~~拾伍の巻 「アース・ウィンド・ファイアー・アンド・ニンジャ(後編)」~~
化学ニンジャ隊の日本防衛軍基地に襲撃から始まった長い夜は、二つの死闘によって終わりを迎えようとしていた。
星空の下、草木を蹴飛ばしながら猛進するはダブル・トマホークの羅甲・双武。
ファントム・オーガの忍者ロボット・ファントムめがけてトマホークを振り下ろした!
ファントムはバックステップ回避!
だが羅甲・双武の二つ目のトマホークが追撃。
ファントムはサイドステップして回避! さらに側転して距離をとった。
ファントム・オーガの忍者ロボット・ファントムめがけてトマホークを振り下ろした!
ファントムはバックステップ回避!
だが羅甲・双武の二つ目のトマホークが追撃。
ファントムはサイドステップして回避! さらに側転して距離をとった。
「ファントム・オーガ、お前を倒すことは俺たち化学ニンジャの目標の一つ。
ここで俺が首が獲れることになって嬉しいぜ!」
ここで俺が首が獲れることになって嬉しいぜ!」
ダブル・トマホークが顔に喜色を浮かべる。
それを見ることはできないが、ファントム・オーガは目標と言われることに悪い気はしなかった。
それを見ることはできないが、ファントム・オーガは目標と言われることに悪い気はしなかった。
「ほほぅ拙者がターゲットとは、拙者も名が上がったでござるな」
「なぁに、お前みたいなエセ忍者を倒して、俺たちが新時代の忍者だと証明するためさ!」
「拙者がエセ忍者とな!?」
「なぁに、お前みたいなエセ忍者を倒して、俺たちが新時代の忍者だと証明するためさ!」
「拙者がエセ忍者とな!?」
ファントムの右腕が肩に伸び、ブレードチェーンを引き出した。
「エセかどうか確かめてくれよう!」
ヒュン! ブレードチェーンが風を切る!
高速で唸るブレードチェーンが羅甲・双武を襲うが、羅甲・双武はトマホークをゆっくり掲げた。
高速で唸るブレードチェーンが羅甲・双武を襲うが、羅甲・双武はトマホークをゆっくり掲げた。
「フン!」
トマホークが地面を抉り、ファントムに向けて多くの土や岩石を飛ばした!
刀身の軽いブレードチェーンは岩に弾かれてコントロールを失う!
刀身の軽いブレードチェーンは岩に弾かれてコントロールを失う!
「なんと!?」
ファントム・オーガは驚いたが、ダブル・トマホークはお構いなしに肉薄。
容赦無いトマホークの斬撃でファントムは腕を切り落とされた!
容赦無いトマホークの斬撃でファントムは腕を切り落とされた!
「ぬあぁっ!?」
◆◆◆◆◆
上空ではオハギを背負った梟が羅甲・爪我を追う!
放たれる手裏剣が、ミサイルが、機関砲が、その機体を徐々に削っていく!
放たれる手裏剣が、ミサイルが、機関砲が、その機体を徐々に削っていく!
「ちくしょう、こんなやつに!」
デッド・イーグルは操兵のコックピット内で拳を叩きつける。
彼は元防衛軍の空軍エースだった。
それが病気で視力を失いかけてより、化学ニンジャ隊にスカウトされてサイボーグとなった。
化学ニンジャ隊の中でも誰より空を庭とする自分が、憎き敵に追い詰められているのだ。
屈辱である。これでは大恩ある機械将軍に顔向け出来ない。
だが認めざるをえないこともある。サポートユニットを得た梟の戦いぶりはただならぬものであった。
彼は元防衛軍の空軍エースだった。
それが病気で視力を失いかけてより、化学ニンジャ隊にスカウトされてサイボーグとなった。
化学ニンジャ隊の中でも誰より空を庭とする自分が、憎き敵に追い詰められているのだ。
屈辱である。これでは大恩ある機械将軍に顔向け出来ない。
だが認めざるをえないこともある。サポートユニットを得た梟の戦いぶりはただならぬものであった。
羅甲・爪我が殺人的な機動で攻撃のポジションをとる。
それを見透かしたように、梟が手裏剣で反撃。
回避した羅甲・爪我の眼前で、なんと梟とオハギが二手に別れた!
