
ワシらがこのような挙に出たのは理由がある。憤りがある。憂いがある。
今日の日本の堕落、腐敗に対し怒りの鉄槌を下すためである!』
軍部でも幹部を招集して事態を見守っていた。
『政治家は票集めに狂奔し、人民は享楽に走る!
軍部は無能にして日本の精神を忘れ、財界は利益追求ばかりに心を砕く!
そこにアムステラの出現したことこそ天の意志であるとなぜ気づかぬか!?』
軍部は無能にして日本の精神を忘れ、財界は利益追求ばかりに心を砕く!
そこにアムステラの出現したことこそ天の意志であるとなぜ気づかぬか!?』
「……適当なことを言うものだよん」
空軍長官の柳生月心斎がテレビに向かって毒づく。
『ここで一つ、ワシらがいかにして今宵の作戦を成功させたか、その一端をご覧に入れよう』
投影された機械将軍に重なるように、別窓のホログラムが映し出される。
それはどこか屋内の一室。椅子にもたれかかって動かない人物が人々の目に映った。
それはどこか屋内の一室。椅子にもたれかかって動かない人物が人々の目に映った。
「あれはまさか、副大臣!?」
テレビを見ていた閣僚の一人が驚きの声を上げた。
『奴はこの国の防衛副大臣である。奴は我々と長らく関係を結び多くの便宜を図ってくれた。
いったいなんのためか? それは敵の存在を煽ることで己の権限を広げるためという、如何にも利己的な望み!
今宵の死者たちは奴によって殺されたも同然! これが今の日本の政治家たちの実態!』
いったいなんのためか? それは敵の存在を煽ることで己の権限を広げるためという、如何にも利己的な望み!
今宵の死者たちは奴によって殺されたも同然! これが今の日本の政治家たちの実態!』
◆◆◆◆◆
――ぬらり、ぐちょり……。
身動きできない湖島二尉の身体をいくつもの触手が捕らえている。
身動きできない湖島二尉の身体をいくつもの触手が捕らえている。
「このっ……放せ!」
人目につかない物陰のさらに奥でおぞましい光景が繰り広げられていた。
彼女を捕らえて見下ろすのは2mを超える巨漢の忍。
膨れ上がったハゲ頭、毒々しい色の素肌と異様な外見だが、特に目を凝らしてよく見てほしい。
彼の腕の先は手ではなく、三本の太い触手が生えているではないか!
彼女を捕らえて見下ろすのは2mを超える巨漢の忍。
膨れ上がったハゲ頭、毒々しい色の素肌と異様な外見だが、特に目を凝らしてよく見てほしい。
彼の腕の先は手ではなく、三本の太い触手が生えているではないか!
――“暫定四天王”オクトロン!!!!
これは機械のマニピュレーターに皮膚を移植して作り上げた触腕なのだ。
最新の義肢技術を用いて精巧に作られているため、彼の思い通りに動いて今まさに湖島のインナースーツを脱がそうとしている!
最新の義肢技術を用いて精巧に作られているため、彼の思い通りに動いて今まさに湖島のインナースーツを脱がそうとしている!
「やめろ……このぉ!」
湖島はわずかに動く足で蹴りつけるが、力が入らない。先の戦いでダイアモンドパープルに骨を折られたのも響いている。
彼女の蹴りはオクトロンの太った腹を撫でるにとどまった。
彼女の蹴りはオクトロンの太った腹を撫でるにとどまった。
「へへへへ、どうした元気が無くなってきたかぁ?」
「いっ……つぅ」
「いっ……つぅ」
オクトロンの触手が一際力み、湖島のスーツを力任せに引き裂いた。その身体は豊満だ。
湖島の程よく引き締まった肢体が外気に晒され寒気がする。それともこれは恐怖によるものか。
湖島の程よく引き締まった肢体が外気に晒され寒気がする。それともこれは恐怖によるものか。
「なぁっ……!?」
「ふえっへっへっ、中々いい身体してるじゃねえか、楽しめそうだぜ~。
だが時間もないことだ、急がせてもらおうか」
「ふえっへっへっ、中々いい身体してるじゃねえか、楽しめそうだぜ~。
だが時間もないことだ、急がせてもらおうか」
オクトロンは触手の先からなにか白い液体を発射した!
