影狼隊徒然記【隊長の優雅な休暇】その8
~ 夕暮れ時 マドモワゼル平原 ~
ズシン! ズシン! ズシン! ズシン! ズシン!
重厚な足音と共に歩む、巨大な機動マシン。身長50m、体重550tを誇る鋼鉄の巨人! その名もギガント28号っ!!
百文字を肩に乗せたギガントは、夕焼けにその身を紅く染め、平原のど真ン中に浮かぶ機体に向かって歩を進めて行く。
百文字を肩に乗せたギガントは、夕焼けにその身を紅く染め、平原のど真ン中に浮かぶ機体に向かって歩を進めて行く。
平原の上空、と言ってもおよそ50m程度か。ギガントの目線と同程度の高さで浮遊して居るのは、甲虫を思わせる深緑色の操兵。
斬空一式・改”禍風”である。肥大した腕とロケットブースターと同化した脚の所為で、腹ばい状態が通常の姿勢である。
こちらは羅甲などと同程度のサイズで、体長も20m級。ギガントと比べると相撲取りと小学生ぐらいの体格差がある。
斬空一式・改”禍風”である。肥大した腕とロケットブースターと同化した脚の所為で、腹ばい状態が通常の姿勢である。
こちらは羅甲などと同程度のサイズで、体長も20m級。ギガントと比べると相撲取りと小学生ぐらいの体格差がある。
「やー、道中お疲れさん。観客が居ねぇのは残念だが、まぁ一般市民を巻き込む訳にはいかんだろ?」
と、禍風からバドスの能天気な科白がスピーカーで拡大されて放たれる。
「己の無様を観客に観て貰いたいとは、悪役(ヒール)にしては殊勝な心掛けだ。だが幻影(立体映像)で誤魔化すのは感心せんな」
と、ギガントの肩に乗った百文字が応える。
「あぁ、やっぱ気付くか。ホログラフとスピーカー程度じゃ誤魔化せんわな。まっ、別に期待しちゃ居なかったがよォ」
「俺ァ小心者なんでね。一応『隊長』も乗せてるし、いきなり撃墜されましたってのは勘弁して貰いてーのよ」
「それとなー。戦闘始めっと、くっちゃべってる余裕無ぇんで今の内に喋り倒してぇのよ。判る?」
「俺ァ小心者なんでね。一応『隊長』も乗せてるし、いきなり撃墜されましたってのは勘弁して貰いてーのよ」
「それとなー。戦闘始めっと、くっちゃべってる余裕無ぇんで今の内に喋り倒してぇのよ。判る?」
バドスの饒舌な言葉の奔流に対して百文字、無言。そのままギガントは上空を見上げて、虚空の一点を睨みつける。
「・・・へいへい、了解。んじゃ勝負だっ!」 ド ヒ ュ ! ド ヒ ュ ! ド ヒ ュ ! ド ヒ ュ ! ド ヒ ュ ! ド ヒ ュ !
バドスの宣言と同時に、遥か上空からミサイルを連続で発射する音が響く。
しかし、的が大きいとはいえギガント28号を舐めてはいけない。そのミサイルが到達するまでに回避行動を取る事は充分可能…ッ?!
しかし、的が大きいとはいえギガント28号を舐めてはいけない。そのミサイルが到達するまでに回避行動を取る事は充分可能…ッ?!
V i m !
ギガントの目の前で浮いていた禍風の立体映像が消えた。そこにあったのはリモートビット。禍風が操る浮遊砲台である。
ゴ ガ ッ !!
B e a …
B e a …
リモートビットのビーム砲がギガントの顔面を撃つ直前、ギガントの裏拳が浮遊砲台を叩き潰す。次はミサイルに対処する番だが・・・
ヒ ュ ー イ ィ ィ ー ! ヒ ュ ー イ ィ ィ ー ! ヒ ュ ー イ ィ ィ ー ! ヒ ュ ー イ ィ ィ ー !
着弾しない。いや、むしろギガントの周囲を遠巻きに回る様に旋回している。しかも爆音に加えて犬笛らしき高周波の雑音を放ちつつ。
グ オ ォ オ ォ ォ ー !!