梟は滑空しながら上空にマキビシランチャーを発射! オハギは回りこんで機関砲を掃射!
それを見透かしたように、梟が手裏剣で反撃。
回避した羅甲・爪我の眼前で、なんと梟とオハギが二手に別れた!
梟は滑空しながら上空にマキビシランチャーを発射! オハギは回りこんで機関砲を掃射!
羅甲・爪我はまたしても翼を唸らせて回避するが、その頃には梟がオハギの背に乗り空中をライディングしているではないか。
オハギは背負うだけのユニットではない。背負って良し、乗って良し、攻めて良しの三方良しの破壊兵器なのだ。
オハギは背負うだけのユニットではない。背負って良し、乗って良し、攻めて良しの三方良しの破壊兵器なのだ。
「オハギと梟のリンクをもっと速くします!」
それだけではない。同乗しているマイアがリアルタイムでデータ調節し、オハギと梟の連携を高めている。
その梟がライディング状態からジャンプ!
羅甲・爪我の頭上から手裏剣の雨を降らせ、避けた先にはオハギがミサイルをばら撒いていた!
時限信管により時間差で爆発が連発する。羅甲・爪我はデコイを撒いて振り切るが、度重なる急旋回が次第に負担となっていった。
その梟がライディング状態からジャンプ!
羅甲・爪我の頭上から手裏剣の雨を降らせ、避けた先にはオハギがミサイルをばら撒いていた!
時限信管により時間差で爆発が連発する。羅甲・爪我はデコイを撒いて振り切るが、度重なる急旋回が次第に負担となっていった。
デッド・イーグルの肉体は激しい機動に耐えられるように改造されている。
たとえ防衛軍のエースパイロットでもデッド・イーグルほどの急制動をすれば意識が飛びかねない。
そんな彼でも、梟とオハギのコンビネーションには追いつめられつつあった。
たとえ防衛軍のエースパイロットでもデッド・イーグルほどの急制動をすれば意識が飛びかねない。
そんな彼でも、梟とオハギのコンビネーションには追いつめられつつあった。
梟とオハギはニにして一。
二つの意思がマイアの助けを得て、打倒化学ニンジャに向けて合一しているのだ。
対するデッド・イーグルは優れてはいても一人でしかない。
二つの意思がマイアの助けを得て、打倒化学ニンジャに向けて合一しているのだ。
対するデッド・イーグルは優れてはいても一人でしかない。
「こいつは……俺も覚悟が必要みたいだな」
◆◆◆◆◆
腕を切り落とされたファントムが素早く後退。
対する羅甲・双武は深追いせず、両手の斧を構え直した。油断のない佇まいである。
対する羅甲・双武は深追いせず、両手の斧を構え直した。油断のない佇まいである。
「中々やるでござるな。だがこちらも負けてはいないでござるよ!」
ファントムが勢い良く地面に潜った! 世界のロボットたちの中でも珍しい地中潜行能力だ!
相手が土を掘り進む震動を足に感じながら、ダブル・トマホークは忍者神経を研ぎすませる。
「……来る!」
ダブル・トマホークは目を見開くと、操縦桿を素早く切る!
羅甲・双武がその場を飛び退くと、土を巻き上げファントムの姿が出現!
しかし奇襲は見破られ羅甲・双武は無傷だった。
羅甲・双武がその場を飛び退くと、土を巻き上げファントムの姿が出現!
しかし奇襲は見破られ羅甲・双武は無傷だった。
「ヌヌッ、これを避けるか!」
「甘いぜファントム・オーガ! 所詮貴様は雑魚相手にいい気になっているだけの男よ!」
「ぬかすがいい!」
「甘いぜファントム・オーガ! 所詮貴様は雑魚相手にいい気になっているだけの男よ!」
「ぬかすがいい!」
再びファントムが地中に潜った。今度はより長い時間をかけて潜行し、ダブル・トマホークの裏をかこうとする。
だがダブル・トマホークは戦士の直感でファントム・オーガの接近を感じ取っていた。
だがダブル・トマホークは戦士の直感でファントム・オーガの接近を感じ取っていた。
「焦っているな……さっきよりも震動を読みやすい。……そこだ!」
羅甲・双武がバックステップした直後、その場の地面が盛り上がり、大量の土砂が吹き上がる。
ファントムの機体が出現したがまたしても空振りだ!