湖島の両腕はにかかった液体はボンドのように固まり、彼女を床に張り付けにしてしまったではないか。
飛び散った飛沫は湖島の顔や素肌にもかかり、嫌な臭いに思わず顔をしかめる。
湖島の両腕はにかかった液体はボンドのように固まり、彼女を床に張り付けにしてしまったではないか。
飛び散った飛沫は湖島の顔や素肌にもかかり、嫌な臭いに思わず顔をしかめる。
それすらも愉悦に感じているのかオクトロンの触手は一層元気にうねり、湖島の下着まではぎ取った。
彼は任務などそっちのけで獲物をいたぶることを優先にしているのだ。
彼の魔手にかかり尋問が尋問で済まなくなった哀れな事案も少なくない。
彼は任務などそっちのけで獲物をいたぶることを優先にしているのだ。
彼の魔手にかかり尋問が尋問で済まなくなった哀れな事案も少なくない。
「くっ、弄ぶな! さっさと殺せ!」
「そうはいかねぇよ、ある程度味わったあとはアジトに持ち帰ってゆっくり楽しむからなぁ、ひっひっひ!」
「そうはいかねぇよ、ある程度味わったあとはアジトに持ち帰ってゆっくり楽しむからなぁ、ひっひっひ!」
湖島は己を待つ未来を想像してゾッとした。だが触手が容赦なく絡みつきもはや裸に近い状態だ!
胸の下に潜り込んだ触手が寄せて上げる!
胸の下に潜り込んだ触手が寄せて上げる!
「んうっ……!」
また別の触手が両腿の隙間に潜り込んで擦り上げる! 何度も執拗に!
「あっ……や、やめろぉ!」
痛みとは別の感覚がこみ上げ、湖島の顔が恐怖と恥辱に染まる。
このまま何も出来ぬまま身体を弄ばれ続けるのか? それぐらいならいっそ……。
ゴブッ! 湖島が舌を噛み切ることまで考えたとき、彼女の口に触手の一つが突っ込まれた!
このまま何も出来ぬまま身体を弄ばれ続けるのか? それぐらいならいっそ……。
ゴブッ! 湖島が舌を噛み切ることまで考えたとき、彼女の口に触手の一つが突っ込まれた!
「ぐぶっ……ぐっ!」
「おぉっと静かにしてろや……これから上も下も激しく前後してやるから」
「んぐっ……!?」
「おぉっと静かにしてろや……これから上も下も激しく前後してやるから」
「んぐっ……!?」
オクトロンの触手が足を掴み無理やり開かせる!
「ほぉ~ん、悪くないジャングルだなあ、ふへへへへへ!」
「ぐぅんっ……!」
「ぐぅんっ……!」
湖島の必死の抵抗を意に介さずオクトロンが侵略する。このまま彼女の秘密の場所は暴かれてしまうのか?
ザシュッ!!!!!
そうはならなかった! 突如オクトロンの触手が同時に切断される!
「ぬぁぁぁにぃ!? お、俺の自慢の触手がーーー!?」
狼狽するオクトロンに迫る影。謎の来訪者はオクトロンのボディにすかさず拳の連撃を叩き込む!