派手な爆音と共に上空から多数の禍風が降下する。どうもリモートビットに立体映像の発生装置を仕込んで同時に降下してる様だ。
そしてギガントを中心とした更に外周には、フロートマイン(浮遊機雷)が降下して行く。
そしてギガントを中心とした更に外周には、フロートマイン(浮遊機雷)が降下して行く。
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百文字とギガント28号が『一方的なチート(ワンサイド)』を相手にするのは、何もこれが初めてではない。
姿無き隠密戦闘機『アロンズィS06』を駆るヴァルル ・ボンヴジュターヌを相手にした時が、まさにこういう状態だった。
(※SS作品『コマンタレヴ・ラプソティ』第3話参照)
姿無き隠密戦闘機『アロンズィS06』を駆るヴァルル ・ボンヴジュターヌを相手にした時が、まさにこういう状態だった。
(※SS作品『コマンタレヴ・ラプソティ』第3話参照)
この時、百文字は超聴力にて雑踏の中から、『アロンズィS06』が放つ携帯電話のマナーモード程度の機械音を手繰り寄せて、
それを元に見事『アロンズィS06』を撃破した。
それを元に見事『アロンズィS06』を撃破した。
しかし、今回も同様に例えるならば。競技場で熱狂する観客達が叫ぶ中から、目的の叫びを見つけ出さねばならぬのだ。
禍風は音を潜めて居ないが、立体映像に包まれたリモートビットも、禍風に似せた轟音を響かせて移動する。
そして爆音を撒き散らしつつ旋回するミサイル! フロートマイン!
そして爆音を撒き散らしつつ旋回するミサイル! フロートマイン!
百文字とギガント28号は、騒音の包囲網に包まれた・・・。
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百文字は思考する・・・
(「この包囲網は『両脚的超跳躍故似突進(ダブル・ズゥーム・スプリンガー)』ならば突破は出来よう」)
ヒ ュ オ ン ! ゴ ガ ッ ! ヒ ュ オ ン ! ゴ ガ ッ ! ヒ ュ オ ン ! ゴ ガ ッ !
(「だがっ! 容易き道はすなわち罠っ!!」)
周囲を巡るミサイル群の一部がギガント目掛けて軌道を変える。が、ギガントはその拳でミサイルを叩き落としつつ・・・
ヒ ュ オ ン ! ゴ ガ ッ ! ヒ ュ オ ン ! ガッ! … ヒ ュ ッ !!
うち一つをひっ掴んで遠方の地面に投げ付けた。すると!
ズ ガ ガ ー ン ッ !!!
(「やはりな。地雷と浮遊機雷との合わせ技を突破した直後の隙に、バネ仕掛けの伸び切った部位を狙う気だな」)
(「となると、通って来た道にも遅行性地雷が埋めてあると思ったが良かろう。来た道を戻るのも無しだ。その気は無いがな」)
(「となると、通って来た道にも遅行性地雷が埋めてあると思ったが良かろう。来た道を戻るのも無しだ。その気は無いがな」)
B e a m ! B e a m ! B e a m ! B e a m ! B e a m !
空中に浮く禍風(の立体映像)から、様々な角度でビーム砲が放たれる。
ギガントの身を包むは『超鋼鉄』。如何に高熱のビーム砲とて、そう易々と撃ち抜ける代物では無いが、無傷という訳にもいかない。
ギガントの身を包むは『超鋼鉄』。如何に高熱のビーム砲とて、そう易々と撃ち抜ける代物では無いが、無傷という訳にもいかない。
ヒ ュ オ ン ! ヒ ュ オ ン ! ヒ ュ オ ン ! ヒ ュ オ ン ! ヒ ュ オ ン ! ヒ ュ オ ン !