対する羅甲・双武は、今度は余裕を持って回避したことで即座に反撃に移れる姿勢!
ファントムの機体が出現したがまたしても空振りだ!
対する羅甲・双武は、今度は余裕を持って回避したことで即座に反撃に移れる姿勢!
「死ね! ファントム・オーガ!」
ダブル・トマホークが必殺のこっぱみじん斬りを仕掛け、ファントムを八つ裂きにした!
――しかし、まるで手応えがない。
――しかし、まるで手応えがない。
「ホログラフか!?」
気づいた時にはもう遅い。羅甲・双武の足元に雌伏していたファントムが、土砂ごと羅甲・双武を巻き上げる!
最初の噴出は擬態で、ホログラフを使った変わり身の術によってダブル・トマホークを欺いたのだ。
最初の噴出は擬態で、ホログラフを使った変わり身の術によってダブル・トマホークを欺いたのだ。
宙を舞った羅甲・双武は受け身を取る暇もなく地面に激突した。
機体が軋み、ダブル・トマホークも意識が飛んだが、彼も優れたサイボーグ戦士である。
明滅する視界のなか、咄嗟の反射で機体と立ち上がらせ、トマホークを構える。
ダブル・トマホークの意識と呼吸が整ったのはその直後であったが、ファントム・オーガは追撃をかけられない。
彼にもまた余裕がなかったのだ。
機体が軋み、ダブル・トマホークも意識が飛んだが、彼も優れたサイボーグ戦士である。
明滅する視界のなか、咄嗟の反射で機体と立ち上がらせ、トマホークを構える。
ダブル・トマホークの意識と呼吸が整ったのはその直後であったが、ファントム・オーガは追撃をかけられない。
彼にもまた余裕がなかったのだ。
「く……ファントム・オーガ、やはり只者ではなかったか」
「フフフ……変わり身の術は忍の基本であるぞ」
「フフフ……変わり身の術は忍の基本であるぞ」
二人の忍者は互いに心を昂ぶらせながら、夜の闇の中、再び交錯した。
◆◆◆◆◆
空の戦いには異変が起きていた。
これまで優位を保っていた楔とオハギだが、ここにきて羅甲・爪我の様子が一変したのである。
これまで優位を保っていた楔とオハギだが、ここにきて羅甲・爪我の様子が一変したのである。
「まだ余力があったのか!?」
羅甲・爪我が楔の視界から瞬時に消えた。デッド・イーグルがパイロット時代に得意とした旋回スキルだ。
梟は今、オハギに乗って飛行しているが、羅甲・爪我その死角に回りこんでミサイルを放つ。
それに対しオハギの可動式機関砲が掃射。ミサイルを撃ち落として空中に炎の花を咲かせる。
だが羅甲・爪我はその爆煙の中を突っ切り、梟に肉迫!
梟が手裏剣を投じるが、羅甲・爪我はそれすらも回避して、梟の頭上という絶好のポジションを取った。
梟は今、オハギに乗って飛行しているが、羅甲・爪我その死角に回りこんでミサイルを放つ。
それに対しオハギの可動式機関砲が掃射。ミサイルを撃ち落として空中に炎の花を咲かせる。
だが羅甲・爪我はその爆煙の中を突っ切り、梟に肉迫!
梟が手裏剣を投じるが、羅甲・爪我はそれすらも回避して、梟の頭上という絶好のポジションを取った。
「必殺!」
リミッターの外れた殺人的な機動から繰り出されるその技は!
「 天 剣 絶 刀 !!!!」
羅甲・爪我が頭から突っ込んでくる!