「ごぶっ!」
壁まで吹き飛んだオクトロンは、方角が良かったためすぐに通路の奥の奥へと撤退した。
触腕が損傷していては不利は免れないため素早い判断だ。
触腕が損傷していては不利は免れないため素早い判断だ。
危機を脱した湖島は事態が飲み込めず、自分を見下ろす人物を呆けたように見つめ返すのみである。
その人物は上から下まで黒ずくめ。人を刺すような鋭い目だけが爛々と輝いている。
もはや説明はいるまい。彼が駆けつけたのだ。人々の夢と希望を打ち砕く黒装束の忍が、楔が到着したのだ。
その人物は上から下まで黒ずくめ。人を刺すような鋭い目だけが爛々と輝いている。
もはや説明はいるまい。彼が駆けつけたのだ。人々の夢と希望を打ち砕く黒装束の忍が、楔が到着したのだ。
「動くな、じっとしていろ」
楔は忍刀を抜いて湖島の腕を固定する白濁液の固まりを切除した。
特別にこしらえてもらったマグナムスチール製の刀である。固まりを十分に取り除き湖島を自由にした。
特別にこしらえてもらったマグナムスチール製の刀である。固まりを十分に取り除き湖島を自由にした。
「化学物質だな……組成を調べなければ完全に除くことは出来ない、今はこれで我慢しろ」
虚脱しつつも湖島は頷いた。楔は、湖島を直視しようとはしない。
湖島は自分がほぼ裸であることに気づいたが、なぜだか隠す気が起きなかった。
今彼女の目には、楔が人間ではないもっと神秘的な、人間離れした存在に映っている。
湖島は自分がほぼ裸であることに気づいたが、なぜだか隠す気が起きなかった。
今彼女の目には、楔が人間ではないもっと神秘的な、人間離れした存在に映っている。
「これを着て隠れていろ。この場所は中からしか開かないようにしておく」
楔は上着を渡すと部屋から出て行った。
少しして意識のはっきりしてきた湖島だが、傷が痛むため上着に袖を通すことが出来ない。
肩に羽織ってボタンを一つとめたところで、その上着が旧日本軍の軍服に似たデザインをしていることに気づいた。
少しして意識のはっきりしてきた湖島だが、傷が痛むため上着に袖を通すことが出来ない。
肩に羽織ってボタンを一つとめたところで、その上着が旧日本軍の軍服に似たデザインをしていることに気づいた。
◆◆◆◆◆
『日本を担うものたちの腐敗、今上げただけでは切りがない!』
基地の外では機械将軍の演説が続いていた。
それは防衛副大臣の密約の暴露にとどまらず、幾人もの政財界の大物が罪を暴露され、明日からのスキャンダルを覚悟させられていた。
なお将軍の子飼いにしているものたちには火の粉がかからぬよう配慮してある。
そして暴露されたものたちの失った席のいくつかは、将軍の意を受けたものたちが占めることになるだろう。
それは防衛副大臣の密約の暴露にとどまらず、幾人もの政財界の大物が罪を暴露され、明日からのスキャンダルを覚悟させられていた。
なお将軍の子飼いにしているものたちには火の粉がかからぬよう配慮してある。
そして暴露されたものたちの失った席のいくつかは、将軍の意を受けたものたちが占めることになるだろう。
『この国の政治家、それを選んだ愚民ども、奴隷のように従属するものたち、すべてに罪有り!
よってワシが鉄槌を下す! 一度この国を破壊する! 全ての秩序に攻撃を仕掛ける!』
よってワシが鉄槌を下す! 一度この国を破壊する! 全ての秩序に攻撃を仕掛ける!』
演説が架橋を迎えた。そろそろ防衛軍の援軍が駆けつける頃でもある。
基地を攻撃した化学ニンジャたちも撤退の準備にかかっていた。
基地を攻撃した化学ニンジャたちも撤退の準備にかかっていた。
『ワシこと機械将軍はここに宣言しよう!』
投影される将軍の映像が手を高らかと上げる。
そして宣言される言葉は。
そして宣言される言葉は。
ガッスゥゥゥン!!!!
ホログラム投影装置に何かが落下! 装置は破壊され将軍の映像は消えてしまった!
「アガガ……こ、こんな……」
落下したのは化学ニンジャのBUZZ=僧である。爆装が誤作動して直後に爆発四散!
投影装置と、そして将軍の演説ごと塵となって消えた。
彼は倉庫の屋根に登っていたはずだが、今その場を見ると代わりに立っているのは……。
投影装置と、そして将軍の演説ごと塵となって消えた。
彼は倉庫の屋根に登っていたはずだが、今その場を見ると代わりに立っているのは……。
「見ているのだろう機械将軍。ふざけたことをしてくれたな」
誰であろう楔である!
「これが俺の宣戦布告だ」