周囲を巡るミサイルも、推進剤が切れる前にギガント目掛けて進路を変える。上空でも爆音に紛れて騒音を放つミサイルが補充されて行く。
(「これでは流石に、前回(ヴァルル相手)の様にレスラーへの賛歌その2(スーパー・ダイビング・ヘッド・バッド)は使えぬな」)
(「途中の障害物が多すぎて、目標を見つけて粉砕する前にワシが撃墜されよう・・・ならばっ!」)
(「途中の障害物が多すぎて、目標を見つけて粉砕する前にワシが撃墜されよう・・・ならばっ!」)
「 ギ ガ ン ト よ 、 耐 撃 す る の だ っ !!」
己の口を模したマスクの中に、百文字を収納したギガントが、身を縮めて防御態勢を取る。
その鋼鉄の身体に容赦無く降り注ぐミサイルとビームの豪雨っ!!
その鋼鉄の身体に容赦無く降り注ぐミサイルとビームの豪雨っ!!
ギガントが誇る鋼鉄の装甲も、この猛攻の前には凹み、砕け、溶けてゆく。だが、この耐撃は決して無意味ではない。
耐撃により蓄積された伸縮蛇腹の力と、特等席に陣取った百文字の超聴力による空間把握能力っ!!
耐撃により蓄積された伸縮蛇腹の力と、特等席に陣取った百文字の超聴力による空間把握能力っ!!
「 往 く ぞ ギ ガ ン ト ッ !! 」
「 『 全 身 発 条 活 用 的 超 跳 躍 故 似 天 空 ( パ ワ フ ル ・ ズ ゥ ー ム ・ ス プ リ ン ガ ー ) !!! 』 」
ギガント28号が、耐撃により溜め込んだ圧縮力を一気に解放して上空へと舞う!
リモートビットの狙撃を許さぬ速度で、進路を阻むミサイルやビットを悉く破壊する勢いで、ギガントは飛翔するっ!!
リモートビットの狙撃を許さぬ速度で、進路を阻むミサイルやビットを悉く破壊する勢いで、ギガントは飛翔するっ!!
「 レ ス ラ ー へ の 賛 歌 そ の 5 !! 『 ダ イ ビ ン グ ・ ボ デ ィ ・ ア タ ッ ク 』で あ る っ !!」
マ” ス” カ” ラ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ァ” ア” ス”!!!
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身長50m、体重550tのギガント28号が、進路上のミサイルやビットを押し潰しつつ遥か上空へと飛び上がる。
巨体故に鈍重のイメージを抱きがちであるが、以前述べた様に高さ324mの『ベイベーおフランス』を蹴りで中央からへし折ったのだ。
いくらバネ仕掛けだとはいえ、自らの身長の3倍近い高さでビルをへし折るジャンプ力と破壊力は瞠目に値する。
いくらバネ仕掛けだとはいえ、自らの身長の3倍近い高さでビルをへし折るジャンプ力と破壊力は瞠目に値する。
そして百文字は。ギガントの頭部という、流れ弾の心配は無い最前線に陣取る事により、超聴力で音を視る。
つまりは『反響定位(エコー・ロケーション)』であるが、禍風側もそれに対抗して超音波を含む乱反射する騒音を垂れ流している。
百文字はそれこそ鰻の群れが泳ぐ濁った水の桶から、オタマジャクシを掬い出すが如き集中力と忍耐力をもって、禍風の位置を把握したのだ!
つまりは『反響定位(エコー・ロケーション)』であるが、禍風側もそれに対抗して超音波を含む乱反射する騒音を垂れ流している。
百文字はそれこそ鰻の群れが泳ぐ濁った水の桶から、オタマジャクシを掬い出すが如き集中力と忍耐力をもって、禍風の位置を把握したのだ!
無論、禍風からミサイルが放たれる音も捉えては居たのだが、他の爆音でマスキング(上書き)される為に、特定には時間が掛かった。
それから、ある程度は禍風のミサイルの数を減らさねば、ジャンプ中に妨害されて隙を見せる状況に陥る為、敢えて受けた事情もある。
それから、ある程度は禍風のミサイルの数を減らさねば、ジャンプ中に妨害されて隙を見せる状況に陥る為、敢えて受けた事情もある。
禍風の位置取りに関しても、上空とはいえ全力でギガントが跳躍すれば届く範囲だったのが幸いした。
ミサイルやリモートビットをコントロールしてギガント包囲網を維持するには、ある程度は近付く事が必要だったのである。
まぁこの辺りは、本来リモートコントロール操縦であるギガント28号に、今も百文字が乗って居るのと似た様なものだとも言えるか。
ミサイルやリモートビットをコントロールしてギガント包囲網を維持するには、ある程度は近付く事が必要だったのである。
まぁこの辺りは、本来リモートコントロール操縦であるギガント28号に、今も百文字が乗って居るのと似た様なものだとも言えるか。
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禍風に肉薄するギガント28号。そのまま覆い被さる様にギガントは手足を広げ、百文字は吼える!