――と、その姿勢で加速すると、速度を落とすことなく体勢を入れ替え、鋭い爪を梟に向ける!
猛禽じみた急降下からの狩猟的キック、それが『天剣絶刀』である!
――と、その姿勢で加速すると、速度を落とすことなく体勢を入れ替え、鋭い爪を梟に向ける!
猛禽じみた急降下からの狩猟的キック、それが『天剣絶刀』である!
「楔さん!?」
「マイア、揺れるぞ掴まれ!」
「マイア、揺れるぞ掴まれ!」
楔が叫ぶとマイアは両腕で楔をがっちりと抱え込んだ。
「違う、物に掴まれと!」
その間に、梟が足場となっているオハギを蹴りだすように遠ざけ、羅甲・爪我の天剣絶刀を回避しようと試みる。
だが避けきれない! 梟の右足が爪で抉られ、機体が激しくスピンする!
だが避けきれない! 梟の右足が爪で抉られ、機体が激しくスピンする!
「キャァァァァ!?」
コックピット内も天地が逆転するような震動に見舞われるが、楔はマイアがクッション代わりになって無事だ!
一方デッド・イーグルもコックピット内で貯めこんだ息を吐き出していた。
並の人間なら口から内臓が飛び出しそうな圧力に耐え、渾身の一撃を放ったデッド・イーグル。
しかし完全に仕留めることはできず、代わりに身体に受けたダメージは少なくない。
もう一度この技を仕掛けるにはしばらく休憩が必要だが、それを許してくれる敵とも思えなかった。
並の人間なら口から内臓が飛び出しそうな圧力に耐え、渾身の一撃を放ったデッド・イーグル。
しかし完全に仕留めることはできず、代わりに身体に受けたダメージは少なくない。
もう一度この技を仕掛けるにはしばらく休憩が必要だが、それを許してくれる敵とも思えなかった。
「それでも……手応えはあった。次で必ず殺す」
デッド・イーグルの休止によって生じた隙に、梟は再びオハギの背に乗ることができた。
『楔サン、先程ノ、避ケ方ヨロシクアリマセン。次ハ私ヲ盾ニシテクダサイ』
「いいや、あれで正しいのだ」
『私ハ人工知能デス。破壊サレテモ問題ナイ』
「何を言っている。奴を倒すにはお前の助けが必要なのだ」
「いいや、あれで正しいのだ」
『私ハ人工知能デス。破壊サレテモ問題ナイ』
「何を言っている。奴を倒すにはお前の助けが必要なのだ」
楔の判断は感傷によるものではない。どのような途を経ようとも、勝利へと邁進する。その決意の現れであった。
「楔さん、さっきやられた足はもう動きそうにありませんから、オハギちゃんは背負ったほうがいいですよ」
「いや、このままで行く。次の接触で奴に引導を渡す!」
「いや、このままで行く。次の接触で奴に引導を渡す!」
オハギが再び旋回し、羅甲・爪我の方角へ飛行を始めたことで、長い戦いも終幕が近づいていた。
◆◆◆◆◆
――それは地上における戦いも同様である。
ファントムと羅甲・双武は素早く駆けながら激しく戦っていた。
ファントムは距離を取りながらシュリケンランチャーを放ち、羅甲・双武はトマホークで切り裂かんと攻め寄せる。
ファントムと羅甲・双武は素早く駆けながら激しく戦っていた。
ファントムは距離を取りながらシュリケンランチャーを放ち、羅甲・双武はトマホークで切り裂かんと攻め寄せる。
羅甲・双武とダブル・トマホークの気迫は以前凄まじいものがあったが、ファントムに投げ飛ばされたダメージで動きに切れがない。
だがファントムも武器を失い、片手も切り落とされているため決め手を欠く。
だがファントムも武器を失い、片手も切り落とされているため決め手を欠く。
両者の息もつかせぬ攻防、その均衡が崩れるときは唐突に訪れた。
ファントムの放つシュリケンランチャーが弾切れを起こしたのだ。
急に弾幕が止んだのを見て、羅甲・双武が急速前進!
ファントムが予備弾倉の装填を急ぐが間に合わない!