「 ワ シ に 小 細 工 な ど 通 用 せ ぬ っ !! 」
だが、『影狼隊隊長』がここで口を開く。
「知っている。だから…」「…オメー相手はシンプルに行かせて貰うぜぇっ!!」
バドスがそう科白を続けるのと同時に、禍風は急降下する!!
ある程度は障害物のコントロールが可能とはいえ、自らが放った障害物を避けつつ、ギガントが落下するよりも速く急降下する禍風。
そのまま地表近くでUターン。今度はギガントが飛び上がった軌道を辿って急上昇! その流れで落下するギガントの背後を取る!
そのまま地表近くでUターン。今度はギガントが飛び上がった軌道を辿って急上昇! その流れで落下するギガントの背後を取る!
「ぬうっ?!」「甘ぇよ。空中(そら)は俺の領域なんだぜ」
禍風が、ギガントの肩甲骨辺りに張り付いた!!
そして『重力制御装置』作動! ギガントの巨体が重力に逆らい、ふわふわと浮かんで行く・・・。
そして『重力制御装置』作動! ギガントの巨体が重力に逆らい、ふわふわと浮かんで行く・・・。
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先に例えた通り。ギガントと禍風の比較は、相撲取りと小学生の体格差に近いと言って良いだろう。
一対一の純粋な力比べにおいては、万に一つも小学生に勝ち目は無い。
一対一の純粋な力比べにおいては、万に一つも小学生に勝ち目は無い。
だが。無重力状態で、相撲取りの背中に小学生が張り付いたのならどうだ? それでは横綱であっても有効打は出せまい?
試しに自分の手足で背中の中央、肩甲骨辺りを強打出来るかどうか試したら良く判るだろう。
試しに自分の手足で背中の中央、肩甲骨辺りを強打出来るかどうか試したら良く判るだろう。
如何にバネ仕掛けだとはいえ、ギガント28号も元々は『人間を模した』形状の機体なのだ。
そして禍風もまだミサイルの残弾を残している。近接爆発で自らも影響を受けるとはいえ、不自然な体勢の手足を撃退する程度は可能。
そして禍風もまだミサイルの残弾を残している。近接爆発で自らも影響を受けるとはいえ、不自然な体勢の手足を撃退する程度は可能。
それから下手に無理な体勢で身体を曲げようとすると、それは『バネを伸ばす行為』であるが故、弱点を曝すに等しい。
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「この状態じゃ俺からも大した攻撃は出来んがね。アンタのプロレス殺法とやらも使えまい?」
「そしてさっきも言ったが、俺ァシンプルにやらせて貰う。これからオメーを『持ち上げて、落っことす』のさ。ただ、それだけだ」
「そしてさっきも言ったが、俺ァシンプルにやらせて貰う。これからオメーを『持ち上げて、落っことす』のさ。ただ、それだけだ」
禍風は重力制御装置をフル稼働させるのに能力の大半を使っている為、リモートビットの制御辺りは完全に自動操縦となってしまう。
それでも残存リモートビットを射出し、自動操縦でギガントのバネ仕掛けを狙わせる。
それでも残存リモートビットを射出し、自動操縦でギガントのバネ仕掛けを狙わせる。
同時に禍風が空中で体勢を入れ替えて、ギガントを抱えたまま自らは下に回り込む。
傍から見ると、甲羅(禍風)を背負ったギガントが引っくり返った亀みたいな格好になってる図だ。
傍から見ると、甲羅(禍風)を背負ったギガントが引っくり返った亀みたいな格好になってる図だ。
どんどん高度を上げていく2機。身長50m、体重550tを誇るギガント28号。だが、それ故に刻一刻とその命脈は絶たれて行く。
もう既に。敵者を空高く打ち上げて粉砕する、レスラーへの賛歌その128『ギガント・トルネード』の高度も超えた。
バネ仕掛けと百文字が操る熟練の体捌きによって、その体重に似合わぬ身軽さを持つギガントとはいえ、この高さは凶器!