ファントムの放つシュリケンランチャーが弾切れを起こしたのだ。
急に弾幕が止んだのを見て、羅甲・双武が急速前進!
ファントムが予備弾倉の装填を急ぐが間に合わない!
「獲った!!!!」
トマホークが一閃!
ファントムはブリッジして回避を試みるが、後方に倒れこんでしまう!
尻餅をつく体勢からファントムが見上げると、そこには羅甲・双武のトマホークが突きつけられていた。
ファントムはブリッジして回避を試みるが、後方に倒れこんでしまう!
尻餅をつく体勢からファントムが見上げると、そこには羅甲・双武のトマホークが突きつけられていた。
「ファントム・オーガ敗れたり!」
ダブル・トマホークが会心の笑みを浮かべると……。
「ダブル・トマホーク敗れたり」
ファントム・オーガもまた不敵な笑いで返した!
(こいつ……!?)
……ファントム・オーガの強気を訝しんだ時にはすでに遅かった。
ファントムの腕が地中に突きこまれると、土を割って大蛇が踊りだしたではないか!?
その大蛇の名は“ブレードチェーン”、序盤にて叩き落とされたファントムのメイン武器だ!
ファントムの腕が地中に突きこまれると、土を割って大蛇が踊りだしたではないか!?
その大蛇の名は“ブレードチェーン”、序盤にて叩き落とされたファントムのメイン武器だ!
「うおぉっ!?」
羅甲・双武の右腕が肩から切り飛ばされた!
突然のことに反応すら出来ないダブル・トマホーク。
そんな敵手にお構いなしのファントムは、腕を翻らせてブレードチェーンを振るい、羅甲・双武の胴体を縛り上げる!
突然のことに反応すら出来ないダブル・トマホーク。
そんな敵手にお構いなしのファントムは、腕を翻らせてブレードチェーンを振るい、羅甲・双武の胴体を縛り上げる!
一時の静寂が訪れた。
「一本取られたぜ……お前は逃げながら、武器が土に埋もれている場所まで誘導してたってぇわけか」
「然り」
「土にもぐったり、撒き散らしたりしてたのも、この時のための布石か?」
「然り」
「へっ、そうかい……」
「然り」
「土にもぐったり、撒き散らしたりしてたのも、この時のための布石か?」
「然り」
「へっ、そうかい……」
悄然としたダブル・トマホーク。
彼は自分の忍としての腕前に自信があった。油断していたつもりもなかった。
だが結果は敵に一枚上を行かれる形となり、その手に死命を握られている。これが現実だ。非情な現実であり、戦いの世界なのだ。
彼は自分の忍としての腕前に自信があった。油断していたつもりもなかった。
だが結果は敵に一枚上を行かれる形となり、その手に死命を握られている。これが現実だ。非情な現実であり、戦いの世界なのだ。
「ダブル・トマホーク=サン、降参されよ。さもなくばこのブレードチェーンで機体ごと真っ二つでござる」
「降参? 降参だと、フンッ……」
「降参? 降参だと、フンッ……」
ダブル・トマホークの鼻で笑う声。それだけで彼にまだ戦意が残っていることがわかる。
実際、羅甲・双武は片腕を切り落とされたが、まだ一方の腕にトマホークが握られたままだ。
実際、羅甲・双武は片腕を切り落とされたが、まだ一方の腕にトマホークが握られたままだ。
「試してみる価値はありそうだな。俺の斧とお前の刃、どちらが速いか」
「……」
「……」
ダブル・トマホークに気迫が蘇ったのを、ファントム・オーガは肌で感じた。
操縦桿を握る手を今一度握り直す。喉がやけに乾いているように思えた。
乾きを覚えているのはダブル・トマホークも同様であった。それに反して手には汗が酷く滲んでいた。
操縦桿を握る手を今一度握り直す。喉がやけに乾いているように思えた。
乾きを覚えているのはダブル・トマホークも同様であった。それに反して手には汗が酷く滲んでいた。
「……」
「……」
「……」
ザウッッッッ!
羅甲・双武が勢い良く踏み込み、トマホークを振り上げる!