バネ仕掛けと百文字が操る熟練の体捌きによって、その体重に似合わぬ身軽さを持つギガントとはいえ、この高さは凶器!
どうする、百文字! どうする、ギガント28号っ!!
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コツン… コツン… コツン… コツン…
それが、百文字の出した答えだった。黒い帽子が風で飛ばされぬ様に押さえつつ、悠々とギガントの上を歩み出す・・・逆さまの体勢で。
「・・・あーっ、やっぱ気付きやがったか。でも、だからって実際に出来るモンじゃねーだろォ! 普通はよォ!!」
それを見たバドスの嘆き節が盛大に炸裂する。そう、禍風は重力制御装置でギガントを『浮かべている』のだ。
つまりはギガントの周囲もその重力制御の影響を受けている訳で、その影響下である故に重力は『上空に向かって』働いている。
百文字は『上に居る』ギガントの身体を地面にして、そのまま禍風の方に向かって歩いて来たのだ。
つまりはギガントの周囲もその重力制御の影響を受けている訳で、その影響下である故に重力は『上空に向かって』働いている。
百文字は『上に居る』ギガントの身体を地面にして、そのまま禍風の方に向かって歩いて来たのだ。
流石に禍風の武装で、こんな状況に対応出来る物は無い。そもそも至近距離の『人間単体』を対象とした『操兵用武器』なぞ存在しない。
「レスラーへの賛歌、その100・・・」
禍風の肩口まで歩み寄った百文字が、両の腕を振り上げて手刀を形作る。
「 ハ ン ド レ ッ ド ・ ヂ ェ ロ ニ モ ン !! 」
百文字が振るう高周波手刀の一閃で、禍風の左腕が肩口から切断される。次いで頭。
左腕と頭を失い、更なる手刀が振るわれんとするに至って、禍風はギガントから離脱する。
左腕と頭を失い、更なる手刀が振るわれんとするに至って、禍風はギガントから離脱する。
グ ラ ッ !
当然、ギガントの浮遊もそこで終了。ギガント28号は遥か高みから墜落してゆく。
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「・・・人間じゃネェ・・・てか、強化人間なんだろうがよォ。にしても、あの胆力は何なんだ一体・・・」
「この程度で済んだだけマシだと思うべきだな」
「この程度で済んだだけマシだと思うべきだな」
墜落する百文字とギガントを予備カメラで眺めつつ、影狼隊の2人は今回の交戦を振り返る。
「それでも一応は成功してっからねぇ。もうちょい高いトコで落としたかったけど、時間稼ぎ程度は出来たんじゃねーですかい?」
「まぁな。奴の脅威も充分理解した。もうしばらくボギヂオ大佐は貧乏くじを握る事になりそうだな、気の毒に」
「全くで。赤スーツのオッサンもちっとは進歩してたけどなぁ~、まだまだあのデカブツ倒すにゃ足りねーでしょうよ」
「まぁな。奴の脅威も充分理解した。もうしばらくボギヂオ大佐は貧乏くじを握る事になりそうだな、気の毒に」
「全くで。赤スーツのオッサンもちっとは進歩してたけどなぁ~、まだまだあのデカブツ倒すにゃ足りねーでしょうよ」
頭と左腕を失った禍風は、ギガントを尻目にそのまま飛び去るが、『隊長』は去り際に一言残していった。
「さらばだ、『耐撃の百文字』よ。正直に言えば二度と遭いたくは無いな・・・次に遭う時は、どちらかが斃れる時だろう」
「・・・その時、斃れるのはヌシだ」ザリッ!