ファントムは引き下がらず、むしろ前へ踏み出した!
ファントムは引き下がらず、むしろ前へ踏み出した!
「こっぱ!」
「縛!」
「みじん!」
「鎖!」
「縛!」
「みじん!」
「鎖!」
馳せ違う二体のロボットとともに二人の命運も交差する。
「斬り!!!!」
「斬妖!!!!」
「斬妖!!!!」
ザシュッ――!!!!
すれ違ったまま動かない両者。
そこに水を差すかのように、あるいはなにかを告げるように、落下する物体がある。
地面に落ちたのはファントムの胸部装甲の一部。見ればファントムの身体から火花が噴き出しているではないか。
そこに水を差すかのように、あるいはなにかを告げるように、落下する物体がある。
地面に落ちたのはファントムの胸部装甲の一部。見ればファントムの身体から火花が噴き出しているではないか。
羅甲・双武のトマホークはファントムを捉えていた。だが紙一重、届かなかった。
ブレードチェーンで胴を切り裂かれた羅甲・双武に、ファントムを叩き切る力は残っていなかったのだ。
今度は羅甲・双武の身体から火花が散り、保っていた姿勢が崩れ落ちる。
ダブル・トマホークは内部ですでに絶命していた……。
ブレードチェーンで胴を切り裂かれた羅甲・双武に、ファントムを叩き切る力は残っていなかったのだ。
今度は羅甲・双武の身体から火花が散り、保っていた姿勢が崩れ落ちる。
ダブル・トマホークは内部ですでに絶命していた……。
「安らかに逝くが良い、ダブル・トマホーク=サン……」
◆◆◆◆◆
加速! 加速!
デッド・イーグルは羅甲・爪我の速度をどんどん上げていく。
先刻の無茶な操縦から体力は回復していないが、黒いバケモノが迫ってくるのだ。
羅甲・爪我が機体を風に乗せ切り上がる。梟とオハギもそれに追随しつつ、行き先に弾丸やミサイルを叩き込む。
震動に耐えながら、回避。もう何度繰り返したかわからない空の攻防戦。
デッド・イーグルは羅甲・爪我の速度をどんどん上げていく。
先刻の無茶な操縦から体力は回復していないが、黒いバケモノが迫ってくるのだ。
羅甲・爪我が機体を風に乗せ切り上がる。梟とオハギもそれに追随しつつ、行き先に弾丸やミサイルを叩き込む。
震動に耐えながら、回避。もう何度繰り返したかわからない空の攻防戦。
だが終わりは間近に迫っていた。先に戦闘をこなしてきた羅甲・爪我のほうが弾薬が尽きるのが早い。
もうすでに、デッド・イーグルには近接戦闘に活路を見出す以外にない状況が見えてきていた。
もうすでに、デッド・イーグルには近接戦闘に活路を見出す以外にない状況が見えてきていた。
(まだだ……もう少し息が落ち着いてから、もう一度天剣絶刀を食らわせる!)
デッド・イーグルが戦機を図っていると、地上で爆発光が煌めいたではないか。
レーダーで確認すると、羅甲・双武の反応が消えている。すると今のは、ダブル・トマホークが爆発四散したということか?
レーダーで確認すると、羅甲・双武の反応が消えている。すると今のは、ダブル・トマホークが爆発四散したということか?
(まさか……奴とて四天王だぞ!?)
仲の良い僚友というほどでもないが、デッド・イーグルも動揺を禁じ得ない。
ここに来て復讐の炎も陰りが見え、撤退も考え始めたとき、デッド・イーグルのサイボーグアイは敵の異変を捉えた。
ここに来て復讐の炎も陰りが見え、撤退も考え始めたとき、デッド・イーグルのサイボーグアイは敵の異変を捉えた。
(今、何か脱落したな?)
梟からなにかパーツが落下したように見えた。カメラをズームさせると、それが脚部だとわかった。
(やはりさっきの攻撃は効いていたのだ!)