「フッ、そうかもな」独り言じみた科白を百文字に拾われ、返答と共にネクタイピンを挟み潰す音を返された『隊長』は苦笑する。
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~ 空中 墜落中の百文字とギガント28号 ~
禍風が離脱する際、重力制御が切れて禍風のパーツと一緒に落下する百文字。
しかしギガントは、禍風がその巨体の落下に巻き込まれぬ様に斥力を放って突き放した為、落下軌道がずれる。
風切り音と共に墜落する百文字とギガント。しかし自然落下する両者の間は、x軸、y軸、z軸の全てがずれている。
しかしギガントは、禍風がその巨体の落下に巻き込まれぬ様に斥力を放って突き放した為、落下軌道がずれる。
風切り音と共に墜落する百文字とギガント。しかし自然落下する両者の間は、x軸、y軸、z軸の全てがずれている。
「・・・ぬんっ!」
そこで百文字はどうしたか。答えは簡単。近くで落下中の禍風の頭部パーツを蹴って、ギガントへと飛び移ったのである。
そして再びマスクの中に収まった百文字は、ギガントに対して指示を出す。
そして再びマスクの中に収まった百文字は、ギガントに対して指示を出す。
「ギガントよ、全身のバネ仕掛けを限界まで緩め、脚より順に衝撃を分散させつつ着地するのだっ!!」
「幸い着地点にはクッションもある!」
「幸い着地点にはクッションもある!」
ゴ” セ” ッ” チ” テ” ン” カ” イ” ホ” ウ” !!!
残存していたフロートマインや地雷を踏み付け、その爆風をクッションにしながら、ギガントは身体を捻りつつ着地する。
その体捌きとバネ仕掛け、地雷の爆風によって衝撃を分散させたのだが、それでも大地にクレーターが出来る程の衝撃が走る。
その体捌きとバネ仕掛け、地雷の爆風によって衝撃を分散させたのだが、それでも大地にクレーターが出来る程の衝撃が走る。
その衝撃は、100km近く離れたコマンタレヴシティにおいても体感出来る程の強烈な震動であった!!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ 夜 マドモワゼル平原 ~
ズ…ン! ズ…ン! ズ…ン! ズ…ン! ズ…ン! ズ…ン!
ギガント28号はよろめきながら、それでも自らの足で大地を踏みしめて歩いていた。
百文字とて無傷とは言えない。いくらシェルター(ギガントの口部)に避難して居たとはいえ、受けた衝撃は生半可なものではないのだ。
百文字とて無傷とは言えない。いくらシェルター(ギガントの口部)に避難して居たとはいえ、受けた衝撃は生半可なものではないのだ。
P i ッ !
それでもギガントの肩に立っていた百文字は、体内通信(QXコネクト)を受信する。
”置き手紙は勝手に読んだわよ。私(愛妻)に何の断りも無く夜遊びに出歩くなんて良い度胸してるじゃない百文字(ハンドレッド)”
”挙句は遊び呆けて午前様でもするつもり? さっきの震動はこっちにまで届いて居たわよ百文字(ハンドレッド)”
”挙句は遊び呆けて午前様でもするつもり? さっきの震動はこっちにまで届いて居たわよ百文字(ハンドレッド)”
「小計109文字の嫌味トークの最中に悪いが、ワシは遅くとも翌朝、再出撃せねばならぬ。レディ、ギガントの整備を頼む」
”・・・装甲もだけど、バネ仕掛けの傷みも激しいみたいね。それじゃちょっと試したい『手』があるんだけど、百文字(ハンドレッド)”
「。」
”句読点で応えるのは止めなさい、百文字(ハンドレッド)”
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~ 翌朝 マドモワゼル平原 ~
百文字の読み(バドスの科白「赤スーツのオッサンもちっとは進歩してた」から類推した)通り、空戦羅甲の編隊が上空に現れる。
いずれも対地仕様の爆雷投下仕様。それでも通常のギガントならば対応は出来たろうが、今は満身創痍の身!
いずれも対地仕様の爆雷投下仕様。それでも通常のギガントならば対応は出来たろうが、今は満身創痍の身!
果たして、ギガント28号はこの空戦羅甲を撃退出来るのか? そしてレディ・ミイラの『手』とは一体?
・・・それと少し主役が入れ替わった気もするが、『隊長』とバドスが帰還する頃には、トワイス快王も帰還しているのか?