天剣絶刀によるダメージを受けた脚部の破棄。そうに違いない。それほど敵のダメージは重いのだ。
今こそ勝機! デッド・イーグルは操縦桿を握る手に力を込め直して、急加速をかける。
梟は足のない状態でオハギの背に乗っている。そのバランスは目に見えて悪く、流されるように飛んでいた。
その鼻先に回り込んで接近戦を仕掛ければ、必殺技に頼る必要もない。
今こそ勝機! デッド・イーグルは操縦桿を握る手に力を込め直して、急加速をかける。
梟は足のない状態でオハギの背に乗っている。そのバランスは目に見えて悪く、流されるように飛んでいた。
その鼻先に回り込んで接近戦を仕掛ければ、必殺技に頼る必要もない。
羅甲・爪我が残りのミサイルを発射、梟の動きを封じた。
フラフラと惑うように飛ぶ梟とオハギ。その頭上に陣取った羅甲・爪我が足の爪をきらめかせ、降下!
フラフラと惑うように飛ぶ梟とオハギ。その頭上に陣取った羅甲・爪我が足の爪をきらめかせ、降下!
――しかし!
オハギから飛び上がる梟! 格闘戦を挑んでくると思わなかったデッド・イーグルは一瞬動きが固まった!
そして梟の攻撃。右手で手裏剣を投擲!
これは羅甲・爪我の右足で弾かれる。
梟が左手で手裏剣を投擲!
これは羅甲・爪我の左足で弾かれる。
距離の縮まった両者。デッド・イーグルの目は梟が失われた側の足を向けてくるのを目の当たりにしていた。
そこにあったのは刃だ。膝から下が無くなった脚部に、ダブル・トマホークとの戦いで折れた忍刀の破片が埋め込まれていた。
そして梟の攻撃。右手で手裏剣を投擲!
これは羅甲・爪我の右足で弾かれる。
梟が左手で手裏剣を投擲!
これは羅甲・爪我の左足で弾かれる。
距離の縮まった両者。デッド・イーグルの目は梟が失われた側の足を向けてくるのを目の当たりにしていた。
そこにあったのは刃だ。膝から下が無くなった脚部に、ダブル・トマホークとの戦いで折れた忍刀の破片が埋め込まれていた。
「これが狙いか!?」
刃による蹴撃が羅甲・爪我の顔面を直撃!
メインカメラが破壊されて視界の失われたコックピット内。サブカメラに映像が切り替わる間にデッド・イーグルは悟っていた。
天剣絶刀を食らった時に、フライトユニットを優先して逃がしたこと。
脚部破損を見せて油断を誘ったこと。
ギリギリまで引きつけて、失われたはずの足で奇襲を掛けてきたこと。
全てが繋がった罠だったのだ。
メインカメラが破壊されて視界の失われたコックピット内。サブカメラに映像が切り替わる間にデッド・イーグルは悟っていた。
天剣絶刀を食らった時に、フライトユニットを優先して逃がしたこと。
脚部破損を見せて油断を誘ったこと。
ギリギリまで引きつけて、失われたはずの足で奇襲を掛けてきたこと。
全てが繋がった罠だったのだ。
そして羅甲・爪我の視界が回復した時、彼の目に飛び込んできたのは――オハギが待ち伏せてはなったミサイル群であった。
「チクショウめ!」
急旋回するが間に合わない。
爆炎に包まれた羅甲・爪我は煙の尾を引きながら危機を脱したが、機体の各所に大小様々な亀裂が走る。
そして肝心の梟の位置を見失ってしまった。一瞬の後、レーダーが敵の位置を捕捉するが、その位置は……羅甲・爪我の背後!
爆炎に包まれた羅甲・爪我は煙の尾を引きながら危機を脱したが、機体の各所に大小様々な亀裂が走る。
そして肝心の梟の位置を見失ってしまった。一瞬の後、レーダーが敵の位置を捕捉するが、その位置は……羅甲・爪我の背後!
ミチッッッッ!!!!
捕まった。梟の両手が羅甲・爪我の翼を背後から掴みつつ、背中には脚部の即興刃を突き刺す!
完全なホールド状態から渾身の力を込めて、翼を捻る! 捻る!
その姿勢は波乗りが溜めの格好に近いが、今楔が作り上げているのは「弓」である。
弓とは様々な儀式に用いられる神聖な武具。それを楔は、敵の身を捻り、しならせて作り上げている。
これぞ帝國忍術の奥義、その前段階だ!
完全なホールド状態から渾身の力を込めて、翼を捻る! 捻る!
その姿勢は波乗りが溜めの格好に近いが、今楔が作り上げているのは「弓」である。
弓とは様々な儀式に用いられる神聖な武具。それを楔は、敵の身を捻り、しならせて作り上げている。
これぞ帝國忍術の奥義、その前段階だ!
大日本帝國忍術・百の技の一つ……奥義・日輪落とし!!!!
梟が羅甲・爪我を捕まえながら縦回転を始める。羅甲・爪我の機体が火を吹き、その姿は回転する炎の輪の如し!
そのまま徐々に降下と回転の速度を速め、地上に落下する!
そのまま徐々に降下と回転の速度を速め、地上に落下する!
「チクショウ、俺の羽! 俺の羽が! お前はいったいなんなんだよ!?」
「帝國忍者……逆賊を殺すものだ」
「帝……逆……!?」
「お前たち化学ニンジャを殺すものだ!」
「帝國忍者……逆賊を殺すものだ」
「帝……逆……!?」
「お前たち化学ニンジャを殺すものだ!」
衝突! 羅甲・爪我は翼をもがれ、身体をぐしゃぐしゃに潰され完全破壊。
デッド・イーグルはその瞬間を知覚することもなく圧殺され、機体とともに爆発四散。夜の風となって永遠に空を漂うこととなった。
デッド・イーグルはその瞬間を知覚することもなく圧殺され、機体とともに爆発四散。夜の風となって永遠に空を漂うこととなった。
この夜、三人の化学ニンジャ四天王が命を散らした。
戦闘を終えた梟とオハギが、地上のファントムの側へと降り立つ。
ファントムが梟に向けて親指を立てて見せると、梟も応じようとして、上手く出来なかった。
梟のコックピット内では、無茶苦茶な回転運動の犠牲になったマイアがひっくり返って楔に絡まっていた。
ファントムが梟に向けて親指を立てて見せると、梟も応じようとして、上手く出来なかった。
梟のコックピット内では、無茶苦茶な回転運動の犠牲になったマイアがひっくり返って楔に絡まっていた。
「動けるかマイア?」
「ちょっと……むりです……」
「ちょっと……むりです……」
楔に向けて形のいいおしりを突き出したマイアは、一見おしりが喋っているようなおかしさがあった。
「大丈夫でござるか楔=サン?」
「問題はない。このオハギのおかげで無事帰れそうだ。そちらは?」
「拙者も傷はたいしたことないでござる」
「また助けられたな」
「なんのなんの。だが基地襲撃には間に合わなかったでござる……」
「問題はない。このオハギのおかげで無事帰れそうだ。そちらは?」
「拙者も傷はたいしたことないでござる」
「また助けられたな」
「なんのなんの。だが基地襲撃には間に合わなかったでござる……」
楔とファントム・オーガはしばし沈黙した。
「今夜のことで拙者も化学ニンジャ隊が許せなくなったでござる。これからも奴らと戦うでござるよ!」
「それは心強いな」
「されど今宵は退散するといたそう。忍は風のように去るもの……サヨナラ!」
「それは心強いな」
「されど今宵は退散するといたそう。忍は風のように去るもの……サヨナラ!」
ファントムが再び地中に潜って去っていった。
楔もオハギを飛翔させ、人目につかないうちに竜蔵寺研究所へと飛び去っていく。
楔もオハギを飛翔させ、人目につかないうちに竜蔵寺研究所へと飛び去っていく。
世間にその姿を晒し、高らかに宣戦布告した化学ニンジャ隊。
その野望に立ち向かう楔と同志たち。
彼らの戦いはまだ始まったばかりである……。
その野望に立ち向かう楔と同志たち。
彼らの戦いはまだ始まったばかりである……。